DBPとC70の相互作用を調べるため、DBP-C70ブレンドフィルムのDBPの比
率を 0, 5, 40, 100%にしたものについて、発光スペクトルを測定した。図①
-(1B)-1-a-3-1.6に示すように、DBP薄膜はピークトップ638 nmの発光を示した。
C70薄膜は、693 nmにピークトップを持つ弱い発光を示す。この発光は、5%の
DBPをドープするだけで、強度が85%程度減少する。これは、C70とDBPの間 で電荷分離種が形成されていることを示唆する。DBP の濃度を 40%にしたと き、完全に C70の発光は消光される。このことから、DBP は 5%で十分に C70
との電荷分離種を形成し、太陽電池として作用することが示唆される。
図 ①-(1B)-1-a-3-1.6 PL ス ペ ク ト ル :quartz/DBP (decreased by a factor of 50 for comparison), quartz/C70, quartz/DBP:C70 (5%) and quartz/DBP:C70 (40%).
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図①-(1B)-1-a-3-1.7 (a) BHJデバイスのJ–V特性(5% DBP:95% PTCBI)および IPCE ス ペクトル (b) BHJデバイスのJ–V特性(95% DBP:5% C70)
表①-(1B)-1-a-3-1.3 作製した太陽電池の特性
Cells Jsc (mA/cm2) Voc (V) FF PCE (%)
5% DBP:PTCBI 1.0 0.60 0.261 0.16
95% DBP:5% C70 0.012 0.60 0.238 0.002
少量のドナー分子の影響を考察するため、95%-DBP:5%-C70ブレンド薄膜を 活性層とした太陽電池を、参照デバイスとして作製した。何もかも違うので 比較できないと思う。デバイスの Jsc と FF はそれぞれ 0.012 mA/cm2と 0.238
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であり、PCE は 0.002%と、低い効率であった。アクセプターの効果を調べる
ために、PTCBIをアクセプターとして用いた。5% DBP:PTCBIを活性層とした
太陽電池のJ-V 特性とIPCEスペクトルを図①-(1B)-1-a-3-1.7に、測定結果を表
①-(1B)-1-a-3-1.3に示す。PTCBIを使用したデバイスはPCEが0.16%と低かった。
C70は球状分子であり、電荷の伝導に方向性が無い特殊な分子である。この構 造的特徴を持つ C70が、ブレンドレイヤー中で高濃度に存在し、接触すること で輸送パスを作っていると考えられる。
e. ブレンド層の厚さ及びDBPの濃度の影響
ブレンド層におけるDBPの濃度を変化させた BHJ太陽電池の特性と、DBP の 濃 度 を 固 定 し て 膜 圧 を 変 化 さ せ た BHJ 太 陽 電 池 の 特 性 を 、 図 ① -(1B)-1-a-3-1.8に示す。5%から40%までDBPの濃度を増加させていくと、600 nm付近のDBPの吸収に由来するピークの出現に伴ってIPCEスペクトルの減 衰が見られた。ドナーの濃度を 5%に固定して、ブレンド層の膜厚を変化させ た時、50nmで最も高い光電流が得られた。図①-(1B)-1-a-3-1.5に示した、ドナ ー濃度が0%の太陽電池 (表①-(1B)-1-a-3-1.2) では、Voc が1.05 Vであったが、
DBPを2.5%ブレンドした太陽電池では、Vocが0.92 Vへと低下した。DBP濃 度の増加に伴って、Vocは低下する傾向にあった。
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図①-(1B)-1-a-3-1.8 作製した太陽電池の J-V プロット(A、C)と IPCE スペクトル(B、 D)、(A)と(B) は濃度を、(C)と(D)はブレンド層の膜圧をそれぞれ変化させたときの特 性の変化を示す
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図①-(1B)-1-a-3-1.9 各種太陽電池の特性
通常のBHJ 太陽電池の場合、VocはドナーとアクセプターのHOMO-LUMO ギャップに依存している。DBPの濃度を変化させた時のVocの変化をみると、
DBPのHOMO レベルがわずかながら変化していることが示唆された。ブレン ド層のDBP濃度が減少するとともに、DBPのHOMOレベルが低エネルギー側 にシフトしている。FF についても同様の傾向が見られた。Jsc は、C70のみの デバイスの時は 1.28 mA/cm2であったが (表①-(1B)-1-a-3-1.2)、DBP をブレン ドしたことで大きく上昇し、DBP の濃度が 5%の時に最大値である 12.09
mA/cm2が得られた。この時、PCE は 5.93%と非常に高い値を得ることができ
た。Jscの急激な上昇は、C70マトリックス中の電荷分離の効率がわずかなDBP の添加によって大幅に向上することと、正孔輸送チャネルができることで光 電流が生成されることによると考えられる。DBPの濃度を5%に固定して、ブ レンド層の膜厚を変化させて検討を行ったところ、Vocは10 nmで0.81 Vであ
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り、膜厚を増加することで、30 nm までは上昇する傾向が見られ、30 nm で
0.91 Vが得られた。それ以降は、厚みを増してもあまり変化が見られなかった。
これに対し、FFは厚さの増加に伴って線形に減少していた。Jscは、50 nmま では厚みに比例して増加し、50 nmで最大値13.2 mA /cm2を与えた。この時、
PCEは最大値である6.4%が得られた。さらに膜厚を上げると、Jscは低下して しまった。
DBPとC70を使用した、ショットキー接合型BHJ太陽電池の構造の最適化を 行うことで、DBP濃度が5%、ブレンド層の膜厚が50 nmの時に、PCEが6.4%
という非常に高い値を得ることができた。
f. Single Crystal C70を使用した太陽電池
5% DBP:C70の太陽電池をさらに高効率化するために、通常のC70よりも高い
電子移動度が期待できる single crystal C70を使用した。デバイスの特性を図① -(1B)-1-a-3-1.10と表①-(1B)-1-a-3-1.4に示す。(orange Suは、通常使用していた C70である。) orange Su C70を使用したデバイスのJscはsingle crystal C70を使用 したデバイスとほぼ同様であり、FFはSingle crystal C70のデバイスで優位な結 果が得られた。
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図①-(1B)-1-a-3-1.10 作製した太陽電池のJ-VプロットとIPCEスペクトル.
表①-(1B)-1-a-3-1.4 作製した太陽電池の特性
Blend material Jsc (mA/cm2) Voc (V) FF PCE (%)
50 nm orange Su 13.2 0.92 0.526 6.4
50 nm crystal C70 12.7 0.93 0.578 6.8
(average)
50 nm crystal C70 13.0 0.93 0.576 7.0
(highest)
V-210 (1B)-1-3-2 鏡面電極上への微細凹凸構造形成32)-42)
(成果達成票の項目(1B)-1-a-4に相当)
a. 有機ナノピラーを用いた鏡面微細凹凸基板の形成
これまでに、電気炉を用いた気相成長法や真空蒸着法による有機ナノピラ ー構造の形成について検討を行い、直径30 nm、長さ100 nmの有機ナノピラ ー構造の形成に成功した。本項ではナノピラー構造およびグリッド構造をナ ノメートルオーダーで制御し、金属薄膜を積層することで、微細凹凸構造を 有する金属電極を形成可能なことを示したので報告する。
有 機 ナ ノ ピ ラ ー の 形 成 メ カ ニ ズ ム は 、 配 向 制 御 材 料 と し て 、 3,4,9,10-perylene-tetracarboxylic-dianhydride (PTCDA) を用い、結晶成長材料と しては、cupper phthalocyanine (CuPc)を用いた。ここで、CuPcの蒸着膜中の分 子は、相互作用の小さな基板上では、基板に対して垂直配向 (edge-on) するた め、単純に蒸着させた薄膜において、CuPc の配向は、基板に対して平行方向 である(図①-(1B)-1-a-3-2.1)。一方、PTCDA の蒸着膜は基板に対し、平行配
向 (face-on) し、そこに積層させた CuPc も平行配向する性質を持っているた
め、PTCDAを結晶核として配向制御されたCuPcナノ構造体は、基板に対し垂
直方向に成長する。 以下に素子作製条件を示す。基板は Indium-tin-oxide
(ITO) 電極を有するガラス基板を用い 、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、
イソプロパノールによる超音波洗浄を行った後、煮沸したイソプロパノール より基板を引き上げて乾燥させた。その後、UV/O3処理を行い、基板上の有機 物の除去を行った。この基板上に、真空蒸着法を用いてPTCDA (3 nm) / CuPc
(3 nm)を順次積層させ、配向制御された結晶核を得た。さらに真空を維持した
状態で基板加熱により結晶核を凝集させ、その後、CuPc を真空蒸着法により
15 nm成膜した。本手法を用いて作製した有機ナノ構造体をPTCDAの有無で
比 較 し た AFM 像 と 、PTCDA を 用 い た 場 合 の 断 面 SEM 像 に て 、 図 ①
-(1B)-1-a-3-2.2に示す。PTCDAがない場合は、基板に対して平行方向に成長す
るが、PTCDA を用いた場合は基板に対し垂直方向に成長する有機ナノピラー
が形成を実現できる。
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図①-(1B)-1-a-3-2.1 配向制御層の有無がCuPc配向に与える影響
図①-(1B)-1-a-3-2.2 有機ナノピラーのAFM、SEM像
有機ナノピラー構造を有機ELの光取り出し効率向上検討に用いるために は、ピラー径および高さの制御を行う必要がある。そこで、有機ナノピラー 作製工程において、ガラス基板上へのPTCDA(3 nm)/CuPc(3 nm)蒸着後の基板 過熱温度および有機薄膜成膜膜厚条件を変化させ、有機ナノピラーの構造制 御を行った。なお、基板加熱温度および有機薄膜成膜膜厚の水準は 180 ℃、
150 ℃およびCuPc膜厚0 nm、6 nm、13 nmとした。ナノピラーサイズの成膜 時基板温度依存性を図①-(1B)-1-a-3-2.3および表①-(1B)-1-a-3-2.1ナノピラーサ イズの成膜時基板温度依存性に、ナノピラーサイズの CuPc 膜厚依存性を図① -(1B)-1-a-3-2.4および表①-(1B)-1-a-3-2.2に示す。なお、基板加熱温度依存性で
の CuPc 膜厚は 30 nm とし、CuPc 膜厚依存性での基板加熱温度は 250℃とし
(a) 配向制御層なし
(b) 配向制御層あり CuPc
CuPc PTCDA
0 nm 75 nm
0 nm 75 nm
20 nm
0 nm 20 nm
0 nm 20 nm
0 nm
100 nm 100 nm
(c) PTCDAあり(断面SEM像) (b) PTCDAあり(AFM像)
(a) PTCDAなし(AFM像)
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