第 3 章 直鎖状数珠繋ぎ構造をもつシリカ充填ゴムの粘弾性変形挙動 23
3.4 ゲル相の非アフィンモデル導入
3.4.1 非アフィンモデルによるゲル相のモデル化
Segment N
Stretch λ Ns=8.4 (Affine) Ns=8.4 (Non affine) Ns=6.4 (Non affine) Ns=4.4 (Non affine)
1 2 3 4
4 8 12 16 20 24
(a) True stress-stretch relations (b) Segment-stretch relations
loading
unloading
True Stress σ22[MPa]
Stretch λ Experiment
Ns=8.4 (Affine) Ns=8.4 (Non affine) Ns=6.4 (Non affine) Ns=4.4 (Non affine)
1 2 3 4
0 5 10 15 20
unloading loading
Fig.3.17 Comparison of (a) True stress-stretch relations and (b) Segment-stretch relations by affine model and non affine model.
ため,カップリング剤によるゲル相の物性変化が系の応答に現れず,一方シリカ含有 率とカップリング剤が共に増加すれば系全体に占めるゲル相の割合ならびに物性の寄 与が大きくなるためと考えられる.3.2.2節で説明したゲル相の変形過程にアフィン変 形を導入したモデルではヒステリシスはほとんどないと仮定したが,図3.16はシリカ 含有率・カップリング剤が共に増加することでヒステリシスが大きくなることを示し ている.したがってここではゲル相のヒステリシス増加を表現するために,非アフィ ンモデルによるゲル相のモデル化を行う.
3.2.2節で説明したアフィンモデルによるGel phase 2のゲル相と,8鎖モデルAの
要素αに2.3節で説明した非アフィン分子鎖網目モデルを適用したゲル相について,
λ = 4.0まで引張変形を与えた時の真応力ーストレッチ関係を図3.17(a)に示す.Gel
phase 2の材料定数は全て同じまま非アフィン変形を適用したNs=8.4のモデルに加え
て,変形抵抗の増大についても検討するためゲル相の初期セグメント数NsをNs=6.4,
4.4に変化させたモデルを作成した.赤色の線が3.2.1節で説明した「ゲル相と同じ 加硫度のゴム」の実験結果である.全てのゲル相モデルにおいて,総セグメント数 Nn(= nαNα+nβNβ +nBNB)はNn= 1.95×1027に統一している.各モデルのパラ メータを表3.3に示す.Ns=8.4(Affine)モデルとNs=8.4(Non affine)モデルを比 較すると,初期セグメント数は同じであるが,非アフィンモデルは引張時にセグメン
ト数の増大(分子鎖同士の絡み点の減少)を生じて応力軟化する.そのためアフィン モデルよりも応力上昇は少ないが,除荷時の応力低下が大きくなりヒステリシスは大 きくなる.
図3.17(b)に非アフィン変形による変形中のセグメント数変化を示す.アフィン変形
の場合は変形中のセグメント数変化を生じないため負荷・除荷を通してNs=8.4で一定 値である.一方非アフィン変形を適用した場合はゲル相モデル全体の引張変形λ2 = 4.0 に対するセグメント数の増加割合を100% としたため,初期セグメント数Ns=8.4,
6.4,4.4に対して,λ2 = 4.0において2倍のNs=16.8,12.8,8.8となる.除荷時はセ グメント数の変化は起こらない.
このような非アフィン変形を適用したゲル相の物性値を,3.3.1節で検討したシリカ 2粒子数珠繋ぎ構造で最も安定に解析を行うことのできた45°モデルに導入し,巨視 座標系のx2方向にu˙ = 100[mm/min]の一定な変形速度で最大伸びがλ2 = 1.5になる まで変形を与えて1サイクルの変形挙動を解析する.その他の解析条件は3.3節と同 様である.
Table 3.3 Parameter of rivised eight chain model (Gel phase, Non affine model).
Ns=8.4
CαR(=nαkBT) CβR= (nβkBT) CBR(=nBkBT) Nα Nβ NB
0.4283 0.42 0.10 8.4 8.4 8.4
Cˆ1A C2A mA Cˆ1D C2D mA
5.0×103 −0.50 3.2 3.0×103 −0.50 4.8
Ns=6.4
CαR(=nαkBT) CβR= (nβkBT) CBR(=nBkBT) Nα Nβ NB
0.6447 0.50 0.10 6.4 6.4 6.4
Cˆ1A C2A mA Cˆ1D C2D mA
5.0×103 −0.50 3.2 3.0×103 −0.50 4.8
Ns=4.4
CαR(=nαkBT) CβR= (nβkBT) CBR(=nBkBT) Nα Nβ NB
1.40 0.31 0.10 4.4 4.4 4.4
Cˆ1A C2A mA Cˆ1D C2D mA
5.0×103 −0.50 3.2 3.0×103 −0.50 4.8