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セルの記述方法

ドキュメント内 ii PHITS (ページ 113-116)

3.6 粒子の表式

4.6.2 セルの記述方法

任意の形状の構造物を仮想空間に構築する場合、最初にその構造物の表面を座標空間において定義し、次 に対応する領域をその面で閉じることによってセル(小部屋)をつくる、という方法があります。この方法

はGeneral Geometry(GG)の考え方に基づいており、面の表側と裏側を区別して表現し、更に集合代数の演

算子を利用することによって各セルを定義します。

考えている領域が定義した面の表側と裏側のどちらに属するかを区別するために、x,y,zで記述した面の 方程式を利用します。具体的には、方程式f (x,y,z)=0で定義された面があった場合に、ある領域の中の座 標(x0,y0,z0)を代入した f (x0,y0,z0)が正であればその領域はプラス側、負であればマイナス側と表現しま す。例として、

List 4.10

[cell]セクションの例題(1)

1: [ C e l l ]

2: 1 0 -10

3: 2 -1 10

4: [ S u r f a c e ]

5: 10 SZ 3 5

を考えてみます。5行目のSZを用いて定義される面番号10の面は中心を(0,0,3)、半径を5cmとする球 面であるため、方程式は f (x,y,z) = x2+y2 +(z−3)2−52 = 0となります。球の内はマイナス側、外は プラス側と定義されますが、これらは球の中心の座標(0,0,3)や球の外の適当な座標(0,0,10)を代入して、

f (0,0,3)=−25<0, f (0,0,10)=24>0となることから確認できます。[cell]セクションではこの様な領 域の区切り方を行った上で、必要に応じて各領域にセル番号を付与します。例題(1)の2行目では、セル番 号1のセルがボイド(真空)であることと、その領域が球面のマイナス側であることが定義されており、図 16で示す仮想空間を構築します。図16は、例題(1)でつくられる領域をxz平面で切った断面図として見た

ものです。本来は球ですが、2次元平面で見た結果円となっています。例題(1)の3行目では外部ボイドが 明示的に定義されており、そのセル番号を2と指定しています。

−10 −5 0 5 10

−10

−5 0 5 10

z [cm]

x [cm]

void 1

図16: 例題(1)の空間をxz平面で切り取った断面図。セル番号1の領域はボイド(真空)。

例題(1)の球面の様に1つの面だけで閉じた空間が定義できる場合は簡単ですが、[surface]セクショ ンで定義できる面の多くは半無限領域をつくるため、幾つかの領域を組み合わせる必要があります。これを 行うにあたって、PH ITS では集合代数の考え方を導入しており、次の演算子を用いて閉じた領域を構成しま す。演算子は⊔(空白),:,#の3つで、それぞれ積(and),和(or),否定(not)を表します。また、( )で囲ん だ範囲は1つの領域とみなします。ただし、⊔(空白)と:は面番号同士を演算するのに対して、#はセル番号 に掛かります。また、( )を用いてまとめた領域に対しては、どの演算子でも掛けることができます。そ れでは、演算子を用いた次の例を考えてみましょう。

List 4.11

[cell]セクションの例題(2)

1: [ C e l l ]

2: 1 0 11 -12 13 -14 15 -16

3: 2 -1 #1

4: [ S u r f a c e ]

5: 11 PX -6

6: 12 PX 6

7: 13 PY -6

8: 14 PY 6

9: 15 PZ -6

10: 16 PZ 6

この例題では半無限領域をつくるPX,PY,PZの面を使用して、一辺が12cmの立方体をつくっています。

PX,PY,PZはそれぞれyz,xz,xy平面に平行な面を定義する面記号であるため、例えば5,6行目で定義してい る面番号11,12の面は、それぞれ座標(−6,0,0), (6,0,0)を通りyz平面に平行な面となります。これらの方程 式はそれぞれx+6=0, x−6=0ですから、原点(0,0,0)を含む領域は、面番号11に対しては0+6=6>0 によりプラス側、面番号12に対しては0−6=−6<0よりマイナス側となります。よって、面番号11と 12で囲まれた領域は“11のプラス側かつ12のマイナス側”となり、演算子⊔(空白)を用いて11⊔-12と記 述します。面番号が13∼16の面も同様ですから、x,y,zの3方向に関して閉じた空間を表現するには、2行 目の様に6つの面を⊔でつなげた書き方をします。例題(2)ではこの閉じた領域をセル番号1でかつボイド であるとして定義しています。図17に、この例題でつくられる領域をxz平面で切った断面図として示しま した。本来は立方体ですが、2次元平面で見た結果正方形となっています。また、2行目ではセルに掛かる 演算子#を用いて外部ボイドを定義しています。これはセル番号1の領域以外の範囲を対象にするという意 味になります。

−10 −5 0 5 10

−10

−5 0 5 10

z [cm]

x [cm]

void 1

図17: 例題(2)の空間をxz平面で切り取った断面図。セル番号1の領域はボイド(真空)。

次は( )と:の記号を使用した例です。例題(1)で示した球と(2)の立方体を合わせた形状を考えてい ます。

List 4.12

[cell]セクションの例題(3)

1: [ C e l l ]

2: 1 0 -10 : (11 -12 13 -14 15 -16)

3: 2 -1 #1

4: [ S u r f a c e ]

5: 10 SZ 3 5

6: 11 PX -6

7: 12 PX 6

8: 13 PY -6

9: 14 PY 6

10: 15 PZ -6

11: 16 PZ 6

2行目の( )で囲んだ部分が例題(2)のセル番号1の領域に相当しており、これと例題(1)の球面の内側 を合わせた領域がこの例題ではセル番号1として定義されています。図18に示したのが例題(3)の領域を xz平面で切った断面図です。本来は立方体から球の一部が飛び出た形状をもつ立体ですが、2次元平面では 図の様になっています。本例題の様に、領域を足し合わせる場合に使用する演算子が:です。

−10 −5 0 5 10

−10

−5 0 5 10

z [cm]

x [cm]

void 1

図18: 例題(3)の空間をxz平面で切り取った断面図。セル番号1の領域はボイド(真空)。

例題(4)では更に、立方体を球の内側と外側に分けた場合を考えます。

List 4.13

[cell]セクションの例題(4)

1: [ M a t e r i a l ] 2: mat[1] 1H 2 16O 1 3: [ C e l l ]

4: 1 0 -10

5: 2 1 1.0 10 (11 -12 13 -14 15 -16)

6: 3 -1 #1 #2

7: [ S u r f a c e ]

8: 10 SZ 3 5

9: 11 PX -6

10: 12 PX 6

11: 13 PY -6

12: 14 PY 6

13: 15 PZ -6

14: 16 PZ 6

[surface]セクションは例題(3)と同じです。5行目で“立方体の内側でかつ球の外側”の領域を記号⊔(空 白)を用いて記述しており、これをセル番号2と定義しています。また、本例題では[material]セクショ ンで“water”を物質番号1として定義しており、セル番号2の領域には粒子密度が1.0×1024atoms/cm3

“water”が満たされています。図19に結果を示します。ただし、xz平面で切った断面図です。セル番号1は

4行目で定義しており、この球の中はボイドとしています。外部ボイドの定義は6行目で行っており、セル 番号1と2の領域を除いた他の全てが外部となっています。

−10 −5 0 5 10

−10

−5 0 5 10

z [cm]

x [cm]

water void 2

1

図19: 例題(4)の空間をxz平面で切り取った断面図。セル番号1の領域はボイド(真空)とし、セル番号2 の領域には水を満たした。

ドキュメント内 ii PHITS (ページ 113-116)