レパグリニド
製造販売承認申請
CTD 第 2 部
2.5 臨床に関する概括評価
目次
2.5 臨床に関する概括評価 2.5.1 製品開発の根拠...6 2.5.1.1 2 型糖尿病の病態...6 2.5.1.2 2 型糖尿病の治療...8 2.5.1.3 本剤の開発意義...10 2.5.1.4 臨床開発の経緯...11 2.5.1.5 臨床試験パッケージ...14 2.5.1.6 治験相談及び対面助言の要約...18 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価...20 2.5.2.1 生物学的同等性...20 2.5.2.2 生物学的利用率...20 2.5.2.3 食事の影響...20 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価...21 2.5.3.1 薬物動態...21 2.5.3.2 薬力学...29 2.5.4 有効性の概括評価...30 2.5.4.1 有効性評価の概観...30 2.5.4.2 有効性の評価結果...33 2.5.4.3 部分集団での検討...43 2.5.4.4 有効性のまとめ...45 2.5.5 安全性の概括評価...46 2.5.5.1 安全性評価方法の概観...46 2.5.5.2 曝露状況...51 2.5.5.3 安全性の評価結果...52 2.5.5.4 部分集団における検討...66 2.5.5.5 投与量、投与時期及び投与方法との関連性...70 2.5.5.6 有害事象の予防、軽減・対処方法...72 2.5.5.7 過量投与に対する反応...73 2.5.5.8 自動車運転及び機械操作に対する影響...73 2.5.5.9 市販後データ...74 2.5.5.10 安全性のまとめ...76 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論...77 2.5.6.1 ベネフィット...77 2.5.6.2 リスク...80 2.5.6.3 申請する効能・効果及び用法・用量...812.5.6.4 結論...85 2.5.7 参考文献 ...88
【本項における用語の説明】 用語 定義、読み替えなど レパグリニド 化学名: (+)-(S)-2-Ethoxy-4-[2-[3-methyl-1-(2-piperidinophenyl)butylamino]-2- oxoethyl]benzoic acid 化学式(分子量): C27H36N2O4(452.59) 構造式: N N H CH3 H3C O O CH3 H O OH 【一般的略号】 略号 省略しない表現 日本語
75g OGTT 75g Oral glucose tolerance test 75g 経口ブドウ糖負荷試験 ADA American Diabetes Association 米国糖尿病学会
α-GI 剤 α–glucosidase inhibitor α-グルコシダーゼ阻害剤
ALP Alkaline phosphatase アルカリフォスファターゼ
ALT Alanine aminotransferase アラニン・アミノトランスフェラー
ゼ
AST Aspartate aminotransferase アスパラギン酸アミノトランスフェ
ラーゼ AUC Area under the concentration-time
curve 濃度-時間曲線下面積
BMI Body mass index 肥満度指数
CCDS Company Core Data Sheet 企業中核データシート
CLCR Creatinine clearance クレアチニンクリアランス
Cmax Maximum concentration 最高血中濃度
CYP Cytochrome P450 チトクロームP450
DECODE Diabetes Epidemiology: Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Europe
-
DECODA Diabetes Epidemiology: Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Asia
略号 省略しない表現 日本語 DIS Diabetes Intervention Study -
DDI Drug-drug interaction 薬物相互作用
EMEA European Medicines Agency 欧州医薬品庁 eGFR Estimated glomerular filtration rate 推算糸球体濾過量
FAS Full analysis set 最大解析対象集団
FDA Food and Drug Administration 米国食品医薬品局
HbA1C Hemoglobin A1C ヘモグロビンA1C
IC50 50% Inhibitory concentration 50%阻害濃度 IDF International Diabetes Federation 国際糖尿病連合 IFG Impaired fasting glucose 空腹時血糖値異常 IGT Impaired glucose tolerance 耐糖能異常
OATP Organic anion transporting polypeptide
有機アニオントランスポーター
PD Pharmacodynamics 薬力学
PK Pharmacokinetics 薬物動態
PSUR Periodic Safety Update Report 定期的安全性最新報告
QOL Quality of life 日常生活の質
RR Reporting Rate -
SPC Summary of product characteristics -
SU Sulfonylurea スルホニルウレア
SU 剤 Sulfonylureas スルホニルウレア剤
SUR Sulfonylurea receptor スルホニルウレア受容体
t1/2 Elimination half life 消失半減期
Tmax Time to maximum concentration 最高血中濃度到達時間 UKPDS UK Prospective Diabetes Study -
2.5.1 製品開発の根拠 2.5.1.1 2 型糖尿病の病態 糖尿病は、インスリン作用の不足により生じる慢性高血糖を主徴とした、種々の特徴的 な代謝異常を伴う症候群である。糖尿病は1 型糖尿病、2 型糖尿病、その他の特定の機序、 疾患によるもの及び妊娠糖尿病に大別され、国内では糖尿病患者全体のうち2 型糖尿病患 者が95%以上を占める文献1)。2 型糖尿病は、家族歴等の複数の遺伝因子に過食、運動不足、 肥満、ストレス等の生活環境因子及び加齢が加わり発症する。その他、高血圧や高脂血症 も独立した危険因子である。また2 型糖尿病の成因は、インスリン分泌低下を主体とする ものと、インスリン抵抗性(血中インスリン濃度に見合ったインスリン作用が得られない 状態)が主体でそれにインスリンの相対的不足を伴うもの等に分類される文献1)。 日本糖尿病学会による糖尿病の判定基準文献2)(図 2.5.1-1)では、早朝空腹時血糖値 126 mg/dL 以上、75 g 経口ブドウ糖負荷試験(以下、75 g OGTT)2 時間値 200 mg/dL 以上、随 時血糖値200 mg/dL 以上のいずれかが確認された場合は糖尿病型と判定する。そして別の 日に行った検査でいずれかが再確認できれば糖尿病と診断できると定めている。ただし、 糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少等)、糖化ヘモグロビンの一つである HbA1C値6.5%以上、明らかな糖尿病網膜症の存在、過去に糖尿病型を示した検査データが ある場合のうち1 つ以上に該当する場合は、1 回の検査で糖尿病型の基準を満たせば糖尿 病と診断される。また検査した血糖値が糖尿病型の基準を満たさなくても、過去に上記の 条件が満たされた記録があり糖尿病であったと診断される場合は糖尿病の疑いをもって対 応する。一方、早朝空腹時血糖値110 mg/dL 未満及び 75 g OGTT 2 時間値 140 mg/dL 未満 が確認されれば正常型と判定し、これらのいずれにも属さない場合は境界型と判定してい る。 なお米国糖尿病学会(以下、ADA)及び世界保健機関(以下、WHO)は、食後高血糖 と空腹時高血糖は異なる代謝異常であるとみなしていることから、日本糖尿病学会で境界 型と判定されている領域を、空腹時血糖値異常(以下、IFG)と耐糖能異常(以下、IGT) に分類している文献2)(図 2.5.1-1)。また、2009 年 6 月に ADA、欧州糖尿病学会及び国際糖 尿病連合(以下、IDF)の 3 団体は合同で、新たな糖尿病診断基準として指標に HbA1C値 を採用し、「HbA1C値6.5%以上を糖尿病とする」と提案している文献3)。
図 2.5.1-1 空腹時血糖値及び 75g OGTT による判定区分文献2)図3 インスリン作用の低下、及び膵β 細胞機能の低下とそれによるインスリン分泌低下とい う代謝異常は、臨床的に明らかな糖尿病の発現よりも前に、まず食後血糖値の上昇として 現れる文献 4),5),6)。そのため、食後高血糖は糖尿病患者で頻繁に認められる現象であるが文献 7),8),9)、最も重要な血糖コントロール指標であるHbA1C値で見ると全体的な血糖コントロー ルは適正であると考えられる場合でも、食後高血糖が認められることがある文献8),9)。食後 高血糖は、食後早期のインスリン分泌が失われ、末梢組織でのインスリン感受性が低下し 文献4),5),6)、インスリン作用の相対的不足が生じた結果、食後の肝糖放出抑制が減少して生じ る文献10)。食後血糖値が徐々に調節されなくなると、空腹時における血糖値の調節も段階的 に悪化し、糖尿病が増悪する文献11)。 平成 19(2007)年度に実施された厚生労働省による国民健康・栄養調査結果の概要によ ると、調査対象の4003 人のうち、「糖尿病が強く疑われる人(HbA1C値が6.1%以上、又は、 現在糖尿病の治療を受けている人)」は男性の15.3%、女性の 7.3%であり、「糖尿病の可能 性を否定できない人(HbA1C値が5.6%以上 6.1%未満で上記以外の人)」は、男性の 14.0%、 女性の 15.9%であった文献12)。この値に推計人口を乗じたところ、「糖尿病が強く疑われる 人」は約890 万人であり、「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると約 2210 万人 (成人約4.7 人に 1 人)と推計された文献12)。平成14(2002)年度に実施された糖尿病実態 調査文献13)に比べて、5 年間で「糖尿病が強く疑われる人」は約 150 万人、「糖尿病の可能 性を否定できない人」を合わせると全体で約590 万人増加した。また、男女とも年齢が高 くなると共に、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わ せた割合は高くなり、70 歳以上では 37.6%(男性 41.0%、女性 34.8%)であった文献12)。以 上の調査結果からも糖尿病患者数は今後も増加していくと推測される。 糖尿病に伴う代謝異常が長く続くと、網膜、腎臓、神経を代表とする臓器・組織で細小 200 140 (mg/dL) (mg/dL) 126 *110
糖尿病型
IFG IFG/IGT境界型
正常型
IGT 75 g OGTT 負荷後血糖 2 時間値 空腹 時 血 糖 値 *:ADA では 100血管の形態的、機能的異常を来し、糖尿病特有の慢性合併症が出現する。更にこれらの細 小血管症が進展すると、視力障害、失明、腎不全等の重篤な障害に至る可能性がある。近 年実施された種々の大規模臨床試験結果から、厳格な血糖コントロールにより細小血管症 の発症を抑制できることが検証されており文献14),15),16)、細小血管症の発症と HbA1C値がよ
く相関することが確認されている文献17)。代表的な2 型糖尿病患者を対象とした研究である
UK Prospective Diabetes Study(以下、UKPDS)によると、HbA1C値1%の低下は細小血管症 の発症を約37%抑制すると報告されている文献17)。
心血管疾患、脳血管障害などの大血管疾患は、わが国の死因の上位を占める。この大血 管疾患の危険因子として、高血糖、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられてい る。この中で高血糖に焦点を絞ると、疫学研究から食後高血糖と全死亡率及び心血管疾患 発症リスクとの強い関連が示唆されている文献18),19),20)。またヨーロッパ系やアジア系の男女
多数を対象とした研究[Diabetes Epidemiology: Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Europe(DECODE)試験、Diabetes Epidemiology: Collaborative Analysis of Diagnostic Criteria in Asia(DECODA)試験]は、糖負荷後血糖 2 時間値が心血管疾患の死亡率や全死亡率のよ り優れた予測因子であることを明らかにした文献21),22)。糖尿病ではないが食後高血糖状態を 示すIGT 群は正常群より心血管疾患や脳血管障害の発現リスクが高くなるという結果が報 告されており文献23)、国内でもIGT 群は正常群よりも脳血管障害を発症する頻度が明らかに 高かったことが報告されている文献24)。更に食後高血糖は既知の心血管疾患マーカーである 酸化ストレス文献25)、頚動脈の内膜中膜肥厚文献26)及び内皮機能不全文献27),28)を引き起こすこ とが示されている。このように食後高血糖は、心筋梗塞等の虚血性心疾患、脳梗塞等の脳 血管障害の危険因子であり、2007 年に IDF より発表された食後血糖値の管理に関するガイ
ドライン(Guideline for management of postmeal glucose)では食後高血糖は大血管疾患の独 立した危険因子であると述べられている文献29)。
糖尿病は、単なる代謝疾患でなく、細小血管症や大血管疾患の合併症の発症により、糖 尿病患者の日常生活の質(quality of life; QOL)を著しく損なう。また、厚生労働省が発表
した平成20 年人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、糖尿病による 1 年間の死亡 者数は、全死因の 1.3%に当たる 14446 人であった文献30)。以上のことから、糖尿病を適切 に治療することは重要であると考えられる。 2.5.1.2 2 型糖尿病の治療 糖尿病による代謝異常は、時として死に至るような心筋梗塞等の大血管疾患及び糖尿病 網膜症や糖尿病腎症等の細小血管症の合併症を引き起こすことから、糖尿病の早期発見及 び早期治療が重要である。また日本糖尿病学会は、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイド ラインで「糖尿病治療の目標は、糖尿病症状を除くことはもとより、糖尿病に特徴的な合 併症、糖尿病に併発しやすい合併症の発症、増悪を防ぎ、健康人と同様な日常生活の質 (QOL)を保ち、健康人と変わらない寿命を全うすることにある」文献1)として、代謝異常 の改善だけが治療目標ではないことを明確にしている。
2 型糖尿病の治療は病態や代謝異常の程度によって異なるが、十分な食事療法・運動療 法を2~3 ヵ月行っても良好な血糖コントロールが得られない場合、経口血糖降下剤又はイ ンスリンによる治療を開始する。代謝異常の程度によっては、治療開始時からインスリン や経口血糖降下剤の薬物療法を食事療法・運動療法に加えて実施する。 2 型糖尿病に対する経口血糖降下剤としては、現時点では表 2.5.1-1 で示すような薬剤が あり、インスリン作用の不足を是正する目的で様々なアプローチがなされている。 表 2.5.1-1 経口血糖降下剤の種類と特徴 種類 一般名 主な効果 特徴的な副作用 速 効 型 インス リン 分泌促進剤 ナテグリニド ミチグリニドカルシウ ム水和物 SU 受容体に結合し、服用後短 時間で血糖降下作用を示す SU 剤と比較し吸収及び血中 からの消失が速く、効果の持 続時間が短い 食後高血糖を改善する 低血糖 ス ル ホ ニルウ レア 剤(SU 剤) グリベンクラミド グリクラジド グリメピリド 等 SU 受容体に結合し、インスリ ン分泌を促進し、血糖降下作 用を示す 低血糖(重篤かつ遷延性 低血糖) 体重増加 α- グ ル コ シ ダ ー ゼ 阻害剤(α-GI 剤) アカルボース ボグリボース ミグリトール 腸管での糖分解を抑制し吸収 を遅らせる 食後高血糖を抑制する 腹部膨満感、放屁の増加、 下痢等 重篤な肝機能障害 ビグアナイド剤 メトホルミン塩酸塩 ブホルミン塩酸塩 肝臓での糖新生抑制が主であ るが、その他、消化管からの 糖吸収抑制、末梢組織でのイ ンスリン感受性の改善等によ り、血糖降下作用を示す 乳酸アシドーシス 胃腸障害 チアゾリジン剤 ピオグリタゾン塩酸塩 インスリン抵抗性の改善を介 して血糖降下作用を示す 心不全 浮腫、貧血 血清 LDH、血清 CPK の 上昇 体重増加 経口血糖降下剤による治療は、各々の薬物作用の特性や副作用を考慮に入れながら個々 の糖尿病患者の病態に応じて使い分けられ、単剤での治療から開始される。単剤で血糖コ ントロールが不十分な場合には、食事療法・運動療法の徹底を図り、作用機序の異なる経 口血糖降下剤を併用するか、インスリンへの切り替え又は併用による治療を行う。また、 単剤で良好な血糖コントロールが得られた患者でも次第に血糖コントロールが不良になる 場合があり、その場合も他の経口血糖降下剤との併用やインスリンへの切り替え又は併用 を行う場合がある。作用機序の異なる経口血糖降下剤の併用療法は、種々の組み合わせで 血糖コントロール改善作用が認められている文献1)。 現在国内で最も広く使用されているインスリン分泌促進剤であるスルホニルウレア剤 (SU 剤)は作用が持続的であることから、インスリンの基礎分泌を促進し空腹時血糖値
を低下させ、HbA1C値を低下させるものの、食後早期のインスリン分泌促進は不十分であ り、食後血糖推移改善効果はあまり期待できない。またSU 剤には低血糖の発現のリスク、 肥満の誘発及び長期間使用による2 次無効等の問題もある。α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI 剤)は、糖質の消化及び吸収を遅延させ食後血糖推移を改善する薬剤であるが、その作用 は主に糖吸収の遅延であるためHbA1C値の改善効果は小さい。また α-GI 剤特有の副作用 である放屁の増加、下痢等の消化器症状の問題もある。ビグアナイド剤は肝臓の糖新生を 抑制することにより、またチアゾリジン剤は末梢組織のインスリン抵抗性を改善すること によりHbA1C値を低下させるが、食後早期のインスリン分泌促進作用は認められず、投与 直後の速やかな食後血糖推移改善効果は期待できない。また、ビグアナイド剤は乳酸アシ ドーシスや胃腸障害、チアゾリジン剤は浮腫や体重増加、心不全などの副作用が懸念され ている。 速効型インスリン分泌促進剤は、食後早期のインスリン分泌を促進し、食後血糖推移を 改善する。しかしながら副作用として低血糖の発現がある。また既存の速効型インスリン 分泌促進剤(ナテグリニド及びミチグリニド)では、12 週間の二重盲検比較試験で、ナテ グリニド(90 mg/回)は投与開始前からの HbA1C値を0.77%低下させ文献31)、ミチグリニド (10 mg/回)は 0.35%低下させた文献32)。これらのHbA1C値の改善効果はSU 剤ほど大きく ないとされている文献1)。 食後早期のインスリン分泌を促進することで食後血糖推移を改善し、同時にHbA1C値を 顕著に改善する薬剤は、糖尿病の進行を抑制するだけでなく糖尿病合併症の発症抑制、す なわち食後血糖推移の改善から大血管症の発症を抑制し、HbA1C値の改善から細小血管症 の発症を抑制する可能性があることから、臨床的に非常に有用な糖尿病治療剤であると考 えられる。しかしながら既存の薬剤の中で、単剤でこれらを十分に満足させる薬剤はまだ ない。 2.5.1.3 本剤の開発意義
本剤は、Dr. Karl Thomae GmbH 社(Boehringer Ingelheim 社の系列会社)で 1985 年に見 出された速効型インスリン分泌促進剤である。19 年にNovo Nordisk 社(デンマーク)に 引き継がれて世界的に臨床開発が行われ、米国では1997 年に、欧州では 1998 年に食事療 法と運動療法で十分に血糖コントロールできない2 型糖尿病を適応として、欧米では 1 日 16 mg までの用量で承認され、現在、世界主要国を含む 90 ヵ国以上で承認、販売されてい る。 速効型インスリン分泌促進剤は、SU 剤と同様に、膵 β 細胞 SU 受容体に結合し、ATP 感 受性カリウムチャネルを閉鎖することにより脱分極がおこり、Ca2+イオンが細胞内に流入 しインスリン分泌を促進するという作用メカニズムを有している(2.6.2.1.1 (2) 参照)。し かしながら、SU 剤と異なり作用時間が短く、効果の消失も早いことが特徴である。 本剤は、国内で市販されている速効型インスリン分泌促進剤であるナテグリニドと同様 に服用後短時間でインスリン分泌を促進する薬剤である。in vitro 試験の結果では、本剤は
ナテグリニドに比べてより低濃度で受容体に作用し、インスリン分泌作用が強い文献33)とい う結果が得られている。in vivo 試験の結果では、本剤の方がナテグリニドに比べて低用量 で同程度の血糖上昇抑制作用を示した。その際、両剤とも投与30 分後の血漿インスリン値 を増加させ、投与60~180 分後に血糖降下作用を示した(2.6.2.2.1 (5) 参照)。また両剤で SU 受容体上の結合部位が異なることが示唆されている(2.6.2.2.2 (5) 参照)。 海外で実施された本剤とナテグリニドの比較試験からは、健康成人における薬物動態は ほぼ同様であるものの、本剤のインスリン分泌作用の方がより長時間持続すること文献34)、 食事療法・運動療法にて治療中の2 型糖尿病患者に対して、食後血糖値はほぼ同程度の改 善であったが、HbA1C値及び空腹時血糖値は本剤の方がナテグリニドに比べて有意に改善 すること文献35)、メトホルミン塩酸塩と併用した場合、ナテグリニドに比べて本剤の方が HbA1C値及び空腹時血糖値の有意な改善作用を示すこと文献36)が報告されている。 以上のことから、本剤は、食後血糖推移を改善すると共にHbA1C値を十分に下げること が期待でき、既存の速効型インスリン分泌促進剤より優れた薬剤になる可能性が示唆され、 本剤を医療現場に供給することは日本人2 型糖尿病患者の治療に対する臨床的意義が大き いと考えられた。 2.5.1.4 臨床開発の経緯 国内では、19 年からノボ ノルディスク ファーマ社(以下、ノボ社)によって臨床開 発が開始され、その後2004 年より住友製薬株式会社(現、大日本住友製薬株式会社)が本 剤の開発を引き継いだ。 2.5.1.4.1 ノボ社での開発の経緯 ノボ社では、本剤の速やかなインスリン分泌促進作用、短時間の血糖降下作用といった 薬理的特徴を踏まえ、空腹時の基礎インスリン分泌は正常であるが、食後のインスリン追 加分泌が遅延する比較的軽症の2 型糖尿病患者を対象として臨床試験を進めた。参考後期 第2 相試験(AGEE/DCD/051/J、資料5.3.5.1.3)では、食事療法・運動療法で十分な血糖コ ントロールが得られない2 型糖尿病患者又は経口血糖降下剤で治療中の 2 型糖尿病患者を 対象として、食後血糖値、空腹時血糖値、HbA1C値のいずれの評価項目もプラセボ群に比 べて有意に低下することが示され、軽症の2 型糖尿病患者では、1 回 0.5 mg、1 日 3 回食 直前投与が本剤の至適用法・用量と考えられた。同じ対象患者で実施された参考長期投与 試験(1)(AGEE/DCD/075/J、資料5.3.5.2.3)は、本剤の用法・用量を1 回 0.25~0.5 mg、 1 日 3 回食直前投与、評価期間を 48 週間として実施された。その結果、食事療法・運動療 法のみの患者又はα-GI 剤で治療していた患者では、HbA1C値、空腹時血糖値、食後血糖値 いずれも改善したが、SU 剤で治療していた患者では改善しなかった。 その後、ノボ社では先行する海外臨床試験成績及び海外における承認状況から、本剤は より高用量を用いることにより、比較的重症の糖尿病患者に対しても薬効が期待できると 判断し、参考第3 相試験(AGEE-1116、資料5.3.5.1.8)ではSU 剤(グリベンクラミド又は
グリクラジド)による治療を受けていた2 型糖尿病患者を対象に、グリクラジドを対照と した二重盲検比較試験を実施した。その結果、両投与群共にHbA1C値、空腹時血糖値及び 食後血糖値のいずれの血糖パラメータに対する改善効果も認められなかった。また、有害 事象発現割合は両投与群でほぼ同程度であったものの、低血糖症状の発現割合はグリクラ ジド投与群と比較して、本剤投与群では約2 倍であった。参考長期投与試験(2)(AGEE-1120、 資料5.3.5.2.4)は SU 剤にて治療されていた 2 型糖尿病患者を対象とし、用法・用量は 1 回0.5~4 mg、1 日 3 回食前投与とされたが、いずれの血糖パラメータも改善しなかった。 ノボ社は国内で実施した臨床試験成績により、20 年 月 日に「2 型糖尿病患者(た だし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る)」を効能・効果(案) として輸入承認申請を行った。しかしながら、承認審査における照会事項等を検討した結 果、20 年 月 日に本剤の輸入承認申請を取り下げた。 2.5.1.4.2 ノボ社から開発を引き継いだ経緯 国内で実施された48 週間投与の参考長期投与試験(1)で、本剤は食事療法・運動療法 で治療されていた2 型糖尿病患者に対し、HbA1C値を0.77%改善し、また α-GI 剤から切り 替えた患者においても0.58%の改善を示した。安全性は、24 週間投与の参考第 3 相試験、 48 週間投与の参考長期投与試験(1)及び参考長期投与試験(2)で 574 名に対し 0.25 mg/ 回(0.75 mg/日)から最大 4 mg/回(12 mg/日)までの用量を用いた投与実績があり、臨床 上特に問題となる所見は認められなかった。低血糖症状は51 名(8.9%)、153 件報告され ているが、ほとんどの症状は軽度であり、第三者の介助やグルコース静脈内投与を必要と する重度の低血糖の発現、重度の遷延性低血糖、夜間低血糖は報告されなかった。 これらの結果と海外で実施された本剤とナテグリニドの比較試験文献35),36)から、本剤は安 全性に問題なく、同様の薬効を有するナテグリニドと比較して食後血糖推移は同等で、 HbA1C値及び空腹時血糖値はより強い改善作用を有する可能性が示唆され、食後血糖推移 の改善に加えてHbA1C値と空腹時血糖値を単剤で強く改善する新たな薬剤として、2 型糖 尿病患者の治療に有効であることが期待された。また実際の医療現場においては、作用機 序の異なる糖尿病治療薬の併用療法が行われている。速効型インスリン分泌促進剤と作用 機序の異なるα-GI 剤との併用はいずれも食後血糖推移の改善を目的とし、相加的な血糖コ ントロールの改善効果が期待できることから、本剤も α-GI 剤と併用することにより α-GI 剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合にも食後血糖推移やHbA1C値の改善 が得られる可能性があると考えられた。以上のことから、効能・効果としては海外での承 認内容やノボ社が国内で申請した効能・効果とは異なるが、当社が本剤の開発を引き継い だ当時のナテグリニドと同様の「2 型糖尿病における食後血糖推移の改善(ただし、食事 療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療 法に加えてα-GI 剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)」として、 本剤を国内で開発することとした。
2.5.1.4.3 当社での開発の経緯 以上の経緯から、住友製薬株式会社(現、大日本住友製薬株式会社)では、ノボ社より 本剤の開発を引き継ぎ、国内における当該効能・効果の取得を目指すこととし、ノボ社で 得られた臨床試験成績を活用しつつ、1)食事療法・運動療法(以下、単剤療法)で十分な 効果が得られない2 型糖尿病患者及び 2)食事療法・運動療法に加えて α-GI 剤(以下、α-GI 剤併用療法)にて十分な効果が得られない2 型糖尿病患者を対象とした新たな臨床試験を 追加実施することを計画した。 1) 単剤療法 食事療法・運動療法にて十分な効果が得られない2 型糖尿病患者を対象として、 以下の試験を実施した。 臨床試験の開始に先立ち、平成 (20 )年 月 日に医薬品副作用被害救済・ 研究振興調査機構との治験相談(# 、資料1.13.2)を実施し、その結果を踏まえ て 、 安 全 管 理 が 比 較 的 容 易 な 入 院 患 者 を 対 象 と し て 実 施 し た 臨 床 薬 理 試 験 (D4101005、資料5.3.4.2.1)で、1 mg/回、1 日 3 回 5 日間反復投与時の忍容性及び 本剤の薬力学的特性を確認した。 次にプラセボ群を対照として、本剤0.25 mg/回、0.5 mg/回、1 mg/回を 1 日 3 回 12 週間投与時の有効性に関する用量反応性及び安全性を検討する単剤後期第2 相試験 (D4101043、資料5.3.5.1.1)を実施した。その結果、本剤0.25~1 mg/回までの投与 量における有効性及び安全性が確認された。 この試験の結果から、本剤の中心用量と確認された0.5 mg/回を用いた臨床薬理試 験(D4101048、資料5.3.4.2.2)を実施し、0.5 mg/回の単回投与時の忍容性及び本剤 の薬力学的特性を確認した。 その後、独立行政法人医薬品医療機器総合機構との対面助言(# 、資料1.13.2) を平成 (20 )年 月 日に実施し、その結果を踏まえて、以下の単剤療法の 試験については、主要評価項目をHbA1C値として臨床試験を実施することとした。 まず、長期投与時における安全性及び有効性を検討する単剤長期投与試験 (D4101059、資料5.3.5.2.1)を実施した。その結果、本剤の長期投与による有効性 及び安全性が確認された。 次に本剤の臨床的位置付けを明確にするために、既にその臨床的有用性及び安全 性が確立されているナテグリニドを対照として二重盲検、並行群間比較により有効 性及び安全性を検討する単剤実薬対照比較試験(D4101045、資料5.3.5.1.7)を実施 した。その結果、主要評価項目のHbA1C値は、ナテグリニドと比較して有意に低下 し、本剤のナテグリニドに対する優越性が検証された。 2) α-GI 剤併用療法 食事療法・運動療法に加えてα-GI 剤にて十分な効果が得られない 2 型糖尿病患者
を対象として、以下の試験を実施した。 まず初めに治験相談(# 、資料1.13.2)の結果を受けて、無対照で本剤0.25 mg/ 回、0.5 mg/回、1 mg/回を 1 日 3 回 8 週間投与時の有効性及び安全性を探索的に検討 するα-GI 剤併用前期第 2 相試験(D4101006、資料5.3.5.1.4)を実施した。その結果、 本剤の当該用量におけるα-GI 剤併用での有効性と安全性が確認された。 次にα-GI 剤併用前期第 2 相試験での用量にプラセボ群を加え、12 週間投与時の 本剤の有効性に関する用量反応性及び安全性を検討するα-GI 剤併用後期第 2 相試験 (D4101049、資料5.3.5.1.2)を実施した。その結果、本剤0.25~1 mg/回までの有効 性及び安全性が確認された。 α-GI 剤併用後期第 2 相試験の継続投与試験として長期投与時の安全性及び有効性 を検討するα-GI 剤併用長期投与試験(D4101050、資料5.3.5.2.2)を実施した。その 結果、長期投与による有効性及び安全性が確認された。 以上のように単剤療法でもα-GI 剤併用療法でも、本剤の臨床上の有用性及び安全性が確 認され、「2 型糖尿病における食後血糖推移の改善[ただし、下記のいずれかの治療で十分 な効果が得られない場合に限る。(1)食事療法・運動療法のみ(2)食事療法・運動療法に 加えてα-GI 剤を使用]」を効能・効果とすることが適切であることを確認した。 2.5.1.5 臨床試験パッケージ 評価資料とした国内外のすべての臨床試験を表 2.5.1-2 に示した。なお、すべての国内 臨床試験はGCP 省令及び関連通知を遵守して実施した。また、参考資料として用いた臨床 試験を表 2.5.1-3 に示した。 なお、評価資料のうち、第1 相試験及び BE 試験はノボ社で実施され、BA 試験、高齢者
PK 試験、腎障害患者 PK 試験、肝障害患者 PK 試験及びすべての DDI 試験は Novo Nordisk 社で実施された。また、参考資料のうち、空腹時単回投与試験、参考パイロット試験、参
考前期第2 相試験、参考後期第 2 相試験、参考第 3 相試験、参考長期投与試験(1)、参考
長期投与試験(2)及び 0.5 mg 錠と 1 mg 錠の BE 試験はノボ社で実施され、その他の試験 はNovo Nordisk 社で実施された。
表 2.5.1-2 臨床試験一覧(評価資料) 試験番号 試験の略名 試験デザイン、対照の 種類 対象 添 付 資 料 番号 AGEE/DCD/058/J 単回投与試験 (0.25~2 mg) 単盲検、無作為割付、 プラセボ対照 健康成人、男性 5.3.3.1.1 AGEE/DCD/045/J 単回投与試験 (3 mg) 単盲検、無作為割付、 プラセボ対照 健康成人、男性 5.3.3.1.2 AGEE/DCD/060/J 反復投与試験 (1 日 1 回 5 日間) 単盲検、無作為割付、 プラセボ対照 健康成人、男性 5.3.3.1.4 AGEE/DCD/043/J 反復投与試験 (1 日 3 回 1 日間) 単盲検、無作為割付、 プラセボ対照 健康成人、男性 5.3.3.1.5 AGEE/DCD/044/J 反復投与試験 (1 日 3 回 5 日間) 単盲検、無作為割付、 プラセボ対照 健康成人、男性 5.3.3.1.6 第1 相 試験 AGEE/DCD/061/J 食事の影響試験 非盲検、無作為割付、 2 期クロスオーバー 健康成人、男性 5.3.3.4.1 D4101043 単剤 後期第2 相試験 二 重 盲 検 、 無 作 為 割 付、並行群間比較、プ ラセボ対照 2 型糖尿病患者 5.3.5.1.1 D4101006 α-GI 剤併用 前期第2 相試験 無対照 2 型糖尿病患者 5.3.5.1.4 第2 相 試験 D4101049 α-GI 剤併用 後期第2 相試験 二 重 盲 検 、 無 作 為 割 付、並行群間比較、プ ラセボ対照 2 型糖尿病患者 5.3.5.1.2 第3 相 試験 D4101045 単剤 実薬対照比較試験 二 重 盲 検 、 無 作 為 割 付、並行群間比較、実 薬対照 2 型糖尿病患者 5.3.5.1.7 D4101059 単剤 長期投与試験 漸増漸減法、無対照 2 型糖尿病患者 5.3.5.2.1 長 期 投 与 試験 D4101050 α-GI 剤併用 長期投与試験 漸増漸減法、無対照 2 型糖尿病患者 5.3.5.2.2 BA 試験 AGEE/DCD/072/D BA 試験 非盲検、無作為割付、 2 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 男性 5.3.1.1.1 D4101005 PK/PD 試験(1 mg/回) 無対照 2 型糖尿病患者 5.3.4.2.1 D4101048 PK/PD 試験(0.5 mg/回) 無対照 2 型糖尿病患者 5.3.4.2.2 AGEE/DCD/057/USA 高齢者 PK 試験 非盲検、並行群間比較 健康成人(海外)、 健 康 高 齢 者 ( 海 外)、2 型糖尿病高 齢者(海外) 5.3.3.3.1 AGEE/DCD/083/D 腎障害患者PK 試験 非盲検、並行群間比較 2 型糖尿病患者(海 外) 5.3.3.3.2 AGEE/DCD/056/D 肝障害患者PK 試験 非盲検、並行群間比較 慢 性 肝 疾 患 患 者 (海外)、健康成人 (海外) 5.3.3.3.3 AGEE/DCD/066/NL DDI 試験 (シメチジン) 非盲検、無作為割付、 2 期クロスオーバー 健康成人(海外) 5.3.3.4.2 臨 床 薬 理 試験 AGEE/DCD/067/NL DDI 試験 (ジゴキシン) 非盲検、無作為割付、 2 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 男性 5.3.3.4.3
表 2.5.1-2 臨床試験一覧(評価資料)(続き) 試験番号 試験の略名 試験デザイン、対照の 種類 対象 添 付 資 料 番号 AGEE/DCD/068/D DDI 試験 (テオフィリン) 非盲検、無作為割付、2 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 男性 5.3.3.4.4 AGEE/DCD/069/USA DDI 試験 (ワルファリン) 二重盲検、無作為割付、 並行群間比較、プラセ ボ対照 健康成人(海外)、 男性 5.3.3.4.5 AGEE-1057 DDI 試験 (ケトコナゾール) 非盲検、無作為割付、2 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 男性 5.3.3.4.6 AGEE-1058 DDI 試験 (リファンピシン) 非盲検、無作為割付、2 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 男性 5.3.3.4.7 AGEE-1059 DDI 試験 (経口避妊薬) 非盲検、無作為割付、3 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 女性 5.3.3.4.8 AGEE-1060 DDI 試験 (シンバスタチン) 非盲検、無作為割付、3 期クロスオーバー 健康成人(海外)、 男性 5.3.3.4.9 臨 床 薬 理 試験 AGEE-1061 DDI 試験 (ニフェジピン) 非盲検、無作為割付、3 期クロスオーバー 健康成人(海外) 5.3.3.4.10 BE 試験 AGEE/DCD/078/J 0.25 mg 錠と 0.5 mg 錠 のBE 試験 非盲検、層別無作為割 付、2 期クロスオーバー 健康成人、男性 5.3.1.2.1
表 2.5.1-3 臨床試験一覧(参考資料) 試験番号 試験の略号 試験デザイン、対照の種類 対象 添付資料番号 AGEE/DCD/059/J 空腹時単回投与試験 単盲検、無作為割付、プラセ ボ対照 健康成人、男性 5.3.3.1.3 AGEE/DCD/073/J 参考パイロット試験 無対照 インスリン非依存型糖 尿病(NIDDM)患者 5.3.5.1.5 AGEE/DCD/029/J 参考前期第2 相試験 非盲検、並行群間比較 インスリン非依存型糖 尿病(NIDDM)患者 5.3.5.1.6 AGEE/DCD/051/J 参考後期第2 相試験 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、プラセボ対照 インスリン非依存型糖 尿病(NIDDM)患者 5.3.5.1.3 AGEE-1116 参考第3 相試験 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、実薬対照 インスリン非依存型糖 尿病(NIDDM)患者 5.3.5.1.8 AGEE/DCD/075/J 参考長期投与試験(1) 無対照 インスリン非依存型糖 尿病(NIDDM)患者 5.3.5.2.3 AGEE-1120 参考長期投与試験(2) 無対照 インスリン非依存型糖 尿病(NIDDM)患者 5.3.5.2.4 AGEE-1096 腎障害患者治療試験 非盲検、並行群間比較 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.5.4.1 AGEE-1263 代謝物同定試験 非盲検 健康成人(外国人、日 本人)、男性 5.3.3.1.7 AGEE/DCD/064/USA 海外PK/PD 試験 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、プラセボ対照 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.3.3.5 AGEE-1366 日本人と白人のPK 比 較試験 非盲検、無作為割付、3 期ク ロスオーバー 健康成人(外国人、日 本人)、男性 5.3.3.3.4 AGEE-1160 0.5 mg 錠と 1 mg 錠の BE 試験 非盲検、層別無作為割付、2 期クロスオーバー 健康成人、男性 5.3.1.2.2 AGEE/DCD/048/DK/ N/S/SF 海外実薬対照長期投 与試験(1) 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、実薬対照 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.5.1.9 AGEE/DCD/049/USA 海外実薬対照長期投 与試験(2) 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、実薬対照 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.5.1.10 AGEE/DCD/046/UK 海外実薬対照長期投 与試験(3) 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、実薬対照 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.5.1.11 AGEE/DCD/050/D/NL 海外実薬対照長期投 与試験(4) 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、実薬対照 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.5.1.12 AGEE/DCD/047/B/F/I 海外実薬対照長期投 与試験(5) 二重盲検、無作為割付、並行 群間比較、実薬対照 2 型糖尿病患者(海外) 5.3.5.1.13
2.5.1.6 治験相談及び対面助言の要約 当社の開発段階における医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構との治験相談、及び 独立行政法人医薬品医療機器総合機構との対面助言はそれぞれ1 回ずつ実施した。治験相 談は平成 (20 )年 月 日に実施し、対面助言は平成 (20 )年 月 日に実施 した。各々の相談内容の要約を以下に示し、相談記録は資料1.13.2に添付した。 (1) 治験相談[# 、平成 (20 )年 月 日]の要約 1) の妥当性について 第 相試験を ことを提 案したところ、 と了解を得た。 長期投与時の安全性・有効性を確認する試験は、 ことを提案したが、 との助言を踏まえて、新たに α-GI 剤併用長期投与試験を実施することとした。 また、 であったが、 との助言を踏まえて、9 つの薬物相互作用試 験、高齢者PK 試験、腎障害患者 PK 試験及び肝障害患者 PK 試験を評価資料とした。 なお、 場合は、 ことで了解を得た。 2) 第 相試験及び 試験の の妥当性について ことを提案したが、被験者の安全性 を重視し、 との助言を得た。そのため、2 型糖尿病患者を対象とした PK/PD 試験(1 mg/ 回)を実施し、1 回 1 mg、1 日 3 回反復投与時の安全性及び本剤の薬物動態学的特 性並びに薬力学的特性を確認したうえで、単剤後期第2 相試験を実施することとし た。その際、 との助言を踏まえて、 が、本剤による低血糖関連の 有害事象の発現が懸念されるため、被験者の安全性をより配慮する目的で した。また、 との助 言を踏まえて、2 型糖尿病患者を対象とした PK/PD 試験(0.5 mg/回)を実施し、0.5 mg を単回投与したときの本剤の薬物動態学的特性及び薬力学的特性を検討した。
3) の妥当性について を提案し たが、 との助言を踏まえて、α-GI 剤と本剤の併用時の有効性、安全性及び用量反応性を探索的に検討するためのα-GI 剤併用前期第2 相試験を実施することとした。 4) 第 相試験 の妥当性について 第 相試験の を提案したが、 との助言を踏まえて、 こととした。 (2) 対面助言[# 、平成 (20 )年 月 日]の要約 1) 第 相試験 の妥当性について 主に を相談し、 との助言を踏まえて、主要評価項目を HbA1C値とした。 ことで了解を得た。 2) の妥当性について を中心に相談し、 との助言を踏まえて、単剤長期投与試 験を実施することとした。また、 との助言を受け、 実施することとした。なお、 ことで了解を得た。 また、 ことで 了解を得た。更に ことで了 解を得た。
2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 2.5.2.1 生物学的同等性 本剤の製造販売承認申請製剤は0.25 mg 錠(淡赤色素錠)及び 0.5 mg 錠(白色素錠)で ある。 評 価 資 料 と し た 臨 床 試 験 の う ち 、 国 内 で 実 施 し た 単 回 投 与 試 験 (3 mg ) (AGEE/DCD/045/J)、反復投与試験(1 日 3 回 1 日間)(AGEE/DCD/043/J)及び反復投与 試験(1 日 3 回 5 日間)(AGEE/DCD/044/J)では、1 mg 錠(白色素錠)を用いた。国内で 実施したその他の臨床試験では、0.25 mg 錠(白色素錠)及び 0.5 mg 錠(白色素錠)を用 いた。また、薬物相互作用試験など海外で実施した臨床薬理試験では、2 mg 錠(赤褐色素 錠)を用いた。 生物薬剤学に関する臨床試験として、0.25 mg 錠(白色素錠)と 0.5 mg 錠の BE 試験 (AGEE/DCD/078/J)及び 0.5 mg 錠と 1 mg 錠(黄色素錠)の BE 試験(AGEE-1160:参考 資料)、BA 試験(AGEE/DCD/072/D)及び食事の影響試験(AGEE/DCD/061/J)を実施した。 また、臨床試験に使用した0.25 mg 錠(白色素錠)と申請製剤である 0.25 mg 錠(淡赤色 素錠)の溶出挙動の類似性を比較検討した。 BE 試験では、0.25 mg 錠(白色素錠)と 0.5 mg 錠は生物学的に同等であると判断された。 0.5 mg 錠と 1 mg 錠の BE 試験では、血中レパグリニド濃度の AUC0-8hは判定基準を満たし たものの、Cmaxは基準を満たさなかった。しかしCmaxの平均値の比が 106.8%であること から、1 mg 錠を用いた臨床試験成績を薬物動態の評価に用いることについて、問題ないと 判断した。また臨床試験に使用した0.25 mg 錠(白色素錠)と申請製剤である 0.25 mg 錠 (淡赤色素錠)は生物学的に同等であると判定した。 2.5.2.2 生物学的利用率 本剤の生物学的利用率は62.5%であった。 2.5.2.3 食事の影響 本剤1 mg を食直前(食事開始直前)及び食後(食事開始 20 分後)に投与した時の血漿 中濃度推移を比較して食事の影響を検討したところ、食後投与では、食直前投与に比べCmax の低下及び Tmaxの延長が認められた。しかし、AUC は両投与条件で同様な値であること から、食事により本剤の吸収は遅延するものの、吸収量に差はないと考えられた。 また国内において健康成人に本剤を食直前(食事開始直前)(AGEE/DCD/058/J 及び AGEE/DCD/044/J)に投与した場合と、2 型糖尿病患者に食直前(10 分)(D4101005、D4101048 及びD4101006)に投与した場合で、薬物動態パラメータに差がみられなかったことから、 食事開始10 分から食事開始直前までの間に本剤を投与した場合、同様の血中レパグリニド 濃度推移を示すと考えられた。 なお、食直前(食事開始直前)投与(AGEE/DCD/058/J)と空腹時投与(AGEE/DCD/059/J) では類似した薬物動態パラメータを示すと考えられた。
2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 2.5.3.1 薬物動態 2.5.3.1.1 健康成人における薬物動態 (1) 単回投与時の薬物動態 国内において、本剤0.25~3 mg を食直前(食事開始直前)に単回経口投与した場合、血 中レパグリニド濃度のCmax及びAUC は投与量の増加に伴い上昇及び増加し、0.25~3 mg において、本剤の薬物動態は線形であることが確認された。申請用量である 0.25~1 mg/ 回において、単回投与後の血中レパグリニド濃度は、投与量に関わらず同様のTmax (中央 値:30 分)で速やかに Cmaxに達し、t1/2 45.4~66.5 分で速やかに消失することが確認され た(2.7.2.2.2.1(1)参照)。 表 2.5.3-1 単回投与試験での薬物動態パラメータ
投与量 AUC(ng·hr/mL) Cmax(ng/mL) Tmax(min) t1/2(min)
0.25 mg(n=6) 7.5±0.9 6.8±1.8 62.5±87.2(30) 46.4±12.6 0.5 mg(n=6) 15.3±4.4 13.6±6.7 27.5±6.1(30) 45.4±8.3 1 mg(n=6) 31.5±12.0 27.7±8.8 25.0±7.7(30) 66.5±17.4 2 mg(n=6) 76.8±44.3 66.7±23.3 30.0±0.0(30) 99.9±41.5 3 mg(n=6) 91.4±10.5 86.7±19.8 27.5±6.1 140.3±68.8 平均値±標準偏差、Tmax:平均値±標準偏差(中央値)、3 mg は平均値±標準偏差 (2) 反復投与時の薬物動態 国内において、本剤1 mg/回及び 2 mg/回を食直前(食事開始直前)に 1 日 3 回 5 日間反 復投与した場合、両用量共に投与初日と投与 5 日目の血中レパグリニド濃度の Cmax及び AUC は同様であり、蓄積性がないことが確認された。また、Tmaxやt1/2も投与初日と投与 5 日目で同様の値を示し、反復投与で変化することはなかった。更に、反復投与でも血中 レパグリニド濃度のCmax及びAUC は用量の増加に応じて上昇及び増加した(2.7.2.2.2.1(2) 参照)。 表 2.5.3-2 反復投与試験(1 日 3 回 5 日間)での薬物動態パラメータ
投与量 時期 AUC(ng·hr/mL) Cmax(ng/mL) Tmax(min) t1/2(min)
投与初日 32.2±13.5 37.5±18.4 25.0±7.7 69.5±17.5 1 mg/回(n=6) 投与5 日目 28.5±7.9 37.3±12.9 27.5±6.1 60.9±13.4 投与初日 85.2±37.8 90.2±27.5 25.0±7.7 63.0±23.6 2 mg/回(n=6) 投与5 日目 81.9±42.4 95.7±51.9 25.0±7.7 53.9±6.2 平均値±標準偏差 表 2.7.2.2-4 再掲
(3) 吸収(生物学的利用率) 海外において、本剤 2 mg を空腹時経口投与あるいは点滴静脈内投与した結果、本剤の 経口投与時の生物学的利用率は62.5%であった(2.7.1.2.3参照)。 (4) 分布(たん白結合) ヒト血漿でのin vitro たん白結合率は 98.3~98.6%と高く、結合するたん白は主にアルブ ミンであると考えられた(2.6.4.4.2参照)。 (5) 代謝 ヒトCYP 発現系ミクロソーム、ヒト肝ミクロソーム及びヒト凍結肝細胞を用いた in vitro 代謝試験から、本剤の代謝にはCYP2C8 が主に関与し、一部 CYP3A4 も関与すると推察さ れた(2.6.4.5.3参照)。 海外において、14C-レパグリニド 2 mg を空腹時単回投与した場合、投与後 0.5 時間の血 清中放射能の85%以上が未変化体であったが、投与 3 時間後には未変化体の割合は血清中 放射能の約 35%となり、M10[M4(ピペリジン環水酸化体)のグルクロン酸抱合体](約 20%)及び M2(ジカルボン酸体)(約 8%)が認められた。また薬理活性を有する M5(フ ェノール体)及びM12(N-オキシド体)は血清には検出されなかった。尿及び糞中から未 変化体はほとんど検出されず、糞中の主要代謝物は、M2 であった(2.7.2.2.2.1(3)参照)。 (6) 排泄 海外において、14C-レパグリニド 2 mg を単回投与した場合、放射能量の尿中及び糞中の 回収率は、それぞれ約9.4%及び約 95%であった(2.7.2.2.2.1(3)参照)。 2.5.3.1.2 2 型糖尿病患者における薬物動態 国内において、健康成人あるいは食事療法・運動療法のみで治療中の2 型糖尿病患者に 対し本剤0.25~1 mg を食直前(食事開始直前、10 分あるいは 10 分以内)に投与した場合 の本剤の薬物動態パラメータを表 2.5.3-3 にまとめた。 健康成人と2 型糖尿病患者の薬物動態パラメータはほぼ同様であり、反復投与による蓄 積性もみられなかった。また、2 型糖尿病患者に本剤を単剤投与した時と本剤を α-GI 剤と 併用投与した時の薬物動態パラメータには差がみられなかった。 以上より、本剤を2 型糖尿病患者に単剤又は α-GI 剤を併用投与した場合も健康成人と同 様の血中レパグリニド濃度推移を示すと考えられた(2.7.2.3.1(4)参照)。
表 2.5.3-3 健康成人あるいは 2 型糖尿病患者の薬物動態パラメータ 被験者 投与量 (被験者 数) 投与日 数 (日) AUC (ng·hr/mL) Cmax (ng/mL) Tmax (min) t1/2 (min) 試験 0.25 mg (n=6) 1 7.5±0.9 6.8±1.8 62.5±87.2 46.4±12.6 (a) 0.5 mg (n=6) 1 15.3±4.4 13.6±6.7 27.5±6.1 45.4±8.3 (a) 1 mg(n=6) 1 31.5±12.0 27.7±8.8 25.0±7.7 66.5±17.4 (a) 1 mg(n=6) 1 32.2±13.5 37.5±18.4 25.0±7.7 69.5±17.5 (b) 健康成人 1 mg(n=6) 5 28.5±7.9 37.3±12.9 27.5±6.1 60.9±13.4 (b) 0.5 mg (n=6) 1 11.167±2.490 11.658±4.216 33.33±5.16 66.235±23.329 (c) 1 mg(n=6) 1 36.8±10.9 32.9±11.5 33.3±5.2 79.5±32.4 (d) 2 型 糖 尿 病患者 1 mg(n=6) 5 35.0± 7.0 31.9± 8.5 31.7±4.1 88.6±11.0 (d) 0.25 mg (n=6)(f) 8.79±2.12 6 28±1.68 37.17±13.67 52.32±6.40 (e) 0.5 mg (n=8)(g) 14.76±6.48 10.34±5.40 51.13±52 14 51.03±9.71 (e) 2 型 糖 尿 病患者 (α-GI 剤 併用) 1 mg (n=10) 50~63 33.43± 16.59 24.54± 8.98 34.50±8.77 56.05±16.17 (e) 平均値±標準偏差,健康成人:食直前(食事開始直前)投与、2 型糖尿病患者:食直前(10 分あるいは 10 分以内)投与 (a)単回投与試験(0.25~2 mg)(b)反復投与試験(1 日 3 回 5 日間)(c)PK/PD 試験(0.5 mg/回) (d)PK/PD 試験(1 mg/回)(e)α-GI 剤併用前期第 2 相試験(f)t1/2は5 名(g)t1/2は6 名 2.5.3.1.3 内因性要因 (1) 高齢者 海外において、本剤2 mg/回を食前 15 分に 1 日 3 回 9 日間反復投与(ただし、投与 1 日 目と9 日目は空腹時 1 日 1 回投与)した場合、健康高齢者では健康成人と比較して薬物動 態パラメータに差はみられなかった。一方、2 型糖尿病高齢患者では健康成人と比べて血 中レパグリニド濃度のAUC は 1 日目で 1.7 倍、9 日目で 2.4 倍、Cmaxは投与1 日目、9 日 目共に 1.2 倍であり、投与 9 日目の t1/2は健康成人の 1 時間から 1.7 時間に延長した (2.7.2.2.2.3(1)参照)。 以上のように、高齢者では健康成人と比較して血中レパグリニド濃度が高くなる傾向が 認められたが、高齢者と非高齢者で本剤投与により有害事象及び低血糖関連の有害事象の 発現割合に違いはみられなかった(2.5.5.4.2参照)。しかしながら、一般に高齢者では生理 機能が低下していることから、食事摂取量、血糖値及びHbA1C値に留意しながら用量を調 節し、経過を十分に観察しながら慎重に投与する必要があると考えられた。 (2) 肝障害患者 海外において、本剤 4 mg を空腹時に単回投与した場合、慢性肝疾患患者(カフェイン
クリアランスが0.8 mL/min/kg 未満の者)では、健康成人と比べて血中レパグリニド濃度の Cmaxが2.5 倍に上昇し、AUC が 4.3 倍に増加した。また t1/2は、慢性肝疾患患者10 名の中 央値は1.95 時間、2 名の健康成人では 0.6 及び 1.0 時間であり、慢性肝疾患患者で t1/2が延 長することが示唆された(2.7.2.2.2.3(2)参照)。 以上のように、肝機能障害患者では血中レパグリニド濃度が上昇する可能性が考えられ たこと、CCDS では肝機能障害患者には慎重に投与すべきとされていることから(2.5.5.4.3 参照)肝機能障害のある患者に対しては食事摂取量、血糖値及びHbA1C値に留意しながら 用量を調節し、経過を十分に観察しながら慎重に投与する必要があると考えられた。 (3) 腎障害患者 海外において、本剤2 mg/回を 2 型糖尿病患者に 1 日 3 回 5 日間食直前(食事開始直前、 ただし 1 日目と 5 日目は空腹時 1 日 1 回投与)反復投与した場合、軽中等度腎障害患者 (CLCR:40~80 mL/min)では、投与 1 日目、5 日目共にいずれの薬物動態パラメータも腎 機能正常患者[クレアチニンクリアランス(CLCR):>80 mL/min]との違いは認められな かった。一方重度腎障害患者(CLCR:20~39 mL/min)の薬物動態パラメータは、腎機能 正常患者と比べて血中レパグリニド濃度のCmaxは投与1 日目では同様な値であったが、5 日目には1.3 倍であり、AUC は投与 1 日目で 1.4 倍、5 日目で 1.7 倍であった。また投与 5 日目の t1/2 の中央値は、腎機能正常患者の 2.10 時間と比較して、4.83 時間に延長した (2.7.2.2.2.3(3)参照)。 国内2 型糖尿病患者対象試験では eGFR(mL/min/1.73 m2)が30 以上 60 未満、60 以上 90 未満、90 以上のカテゴリ別で安全性に大きな違いはみられず、海外の腎障害患者治療試 験で腎障害患者(CLCR:20 mL/min 以上)でも安全性に大きな問題はなかった(2.5.5.4.4参 照)。しかし、重度の腎機能障害者(CLCR:20~39 mL/min)では血中レパグリニド濃度が 上昇する可能性が考えられたこと、一般に慢性腎臓病ではインスリンの半減期が延長する ことから(2.5.5.4.4参照)、重度の腎機能障害のある患者に対しては食事摂取量、血糖値及 びHbA1C値に留意しながら用量を調節し、経過を十分に観察しながら慎重に投与する必要 があると考えられた。 (4) 性差の影響 国内において、2 型糖尿病患者に本剤 1 mg/回を食直前(10 分)1 日 3 回 5 日間反復投与、 あるいは本剤0.25 mg/回、0.5 mg/回、1 mg/回を 1 日 3 回食直前(10 分以内)1 日 3 回 8 週 間α-GI 剤と併用反復投与した時、血中レパグリニド濃度の Cmax及びAUC に大きな性差は ないと考えられた(2.7.2.2.2.3(4)参照)。
海外において、2 型糖尿病患者に本剤 0.25~2 mg/回を食前 15 分 1 日 3 回 4 週間反復投
与した場合の最終評価時のAUC0-24hの平均値は、男性より女性の方が高かったが、ばらつ
きが大きかったため明確な性差の比較はできなかった(2.7.2.2.2.3(4)参照)。
日3 回 9 日間反復投与(ただし投与 1 日目と 9 日目は空腹時 1 日 1 回投与)した場合の 9 日目のAUC0-24hは女性の方が高値を示したが、AUC を体重あたりの投与量で補正したとこ ろ、補正AUC0-24hに大きな性差は認められなかった(2.7.2.2.2.3(4)参照)。以上の結果から、 申請用量(0.25~1 mg/回)における薬物動態に大きな性差はないと判断した。 (5) 人種差比較 海外において、健康成人(日本人及び白人)に本剤0.5 mg、1 mg 及び 2 mg を空腹時単 回投与した場合、血中レパグリニド濃度のTmax及び t1/2は日本人及び白人共に同様の値で あった。CmaxとAUC0-tは日本人の方が高かったが、申請用量である0.5 mg 及び 1 mg では、 AUC は約 13%及び 17%、Cmaxはいずれの用量でも約17%日本人の方が高かった程度で、 両人種間に大きな違いはないと考えられた(2.7.2.3.1(3)参照)。 なお、体重(日本人65.73 kg、白人 70.15 kg)で補正した場合、0.5 mg 及び 1 mg では、 Cmax及びAUC の人種間の差は 10%以内であり、CmaxとAUC の差には体重の違いも影響し ていると考えられた(2.7.2.2.2.1(4)及び2.7.2.3.1(3)参照)。 以上の結果から、申請用量(0.25~1 mg/回)における薬物動態に、日本人と白人で大き な差はないと判断した。 2.5.3.1.4 外因性要因 (1) 食事の影響 国内において、健康成人に本剤1 mg を食直前(食事開始直前)及び食後(食事開始 20 分後)に投与した場合、食直前投与に比べ食後投与した時の AUC は同程度であったが、 食直前投与に比べて食後投与で血中レパグリニド濃度の Cmaxが低下し、Tmaxが延長した (2.7.1.2.4参照)。血清インスリン値は、食直前投与時には投与後45 分で最高値 100.1±42.5 µU/mL まで上昇し、食後投与時には投与後 15 分で最高値 64.0±41.3 µU/mL まで上昇した (2.7.2.2.2.4(1)参照)。 食後投与に比べて食直前投与の方が血清インスリン値の最高値が高かったことから、本 剤が有効に作用するためには食直前投与が適切であると考えられた。 また国内において健康成人に本剤を食直前(食事開始直前)投与した場合と2 型糖尿病 患者に食直前(10 分)投与した場合、薬物動態パラメータに差がみられなかったことから、 食事開始10 分前から食直前(食事開始直前)に本剤を投与した場合、血中レパグリニド濃 度は同様の推移を示すと考えられた。 なお、食直前投与と空腹時投与では類似した薬物動態パラメータを示すと考えられた (2.7.2.3.1(6)参照)。 (2) 薬物相互作用 たん白結合、代謝、トランスポーターにおける薬物相互作用について検討した。 本剤の投与において、4 mg/回での薬物動態は確認されていないものの、安全性評価参考
試験も踏まえると最高 4 mg/回まで安全性に大きな問題はないと考えられた(2.5.5.5.1 参 照)。なお、0.25~3 mg/回投与時の薬物動態の線形性が確認されている。 1) たん白結合における薬物相互作用 ヒト血清における本剤の結合たん白は主にアルブミンと考えられるが、本剤はin vitro の検討で、アルブミンの各結合サイトのプローブ基質(ワルファリン、ジアゼ パム及びジギトキシン)の血清たん白結合率に影響を与えなかった(2.6.4.7.1(1)参 照)。また、本剤とワルファリンの臨床薬物相互作用試験で、ワルファリンの薬物動 態は、本剤との併用によって影響を受けなかった(2.7.2.2.2.5(8)参照)。これらの結 果から、本剤はアルブミンを主結合たん白とする併用薬のたん白結合率に影響を与 えないと推察された。 本剤のたん白結合に対する他剤の影響について、ワルファリン、フロセミド、ト ルブタミド、ジアゼパム、グリベンクラミド又は塩酸ニカルジピン共存下in vitro で 検討したところ、ジアゼパム、グリベンクラミド及び塩酸ニカルジピンは、検討し たレパグリニド濃度範囲では本剤のたん白結合に影響を与えなかった。またワルフ ァリン、フロセミド、トルブタミド共存下では、本剤の添加濃度1 及び 100 µg/mL では血漿中非結合型レパグリニド濃度が有意に増加(約 20~40%)したが、0.01 µg/mL では有意な増加は認められなかった(2.6.4.7.1(2)参照)。本剤のPK/PD 試験(1 mg/回)での被験者別の最高血漿中濃度(0.053 µg/mL)(2.7.6.26.4参照)は、in vitro で血漿中非結合型レパグリニド濃度に影響が認められた濃度(1 及び 100 µg/mL)と 約20 倍及び 2000 倍の乖離があること、また影響を受けた場合でも、レパグリニド の非結合型濃度の上昇が最大40%程度であることから、他剤との併用によって本剤 のたん白結合が臨床的に意味のある影響を受ける可能性は低いと考えられた。 以上の結果から、本剤は、たん白結合に関する他剤との薬物相互作用を起こす可 能性は低いと推察された。 2) 代謝における薬物相互作用 ヒト肝ミクロソームを用いた検討で、本剤(0.05~5.5 µmol/L)はヒト CYP 分子 種(CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6 及び CYP3A4)のいずれに 対しても、対照群と比べて20%以上の阻害作用を示さなかった。また、本剤は不可 逆的な阻害作用を示さなかった(2.6.4.7.3(1)参照)。本剤のPK/PD 試験(1 mg/回) で得られた被験者別の最高血漿中濃度は 0.053 µg/mL(0.12 µmol/L)で(2.7.6.26.4 参照)、ここから予測される最高門脈血中非結合型レパグリニド濃度は約 0.004
µmol/L である(2.6.4.9参照)。CYP 阻害試験での本剤の最高濃度(5.5 µmol/L)は、 推定最高門脈血中非結合型レパグリニド濃度及び臨床での最高血漿中レパグリニド
濃度と比較して、それぞれ 1300 倍、45 倍以上高い濃度であること、更に海外で実 施された薬物相互作用試験では、経口避妊薬、ニフェジピン(以上CYP3A4 の基質)、 テオフィリン(CYP1A2 の基質)、ワルファリン(CYP2C9 の基質)の血中濃度は、 本剤との併用によって顕著な影響を受けなかったことから、本剤が臨床において併 用薬のCYP による代謝を阻害又は誘導する可能性は低いと考えられた。 また海外で実施されたジゴキシンとの薬物相互作用試験で、本剤はジゴキシンの 薬物動態に影響を与えないと考えられた(2.7.2.2.2.5(7)参照)。 本剤の代謝には CYP2C8 が主に関与し、一部 CYP3A4 も関与することから (2.7.2.2.1.1(2)参照)、本剤が他剤からCYP2C8 及び CYP3A4 における薬物相互作用 を受ける可能性について検討した。 海外で健康成人を対象とした本剤と非特異的 CYP 阻害剤であるシメチジンの薬 物相互作用試験で、シメチジン(1 日 2 回、400 mg/回)併用投与時の本剤の AUC は、本剤単独投与時の1.16 倍であり、シメチジンは本剤の薬物動態に影響を与えな いと考えられた(2.7.2.2.2.5(1)参照)。 CYP2C8 に対し阻害作用が報告されている薬剤が本剤の代謝に及ぼす影響を in vitro で検討したところ、イソニアジド(最終濃度: 0~1000 µmol/L)において不可逆 的阻害の傾向が認められ、阻害パラメータ(Kiapp及びKinact)は、それぞれ256 µmol/L 及び0.0508 1/min であった(2.6.4.7.3(2)参照)。この結果から、イソニアジドは本剤 の代謝を阻害する可能性があり、本剤の血中濃度を上昇させる可能性があることか ら、本剤とイソニアジドの併用には注意が必要と考えられた。 本剤とCYP2C8 の強い阻害剤であるゲムフィブロジル(600 mg、1 日 2 回 3 日間) を併用した場合、本剤の AUC が 8.1 倍になり、t1/2が1.3 時間から 3.7 時間に延長 したという報告がある文献37)。安全性を考慮すると、本剤とゲムフィブロジルの併用 は避けるべきと考えられた。 またCYP2C8 の阻害剤であるトリメトプリム(160 mg、1 日 2 回)と本剤(0.25 mg、 単回投与)を併用した場合、本剤のAUC が本剤単独投与時の 1.6 倍になったという 報告がある文献38)。本剤とCYP2C8 の中程度の阻害剤の併用によって本剤の薬物動態 が受ける影響は小さいと考えられた。 海外での健康成人を対象とした本剤とCYP3A4 阻害剤であるケトコナゾールとの 薬物相互作用試験で、ケトコナゾール(200 mg、1 日 1 回)を併用したときの本剤 のAUC は本剤の単独投与時の 1.15 倍であり、ケトコナゾールは本剤の薬物動態に 影響を与えないと考えられた(2.7.2.2.2.5(2)参照)。また CYP3A 阻害剤であるイト ラコナゾール文献37)又はクラリスロマイシン文献39)との併用時の本剤のAUC は、本剤 単独投与時の1.4 倍であったとの報告がある。これらの結果から、本剤を CYP3A 阻 害剤と併用した場合、本剤の薬物動態が受ける影響は小さいと考えられた。 本剤と CYP3A4 基質であるシンバスタチン(2.7.2.2.2.5(4)参照)、経口避妊薬
(2.7.2.2.2.5(5)参照)又はニフェジピン(2.7.2.2.2.5(6)参照)を併用したときの本剤 の AUC は、本剤単独投与時と比べて大きな変化がなく、これらの薬剤との併用は 本剤の薬物動態に影響を与えないと考えられた。 CYP3A4 の強い誘導剤であり、CYP2C8 も誘導することが知られているリファン ピシンと本剤の薬物相互作用試験では、リファンピシンを 7 日間投与(600 mg、1 日1 回 7 日間)し、7 日目に本剤 4 mg を単回併用投与したときの本剤の Cmax及び AUC は 、 リ フ ァ ン ピ シ ン と 併 用 し な か っ た 場 合 の 68% 及 び 74% で あ っ た (2.7.2.2.2.5(3)参照)。一方、リファンピシンを7 日間投与(600 mg、1 日 1 回)し、 7 日目に本剤 4 mg を併用投与及び 8 日目に本剤 4 mg を単独投与した場合、本剤の AUC がそれぞれ 50%及び 80%低下したという報告がある文献40)(2.7.2.2.2.6(2)参照)。 この報告において、リファンピシンはCYP2C8 の阻害能も有し、7 日目の併用投与 時にはCYP2C8 の誘導と阻害の両方の影響を受けて本剤の AUC の低下は 50%にと どまったが、8 日目に本剤を単独投与した場合、誘導の影響のみを受けたため、AUC がより低下したと推察された。本剤の AUC はいずれの試験においてもリファンピ シンのCYP2C8 誘導の影響で低下しており、本剤をリファンピシンと併用した場合、 本剤の血中濃度が低下する可能性がある。一方in vitro の検討結果より、リファンピ シンのCYP2C8 阻害作用の Ki値は30.2 µM であることが報告されている文献41)。リ ファンピシン 600 mg を投与後の血漿中リファンピシン濃度の Cmaxの平均値[10 µg/mL(12 µM)]は、CYP2C8 に対する Ki値の約40%であることから文献41)、リファ ンピシンの投与初期に本剤を併用したとしても、本剤の薬物動態が受ける影響は大 きくないと考えられた。以上のことから、リファンピシンの薬物代謝酵素阻害に伴 う本剤の血糖降下作用の増強に対する注意は必要ないが、薬物代謝酵素誘導に伴う 血糖降下作用の減弱に対する注意は必要と考えられた。 ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro の検討で、α-GI 剤であるミグリトールは、 本剤の代謝に対して影響を与えないことが確認された(2.6.4.7.3(3)参照)。またα-GI 剤併用前期第2 相試験では、α-GI 剤であるボグリボースを併用時の本剤の薬物動態 パ ラ メ ー タ は 、 単 独 投 与 時 と 比 較 し て 大 き な 変 化 は な い こ と が 確 認 さ れ た (2.7.2.2.2.2(3)参照)。以上の結果から、本剤をα-GI 剤と併用した場合に、薬物相互 作用を起こす可能性は大きくないと考えられた。 3) 薬物トランスポーターにおける薬物相互作用 ヒトOATP1B1 及び OATP1B3 発現アフリカツメガエル卵母細胞を用いた阻害試験 から、本剤は両トランスポーターに対する阻害能を有することが示唆されたが (2.6.4.7.4参照)、そのIC50値(それぞれ31.2 及び 5.5 µmol/L)は、臨床用量投与時 の最高門脈血中非結合型レパグリニド濃度(約0.004 µmol/L)に対して 1000 倍以上 であり、本剤が臨床上OATP1B1 及び OATP1B3 を阻害する可能性は低いと推察され た(2.6.4.9参照)。
本剤は P-gp の基質ではないと考えられた(2.6.4.8.1(1)参照)。またヒト肝細胞及 びOATP1B1 及び OATP1B3 発現アフリカツメガエル卵母細胞を用いて、本剤の肝取 り込み輸送機構を検討したところ、OATP1B3 の関与の可能性は低いことが示唆され たが、OATP1B1 については明らかな結果が得られなかった(2.6.4.9参照)。 一方、OATP1B1 をコードする SLCO1B1 遺伝子のアレルの 521 位が CC ホモ型の 被験者のレパグリニド AUC0-∞は、TC ヘテロ型又は TT ホモ型の被験者と比べてそ れぞ れ 2.1 倍及び 2.9 倍に上昇したという報告がある文 献 42)。非臨床の検 討 (2.6.4.8.1(3)参照)からは明確な結果が得られていないが、本剤がOATP1B1 の基質 である可能性が考えられた。 本剤と、OATP1B1 阻害剤として知られているシクロスポリンを併用した場合、本 剤のAUC が 2.4 倍に上昇することが報告されている文献43)。しかしAUC の増加が約 2.4 倍であったこと、また Novo Nordisk 社のデータベース検索では、本剤とシクロ スポリンの相互作用に関する報告が無かったことから、本剤をシクロスポリンと併 用した場合、安全性に大きな問題はないと判断した。 2.5.3.2 薬力学 食事療法・運動療法にて血糖コントロール不十分な2 型糖尿病患者を対象とした臨床薬 理試験[PK/PD 試験(0.5mg/回)(2.7.2.2.2.2(2)参照)及びPK/PD 試験(1 mg/回)(2.7.2.2.2.2(1) 参照)]を実施した。 その結果、本剤の血糖降下作用及び食後早期のインスリン分泌促進作用が確認され、こ れらの作用は用量の増加に応じて強くなると考えられた。加えて、本剤の食後早期のイン スリン分泌促進作用は速効性であり、かつ速やかに消失することが確認された。また、本 剤の血糖降下作用は5 日間反復投与した時にも継続することが確認され、反復投与した時 にも本剤の血糖降下作用が持続することが示唆された。 血糖値の日内変動を検討した結果から、毎食後の食後血糖値の上昇抑制だけでなく、昼 食前や夕食前の血糖値の低下が認められ、本剤に食前血糖値の低下作用があることが示唆 された。 2 型糖尿病患者を対象とした臨床薬理試験で確認された本剤の薬物動態的及び薬力学的 特性から、本剤は食事療法・運動療法にて血糖コントロール不十分な2 型糖尿病患者の食 後血糖推移の改善に有効であることが期待される。