• 検索結果がありません。

ドイツの移転価格税制の強化策に係る私的見解

第3章 ドイツにおける所得相応性基準の導入

第3節 ドイツの移転価格税制の強化策に係る私的見解

うな意見が聞かれた。

「 無形資産から生ずる収益が当初の見積もりよりも乖離した場合、その 乖離の要因がそもそも無形資産の移転時点で内包していたものなのか、

それとも移転先により無形資産の価値が高められたのか分析する必要が ある。この規定を利用してドイツの税務当局が移転価格の課税を行った 場合、相互協議で外国税務当局がすんなり認めるとは考えられない。」

は必ずしもそのような状況とは限らないが、仮想的独立企業間テストにおい てより真実の値に近い独立企業間価格を算定するためには合理的な仮定であ ると考えられ、Germany's Draft Law で強く主張されているような比較対象 取引からの独立企業間価格との理論的な差異はあるとしても、それにより比 較対象取引が存在しない場合の当該仮定に基づく想的独立企業間テストによ る独立企業間価格の有意性を阻却するものではないと考えるところである。

加えて、ドイツはこれまでもシークレット・コンパラブルの使用を認めて いる国ではあるが、このような原則が法律に明記されたことにより、ドイツ ではシークレット・コンパラブルの使用が法律によって容認されたことにな るのではないかと思慮するところである。

2 ドイツの所得相応性基準に係る考察

今回の移転価格税制の強化により導入されたドイツの所得相応性基準につ いては、米国の制度と比較して以下のように考える。

所得相応性基準の適用期間

米国の所得相応性基準の適用期間は、財務省規則の適用除外要件から 5 年ということになると思われるが、ドイツでは対外取引課税法第 1 条 第 3 項に「当事者が調整条項を締結せず、重大な差異が取引後の最初の 10 年以内に生じたならば」と 10 年とされている。ドイツの場合、文書 化の義務期間が 10 年でありこれに整合的であるとは言え、無形資産に係 る商品等のライフサイクル等から鑑みても企業にとって 10 年の所得相 応性基準に係る義務はかなりの負担になるものと思われる。

所得相応性基準に係るセーフハーバー的な取扱いの有無

米国の所得相応性基準では、財務省規則の適用除外要件に「当初の予 測による期待収益等が実際の総利益等がその 80%以上かつ 120%以下な らば適用除外とする」というようなセーフハーバー的な取扱いが存在し

一方、ドイツでは、機能移転に関する法規命令第 3 条第 1 項で「実際 の収益に基づいた適切な取引価格が当初の合意レンジから外れる場合は 著しい乖離が存在する」と規定されており、「当初の合意レンジから外れ る」だけで「著しい乖離が存在する」こととされており、米国と比較し てかなり厳しい取扱いではないかと思われる。

上記のような観点から鑑みるに、ドイツの所得相応性基準については十分 な執行可能性が認められるものか、今後、2008 年 1 月以降の施行状況を注視 していく必要があると思われる。