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シンガポール における地域統括会社の特徴

‑インタ ビュー調査か ら明らかにな ったこと‑

これまでシンガポールにおける地域統括会社5社のケースを見てきた。ここで は,これ らのケースをもとに,シンガポールにおける地域統括会社の特徴につい て詳 しく論 じることにす る。 ここでわれわれが論 じたい特徴は次の3点である。

まず第一は,

OHQ

のステータスに対す る魅力の低下である。第二は,地域枕 括会社の現状である。これは一言でいえば 「サー ビスすれ ど統括せず」というこ

とである。そ して最後 に,地域統括会社の存在意義について論 じていきたい。

(1)シンガポール政府のOHq制度 と日本企業の地域統括会社

シンガポールには地域統括会社 に対 して優遇税制 をお こな う

OHQ

(オペ レー ショナル ・ヘ ッ ドクオーター :地域統括本部)制度が用意 されている。前述 した ように, この制度の利用は

1 00

件 を越えているという。 この

OHQ

のステータ スを獲得 した企業は,①

OHQ

業務 による利益 に対す る法人税 を

1 0 %

に減額,② 海外の子会社及び関連会社か らの配当所得の免税,といった税制上の恩恵が受け

られるのである。

われわれは,現地調査 をお こな う前に,文献な どの資料か ら,かな りの 日本企 業は,この制度 を利用 しているという感触 を得ていた。ところが,実際に現地で 話を聞いてみると, この制度はあまり人気がないことがわかった。

図表 1にあるように,われわれの調査対象企業のうち,OHQのステータスを 取得 していたのは

SONI S

(取得年

1 9 87

年),

AMS

(同

1 9 8 9

年),

NECBCCS

(同

1 9 91

年)の

3

社であった。

PAC

と東芝 アジア ・パ シフィックは取得 の予定 はなかった。

そ こでわれわれは,なぜ このステータスを取得 したのか,なぜ取得 しないのか を尋ねてみた。その結果次のような ことがわかってきた。

まずoHQのステータスを取得 した動機 として共通 している点は,シンガポー ル政府か らの熱心な誘いがあった ということである。

NEC

においては,シンガ ポール政府か らの積極的な誘 いに応 じるために,OHQ制度の要件を満たせ るだ けの機能 をわざわざそろえた という。

また,このOHQのステータスの取得はある意味でネゴシエー ションの世界で あるということも聞いた。つま り,シンガポール政府 としては,このステータス に重みを持たせ るために有名な多国籍企業に取得 を促 したのである。また,有名 な企業であれば,取得の要件を修正 してで も取得 を促 しているようである。した がって,昨今のシンガポールか ら流れて くるOHQのステータスを獲得す る企莱 が増えた という情報は注意 して聞 く必要がある。

一方,最近ではOHQのステータスはメ リッ トよ りもデメリッ トがあると考 え ている企業 もある。つまり,OHQのステータスをもつ ことによる義務が重 く,

もっていない方が楽 という考 えもある。また,地域密着型なオペ レー ションにつ いては,OHQのメリッ トは比較的少ないと考える企業 もあった。では,OHQの ステータスには,どのような義務があるのだろうか。その例 としては,R&Dを 含めた相 当な人的投資が必要であるとか,貸付資金の調達はシンガポール国内で お こな うこと,な どがある (中垣

1 9 9 3 )

0

そのほか,シンガポール政府が法人税 を下げていく傾向にあ り,あま り下が り すぎると日本の税制 との関係で優遇税制でな くなるともいわれている。つま り,

シンガポールの現在の法人税 は26%程度であるが,これが25%を切 ると,日本 において課税義務が生 じることにな り,優遇税制のメリッ トがな くなるのである。

このように,一般的にいわれているほど,OHQのステータスは人気がな く,逆 にデメリッ トが大 きくな りつつあると考 える企業が増えてきている

ただ し, このステータスに関 して 日本企業は,地域統括 をお こな うことと,

OHQのステータスを取得す ることとを別次元 に考 えている。すなわち,OHQの ステータスは節税 を目的とした ものや,政府 との関係を重視す る目的で取得す る のであ り,地域統括 にかん してはOHQのステータスの有無に関わ らず必要があ ればお こな うということである。

( 2 )

サー ビスすれど統括せず

シンガポールにおける地域統括会社は,地理的に日本 と近いことか ら,北米や 欧州 にある地域統括会社 とはその性格 を異にしているそれはアジアにおける日 本企業の事業展開の規模や歴史,そ してアジアの国々の諸事情を考 えた場合,冒 本か ら統括す ることが可能だったか らである。したがって,アジアの地域統括会 社は, 日本のアジア部門の出先機関になっているケースが多 く見受け られる

それは地域統括会社の社長が本社でどのような職位にあるかでもわかる。北米 や欧州の地域統括会社の社長は 日本では役員クラス以上であることが多い。とこ ろが,アジアにおける地域統括会社の社長は部長 クラスが多いのである。

また,地域統括会社が どのような活動をお こなっているのかをみても,アジア の地域統括会社の特徴がわかる。今回のイ ンタビュー調査をお こなって印象的な 言葉 としては,「サー ビスすれ ど統括せず」 というものであった。 これはある調 査対象企業で聞いた言葉だが,アジアの地域統括会社 を象徴す る言葉 といえる。

た とえば,東芝ではスタッフサー ビスな どを提供す るリージ ョナルセ ンター と しての機能のほかIPO,物流戦略,マーケテイング機能の一部を担当している。

しか しなが ら,統括機能的には人事権 もお金 もな く,身軽な組織 となっている。

さらに,事業における最終責任は事業本部が持つ (指揮命令系統は縦)ことか ら, 東芝のシンガポールにおける地域統括会社は緩やかな助言機構 となっている。

また,NECでは,マーケテイング,IPO,そ してスタッフサー ビスをお こなっ ている。ここでは統括機能 としてはIPOが柱であるが,NECの場合,アジアの IPOの本部は香港である。またスタッフサー ビス としては域内人事のコンサルタ ン トな どをお こなっているが,実際に採用や労務管理 を担当す るのではな く,揺 用のア ドバイスや,若手 日本人向けの教育な どをお こな うものである。NECの地 域統括会社においても本社の役員が トップになっているわけでないので,事業部

間の調整は無理であ り,地域戦略をたて られないということであった。つまり, 現地法人には口は出せず,コーディネーションだけをお こなっているということ である。ここで も 「お金 も人事権 もないのに統括できるか」,という感 じである。

そ して,AMS(アジア松下)の場合 も同様 に,地域統括 をお こな うものではな かった。ここはシンガポール政府か ら

OHQ

のステータスを獲得 しているが,調 査の申し込みをした際に,地域統括会社ではな く支援会社であると念を押された。

したがって,ここでの中心的な機能は域内現地法人の支援機能である。た とえば, 人材教育や,生産技術 に関す る トラブル情報,解決 ノウハ ウな どの情報 を集め, それ を教育 プログラム化 していくといった活動をお こなっている。地域戦略 とし ては,地域の青写真 を描 き方向付けをお こなっているが,日本本社 にアジア地域 本部があ り実質的にはそ こが担当している。そ ういう意味で支援会社 となってい

る。

このように,アジアの地域統括会社は 日本 に地理的に近 いこともあ り,実質的 な統括機能 をもたされていないのが現状である。多 くの企業に共通す ることは, できることをや ってい くということである。

( 3

株口識セ ンターと しての地域統括会社の可能性

これまでみてきたように,今回調査 した企業のほとんどでは地域 におけるいわ ゆる統括 という機能 を遂行できるだけの力を持ってはいなかった。そ うなると地 域統括会社 としての存在意義はどこにあるのだろうか,そのような会社の存続の 必要性はあるのだろうか,考えて しまう。

われわれはこの疑問を解決す るために 「知識セ ンター」として地域統括会社 を 活用 していくことの可能性 を探 ってみた。

東芝では,事業部によって事業が継続的に行われる場合 と,継続性がない場合 があるという。この継続性がない例 としては重電部門がある。つま り,重電部門 では発電所などを作 るわけだが,その作業を行 っているときはた くさんのヒ トが 現地 にきているが,完成す ると帰って しまうのである。そ うなると,せ っか くそ こで得た ノウハウな どが分散 して,蓄積 されないのである。そ こで地域統括会社 にそのときのノウハウを蓄積 し,今後の地域 における事業活動 にそのときのノウ

ハウを提供す ることをお こなっている。こうして,事業活動の重複 を回避すると ともに,地域に根付いた経営をお こなっていこうとしているのである。

また,アジア松下では,機能 として製造力強化セ ンター と人材開発セ ンターを もっている。これ らの機能はある意味で補完的である。つまり,製造力強化セ ン ターの機能は,現場における共通項の情報 を集めることや,生産技術のための訓 練,そ して品質管理の巡回チェックな どである。そ して,このような活動を通 し て集 まってきた トラブル情報や解決 ノウハウを,人材開発セ ンターでプログラム 化 し,域内の現地法人へ教育プログラム として提供 している。これによ り事前の∫

トラブルの防止へ とつなげている。

このように,地域におけるノウハウな どの知識情報を蓄積す る場所 として,地 域統括会社が有効 に活用 されている。

今後は,このような知識情報 をうまく提供できるか,あるいは,事業部が この ような知識情報 をもつ地域統括会社 をうまく使っていけるか,ということか ら地 域統括会社の重要性が増す可能性がある。

まとめ

本稿ではこれまで,シンガポールにおける地域統括会社の調査結果 をもとに, その特徴 について論 じてきた。そ こでは,シンガポール政府による

OHQ

のス テータスの魅力の低下,統括 をお こな うというよりサー ビス提供を主 としている 地域統括会社の現状,そ して知識セ ンター としての可能性 をもつ地域統括会社,

ということについて論 じてきた。

今回シンガポールにおいて地域統括会社 を訪問して感 じた ことは,多 くの企業 が 自分たちの会社の位置づけや活動に悩みを抱えている,ということである。す なわも,現状ではあま り力がな く事業部に対 して助言機構 にすぎないということ か ら, これか らどのような方向に発展 させていこうか ということが感 じられな かったのである。

もちろん今後はどのような機能を強化 していきたいのかということは考えてい るが,明確な将来像 を持っていない印象を受けるのである。どち らかというと,