笊――― 既存研究 笆――― 仮説 笳――― 方法 笘――― 分析結果 笙――― ディスカッション
坂下 玄哲
● 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 准教授
イン情報探索パターンの経時的変化と BP 知 覚との関連を探ってゆく。以下ではまず,本 研究におけるキー概念について整理を行った 上で,仮説を導出する。次に,本研究が実施 した 2 つの調査の概要と,データ収集の手続 きについて説明する。収集されたデータを分 析し,仮説の検証を行った上で,発見事項か ら得られるインプリケーションについて述べ る。
笊――― 既存研究
①ブランド・パリティー
Muncy(1996)はブランド・パリティーを 消費者の視点から捉えており,「製品カテゴリ ーにおける主要なブランド間の差異が小さい ことに関する消費者の全体的な知覚(Muncy 1996, p411)」と定義している。したがって,
ある製品カテゴリーに所属する複数のブラン ドが類似していると消費者が感じている場合,
BP は高くなる。逆に,主要なブランド製品が 類似しておらず,ブランドごとに違いがある と知覚されている場合,BP は低くなる。同概 念の重要性は古くから指摘されており,たと えば Assael(1984)においては関与水準とブ ランド間知覚差異によって消費者の情報処理 のやり方が異なることがモデル化されている。
知覚差異が大きなとき(BP が低いとき)はブ ランドごとの違いが大きく映るため,店頭に おける消費者の情報処理などもヨリ精緻なも のになることが指摘されている。
先の定義で重要なことは,BP があくまでも 消費者の知覚によって捉えられていることで あり,それが現実におけるブランドごとの実 際の差異とは必ずしも一致しない場合がある
ことである。たとえば,デジタルカメラの画 素数について,主要ブランド A が 1000 万画 素,主要ブランド B が 2000 万画素であったと しよう。実際の数値は両者において大きく異 なるため,この点を考慮すればデジタルカメ ラにおける BP は低いことになる。しかしな がら,消費者はある一定の画素数以上のカメ ラは「画像が優れたカメラ」として知覚して いるのが一般的であり,1000 万画素も 2000 万画素も同じようなものだと思っていること もある。この場合,消費者の知覚において両 者は類似していると捉えられるわけであり,
実際の BP は高くなる可能性があるのである。
消費者購買意思決定局面における BP の効 果については,これまでいくつかの研究が明 らかにしてきている。たとえば,BP が高まる ことによって消費者の価格感度が高くなり
(Muncy 1996),したがって価格手がかり利用 が高まることが指摘されている(Obermiller and Wheatley 1984)。また,BP が高い場合 はどのブランドも同じだと感じられることか ら,市場情報の有用度が低く認識されてしま うことも確認されている(Muncy 1996)。ブ ランドごとの違いがよくわからない場合はど のブランドを購入しても同じだと認識される ことから,特定ブランドへのロイヤルティが 低 く な る こ と も 指 摘 さ れ て い る ( J a c o b y 1971 ; Muncy 1996)。さらには,満足や知覚 品質が高まるとブランド・ロイヤルティも高 まることが知られているが,このような関係 は BP が低い消費者にヨリ顕著となることも 実証されている(Iyer and Muncy 2005)。
これらの研究の特徴は,規定因としての BP の役割に注目している点である。BP の水準に よってその後の消費者情報処理が変化するこ
とは,たとえば市場細分化などを行う際に参 考となり,マーケティング的にも非常に示唆 に富むものである。しかしながら,消費者が 新しい情報を獲得することでブランドに対す る把えかたも変化することが予想されるため,
BP 水準自体も経時的に変化すると考えられる。
したがって,結果としての BP がどのような 要因によって影響を受けるかについて検討す ることも重要であるといえる。この点につい て本研究は,消費者のオンライン情報探索と BP 知覚との関連を探ることによって検討を加 える。
②消費者購買意思決定と情報探索
消費者の購買意思決定は複数のステップに 分割して捉えられることが指摘されており,
これまでもいくつかのモデル化が試みられて いる(たとえば Howard and Sheth 1969 ; Bettman 1979 ; Howard 1989 など)。最も代 表的なモデルの 1 つである Bettman(1979)
の情報処理モデルでは,消費者は特定の目標 を達成するために購買意思決定を行うとされ ており,動機,注意,情報探索と評価,意思 決定プロセス,消費と学習プロセスといった ステップを経るとされる。
情報探索はまず記憶情報を対象に行われる のが一般的であるが,記憶内に十分な情報が 無い場合,消費者は外部から情報を集めよう とする1)。外部からの情報探索によって必要 な情報が獲得されると外部探索はストップし,
次のステップへと進むとされる。外部探索と 記憶探索は相互に影響しあいながら進み,獲 得された情報をもとに購買意思決定が行われ る。
消費者の購買意思決定の時間的な変化も考
慮した Howard and Sheth(1969)のモデル では,消費者の頭の中にあるとされる動機や 選択基準,理解や態度,意図などは時間の経 過と共に変化するとされる。結果として,消 費者の意思決定は拡大的問題解決行動,限定 的問題解決行動,ルーチン化された反応行動 という 3 つに分類され,この順に意思決定の 簡便化が図られるとされる。彼らのモデルに よれば,特定ブランドに対する態度が強固に なるにつれて消費者の購買意思決定も簡単に なり,意思決定に必要な情報探索過程も省略 されてゆく。すなわち,どのブランドがよい かわからない段階では活発な情報探索が行わ れ,次第に製品カテゴリーやブランドに関す る情報が獲得されて学習が進んだ結果,特定 のブランドに対する態度が形成される。その 結果,必要な情報のみが追加的に探索される ようになることで情報探索が絞り込まれてゆ く。最終的には決まったブランドが反復的に 購入され,ここでの情報探索は非常に限定的 なものとなるとされる2)。
情報探索の規定要因については,これまで もさまざまな研究がなされてきているが,探 索行動をコストとベネフィットとの兼ね合い で捉える考えかたが一般的である(Newman 1977)。すなわち,情報を探索するためのコス トが探索によって得られるベネフィットより も小さいと知覚される限りにおいて,探索が 継続されるとするのである。具体的な要因と しては,課題要因(複雑性や情報提示フォー マットのやりかたなど),個人差要因(関与や 知識,態度など),社会的コンテクスト(配偶 者や社会階級からの影響など),リスク知覚な どが挙げられる3)。
情報探索によってもたらされるものとして
は,Block et al.(1986)が興味深い整理を行 っ て い る 。 彼 ら は 情 報 探 索 を 購 買 前 探 索
(Prepurchase Search,購買などの意思決定 を促進するための情報探索)と継続的探索
(Ongoing Search,特定の購買欲求や意思決 定とは独立のもの)の 2 つに分類し,その目 的や結果について論じている。前者は,特定 の購買意思決定といった目的を達成するため に行われ,結果として製品や市場に関する知 識の上昇,ヨリ良い購買意思決定,購買結果 へのヨリ高い満足度をもたらすとされる。こ れに対して後者は,特定の目的を伴わないよ うな探索を指しており,結果として得られた 製品や市場に関する知識の上昇は,将来にお ける購買の効率化や他者への口コミなどの個 人的影響を引き起こす。また,衝動買いの確 率を高めたり,探索自体から得られる満足感 や問題解決スキルの上昇などをもたらしたり するとされる。
これら一連の研究ポイントをまとめると,
以下のようになる。すなわち,さまざまな経 験の蓄積に伴って特定ブランドへの態度が形 成されるにつれて,消費者の購買意思決定は 簡便化する。つまり,情報探索の結果として ブランドに関する知識が獲得され,特定ブラ ンドへの態度が形成される。それにつれて,
特定ブランドに探索が集中することによって 情報探索は経時的に収束するのである4)。
③オンライン情報探索
冒頭でも述べたように,消費者を取り巻く メディア環境は大きく変化してきており,消 費者のインターネット上における情報探索へ の実務的・理論的関心はますます高まってき ている。価格比較サイトなどでのオンライン
情報探索が活発化してきているという指摘や
(Dickson 2000),通常のリアル店舗における 購買に比べてオンラインでの情報探索がヨリ 活用されているという指摘からも(Rowley 2000),その重要性がうかがえる。
Hoffman and Novak(1996)はフロー概念 を用いて消費者のオンライン経験を記述して おり,インターネット上におけるフロー経験 によって消費者の学習が促進されることを指 摘している5)。オンライン情報探索における 具体的な閲覧パターンについては,目的達成 のために方向づけられた探索(Directed or Purposeful Searching)と,そのような目的 を伴わない探索(Browsing)の 2 つで捉える のが一般的である(Rowley 2000)。目的が絞 られた探索から対象が拡げられて情報探索が 拡散することもあるが,一般的にはブラウジ ングから探索が収束してゆくとされており
(Rowley 2000),これは先の情報探索が経時 的に収束してゆくことと整合している。
オンライン情報探索の規定因については,
これまでもいくつかの整理がなされている。
文 献 レ ビ ュ ー か ら 概 念 モ デ ル を 提 示 し た Grant et al.(2007)においては,情報源(内 容やフォーマットなど),個人要因(認知的要 因やスキル,パーソナリティ,個人的関与な ど),製品カテゴリー特徴(探索財,経験財,
サービス財など)といった要因によって消費 者のオンライン探索が規定されることが提示 されている。経験データによる検証を加えた Rose and Samouel(2009)では,消費者に内 在する内的要因による影響が強いことが確認 され,先行知識が低く,知識の構造化の程度 が低く,オンライン探索に対する動機や能力 が高いほど,消費者のオンライン探索はヨリ