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ヒトの「群れ」の例示 「群れ」の三要素、10 の特質

ドキュメント内 博 士 論 文 専修科目 (ページ 94-156)

4.1. 「群れ」の出現の三つの要素

前第3章でヒトの「群れ」を概説したが、第4章では、具体的例として、四つの「群 れ」を取り上げて比較し考察する。

ヒトの「群れ」にはさまざまな形や姿がある。本章では、その中でわかりやすい「群 れ」を取り上げることとしたい。

具体的には、「烏合の衆」、他者を模倣する者(Herd = Herding Behavior)、「企業組織 内に生まれる『群れ』」、そして「派閥」である。

企業組織内に生まれる「群れ」は、本来「性善」であり、属する企業組織のために最善 であると確信する施策や方策を提言しようとする。

「群れ」の出現には、「三つの要素」が必要である。第一に、コア・メンバーが主張す る共通概念(共通目的)に対するメンバーの「共感」、第二に、共通概念達成のためのコ ア・メンバーそして他のメンバーへの「同調」、第三に、共通概念達成のために必要な協 働意欲の存在である。

「群れ」は「組織」ではなく「集団」であり、企業組織の「群れ」に対する意向によっ て企業組織内の下部組織に再編される可能性を持つ。この段階を筆者は、「前組織的段 階」という。「群れ」は自律的にまた主体的に出現するのであって、企業組織の意向や手 配によって出現するものではない。上記の出現の三つの要素を考えればわかるように、

「群れ」は無機質で、また、まったく受け身な「集団」ではなく、企業組織のために生ま れて動く「イノベーティブな(有機的な)集団」である。このような「群れ」は、企業組 織の中で、いつでも、どのような階層においても、いくつでも出現すると考えられ る。そ して、「組織」のように明確な「境界」を持たないという大きな特徴を持っている。

「群れ」では、ルール、指揮命令は明確ではなく、メンバー間のコミュニケーションは 自由でフラットである。「境界」が明確ではない「群れ」では、メンバーがコア・メンバ ーから距離が遠くなるほどに「群れ」の外縁に近づくが、「群れ」の外縁部、すなわち

「群れ」の「端っこ」では、「群れ」のウチとソトが徐々に明瞭さを欠いて行く。また、

コア・メンバーから遠く、「群れ」の外縁に位置するメンバーは、「群れ」のウチにいるの か、それともソトにいるのかさえ定かではなくなる。「群れ」への参加や離脱は自由であ

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り、離脱へのペナルティもない。このように「群れ」は出現のための「三つの要素」が求 められる以外には、きわめて「やわらかい集団」なのである。

そのような「群れ」も、しかし、細かくその特質を考察するとき、筆者は、上記の三つ の要素以外に、一般的な「10の特質」があることに気が付く。以下にその内容を考えて みる。

4.2. 「群れ」(集団)の一般的な特質

四つの「群れ」を比較対照するためには、次のような特質に着目する。すなわち、第一 に、「群れ」形成の主体性、第二に、「群れ」の共通概念(共通目的)、第三に、「群れ」の 共通概念に基づく排他性、第四に、「群れ」の硬さ(緊密性)、第五に、「群れ」の内部の 伝達(コミュニケーション)、第六に、「群れ」の内部の統制・命令、第七に、責任とペナ ルティ、第八に、自律分散的意思決定、第九に、「群れ」の共通目的達成への期待、第十 に、「群れ」の共通目的達成に伴う金銭的期待である。これらを「群れ」が持つ一般的な

「10の特質」と呼び、以下に補足説明する。

「10の特質」が強ければ強いほど「群れ」は硬く、統率がとれ、リーダーが明確化し ていき、「安定性」を増し、「派閥」や場合によっては「組織」に近づいて行く。

4.2.1. 「群れ」形成の主体性

「群れ」の形成には、共通概念(共通目的)や共通の使命を提唱する者が最初に声を上 げ、「群れ」が形成されたのちには、その提唱者はコア・メンバーとなる。他のメンバー は、コア・メンバーのいう共通概念に共感し、心理的に共振し、提言と行動そして他のメ ンバーと同調し、共通概念の実現のために協働するようになる。「共感」、「同調」、「協働 意欲」が「群れ」の形成と存続に重要な「三つの要素」となる。動植物の「群れ」は、あ

企業組織内の「群れ」の出現

提唱者 三つの要素 行動

衰退

  共感

TMTの無力化 コア・メンバー   同調 提言

共通概念

  協働 回復策の模索

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る簡単なルールによる自己組織化によって形成されるが、人の「群れ」は知能にもとづ き、コア・メンバーと共通概念に共感・同調・協働する者によって形成される。従って、

ヒトの「群れ」の形成は、自然発生ではなく主体性に基づくことが必要である。共通概念 が明確であり、「群れ」の形成の主体性が強い「群れ」は、共通概念の異なる他の「群 れ」に対して排他性を持ち、「硬い」「群れ」となる傾向を持つことになる。

4.2.2. 「群れ」の共通概念(共通目的)

共通概念(共通目的)は、メンバーが共有する概念であり、達成しようとする目的であ る。企業組織内に生まれる「群れ」では、属する企業組織の繁栄、または衰亡からの脱却 のために最善と考えられる策を話し合い、決定し、提言し、実現のために行動することに なる。明瞭でメンバーが都度最善と確信する共通概念は、「群れ」のメンバーの結びつき を硬くし、強い共感、同調、協働を可能にする。

4.2.3. 「群れ」の共通概念に基づく排他性

「群れ」は共通概念(共通目的)に共感、同調、協働するものによって形成される。メ ンバーを結びつけるのは先ず「共通概念(共通目的)」である。共通概念はメンバーが心 理的に共振し、共感し、同調し、実現に向けて協働しようとする内容であり、その内容は 明確であり、メンバーの確信を伴う内容である。共通概念が強ければ強いほど、「群れ」

は硬い「群れ」になる。硬い「群れ」は、メンバーの確信する共通概念と異なる共通概念 を持つヒトやヒトの集団、すなわち他の「群れ」に対して排他性を持つことになる。「群 れ」は、自身の共通概念に沿うものは受け入れようとし、沿わないものは退けようとする 排他性を持つのである。だからといって。「群れ」の「境界」は依然漠としている。

4.2.4. 「群れ」の硬さ(緊密性)

「群れ」はヒトの「集団」であり、メンバーが共に考え、共に行動するためにはある緊 結剤が作用するはずである。メンバーを緊結し、硬い「群れ」にするには、共通概念(共 通目的)が緊結剤として作用する。硬い「群れ」のメンバーを結びつけている緊密性は、

「群れ」と他の「群れ」との漠たる「境界」をより明確にし、「群れ」のウチとソトを明 確にするはずである。しかし、「群れ」は「やわらかい集団」であり、そのウチとソトを はっきりと分ける「境界」は明確ではない。「境界」が漠とした「群れ」は、その内部に

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階層を持たず、指揮命令系統をもたず、メンバーは水平な関係で自由に会話して共通概念 の理解や強化そしてその実現を推し進めようとする。「群れ」は「やわらかな」集団であ り、その緊密性は本来は強いものではない。

4.2.5. 「群れ」の内部の伝達(コミュニケーション)

「群れ」の内部では、メンバー間の階層はなく、職位の上下、年齢の高下、在職期間の 長短、学歴、男女の別などにかかわらず、メンバーが自由に、平等に話し合えることが本 来の姿である。また、共通概念はもとより、それぞれのメンバーが持っている情報の中 で 重要と考える内容、それぞれのメンバーが他のメンバーから得たいと考える情報は、メン バー間で分け隔てなく伝達される。それぞれのメンバーは、知るべきことは知り、知らな いことは知ることができるように密な伝達(コミュニケーション)が行われるのである。

このような「群れ」の内部の良好な伝達は、一方通行ではなく、押し付けでもなく、共通 概念の共有を可能にし、共感・同調・協働を促進するのである。

4.2.6. 「群れ」の内部の統制・命令

通常ヒトの「集団」が硬くまとまり、期待される役割を果たすには、「集団」の運営に 関するルールが定められ、メンバーはそれを守り、ルールが遵守されているかどうかを監 視され、必要に応じてルールは更新されていく。しかし、「群れ」にはリーダーはおら ず、メンバー間の関係は水平且つ平等であって「やわらかな集団」である。メンバーは自 由な伝達(コミュニケーション)を行うことが可能であり、会話を通じて常に共通概念や 相互の理解を共有している。メンバーは相互に指揮命令し監視し、強制するのではなく、

お互いに最善と考えることを示唆・助言するネットワーク型の関係である。そのような関 係を通じて、より良い示唆や助言を数多く行うものが尊重されるようになっていく。しか し、そのような尊重は、指揮命令・監視・強制に繋がるものではなく、メンバーは依然水 平で平等な関係を保つ。「群れ」という「やわらかな集団」は、メンバー自身の判断で

「群れ」を離脱することがあっても、メンバーの離脱によって「群れ」は消滅するほどの 大きな打撃を受けることはないのである。「群れ」はネットワーク型集団であって、自由 でやわらかな集団なのである。

「群れ」のメンバーは、何時でも、どの階層に属していても、何人でも「群れ」に参加 し、また離脱することができる。参加は、共通概念に対する共感・同調・協働意欲の「三

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