2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論
2.5.6.1 ベネフィット
(1) 本剤は既存の速効型インスリン分泌促進剤であるナテグリニドに比べて HbA1C 値を 低下させ、血糖コントロールを改善する
国内で速効型インスリン分泌促進剤として広く使用されているナテグリニドを対照に単 剤実薬対照比較試験を実施し、本剤の有効性を検討した。その結果、主要評価項目とした HbA1C値の投与開始前値に対する最終評価時の変化量は、本剤0.5 mg/回群で−1.17±0.62%
(平均値±標準偏差、以下同様)、ナテグリニド 90 mg/回群で−0.81±0.39%であった。投与 開始前値を共変量として最終評価時のHbA1C値変化量の群間差を共分散分析で比較した結 果、本剤のナテグリニドに対する優越性が検証された(p<0.001)。日本糖尿病学会が推奨
している文献1),2)HbA1C値の治療目標の「優又は良」(HbA1C値6.5%未満)の達成割合は、本
剤0.5 mg/回群及びナテグリニド90 mg/回群でそれぞれ75.0%(48/64名)及び59.1%(39/66 名)、「優」(HbA1C値5.8%未満)の達成割合はそれぞれ29.7%(19/64名)及び9.1%(6/66 名)であり、本剤はナテグリニドに比べてHbA1C値の治療目標の達成割合が高かった。ま た、空腹時血糖値の投与開始前値に対する最終評価時の変化量は、本剤 0.5 mg/回群で
−26.0±20.9 mg/dL、ナテグリニド90 mg/回群で−18.3±17.8 mg/dLであり、本剤はナテグリニ ドより空腹時血糖値を有意に低下させた。食後血糖推移の改善の指標である食後血糖値 AUC0-3hの投与開始前値に対する最終評価時の変化量は同程度であった。
ナテグリニドをはじめとする既存の速効型インスリン分泌促進剤は、一般に食後血糖推 移の改善に適しておりHbA1C値の低下作用は大きくないとされている文献1)。単剤実薬対照 比較試験でのナテグリニドのHbA1C値の変化量は−0.81%であり、国内で販売されている他 の速効型インスリン分泌促進剤のミチグリニドの臨床試験(第3相試験)では、HbA1C値 の変化量は通常用量の10 mg/回で−0.44%であった文献32)。一方、本剤のHbA1C値の変化量
は−1.17%と既存の速効型インスリン分泌促進剤より強くHbA1C値を低下させた。あわせて HbA1C値の治療目標達成割合も本剤はナテグリニドに比べて高かった。また、空腹時血糖 値に対しても本剤はナテグリニドより強い低下作用を示した。以上より、本剤は既存の速 効型インスリン分泌促進剤と同程度の食後血糖推移の改善作用を示すと共に、より強い空 腹時血糖値の低下作用を併せ持ち、その結果、強いHbA1C値低下作用を示すことから、既 存の速効型インスリン分泌促進剤より優れた薬剤であると考えられる。
(2) 本剤は食後早期のインスリン分泌を促進し、食後血糖推移を改善する
2型糖尿病患者を対象とした臨床薬理試験で、食直前(10分)に本剤0.5 mg又は1 mg を投与した際、本剤は投与後速やかに吸収され約30分でCmaxに達し、消失半減期は約66
~80分であった。更に本剤は、投与後の血漿中薬物濃度増加と共に食後早期のインスリン 分泌を促進し、その後インスリン値は減少して次の食事前にはほぼ投与前に戻った。また、
インスリン分泌の増加にあわせて食後の血糖値上昇が抑制された。これらの結果は、本剤 が既存の速効型インスリン分泌促進剤と同様に、食後早期のインスリン分泌を促進し、短 時間でその作用が消失することを示唆している。
単剤後期第 2相試験で、食後血糖値AUC0-3hの投与開始前値に対する最終評価時の変化 量は、プラセボ群で−19±79 mg·hr/dLに対し、0.25 mg/回群、0.5 mg/回群及び1 mg/回群で それぞれ−168±110 mg·hr/dL、−180±117 mg·hr/dL及び−122±62 mg·hr/dLと低下した。インス リン分泌量の指標である食後血清インスリン値 AUC0-3hは、投与開始前値に対する最終評 価時の変化量はプラセボ群で5.5±34.7 µU·hr/mLとほとんど変化がなかったのに対して、本 剤 0.25 mg/回群、0.5 mg/回群及び 1 mg/回群でそれぞれ 37.0±33.4 µU·hr/mL、53.6±50.6 µU·hr/mL及び33.8±28.8 µU·hr/mLと増加した。また単剤実薬対照比較試験では、本剤0.5 mg/
回群とナテグリニド90 mg/回群の食後血糖値AUC0-3hの投与開始前値に対する最終評価時 の変化量は、それぞれ−132±109 mg·hr/dL、−153±81 mg·hr/dLと同程度であった。このよう に本剤は、0.25~1 mg/回の用量で食後早期のインスリン分泌を促進させることにより食後 血糖値 AUC0-3hを低下させ、その低下作用は既存の速効型インスリン分泌促進剤と同程度 であることから、食後血糖推移の改善作用を示すと考えられる。
(3) 本剤は長期投与で膵 β 細胞のインスリン分泌能を低下させることなく安定した血糖 コントロール改善作用を示す
長期投与時の本剤の有効性及び安全性を検討する目的で、0.5 mg/回を維持用量とし、有 効性及び安全性を考慮し 0.25~1 mg/回の範囲で適宜増減可とした単剤長期投与試験を実 施した。その結果、HbA1C値の投与開始前値に対する変化量は、投与12週後で−1.00±0.47%
であり、その後大きく変動することなく、投与52週後で−0.85±0.56%と長期にわたり約1%
の低下を維持した。HbA1C値の治療目標達成割合では、最終評価時の「優又は良」(HbA1C
値6.5%未満)の達成割合は65.7%(69/105名)であり、更に「優」(HbA1C値5.8%未満)
の達成割合は16.2%(17/105名)であった。食後血糖値 AUC0-3hの投与開始前値に対する
投与24週後及び投与52週後の変化量は、それぞれ−150±105 mg•hr/dL及び−114±106 mg•
hr/dLであり、投与開始前に比べて低下し、その変化量は投与24週後及び52週後でほぼ同
程度であった。食後血清インスリン値AUC0-3hの投与開始前値に対する投与24週後及び投 与52週後の変化量は、それぞれ30.7±37.8 µU·hr/mL及び25.2±37.3 µU·hr/mLと増加してお り、その変化量はほぼ同程度であった。空腹時血糖値の投与開始前値に対する変化量は、
投与4週後で−27.6±18.6 mg/dLであり、その後大きく変動することなく、投与 52週後で
−23.2±25.4 mg/dLであった。
本剤は、慢性疾患である2型糖尿病の治療薬として長期間使用されることが想定される。
投与12週後のHbA1C値の改善作用が投与52週後までほぼ維持されたことから、本剤の長 期間投与による有効性が示された。また食後血清インスリン値 AUC0-3hが投与開始前に比 べて増加し、投与 52週後でも維持し続けていることから、長期間投与でも膵 β 細胞のイ ンスリン分泌能が維持され、インスリン分泌作用は減弱しないことが示された。安全性に ついては、長期間投与によって発現割合が高くなった有害事象、あるいは重症化した有害 事象はなく、臨床上特に大きな問題は認められなかった。以上のことから、本剤は長期投 与でも安全性に特に問題なく血糖コントロールを維持すると考えられる。
(4) 本剤は、食事療法・運動療法で十分な効果が得られない2型糖尿病患者だけでなく食 事療法・運動療法に加えてα-GI剤を服用しても十分な効果が得られない2型糖尿病患 者でも血糖コントロールを改善する
実際の医療現場では、作用機序の異なる糖尿病治療薬の併用療法が行われている文献1)。 速効型インスリン分泌促進剤と作用機序の異なる α-GI 剤はいずれも食後血糖推移の改善 を目的としており、併用により相加的な血糖コントロールの改善効果が期待できる。
そこで本剤と α-GI剤の併用試験を実施し、α-GI 剤併用療法での有効性及び安全性を検 討した。その結果、α-GI剤併用後期第2相試験で、HbA1C値の投与開始前値に対する最終 評価時の変化量は、プラセボ群で0.17±0.59%に対し、0.25 mg/回群、0.5 mg/回群及び1 mg/
回群でそれぞれ−1.00±0.49%、−1.23±0.61%及び−1.30±0.69%と低下した。また最終評価時の HbA1C値の治療目標の「優又は良」(HbA1C値6.5%未満)の達成割合も、プラセボ群で6.3%
(2/32名)に対し、0.25 mg/回群、0.5 mg/回群及び1 mg/回群でそれぞれ68.8%(22/32名)、 68.8%(22/32名)及び75.0%(24/32名)と高かった。食後血糖値AUC0-3hの投与開始前値 に対する最終評価時の変化量は、プラセボ群で−3±84 mg·hr/dLに対し、0.25 mg/回群、0.5 mg/
回群及び1 mg/回群でそれぞれ−131±70 mg·hr/dL、−168±94 mg·hr/dL及び−178±65 mg·hr/dL と低下し、空腹時血糖値の投与開始前値に対する最終評価時の変化量は、プラセボ群で
−0.8±15.9 mg/dLに対し、0.25 mg/回群、0.5 mg/回群及び1 mg/回群でそれぞれ−25.7±18.9 mg/dL、−34.3±23.1 mg/dL及び−39.0±24.7 mg/dLと低下した。これらの結果は、単剤療法で 得られた結果とほぼ同様であった。更にα-GI剤併用長期投与試験でも長期投与の有効性及 び安全性が確認され、その結果は、単剤長期投与試験の結果とほぼ同様であった。これら のことから、本剤はα-GI剤との併用療法でも単剤療法と同様に血糖コントロールを改善す
ると考えられる。