3. パラグラフライティングモジュール実践
3.2. プロセスライティング
パラグラフの論理を学習した後、学習者は各自のプロセスライティングを始めた。提出課題は
“ʼThe use of social media is beneficial/harmful for education.ʼ Which would you support? Give reasons and state your opinion.” である。
3.2.1 アウトラインとフィードバック
まずこのテーマに関して各自でブレーンストーミングを実施した。自分でコンセプトマップやアウ トラインなど2〜3分考えた後にペアワークで意見交換をし、さらにグループディスカッションを 行った。その後にアウトライン、すなわちトピックセンテンスとサポ―ト文と結論という3つの骨子 を各自書いて提出した。
このようにして提出したアウトラインを教員が英語と内容の面でチェックを行い、英文の意味がと れないものや、アウトラインの論理性に問題があり、思考の整理が必要と思われるものについて LMS で個別に具体的なアドバイスをして再提出させた。たとえば3つのサポート文のうち2つが実 際には同じ内容を異なった言い方で書いている場合はその点を指摘した。また授業で質問の時間をと り、アウトラインで思考の整理をしておいて、実際に書き出した際に英語に集中できるようにした。
この段階で 51 名のうちで 8 名はアウトラインに問題がなく、他は再提出するように指示した。たと えば S1 のアウトラインは以下のように提出された。
〈Preliminary outline of S1〉
1. Topic Sentence
The use of social media is harmful for education.
2. Supporting Sentences
1)We donʼt take time to study by Line and Twitter.
2)We are likely to believe wrong information for study on the Internet.
3)Social media tend to cause bullying. So, it will be obstruction of study.
3. Conclusion
Itʼs better to decide time to use social media.
このアウトラインは、文構造や語彙の問題はさておいても、第 1 のサポート文が不明瞭であるこ と、2 番目のサポート文はインターネットの情報一般についての話であり、教育との結びつきがない こと、さらに、結論がトピックセンテンスとサポート文の足し合わせたもの、つまり段落全体の結論 として内容がずれていることである。その点を指摘したところ S1 は以下のような改訂アウトライン を提出した。
〈Revised outline of S1〉
1. Topic Sentence
The use of social media is harmful for education.
2. Supporting Sentences
1)Students are distracted by Line and Twitter even when they have to study.
2)It is difficult to judge information on the Internet when they use Internet to do homework.
3)Social media tend to cause bullying, which is a big problem in education.
3. Conclusion
The use of social media has a bad influence on education.
このように、教員からのコメントに基づいてアウトラインを修正する過程を経て、ほとんどの学生 がパラグラフの論理の輪郭と特徴を把握することができた。しかし数名についてはさらに個別指導の フォローアップとして、まず日本語で何をいいたいか整理するように指導を行った。
一方、語彙の補強のために教員があらかじめ、教育とソーシャルメディアの関係を論じたブログの 中から読みやすいものを選んで参考文献として提示した。語彙としメリットやデメリットという日本
語発想の単語よりも pros and cons, strengths and weaknesses などの表現のほうが使われるという ことや、文構造として一人称だけでなく客観的視点の構造を持つオーセンティックな英文を参考にす ることを学習していった。
3.2.2 初稿とフィードバック
1 回目の原稿提出後、アウトラインでゴーサインをもらった学生はそれを elaborate(発展)させた パラグラフを書き 1 回目の原稿を提出した。この段階では、学生は、既に書きたいことの骨子はでき ているため、接続詞や語彙の選択に気をつけながら 1 つの段落を書くことに集中した。教員は、ライ ティング授業評価の基準として、論旨、段落構成、英文と語彙に基づいた評価を行うことを発表した。
言語的な側面から、1)省略形や口語表現 Itʼs, Iʼm などは用いないこと、2)文を And や But で極力 始めないこと、3)文法や語彙のチェックはワードの校正機能や、無料文法チェックソフトウエアを 使えばある程度防げることを授業で指摘した。この説明を受けて学生は初稿を作成して LMS にて提出 した。
3.2.3 最終稿評価
初稿について、教員は段落構成と英語に重点を置いたフィードバックを書き込んだ。それをもとに それぞれの学生に2〜3分の面接を行いながら改善する点を伝えた。また、そのフィードバック後に 時間をとってグループやペアでどのように改善したらよいかディスカッションを行った。そして第 2 稿、この場合には最終稿を提出した。最終的なコメントも行い学生にフィードバックした。希望者は さらに訂正した第 3 稿を提出しても良いことにしたところ、細かい文法ミスなどを修正して出した学 生もいた。提出した作文は授業用の評価と、プレテストで使用した研究用ルーブリック評価の 2 通り で評価を行った。評価はプレテストを評価した同じ評価者で行い当初の合致率は 86.9% でありその後 スコアに差があった点についてすり合わせを行い数値をどちらかに統一した。最終稿の評価結果は以 下の6項目である。
① 論理一貫性
最終的な提出物の論理一貫性は 51 名すべてが一方向、すなわちトピックセンテンスの主張と内容、
結論が一致していた。
② 明確な主張の有無
参加者 51 名全員が明確な主張をしていた。これはアウトラインでトピックセンテンスを明確に書 かせたために定着したものと思われる。
③ 明確な結論の有無
参加者 51 名中、明確な結論を書いたものが 45 名、6 名が結論がなかった。アウトラインの段階で
全員に結論を書かせていたのであるが、6 名は最後の段落で結論を書かずに終えてしまっていた。結 論を書いているものを詳細に見てみると、トピックセンテンスとは若干の表現を変えて重複をさける ことができているものが多かった。
④ 段落の構造
参加者 51 名中、46 名(90%)が段落構造が良くできており、5 名(10%)が一部構造の不備が見 られ、段落構造が全くみられなかったものはなかった。評価が1、すなわち、構造の不備が見られる と評価されたものは、トピックセンテンスで書き出してはいるが、その後の段落構成ができておら ず、散漫な書き方になっていた。これらの 5 名は、アウトラインを学習した際に欠席していた学生が 1 名、あとの 4 名はアウトラインを一応書いたものの、それをパラグラフにする際には用いていな かった。
⑤ 論証の有無
論証の有無については、33 名 (65%)が主張の論証ができていた。サポート文2つ、あるいは3つ の事項に具体的な事例を挙げたり、詳細な説明を行うことにより、主張を裏付けていた。16 名
(31%)は一部論証に欠陥が認められ、論じ足りない、あるいはサポートが 1 文のみなど論証が不完 全であった。意見の論証が全くできていないものが 2 名いた。
⑥ 語数
平均が 171,3 語、最小値 54 語、最大値 764 語であった。最大値 764 語を書いた学生は、最終稿が 1 段落としては長すぎるため、教員からのアドバイスに従って 5 段落エッセイにして提出した。
パラグラフライティングモジュール実施後の最終提出物の評価を総括する。まず、全員がパラグラ フの形はできており、トピックセンテンスが存在して主張が明確に書けている。結論も 9 割近くの学 生が書けていた。段落構成も約 9 割が出来ていた。このことからライティングモジュールは、パラグ ラフの型を習得させるには一定の効果があったのではないかと思われる。一方、論証については 6 割 強の学生が効果的に主張を裏付けることができていた。3 割が部分的には主張を裏付けることができ るようになってきておりさらなる練習により習得が期待できる。