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第 3 章 直鎖状数珠繋ぎ構造をもつシリカ充填ゴムの粘弾性変形挙動 23

4.1 ゴム単相の変形挙動評価

4.1.2 ゴム単相モデルの解析結果

図4.4,図4.5はそれぞれ正規分布,ダブルピーク型分布の不均一性を導入したときの

(a)公称応力―ストレッチ関係,(b)ヒステリシスロスである.図中の Homogeneous はセグメント数Nが全てN0=14.0の均一なゴムの計算結果(均質化有限要素法を使わ ずに構成式から計算される応答)である.分布を導入しない場合に比べ,引張中のゴ ムの応力上昇ならびに最大引張(λ2 = 2.0)時の応力は,正規分布,ダブルピーク型 分布のいずれもセグメント数Nの分散を大きくするほど大きな値を示した.ただし正 規分布を導入した系では応力上昇はわずかであり,ダブルピーク型分布の方が顕著で ある.一方でヒステリシスロスはどの分布形態の場合でもほとんど変化がない.

図4.6〜図4.8に各モデルでの最大引張時(λ2 = 2.0)における分子鎖ストレッチλc の分布,引張方向応力σ22分布,セグメント数の変化量∆N分布をそれぞれ示す.図 中の上部に記載した数字はユニットセル全体での各値(λc,σ22,∆N)の平均である.

図4.6のλcの分布について,ひずみ制御で引張を行っているので平均値λ¯cはほぼ同じ であるが,(a)→(c),(d)→(f)と不均一分布の分散が大きくなるにつれ,分子鎖スト レッチλcの小さい部分(青〜青緑色)と分子鎖ストレッチλcの大きい部分(黄緑〜赤 色)のコントラストが明瞭となる.これはユニットセルに不均一分布を導入したこと

(a) Nominal stress-stretch relations (b) Hysterisis loss

Hysteresis loss [J/m3 ]

0 0.03 0.06 0.09 0.12

Nominal Stress Σn22[MPa]

Stretch λ2 Homogeneous ND1 ND2 ND3

1 1.5 2

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Fig.4.4 Comparison of (a) nominal stress-stretch relations and (b) hystere-sis loss of rubber (homogeneous vs. normal distribution of initial segment number N ).

(a) Nominal stress-stretch relations (b) Hysterisis loss

Nominal Stress Σn22[MPa]

Stretch λ2 Homogeneous DP1 DP2 DP3

1 1.5 2

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Hysteresis loss [J/m3 ]

0 0.03 0.06 0.09 0.12

Fig.4.5 Comparison of (a) Nominal stress-stretch relations and (b) Hysteresis loss of rubber (homogeneous vs. double peaks distribution of initial segment number N ).

で,絡み点の多い硬い部分(セグメント数Nの小さい部分)では変形が起こりにくく,

反対に絡み点の少ない軟らかい部分(セグメント数Nの大きい部分)では大きな変形 が生じるという,シリカ粒子を充填した時と同じ効果(59)を生じるためである.ダブ ルピーク分布を導入したモデルでは,正規分布を導入したモデルよりも硬い部分と軟 らかい部分の差がより大きく,変形していない部分と大きく変形している部分がより

明確に分かれている.

一方,図4.7のσ22の分布は,応力―ストレッチ関係で述べたように不均一分布の分 散が大きくなるにつれ,σ22の平均値σ¯22は増加する.これも未充填ゴムにCBやシリ カといった弾性体粒子を加えた時と同様の効果(59)による.すなわち,変形しにくい 硬い部分(セグメント数Nの小さい部分)が増えると,系の中で変形を担うゴムの見 かけの体積が減少し,分子鎖の配向硬化が強くなるため同じひずみ下では系全体の応 力σ22が大きくなる.

ゴム単相の系では分子鎖ストレッチλcに対するセグメント数の変化量∆Nは非常に 小さく,局所的な最大値で1.0にも達していない.そのため図4.8のセグメント数の変 化量∆N の分布は,次節のゲル相の∆N分布のカラーバーの範囲を合わせたためすべ て青となっており,∆N の不均一性はほとんど現れない.

1.57 1.33 1.09 1.81 2.04 2.28

(d)DP1 λ

c

(e)DP2 (f)DP3 (a)ND1 (b)ND2 (c)ND3 λ c=1.32 λ c=1.32 λ c=1.33

λ c=1.33 λ c=1.33 λ c=1.34

Fig.4.6 Distribution of molecular chain stretch λc.

(e)DP1 (f)DP2 (g)DP3 (b)ND1 (c)ND2 (d)ND3 σ

22

=1.54 σ

22

=1.57 σ

22

=1.64

σ

22

=1.56 σ

22

=1.65 σ

22

=1.85

3.25 2.38 1.51 4.12 4.99 5.86

σ

22

[MPa]

Fig.4.7 Distribution of tensile stress σ22.

4.83 2.49 0.15 7.17 9.50 11.84

N

(d)DP1 (e)DP2 (f)DP3 (a)ND1 (b)ND2 (c)ND3

N =0.15 ∆ N =0.16 ∆ N =0.16

N =0.15 ∆ N =0.16 ∆ N =0.19

Fig.4.8 Distribution of change in the segment ∆N.