2.5 臨床に関する概括評価
2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論
2.5.6.1 用法・用量
(1) HBe
抗原陽性のB
型慢性肝炎患者HBe
抗原陽性のB
型慢性肝炎患者において,主要評価項目である投与終了後24週時の複合評 価の有効率で,HLBI群に対しPEG48W
併合群で非劣性が検証された。投与期間については,PEG48週併合群では
HLBI
群に対し投与終了後24週時の複合評価の有 効率において非劣性が証明され,PEG24週併合群では証明されなかったこと及びPEG48週併合
群及び
PEG24週併合群の複合評価の有効率はそれぞれ18.3%及び7.3%であり,PEG48週投与で
高いことが示された。PEG-IFNα-2aの投与量は,PEG180/48W群で19.5%及び
PEG90/48W
群で17.1%であり,本剤90 μg
と180μg
で有効率は大きく異ならなかったことから,通常の投与量として90
μg
が適切であると考えられた。ただし,35歳以上の患者における有効例及びHBs
セ ロコンバージョンは,180μg
投与群で認められ,90μg
投与群では認められなかったことから,本剤180 μgの必要性が示された。
海外で実施された
HBe
抗原陽性のB
型慢性肝炎患者を対象としたWV19432試験の有効性の
結果から,PEG-IFNα-2aは90μg
より180μg
で,及び24週間投与より48週間投与で有効率が高 く,また,承認用法・用量である180 μg 48週間投与で最も高い効果が得られることが証明され た。ジェノタイプC
のみの集団及び肝硬変患者を除いた集団でも180μg 48週間投与で最も高
い効果が示され,PEG-IFNα-2a の薬物動態に人種の影響はないと考えられたことから,国内においても
PEG-IFNα-2a
の用法・用量として180μg 48週間投与の必要性が支持されたものと考
える。
安全性の結果において,有害事象の発現件数は
PEG24W
併合群よりもPEG48W
併合群の方 が多く,PEG90併合群よりもPEG180併合群の方が多かったが,発現した事象は双方の群で認
められた。また,PEG180/48W 群の有害事象の発現件数は,HLBI 群よりも多かった。更に,HLBI
群よりもPEG180/48W
群の方が発現率が20%以上高かった事象があったが,下痢以外の事象は,PEG-IFNα-2a 又は
HLBI
の投与中止,休薬及び減量の基準である臨床検査値の異常変 動であった。各投与群での重篤な有害事象,高度及び中等度と判定された有害事象,並びに投 与中止に至った有害事象の発現頻度には,群間に明らかな違いは認められなかった。臨床検査 値の変化量については,HLBI 群及びPEG90群よりも PEG180群の方が大きい項目があったが,
投 与 量 を 変 更 す る こ と に よ り 臨 床 的 に 管 理 可 能 で あ っ た 。 以 上 の 本 治 験 の 結 果 か ら ,
PEG90/48W
群及びPEG180/48W
群の忍容性はHLBI
群と同様に良好であることが確認された。C
型慢性肝炎患者を対象とした試験との有害事象の比較から,アラニン・アミノトランス フェラーゼ増加の頻度が本治験で高かったことを除き,B型慢性肝炎患者にPEG-IFNα-2a
を投 与した際の新たな知見は認められなかった。B
型慢性肝炎患者を対象とした海外試験での安全性の結果から,HBe抗原陽性のB
型慢性肝炎患者に
PEG-IFNα-2a
の180 μgを48週間投与した際の忍容性が確認された。以上の結果を総合的に勘案すると,HBe抗原陽性の
B
型慢性肝炎患者において,有効性及び 安全性の面から本剤の通常の用法・用量として90μg 48週間投与が推奨される。しかしながら,
有効性において180 μgの必要性が否定できず,安全性においても忍容性が認められたことから,
患者ごとにリスクとベネフィットを勘案し180 μgの投与も考慮すべきであると判断する。
(2) HBe
抗原陰性のB
型慢性肝炎患者HBe
抗原陰性患者における主要評価項目である投与終了後24週時のHBV-DNA 4.3 Log
コ ピー/mL 未満の達成率は,PEG180/48W群では37.9%及びPEG90/48W
群では37.5%で,投与終 了後24週時のALT 40 U/L
以下の達成率は,PEG180/48W群では65.5%及びPEG90/48W
群では68.8%といずれも高い有効率を示したが,PEG180/48W
群及びPEG90/48W
群は同程度であった。このことから,通常の投与量として90
μg
が適切であると考えられた。一方,HBV-DNA 定量ペガシス
2.5
臨床に関する概括評価Page 104
値は,投与12週後までは両群とも同様に低下したものの,その後の投与期間中から経過観察期 終了時に同程度になるまで
PEG180/48W
群はPEG90/48W
群よりも低値で推移し,180μg
の投 与中のウイルス抑制効果は90μg
のそれよりも高いことが確認された。B 型慢性肝炎の治療に おいては,HBV-DNA 量を低値に保つことで,その後の肝硬変及び肝がんへの進展を抑制する ことが報告されている20)。更に,投与終了後の観察期間にウイルス量が検出限界以下に低下し,その状態が最終観察時まで持続した患者が
PEG180/48W
群において認められ,PEG180/48W群 では認められなかったことから,180 μgの必要性が示唆された。安全性の結果において,有害事象の発現件数は
PEG90/48W
群よりもPEG180/48W
群の方が 多かったが,重篤な有害事象,高度と判定された有害事象及び投与中止に至った有害事象の発 現頻度には群間に明らかな違いは認められなかった。また,臨床検査値の変化量については,PEG90/48W
群よりもPEG180/48W
群の方が大きい項目があったが,投与量を変更することにより臨床的に管理可能であった。
更に,HBe 抗原陰性患者の有害事象,重篤な有害事象及び治験薬の投与中止に至った有害事 象の発現率には,HBe抗原陽性患者のそれらと大きな違いは認められなかった。
C
型慢性肝炎患者を対象とした試験との有害事象の比較から,アラニン・アミノトランス フェラーゼ増加の頻度が本治験で高かったことを除き,B型慢性肝炎患者にPEG-IFNα-2a
を投 与した際の新たな知見は認められなかった。B
型慢性肝炎患者を対象とした海外試験での安全性の結果から,HBe抗原陰性のB
型慢性肝炎患者に
PEG-IFNα-2a
の180 μgを48週間投与した際の忍容性が確認された。以上の結果から,HBe抗原陰性の
B
型慢性肝炎患者において,有効性及び安全性の面から通 常の本剤の用法・用量として90μg 48週間投与が推奨される。しかしながら,有効性において
180 μg
の必要性が否定できず,安全性においても忍容性が認められたことから,患者ごとにリスクとベネフィットを勘案し180 μgの投与も考慮すべきであると判断する。
2.5.6.2 B 型慢性肝炎の薬物療法における IFN 製剤の位置づけ
現在,B型慢性肝炎の抗ウイルス療法は,ヌクレオシドアナログ製剤と
IFN
製剤が認可され ているが,ヌクレオシドアナログ製剤は,逆転写酵素阻害作用により強力なウイルス増殖抑制 作用を有し,また,経口剤であることから利便性が高く,IFN 製剤と比較して問題となる副作 用も少ないため,HBe 抗原陽性及び陰性のB
型慢性肝炎患者において最も多く使用されてい る薬剤である。ただし,ヌクレオシドアナログ製剤は,催奇形性の問題があるため,挙児希望 のある若年層を対象とした治療には推奨されていない。一般的に,ヌクレオシドアナログ製剤 の治療において,ウイルスを陰性化し続けるためには,期限を決めずに長期間にわたり服用す る必要がある。この長期投与に伴い耐性ウイルスが出現し投与を継続できなくなる問題がある。また,服用中止による重篤な肝障害を起こす場合があることも,投与を終了する基準を明確化 できない原因のひとつである。
一方,IFN 製剤は,ウイルス増殖抑制効果はヌクレオシドアナログ製剤より弱いが,作用機 序として免疫賦活作用を有しており,HBe 抗原陽性患者では投与終了後におけるセロコン バージョンの持続率がヌクレオシドアナログ製剤より高く11),投与終了後も持続的な効果,い わゆるドラッグフリーの実現が期待できる。また,IFN 製剤には,投与終了後もヌクレオシド アナログ製剤にみられるような重篤な肝障害を起こすことがなく,耐性ウイルスの発現は認め られていない点で
HBe
抗原陽性患者のみならず陰性患者でも治療の機会を拡大することに貢 献できるものと考える。更に,IFN製剤は催奇形性の報告がなく,HBe抗原陽性・陰性にかか わらず挙児希望のある若年層にも投与可能である。実際,国内のガイドラインではHBe
抗原 陽性の若年のB
型慢性肝炎患者に対し,既承認のIFN
製剤が催奇形性の問題があるヌクレオ シドアナログ製剤に代わって治療の第一選択薬とされている。ペガシス
2.5
臨床に関する概括評価Page 105 2.5.6.3 ベネフィット
(1) PEG-IFNα-2a
は,HBe 抗原陽性のB
型慢性肝炎患者に対し,従来型IFN
製剤と同程度又はそれ以上の有効性が期待できる。
PEG48W
併合群,PEG24W 併合群及びHLBI
群の投与終了後24週時の複合評価の有効率(95%信頼区間)は,それぞれ18.3%(10.6~28.4%),7.3%(2.7~15.2%)及び7.0%(−3.1~
18.5%)であった。PEG48W
併合群とHLBI
群との複合評価における有効率の差(95%信頼区間)は11.3%(0.0~22.6%)であり,95%信頼区間の下限値が非劣性の許容マージン(−7%)
を下回らなかったことから,HLBI群に対する
PEG48W
併合群の非劣性が検証された。有効率 の点推定値は,PEG24W併合群でHLBI
群と同程度であり,PEG48W併合群では上回っていた ことから,PEG-IFNα-2aは従来型IFN
製剤であるHLBI
と同程度か又はそれ以上の有効性が期 待できる。(2) PEG-IFNα-2a
は,HBe 抗原陽性のB
型慢性肝炎患者に対し,従来型IFN
製剤に比べ患者の利便性の向上が期待できる。
通常,従来型
IFN
製剤の用法用量は,HBe抗原陽性のB
型慢性肝炎患者に対し,3~6 MIU を週3回以上,24週間を目処に投与が行われており,この場合投与回数は合計で72回以上とな る。PEG-IFNα-2a は,週1回で有効性が認められ,48週間の投与でも,総投与回数は従来型IFN
製剤より少ない。すなわち,PEG-IFNα-2aは従来型IFN
製剤に比べ,患者の注射による身 体的負担及び通院負担を軽減する。このことにより,投与のコンプライアンスが向上するもの と考えられ,より効率の良い治療法が提供できると考える。(3) PEG-IFNα-2a
は,従来型IFN
製剤で効果が得られにくい年齢が35歳以上のHBe
抗原陽性のB
型慢性肝炎患者に対しても有効性が期待できる。一般的に,年齢が35歳以上の患者には従来型
IFN
製剤の効果が低いとされるため,B型慢性 肝炎の治療ガイドラインではエンテカビルが第一選択とされている。本治験では,35歳以上のHBe
抗原陽性患者に対しても,有効性はPEG-IFNα-2a
の90μg
では認められなかったものの,180 μg
投与で示された。また,海外試験(WV19432試験)においても,PEG-IFNα-2aの180 μg48週間投与の35歳以上の被験者で35歳未満の被験者と同程度の有効性が認められた。これらの
ことから,PEG-IFNα-2a 180 μg 48週間投与により,35歳以上の患者での有効性が期待できると 考えられた。(4) PEG-IFNα-2a
は,従来型IFN
製剤の適応が承認されていないHBe
抗原陰性のB
型慢性肝炎患者に対しても有効性が確認された。
JV20015試験の HBe
抗原陰性患者において,PEG-IFNα-2a 180 μgの投与終了後24週時のALT
40 U/L
以下の達成率及びHBV-DNA 4.3 Log
コピー/mL 未満の達成率は,それぞれ65.5%及び37.9%であった。無治療群の有効率が 0~27%
との報告21)-23)があること及び海外臨床試験(WV16241試験)で患者背景を考慮した有効率が
JV20015試験の結果と類似していることから,
国内の
HBe
抗原陰性患者においてもPEG-IFNα-2a
の有効性が示されたと判断された。以上より,国内で現在,従来型
IFN
製剤が適応を有しないHBe
抗原陰性患者に対しても,治療が可能になると考えられる。
2.5.6.4 リスク
HBe
抗原陽性のB
型慢性肝炎患者において,有害事象は,すべての投与群の全例に発現した が,PEG180/48W 群の有害事象の発現件数は,HLBI 群よりも多かった。しかしながら,重症 度が高度と判定された有害事象,重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象の発現頻度は,群間に明らかな違いは認められなかった。臨床検査値の異常変動については,白血球数減少,
血小板数減少及びヘモグロビン減少の発現率は,HLBI群よりも