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第 7 章 おわりに

2 今後の課題

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った。男子会話においては、フォローアップインタビュー調査により、新たに、〔6〕「ずっ とため口なので、その流れ」、〔8〕「気持ちが伝わりやすいから」、〔9〕「敬語を使う余裕が なかった」という場合に、ダウンシフトが起こったことが分かった。

最後に、女子会話について、フォローアップインタビューと会話分析の結果との比較を 行った。女子会話は③組の対話者だけ丁寧体を基調に話しており、他の組では普通体を基 調にしている。フォローアップインタビューでは、Fと

F3

は異なるスピーチレベルの基調 を選択しているため、中途終了型発話を多めに使用したりして、言葉遣いに気を遣ってい ることが判明した。これは会話の分析の結果と一致している。また、普通体基調の会話で は、普通体発話には改まり度や丁寧さのレベルが分かれていることを示唆する発言が現れ た。

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関係がどの程度一般的なものであるかについて、今後の検証が必要である。普段の自然会 話では、今回の会話データに現れた発話機能以外に、【依頼】【命令】【助言】【禁止】のよ うな行為要求のものなどもある。また、データの量が多くなると、話題の種類が多様にな ることが考えられる。発話機能と話題の枠組みからスピーチレベルを考察するには、さら に多種多様なデータを見なければならない。また、日本語教育の現場でのスピーチレベル の取り扱いを調べることと、日本語学習者によるスピーチレベルの使用実態を考察するこ とが必要であると思われる。日本語教育の立場からスピーチレベルを考察することは、現 代日本語のスピーチレベルの実態を認識することに、示唆を与えることを期待する。

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