1.本章の位置付け
前章で紹介した中小企業 43 社の事例を分析し、中小企業のマネジメントの 実態を明らかにしていく。特にポイントになるのは、マネジメントのタイプに 対して、本研究でマネジメントの 2 大ツールと位置付けているベテラン・マネ ジャーと PDCA サイクルとが、実際のマネジメントの中でどのように絡み合っ て機能しているかである。
そういったポイントを意識しながら、前章で設定した項目(基準)ごとに分 析を加えていく。(1)~(6)まで一通り分析を行い、中小企業の マネジメン トの全体像を掴み、 最後に(7)で業績との関係について 分析する 。まずはし っかりと全体を俯瞰し、全体像を明らかにすることが重要である。
2.項目ごとの分析
資料「事例 43 社のマネジメントの実態一覧」では、中小企業を大きく 3 つ のグループに分けている。左から順にαグループ(資料では青色で表示)、βグ ループ(資料では黄色で表示)、γグループ(資料では赤色で表示)である。こ れは、(7)の「①売上高の推移」で、○:上がり基調、△:横ばい基調、×:
下がり基調によってグループ分けしたものである。○がαグループ、△がβグ ループ、×がγグループである92。
なお、本文中、「α1」や「β8」、「γ4」などの記述があるが、これらは一覧 表での企業番号(グループごとの番号)により、該当する企業を表している。
92 こ れ は 、(1) ~ (7) の 各 項 目 に つ い て 、 こ の 順 番 で 、 慎 重 に 確 認 ・ 検 討 し な が ら 評 価 を し 、 一 覧 が 完 成 し た 後 で 、 便 宜 上 、3 つ の グ ル ー プ に 分 け た も の で あ る。「 売 上 高 の 推 移 」 で 先 に グ ル ー プ 分 け し て か ら 、各 項 目 を 検 討 、評 価 し た わ け で は な い 。そ れ を す る と 、企 業 ご と の 絶 対 評 価 で は な く 、横 と 見 比 べ な が ら の 相 対 評 価 に な り が ち に な る か ら で あ る 。 な お 、 α グ ル ー プ は 12 社 、 β グ ル ー プ は 19 社 、γ グ ル ー プ は12社 で あ る が 、こ れ は 評 価 の 結 果 そ の ま ま で あ り 、グ ル ー プ の 数 は 一 切 調 整 し て い な い 。
(1)企業の概要
①業種
事例 43 社の内訳を見ると、小売業:3 社、卸売業:9 社、製造業:11 社、
加工業:10 社、サービス業:8 社、その他:2 社である。これら 43 社を選ん だ基準は、前章第 1項で述べた通りである。
*2 つの業種を兼業している場合は、売上高の多い方をカウントしている
②従業員数
10 人まで:11 社、20 人まで:14 社、30 人まで:8 社、50 人まで:6 社、
100 人まで:2 社、100 人超:2 社という内訳である。αグループは、12 社中 1 社が 10人までの企業であるのに対し、γグループは、12 社中 6 社が 10人ま での企業であり、相対的に小規模の企業の方が伸び悩んでいる様子がわかる93。
③業歴
10年まで:8 社、20 年まで:4 社、30年まで:7社、50 年まで:15 社、100 年まで:8 社、100 年超:1 社という内訳である。業歴の浅い 10年までの企業 8 社うち、αグループが 3 社、γグループが 3 社となっており、ベンチャー企 業として一気に業績を上げている企業と、そうでない企業に分かれている様子 がわかる。また、γグループ 12社には、20年を超える業歴の企業が 7 社も含 まれている。長くやってきたにも関わらず、いまだに本研究で言う「上手いや り方」ができていないのである。特に、γ4とγ10、γ12 は苦しんでいる。こ の 3 社はいずれも、前目の「②従業員数」が 10 人までである。業種業態にも よるし、人数が多ければいいということではないが、企業の成長が従業員数に 表れるのも確かである。この 3 社は上手く成長できずに来たのである。
④資本金
1,000万円まで:29社、5,000万円まで:7 社、1 億円まで:5 社、個人事業:
2 社という内訳である。中小企業であるため、圧倒的に資本金が 1,000 万円ま
93 小 さ い か ら 伸 び な い の か 、 伸 び な い か ら 小 さ い ま ま な の か は 、 議 論 の 余 地 は あ る 。
で、すなわち「資本金 1,000万円」の企業が多い。資本金が多いからと言って、
必ずしも業績が良いわけではなく、資本金が 1,000 万円超の企業は、αグルー プにも、γグループにも、3社ずつである。
⑤売上高(年間)
5,000万円まで:4社、1 億円まで:6 社、3億円まで:11 社、10 億円まで:
16 社、15 億円まで:3 社、15 億円超:3 社という内訳である。事例 43社の中 心は年間売上高 3 億円超~10 億円までの規模である。売上高 5,000 万円までの 4 社のうちの 3 社、1 億円までの 6 社のうちの 3 社がγグループである。γグ ループは業績が伸び悩んでいるグループであるため、売上高の低い企業が多く なるイメージではあるが、実際、売上高は、業種や規模、ビジネスモデルなど さまざまな要素によって規定されるため、一概に売上高(売上の絶対額)だけ で業績の善し悪しは判断できない。本研究のテーマはマネジメントであり、そ ういった要素とは議論の視点が異なるため、ここでは売上高に関する分析は行 わず、企業概要の一項目に留めておく。
(2)事業の特徴
①ビジネスモデル
基本的に、加工業は、その受注形態から「下請・受託型」となり、その他の 業種は「自立・提案型」になる。ただ、注目は、加工業の中でも、積極的な自 立・提案型で動いている企業もあり、それがα2 やβ5 である。加工技術を売 り込むようなビジネスモデルを確立できているのが特徴である。
②営業のタイプ
営業のタイプは、前目のビジネスモデルと大いに関係している。基本的な相 関は、「自立・提案型」と「攻めの営業」、「下請・受託型」と「守りの営業」で ある。注目は、「自立・提案型」のビジネスモデルでありながら、「 守りの営業」
になっている企業である。本来なら、攻めなければならない。そういった企業 は 4 社あるが、うち 3 社がβグループ、残り 1 社がγグループである。特に、
βグループの 3社は、いいところまで来ているのに、もう少しのところで伸び
悩んでいる感がある。また、営業機能がない企業が 7 社あるが、そのうち4 社 がγグループに属している。確かに業種業態によっては、営業担当者などを置 かずともとりあえずは回る場合もあるが、積極的に営業活動を行い、売上を上 げていかなければいつまで経っても現状からの脱却は難しい。
③研究・企画・開発機能の有無
研究・企画・開発機能を持っている企業は 43 社中 8 社であり、やはり少な いと言える。中小企業の場合、そういった部署を持ち、そこにヒトを配置する のは非常に難しい。どこから採用するか、どうやって育成するか、また、そう いった専門職は、一般的に給与水準も高いため、人件費負担の問題もある。た だ、そんな中でも、絶対数は少ないながらも、そういった機能を持ち、積極的 な事業展開を図ろうとしている企業があるのは頼もしいことである。8 社中 5 社がαグループだということも理解できる。
(3)経営者の関係
ここから、経営者関係の分析である。第 1 章で述べたように、「中小企業=
経営者」(中小企業は経営者次第)であるため、この項の分析は重要である。
①何代目の経営者か
事例 43 社の内訳は、創業者:17人、2 代目:23 人、3 代目:2 人、4 代目:
1 人となっている。本研究の事例は、創業者と 2 代目が大半を占めている。
②就任前の状況
創業者は当然ながら「他社で仕事」が多い。他社で経験を積み、独立開業し たのである。また、2 社は「その他」であり、主婦などから会社を起こした創 業者である。
2 代目や 3 代目の場合、大半が、就任前は「自社で、上位マネジメントの仕 事」している。専務や営業部長などのポジションで経験を積み、経営者に就任 したパターンである。逆に、2 代目や 3 代目でありながら、いったん、「他社で 仕事」をして、経営者として戻って来ている企業も 5 社ある。いわゆる「修行」
に出ていたところを、先代から呼び戻された形である。
もっと珍しいのが、「自社の現場で仕事」をしていたパターンである。3 社あ るが、そのうち 2 社は、現場で一般従業員として働いているうちに、先代経営 者の娘と結婚し、そのまま経営者に就任したものである。
③経営者を経営資源として捉えた場合のタイプ
まず目に付くのが、αグループの経営者には、「営業マンタイプ」が多いとい うことである。確かに全体的に営業マンタイプの経営者が多いのだが、12社中 9 社は他のグループと比べても高い率を示している。経営者自らのトップ営業 で、売上につなげているのである。逆に、γグループで目に付くのが、「オーナ ータイプ」の経営者が多いということである。こちらは 12 社中 6 社がそうで ある。最大の経営資源である経営者が、あまり機能していない様子がうかがえ る。
また、「親方タイプ」の経営者がいる企業は、16 社ある。筆者はこれまで、
親方タイプは、創業者に多いと推測してきたが、親方タイプの創業者は 7 社し かなく、2 代目や 3 代目であっても、親方として活躍している経営者がいるこ とは中小企業にとって好材料である。さらに、親方タイプでありながら、営業 マンタイプでもある経営者がいる企業が、9 社ある。現場もわかり、営業もで きるという、経営資源的にはスーパー経営者であるが、すべて自分でできる分、
何にでも口を突っ込み、自分で勝手にやってしまうところがある。ワンマンな 経営者の典型である。
④経営者の管理のタイプ
これはαグループとγグループで明らかに分かれる。αグループは「管理タ イプ」が 12社中 10社であり、経営者自ら非常に管理意識が高いことが うかが える。それに対し、γグループは、12 社中 5 社が「放任タイプ」である(管理 タイプの 7 社も、完全な管理タイプではない)。前目の「オーナータイプ」と も重なるところがあるが、自ら何もせず、放ってしまっている。仮にそれが、
従業員を信頼し、任せているということであれば、任された従業員のモチベー ションは高まり、それが業績にも影響してくるのであろうが、そういった従業