『 監 1 ロ
:容易な理解については ぐ
点対称に関する大枠での理解・イメージ :有意差はない(問1,間2,問6)
: : : :
問いかけあり 問いかけなし :問いかけの有無
1 ロ
2TC・1TC TNC・1TNC l
: コ
点対称についての学習 :同一の学習内容 :
Figure4 点対称理解度に及ぼす問いかけ要因の影響の範囲
り 問いかけの影響の範囲
つまり,学習内容の理解において,最低限のレベルはどの条件におい ても保障できるけれども,問いかけを行うことでその理解にかかわる応
用範囲が少しずつ広がっていくと考えられる。Bandura(1971)はモデリ ングの限界はモデリングそのものの現象ではなく,その方法論によるも のであるとしていることから,教師間相互作用の内容をさらに検討すれ ば,それが影響を及ぼす範囲も広がる可能性が考えられる。T・Tにおけ る問いかけによって思考過程が明確となるが,その思考過程を利用して も問5は解くことが難しい問題であり,問いかけの影響が及ばなかった 範囲の問題であったと考えられる。言い換えれば,高度な思考過程を想 定した問いかけを意図的に構成していけば,理解への影響の範囲は広が
るものと考えられる。
2.学習ビデオにおける教師行動に対する児童の認知について
学習ビデオ視聴後に実施した質問紙への反応について分析したとこ ろ,教師行動の認知得点全体では,問いかけ有り条件において,2丁条 件が1丁条件よりも平均値が有意に高かった。また,授業者が1丁条件 では,問いかけ無し条件が問いかけ有り条件よりも教師行動認知得点の 平均値が有意に高かったが,授業者2丁条件では,問いかけ有り条件が 問いかけ無し条件よりも教師行動認知得点の平均値が有意に高かった。
このことから,教師が1人よりも2人の方が問いかけ要因を児童は認知 しやすいことが考えられる。
項目3「(男の〉先生は間違った答えを発表していた。」では,2TC条 件の肯定群の人数が他の条件よりも有意に多かった。実際には1TC条 件の場合も,まちがった答えを表明しているが,児童にはそれが十分伝 わらなかったものと思われる。ここからも,2人の教師が問いかけをす ることにより,教師の意見表明の間違いに児童が気が付きやすくなるこ とが示唆された。
一方,項目1「(女の)先生は大事なことを繰り返していた。」では,2T
条件の方が1丁条件よりも平均値が有意に低く,また,問いかけがある 方がない方に比べて平均値が有意に低かった。つまり,児童は,2丁条 件よりも1丁条件の方が繰り返しをしていると感じ,問いかけある方が ない方よりも繰り返しが多いと感じていたと思われる。教師の人数によ る認知の差は,発言量がかかわっていると考えられる。発言内容は同じ であるが,発言量は2人の方が1人よりも半減するため,繰り返してい ないと感じたものと思われる。問いかけの有無による認知の違いは,問 いかけがある方が,一つのことに関して再度考えることになるので大事 なことを繰り返していると認知しているものと思われる。
他の項目の結果は当初から想定していたものであり,モデリングの前 提となる児童による教師行動の気付きがなされていたと考えられる。
3.算数科授業内容把握度得点について
算数科授業内容把握度得点については,因子分析をおこなったところ 4つの因子,「学習意欲の喚起」,「授業有用感」,「内容理解」,「イメー
ジ把握」が確認された。授業者の人数や問いかけの有無が,算数科の授 業内容の把握にどの程度影響を及ぼすのかを分析した結果,「授業有用 感」と「内容把握」に対する影響が示唆された。
「授業有用感」においては,問いかけがある場合は2丁条件の方が1丁 条件の平均値よりも高い傾向が見られた。また,2丁条件の場合は問い かけがある方がない方に比べて平均値が有意に高かった。このことから,
学習そのものが自分にとって有益であったと児童に思わせる要素が,
2TC条件に含まれていたものと考えられる。その要素は教師が意図的に 質問をしたり,間違えたりすることであると推測されるが,それに児童 が気付くようにするためには,教師は1人ではなく2人の方が効果的で あったのではないかと思われる。
「内容理解」においては,授業者要因の主効果が見られた。問いかけ の有無にかかわらず,1Tよりも2Tの方が児童は学習内容がよく分かる
と感じていたと思われる。
「学習意欲の喚起」と「イメージ把握」においては条件間で有意差が 生じなかった。「学習意欲の喚起」については,算数科においてビデオ を使った学習を児童はこれまで経験しておらず,ビデオによる学習の珍 しさが,授業者要因,問いかけ要因の影響を妨げたと思われる。「イメ ージ把握」については,どの条件も具体例を示しながらモデルを使って 指導を行ったので有意差が見られなかったと考えられる。
4.教師に対する 親近感 , 説明の分かりやすさ の認知
2TC条件では,女性教師には主に進行役を,男性教師には子どもの立 場に立った役割を与えた。1TC条件では,男性教師が自問自答型であっ た。2TNC条件では2人の教師が同程度指導内容を分担して児童に指導 内容を伝達するだけであり,1TNC条件では1人の教師(男性教師)が 指導内容を伝えるだけであった。指導内容は同じでも教師の役割が異な
っていたことから,児童の教師に対する親近感や説明の分かりやすさに ついて条件間で検討した。
教師に対する親近感や説明の分かりやすさについて2TC条件では女 性教師に対する親近感は男性教師に対する親近感よりも高かった。一方,
2TNC条件では男女の教師で有意差は見られなかった。このことから,
意見を修正したり,正しいことを述べたりする進行役に児童は親近感を 感じているのではないかと考えられる。教師が間違った内容を表明した り子どもの立場で質問をしたりすることは,児童にとって「正しく説明 していない」ととらえられ,それが親近感や分かりやすさにマイナスの 要素として影響しているのではないかと推察される。
5.自由記述について
ビデオを使った学習に対する自由記述の内容に条件差があるかどうか を分析した。その結果,「理解型」は有意ではなかった。どの条件も記 述内容として「よく分かった,分かりやすかった」という「理解型」が 一番多くかったため差が生じなかったと思われる。中学校の学習内容を ビデオによって指導したことによる新奇さが記述に影響を与えたのでは ないかと考えられる。
一方で,「意欲型」「発展型」「授業法認知型」に関しては2TC条件の 人数が他の条件に比べて多い場合が見られ,また,記述者の人数におい ても2TC条件が1TC条件よりも有意に多かった。このことから,2TC 条件用のビデオに構成された問いかけ要因が,学習に対する感想にも影 響を及ぼしたのではないかと思われる。
6.課題
学習内容の理解は,児童の数学的な考え方の形成に不可欠な要素であ ると想定し,研究2を行った。
研究1で作成した教師間相互作用のパターンをもとにした問いかけを T・Tの中に組み込むことによって,点対称理解度得点及ぴ算数科授業内 容把握度得点に影響を及ぼすことが示唆された。研究3では,研究2に おけるビデオ学習の台本をもとにして,児童が数学的な考え方を形成す るため教師間相互作用の在り方について考える必要があると思われる。
また,児童がモデリングの前提としてビデオ内の教師行動を認知する ことも示唆された。しかし,モデリングが行われていることは示唆され なかった。T2の行動を児童が観察し,それを実際の行動にどの程度移
していくのかということを検討していく必要があると考えられる。
なお,研究2における考察の概要はFigure5に示している。
授業形態
・人数(2T・1T)
・相互作用的な 問いかけの有無
問いかけ
モデリング
知識・理解 技能・表現
数学的な考え方
児童の教師行動の認知
関心・意欲・態
ド し
1 ・ビデオ学習 ・
し ド
1 ・中学校教材 :
: ・新たな群の編成 1
(実験目的の検討を
妨げていると思われるもの)
Figure5研究2の考察の概要
研 究 III
目 的
丁・Tにおける教師間相互作用が小学校算数科の児童の数学的な考え方 の形成に及ぼす影響を検討することを目的とする。
方 法
1.対象者
対象は、愛媛県内公立K小学校5年生4クラス121名(男子66名,
女子55名)であった。ただし,分析の内容によっては欠席者を除いて いるため119名となっている場合もある。本研究の目的と算数科の授 業内容と実施時期を総合的に判断して5年生を対象とした。
2.実験計画と条件の構成
学級要因(4)×測定時期要因(事前・事後1・事後218))の要因計 画的デザインで実験を行った。学級は4つ設定したが,条件は教師間 相互作用を設定したT・Tと教師間相互作用を設定していないT・Tの 2つであったため,2学級ずつ割り当てた。
3.学習内容
1)単元 小学校5年生算数科「三角形・四角形の角」,「変わり方の きまり」の2単元を指導した19)。「三角形・四角形の角」では,三角形 の内角の和の求め方を考えたり,多角形の内角の和を求めたりすること を主な学習の目標とした。「変わり方のきまり」では,表を使って変化 の規則性を見つけることを主な学習の目標とした。
18) 究3では2単元,学習を行うため「三角形・四角形の角」終了時点を事後1とし,「変わり 方のきまり」終了時点を事後2とした。
置9) くわく算数5年生上巻(啓林館)における単元名を記載している。