第5章 理科授業の検証
5.4. 分析の結果
5.4.4. プロトコルから見た特徴
76 る活動を行っている
それぞれの教員ごとに【推論する力の育成に関わる概念】の割合を算出すると,教員Bの
み18.7%と低い値であったが,他の5名の教員の割合は,34.9~48.8%の間に位置していた。
また,全教員の平均値は38.8%であった。
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言を見ると,「熱を書いていません。」や,「概念は合っていますが,しかし,一つ反対にな っていました。」のように,正しく答えられたかどうかを確認するような言葉が見える。ま た,グループワークを行った生徒自身に発表させるのではなく,教員が自ら説明している様 子も観察された。このことから,この教員の授業のグループワークでは,授業の内容を正確 に理解しているかの確認を通して,教員の意図した答えに誘導していることが読み取れる。
[教員A:ビデオの開始から39分58秒後]
T みんな,振り返って前を向いて。氷がどうなったか,一人言いなさい。さっきはみんな グループで言いました。前に言った目的は,実験を通して?
S(1名の生徒) 私たちの実験を通して,氷によってグラスが冷えました。
T 氷がつめたいために,グラスは?
Ss 冷たくなりました。
T それから。
S 空気中の水蒸気も冷たくなって,水蒸気が水になりました。
T 空気中の水蒸気がどうなりましたか?氷の冷たさで?
Ss 水になりました。
T 水が出て,見なさい,グラスが濡れました。そして,外側も水が出て濡れました。それで は,グラスの中の水がグラスの外にでたのですか?
Ss いいえ。
T どこから出てきたのですか?
Ss 水蒸気。
T 言いなさい。
S (聞き取り不可)
T とても良いです。
この場面は,前述の教員 A の授業の続きの展開である。前述のグループワークでの知識 が定着しているかを個人に聞きながら確認し,正しい内容を繰り返すことで記憶を定着さ せようとしている場面である。このことからも,暗記重視の授業が展開されていることが読 み取れる。
[教員B:ビデオの開始から39分58秒後] T 君,これをテーブルの上に置きなさい。
(S 黒板消しをテーブルの上に置く)
T 今,黒板消しをテーブルの上に置きました。という事は,テーブルの上の場所を占めた ということですね。これをテーブルの上に置くと,そこには場所はありますか?
Ss いいえありません。
T もしも黒板消しをテーブルの上に置いたら,そこには場所がなくなります。つまり,場 所を…。
Ss 占めます。
T 占めますね。みなさんのノートをテーブルの上に置きました。つまりノートはテーブル の上を…。
Ss 占めました。
T 占めましたね。今,黒板消しをテーブルの上に置きました。その時,黒板消しは…。
Ss 場所を占めました。
T 場所を,占めました。帰りなさい。
(S 席に帰る)
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ここでは,教員が説明をし,それを生徒は覚える展開が見られる。また,生徒の答え方は,
短い単語だけの回答となっている。ここでのやり取りの中で生徒の行動や回答に着目する と,①教員に言われた通りに動く,②Y/Nの回答,③少し前に教師が説明したことの復唱,
④繰り返し,となっており,生徒にとって考える機会を与えられない学習形態のため,この ような展開では推論の力を身に付けるのは難しいと考えられる。
[教員C:ビデオの開始から1分53秒後]
T 君たちのために,素敵なものを持ってきました。
(T 「葉っぱに水滴が付いた絵」を壁のボードに貼る)
T どうぞ,見なさい。後ろから見えますか?
S はい。マダム。
T 何が見えますか。
Ss (一斉に話して聞き取り不可)
T 後ろから言いなさい。私たちは見えていますから。君,立ちなさい。言いなさい。何が 見えますか。
S 葉っぱ。
T 葉っぱが見えます。葉っぱが見えます。座りなさい。ありがとう。言いなさい。君は何 が見えますか。
S 葉っぱ。
T 葉っぱ,ただ,葉っぱが見えますね。
S マダム,私が言います。
T 君座りなさい。言いなさい。
S 葉っぱと水。
T 彼女は葉っぱと水が見えます。言いなさい。
S 葉っぱが,太陽の熱で濡れました。
T 太陽の熱で,太陽の熱で水が付きました。葉っぱも人間のように汗をかいた。ですね。
葉っぱも汗をかくのを見ましたか?
S いいえ。マダム。
T ありがとう。
S 露。
T 露の事を言いました。聞こえましたか。
Ss はい,マダム。
T 露。ありがとう。露はとても良い言葉です。ほかには,だれか何か言いますか?メヘデ ィ言いなさい。
S 葉っぱに,太陽の熱で水がついた。
T 彼女は言っています。葉っぱに,(聞き取り不可)なので,水が付いた。ですね。わかり ました。座りなさい。まだ何か言いますか?だれか?あれ。誰もこのような写真を見た ことはないですか?
S マダム,私は見ました。
T いつ見ましたか?言いなさい。
Ss 冬!
T 冬。冬に見ましたか。良いですね。冬に見ることができますか。冬に霧が降りて,この ように露が付くのを見ますね。
Ss はい,マダム。
T 見たことがありますよね。
Ss はい,マダム。
T 冬に霧が出た時,冬には木の上にこのような露が付き,そのような露をたくさん見ます よね。
Ss はいマダム。
T 皆さん,これが露の絵です。冬に葉っぱに露が付いて,これはその露の写真です。です ね。みなさん,わかりましたか。
79 Ss はい,マダム。
T よろしい。
この場面では,写真の観察を通して葉っぱに露が付いていることを発見させようとする 発問から,その原因を考えさせる展開へと繋げている。その際には,写真のような,葉っぱ に露が付くような時期についても考えさせ,より具体的な状況をイメージさせて,考えを深 めさせようとしている。また,直接的に教員が答えを教えるような展開ではなく,生徒に考 える時間も与えるようにしている。これらのことから,ここでのやりとりでは,回答した生 徒の中での推論の力の育成に繋がっていることが示唆される。
[教員D:ビデオの開始から6分21秒後] S それから。
T よろしい。黒板にこれだけのものを書きました。
S (聞き取り不可)
(T 黒板の記載事項を訂正)
T 聞きなさい。ここに挙げた名前は,全て固い物質です。固い何ですか?
S 物質。
T 物質。皆さんは,物質とは何か分かりますか?
S はい。
T 誰も分かりませんか?
S 分かります。
T いいなさい。物質とは何ですか?
S 木は物質です。
T 木は物質ですか?
S いいえ,違います。人は物質です。
T 人は物質というのは,名前の事です。私の質問は,物質とはなんですか?
S 私が言います。(聞き取り不可)
T (聞き取り不可)物質とは,どれのことをいいますか?誰か言えますか?
T 私が言いますか?
S はい。
T それは重さがあり,場所を変えることができ,氷のように状態が変わるものです。物質と は,どれのことをいいますか?
T それは重さがあり,場所を変えることができ,氷のように状態が変わるものです。それを,
物質といいます。
(Tの発言に沿って,Sも合わせて答えている。)
T 私たちは身の回りのものを観察して,言い,書きました。(T 板書を示しながら)これら 全てはなんですか?
Ss 物質。
T これらは何ですか?
Ss 物質。(さっきよりも大きな声で)
T 物質。
(T 板書を消す)
T 物質。今日,私たちは物質について知りました。今日のパートは固い物質についてです。
今日はこれから何を知りますか?
Ss 固い物質。
T 固い物質についてこれから知ります。
ここでは,生徒の意見を聞いてはいるが,その意見をもとに話を膨らませるわけではない。
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教師の意図した回答が出るまで,順番に生徒を当てて言っている様子が見える。生徒からの 視点で見ると,教師は教師の意図した答えに誘導しており,生徒個人の個性的な意見を尊重 されないため,自分の頭で考えることを控えるようになると考えられる。
[教員E:ビデオの開始から34分36秒後] T みんなの答えと一緒になりましたね。
Ss はい,マダム。
T 一緒になりましたか?
Ss はい,マダム。
T 同じだったら,みんなができたという事ですね。よろしい。
(T,Sを席に戻す)
T それでは空気の汚染について見てきました。何か問題はありますか?
Ss いいえ,ありません。
T 問題があれば,手を挙げなさい。
T 空気の汚染で,どのような病気になりますか?皆さんわかりますか?
Ss はい,マダム。
T 問題はありますか?
T 空気の汚染で,どのような病気になるか,見てきましたね。
T ノートを見せてみなさい。
(T 一人のSのノートを見て確認)
T ありがとう。
T 今日はどんなことを得ましたか?空気の汚染,ん?
Ss (聞き取り不可)
T 病気になりますね。空気の汚染で,どのような病気になるのか,私たちは知りました。
空気の問題から病気になることが分かりました。
T この教科で,私たちの考えは深まりました。ですね。
Ss はい,マダム。
T これらに何か問題は?
S いいえ。
T 問題なし。
上と同様に,一つの教員の提示する答えに,生徒全員の考えを誘導しようとしている。また,
「問題はありますか?」ではなく,「問題がありませんね?」という問題がない事を前提と した問い方から,問題がないことを確認しようとしている意図が感じられる。そして,問題 を感じた生徒がいた場合には,生徒は答えにくくなる。つまり,この場面では生徒は自分の 意見を発言しづらい雰囲気が作られている。
[教員F:ビデオの開始から14分06秒後] T 君言いなさい。
S エビ。
(T 反応せず通り過ぎる。)
ここでは,生徒が教員の望む回答をできなかったため,生徒の考えを無視してしまってい る。生徒は教員に無視されないように,教員の意図している正答を答えようとするようにな るため,自分の考えを持とうという気分にはなりにくくなると考えられる。