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第 3 章 直鎖状数珠繋ぎ構造をもつシリカ充填ゴムの粘弾性変形挙動 23

3.2 ゲル相のモデル化

3.2.1 ゲル相物性見積もり実験

toluene

rubber silica filled rubber

mesh cage

gel and silica

press

Fig.3.2 Overview of experimental procedure of evaluation of gel phase.

これまでゲル相の物性は実験的に明らかにされていないが,カップリング剤の影響 によりからみ点数が増加していると示唆されていることから,本研究ではゲル相にお ける1分子鎖当たりのセグメント数Nが未充填ゴムに比べ少なくなっていると仮定し,

それ以外の材料定数については未充填ゴムと同等として解析を行ってきた.ここでは,

Gel phase Unfilled rubber

True Stress σ[MPa]

Stretch λ

1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

0 1 2

Fig.3.3 Comparison of true stress-stretch relations for gel phase and unfilled rubber.

住友ゴム工業株式会社の新たな実験により見積もられたゲル相の物性を導入する.本 項ではその実験手順について簡単に説明する.

図3.2に実験手順の概要を示す.まず初めにカップリング剤とシリカ粒子のみを未 充填ゴムに混ぜ合わせ作成したシリカ充填ゴムを,ゴムの良溶媒であるトルエンに浸 せきさせ,不溶分として残ったゲル相とシリカ粒子のみを抽出する.そして,取り出 した粒子とゲルをプレスした後,温度分散を測定することによりゲルのガラス転移温 度Tgを測定する.ガラス転移温度Tgはゴム中の硫黄量に応じて変化する特性がある ことから,測定したガラス転移温度Tgの移動量により,ゲル相がどの程度の架橋密度 に相当するかについて見積もりを行った.そして,見積もった硫黄量を添加し作成し たゴムについて引張実験を行った.図3.3に見積もりを行った硫黄量を添加し作成し たゴムと未充填ゴムに変形速度u˙ = 100[mm/min]で最大ストレッチがλ= 2.0になる まで2回繰り返し変形を与えた時の真応力ーストレッチ関係を示す.これより,ゲル 相は未充填ゴムに比べ硫黄量が増加しているため硬化していることがわかる.

3.2.2 アフィンモデルによるゲル相のモデル化

3.2.1項のゲル相物性見積もり実験ではλ = 2.0以上の試験は難しくデータが取れな

いが,シリカ充填ゴムの内部ではシリカ粒子を繋ぎとめるゲル相に大きな変形が集中 していることが示唆されており,λ = 2.0以降の挙動も非常に重要であると考えられ

Experiment Gel phase 1 Gel phase 2 Gel phase 3

True Stress σ22[MPa]

Stretch λ

1 2 3 4

0 5 10 15 20 25

Fig.3.4 Comparison of true stress-stretch relations of three gel phase models and experiment.

る.そこで本節では変形初期においてはこの実験結果にできるだけ従うようにしつつ,

変形後期のゲル相の応力上昇挙動が異なる3種類のモデル化を行った.各モデルのパ ラメータを表3.2に示す.図3.4はゲル相物性見積もり実験結果と,作成した3つのゲ ル相モデルでのλ = 4.0までの応答である.図のように実験により見積もられるヒス テリシスロスは極めて小さいため,変形過程には8鎖モデルA,Bともに変形中の分 子鎖のセグメント数変化を許容しないアフィン変形を適用している.

先述のようにゲル相はゴムマトリクス部に比べ硬い相となっていることが示唆され ており,ゴム(ゲル)が硬い物性であるということは分子鎖同士がより複雑に絡まり あい分子鎖の絡み点数が多い状態であると考えられる.2.1.1節で説明した分子鎖網目 理論に基づくと,分子鎖の絡み点数が多いということはすなわち1分子鎖当たりの平 均セグメント数N が小さいことに対応する.よってゲル相のセグメント数Nsはゴム マトリクス部のセグメント数N = 14.0に対してNs = 8.4とした.またゲル相はシリ カ充填ゴム作成時に添加するカップリング剤の影響によってゴムが特性変化した物質 であると考えられるが,ゲル相を構成する内部の分子鎖自体に変化はなく系全体の分 子鎖の総セグメント数はゴム部と同じであるということを考慮し,ゲル相の総セグメ ント数N(=nαNα+nβNβ+nBNB)はゴムマトリクス部と同じN= 1.95×1027と してモデル化を行った.

Table 3.2 Parameters of rivised eight chain model (Gel phase, Affine model).

Gel phase 1

CαR(=nαkBT) CβR= (nβkBT) CBR(=nBkBT) Nα Nβ NB

0.6483 0.20 0.10 8.4 8.4 8.4

Cˆ1A C2A mA Cˆ1D C2D mA

5.0×105 0.50 3.2 3.0×105 0.50 4.8

Gel phase 2

CαR(=nαkBT) CβR= (nβkBT) CBR(=nBkBT) Nα Nβ NB

0.4283 0.42 0.10 8.4 8.4 8.4

Cˆ1A C2A mA Cˆ1D C2D mA

5.0×105 0.50 3.2 3.0×105 0.50 4.8

Gel phase 3

CαR(=nαkBT) CβR= (nβkBT) CBR(=nBkBT) Nα Nβ NB

0.2183 0.65 0.10 8.4 8.4 8.4

Cˆ1A C2A mA Cˆ1D C2D mA

5.0×105 0.50 3.2 3.0×105 0.50 4.8