J- PARC
4.3 中性子 β 崩壊の抽出
4.3.1 シグナルイベントの見積り S β
4.3 中性子β崩壊の抽出 63
(i) Neutron βdecay (ii) Cosmic Ray
β-✂
±
(iii) Env. / Upstream γ
e-γ
(iv) TPC Activation
e-n
(v) 3He capture t p
(vi) CO2 capture γ
13C γ
e-(viii) 6LiF capture γ
e- n
γ
(vii) Scattered neutron βdecay
β -n
RI TPC
Neutron Beam
x y
図4.5 シグナル/ バックグラウンドイベントのイメージ:TPCをxy平面で描いている。
中央の四角は中性子ビーム位置である。荷電粒子(実線) の飛跡のみがTPCで検出され、
中性粒子(点線)の飛跡は検出されない。
TPC内部放射化 Bact
散乱中性子がTPC内壁で吸収される際、式1.13の反応だけでなく放射性核種が生成され これらが後にβ崩壊することでバックグラウンドとなる(図4.5 (iv))。最も生成される核種は
20F (τ1/2 = 11.2 s)、次いで8Li (τ1/2 = 840 ms) である。これらの半減期は中性子ビーム間
隔40 msより長いため生成数と崩壊数が釣り合いTPC中の時間構造はほぼ平坦になる。この
バックグラウンドは、4.3.3節の6LiFシャッター“open”時の “Fiducial”と“Sideband”の引 き算によって排除する。また、6LiFシャッター“close”時にはこれらのバックグラウンドは存 在しない。
上流起因γ 線 Bup
中性子が物質に吸収されると多数のγ 線を発生する。特にSFC のボロンゴム内壁や磁気 スーパーミラーで発生したγ線はビーム軸を通ってTPCに進入しガス中でコンプトン電子を 叩き出しバックグラウンドとなる(図4.5 (iii))。6LiFシャッターを閉じγ 線由来のバックグ ラウンドを見積もる事で排除する。
3He吸収反応 B3He
3He 吸収反応は中性子β 崩壊と比較して単位距離あたりのエネルギー損失が大きいため Field Pulse Heightの抽出条件で排除する(図4.5 (v))。3He吸収反応のシミュレーション図 4.6から調整を行い、β 崩壊への混入のない25 keVを閾値としている[16]。
Field Energy Deposit Maximum [keV]
0 10 20 30 40 50 60 70
Count
10-1
1 10 102
103
Experiment MC Beta decay MC 3He capture
図4.6 3He吸収反応と中性子β 崩壊の切り分け[16]:3He吸収反応のシミュレーション は増幅過程での飽和の再現が難しく完全ではないが分布から25 keV以下には漏れ込みがな いとして閾値が決められている。
CO2 吸収反応 BCO2
TPCガスであるCO2 中の12Cが中性子を吸収すると即発γ 線を放出し原子が反対方向に 反跳される。
12C + n→ 13C (1.01 keV) +γ (4.95 MeV) (4.4) 反跳された13CはTPC中で数mmの範囲に電離電子を生み出す。同時に放出されたγ 線が TPC中の電子をコンプトン散乱によって叩きだした場合、ビーム軸上の1.01 keVの点状イベ ントと合わせてβ 崩壊のバックグラウンドとなる(図4.5 (vi))。表4.3にTPCガスの同位体 比、中性子吸収反応断面積、γ 線エネルギー及び反跳原子のエネルギーをまとめた。天然同位 体比と吸収断面積を考慮するとTPC動作ガスに用いられる元素で式4.4の反応が最も発生す る。γ 線がコンプトン散乱を起こしていない場合は、Anti Point Like Cutによって排除する 事ができる。Anti Point Like Cutの閾値は、CO2 吸収反応を排除しつつ β 崩壊信号の抽出 効率を最大化するよう決定した。コンプトン散乱を起こしたイベントについては、シミュレー ションを用いて4.3.4節で見積もる。
4.3 中性子β崩壊の抽出 65 天然同位体比[%] 吸収断面積σγ [barn] Eγ [MeV] Erecoil [keV]
1H 99.985 0.3326 2.22 1.32
2H 0.015 0.000529 6.25 6.96
4He 99.99986 0 ― ―
12C 98.9 0.00353 4.95 1.01
13C 1.1 0.00137 8.17 2.56
16O 99.762 0.0001 3.27 0.339
17O 0.038 0.236 4.37 0.570
表4.3 TPCガス 中性子吸収断面積、γ線 及び 反跳原子のエネルギー[29]
散乱中性子6LiF吸収反応 BLiF
TPCガスで散乱された中性子は940 barn の大きな吸収断面積を持つ6Li に吸収されるた めバックグラウンドにならない*1。ところが、8.3×10−5の割合で即発γ 線が発生し、コンプ トン散乱によって電子を叩きだすとβ 崩壊に対するバックグラウンドとなる(図4.5 (viii))。
6LiF板*2に含まれる元素の割合とγ 線放出確率を表4.4にまとめた。このバックグラウンド は、中性子β 崩壊と同じ時間構造を持つためTime of Flightの引き算で除くことができず、
コンプトン電子はTPC内壁から一様に発生するためシグナル抽出で完全に除くことができな い。このバックグラウンドについては、シミュレーションを用いて4.3.4節で見積もる。
モル比 σγ [mbarn] γ 線エネルギー [keV] 平均γ 線本数
6Li 0.173 39±4 478 - 7246 1.41
7Li 0.009 45±3 981 - 2032 1.03
C 0.212 3.53±0.05 595 - 4945 1.16
F 0.606 9.6±0.5 117 - 6600 2.78
表4.4 6LiF板に含まれる元素の割合とγ線放出の吸収断面積[29]
散乱中性子β 崩壊 Bscatβ
TPCガスで散乱された中性子が6LiF壁に到達する前に β 崩壊した場合(図4.5 (vii))を、
シグナルと捉えるかバックグラウンドと捉えるかは解析手法に依って選択することができる。
シグナルと捉える場合は散乱中性子の 3He吸収反応もシグナルと見なし、バックグラウンド と捉える場合は同反応をバックグラウンドと見なすこととなる。散乱中性子のβ 崩壊の抽出
*1 6Li +n→α+t (1.13)
*2 6LiF板はLiF:PolyTetraFluoroEthylene = 30wt%:70wt% から成る。
効率を見積もることは難しいため、本解析ではバックグラウンドと捉えて解析を行った。シ ミュレーションを用いて4.3.4節で見積もる。