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アメリカ型EAPプログラム

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3.  アメリカ移住の謎

1.2  アメリカ型EAPプログラム

アメリカにおいては日本と同様、大学の学部は通常 4 年の教育課程であり、大学 1 年生ではほとん どの大学で Freshman English あるいは English 100, 101 などのライティングに重点を置いた必修科 目を履修しなければならない。ここで大学に必要なライティングの技術を学ぶことになっている。そ もそもアメリカでは、小学校から自分の知識、自分の意見を論理的に書いて提示することが重要とさ れており、書くことは学校教育の大きな柱とされている。高校までに 5 段落からなる、いわゆる Five-Paragraph  Essay  を習得していることが前提となっており、ライティング教育は教科横断ライ ティング(Writing  Across  Curriculum,  WAC)として学校教育の柱の1つである。しかし昨今は、

アメリカで生まれ、あるいはアメリカで幼少時から教育を受けていても英語力、特にライティング力 が足りない学生が一定数いることが問題となっている。彼らは、Generation  1.5  と呼ばれ、大学の授 業で出されるライティングやリサーチの課題に対応することに苦労している (Ferris  &  Hedgecock,  2014) 。一方、海外からアメリカの大学に留学する場合には SAT や TOEFL  などの受験が課され、

それらの中にはライティングのセクションが含まれているため、英語を外国語あるいは第 2 言語とす

る学生にとっては大学入学のためにライティングを学ばねばならず、入学後も一定のサポートが必要 となる (Hinkel, 2015)。

アメリカの大学には、イギリスの埋め込み型 EAP コースと同等の目的をもったライティングセン ターがある。専門科目の授業で出された課題を提出したり論文を書いたりする際の支援を行う組織で ある。最も有名なものが Purdue  大学の(OWL  https://owl.purdue.edu/owl/purdue̲owl.html) で あろう。実験レポートや要約、批評から学位論文まで様々な書き方のアドバイスを行い、大学によっ てはチューターによる支援やオンラインでのアドバイスサービスプログラムもある。筆者は 2019 年 9 月から 2020 年 3 月まで客員研究員として滞在したハワイ大学マノア校でライティングセンターを 訪問、視察してセンター長の Nordstrom  氏にインタビューを行った。このセンターは  English  Department  の所属機関として併設されており、利用者は予約をとって、特別に指導法の訓練を受け たチューターに実際の助言をもらうというものである。利用者とチューターのコミュニケーションを 重視することから、オンラインではなく面談でセッションが行われている。チューターは大学院生で あり、ライティングの指導方法について、十分な研修を受けている。センター長とチューター達は週 1 回のミーティングを通して、質の高いサポートを提供するようになっているとのことであった。さ らに、論文の書き方のワークショップや、学期末に向けて行われる集中ライティングセッションなど を通して幅広い支援が行われていた。

以上、イギリスとアメリカの大学における EAP 教育について概観した。それらの共通点として、

根幹にライティング重視の理念があり、英語のライティング力は、母語話者にとっても英語の環境に 生活する場合でも、明示的な学習を通して習得されなければならないことを認識した。日本において EAP 教育を設計するときに考慮すべき視点である。

1. 3 国際バカロレア(バイリンガリズム)型

EAP プログラムの 3 つ目の型は国際バカロレア(IB)プログラムにおける言語教育である。IB ディプロマプログラムは世界中の高等教育の入学準備として設立された。母語と第 2 言語が必修であ り、第 2 言語の目標の1つにクリティカルで創造的な思考(critical-  and  creative-thinking  skill) の 育成が挙げられている。言語と他の知識との関連について意識を高め、さらに学業や職業で必要な第 2 言語のスキルを伸ばし、国際的な視野を培うためにカリキュラムが構築されている (https://www.

ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/)。これはとりもなおさず EAP の目指すとこ ろであり、国際協調や世界平和という IB 設立の理念を鑑みると、日本における EAP プログラムの モデルとなり得るであろう。

IB プログラムでは、概念に基づくカリキュラムという考え方に依拠してレッスンプランや授業活 動が設計されている。母語と第 2 言語の科目を始め、他の教科でもその授業でのトピックを扱うこと によりトピックの奥にある概念や物事の原則に達するような学習を行うことが意図されている。その 学習を通して学んだことが、相乗的に他の知識やスキルの獲得に用いられ、一度学んだことが異なる 状況でも転移することを目指している。図1に示されるように、知の体系は事実やトピックの上位に

概念があり、深い学習が起こるためには、この上位概念のレベルに到達しなければ、学習したものが 一過性のものに終わ ってしまうのである(Erickson, 2014)。

図1.事実・トピック・概念の関連性(Erikson and Lanning, 2014 をもとに作図)

一方、Stern, Ferrano, & Mohnkern (2017) は、事実やトピックの学習だけでは他の新しい局面の 問題を解決するにあたり、応用がきかないことを指摘する(p.15)。既習事項を他の状況であてはめ るためには、人間の思考は概念レベルに到達して、特定の事象を一般化するという認知過程を経る。

IB の言語学習では、授業内外での言語活動設計にこの理念が取り入れられている。学習者をどのよ うに評価するかが公表されており、学習者の成績は、彼らが情報を分析し、議論(argument)を構 築し、創造的に問題解決しているか、ということを口頭発表、レポート、エッセイなどを通して評価 さ れ る こ と に な っ て い る(IBO, https://www.ibo.org/programmes/diploma-programme/assessment-and-exams/)。具体的に IB の、第 2 言語話者向き言語科目である English  B の教材を見ると、英文 リーディングや語彙学習を、深い思考や概念に訴える活動を通して行っており、新出事項の定着度を ライティングにより評価する流れとなっている (Philpot, 2018)。ライティングタスクのテーマは、遺 伝子組み換え食品、メディアや広告における偏見、宗教の役割など IB 教育で重視される概念を扱っ ている。学習者にとっては、テーマに関するリサーチをした上で読み手を意識した効果的な構成と筆 致で英語を書くことが目標である。

このようなライティング活動は大学における英語学習においても重要で、目の前にある単語やスキ ルや事実に関する知識を得るだけではなく、抽象度の高いコミュニケーションに参加して自分の意見

や見識を発信していくためには、より深い思考、つまり概念に重点を置いた学習が求められてくる。

リーディングやリスニングにより得た情報を把握し、それを分析し、概念に到達するような深い思考 を通して再構築し、論理的に書く学習が必要とされる。学習として第2言語の BICS の演習にとどま らずに CALP の領域における言語活動を行わねばならないということである。日本における EAP プ ログラム構築においては学習者が図1の FACTS(事実)の把握の段階からトピックを理解し、その 上位概念を構築し、さらに一般化や原理の考察に達することを目指すべきであろう。

以上、EAP 教育の3つの型を概観したが、そのいずれにおいてもライティング力の向上が最重要 課題の1つであることが示されている。日本においては、ライティングが高校卒業の時点で不得意と されているスキルであることからみても、EAP プログラムにおいてライティングに焦点を当てた実 証研究こそが意味のあることと考えられる。

2.論理的思考を促進するパラグラフライティングモジュールの開発と検証 2.1 パラグラフライティングの背景と先行研究

前章に述べたように、ライティングは EAP に必要とされるのにも関わらずあまり日本の英語教育 で効果を上げていないとされている。事実、全国の国公立高校 3 年生 6 万人を対象に実施された平成 29 年度英語力調査において 4 技能の中で書く技能は 80.4% の生徒が CEFR  A1 レベルであり無得点 者が 15.1% に達している(文部科学省)。無得点ということは書くことをあきらめてしまっている状 態であり、1 割以上の高校 3 年生がそのような状態であることはゆゆしき問題である。また、Yasuda 

(2014)は 481 名の大学生を対象に行ったアンケート調査で、高校までの英語学習では、文法事項の 習得が中心にあり、筆者の意思を表現することにつながる学習は垣間見えてこないことを報告してい る。これらの調査から日本の大学では特にライティング力の向上を目指した EAP プログラムの構築 が早急に必要とされているといえよう。

数少ない日本のライティング研究の中で先駆的なのは、Kamimura  &  Oi(2006)による、英語専 攻の 1 年生 38 名を対象に行った実証研究である。Kamimura らは 1 年間に亘り自分の意見・考えを 論証し主張すること(意見文)に焦点をあてた指導を行い、指導期間の最初、中間、最後に提出され た課題について、論理的一貫性、構成、論証の性質、語数などについて分析した。その結果、たとえ ばエッセイ構成という評価項目では、1 年をかけた指導のあと 9 割以上の参加者が良い構成のエッセ イを書くようになり、指導の有効性が示された。

プロセスライティングの観点からは、Tsuji (2016)は書くことは考えることであり、論理的に書 くためにはまず書く内容を整理し吟味することが重要であるとの視点から 80 人の大学生を対象に英 語の論理展開の指導を行い、ピアレビューによって定着させる取り組みを行った。学習者の事後調査 から、書くための思考整理として重要ポイントの整理やリサーチクエスチョンの設定とその理由付け などの活動が有効であったことが示された。 一方、Okada (2018) は日本語と英語の論理展開法の違 いに着目し、大学生 25 名を対象に論理的ライティングの指導を行った。論理展開方法を繰り返して

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