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第1章においてSmKSとともに得られたジテルペン環化酵素SmDTC3は, 既知のイヌカタヒバ由 来多機能型ジテルペン環化酵素SmMDSと非常に類似性が高い配列を有し(identity 77%), B / A型 環化反応を触媒する多機能型酵素であると予想された。SmDTC3のDxDDモチーフに相当する配列 は367DIEDとなっており完全なDxDDモチーフは保存されていなかったものの(図 1–2, 図 1–6), グルタミン酸残基はアスパラギン酸残基と同様に側鎖にカルボン酸を有していることから, 同じよ うに機能し得ると考えた。しかしながら, SmDTC3組換え酵素を用いGGDPを基質に酵素反応を行 っても反応は進行せず, B 型環化反応活性は確認できなかった。Phaeosphaeria sp.の多機能型

ent-CPS/KSを用いた変異導入実験により, DxDDモチーフの3番目のアスパラギン酸はB型環化反

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応において特に重要であることが示されている(Kawaide et al., 2000)。そこで, SmDTC3に点変異 導入を行い 367DIEDをDIDDに置換した変異型酵素SmDTC3E369Dを作製し酵素反応に供試したが, やはりGGDPを基質としたB型環化反応活性は確認されず, SmDTC3がB型環化反応活性を欠失し ているのはDxDDモチーフの配列とは関係しないことが示された。

一方, SmDTC3のA型環化反応活性については, in vitroにおいてent-CDP, normal CDP及びsyn- CDPの3種のCDP立体異性体を全て基質とし, それぞれ異なる生成物を合成することが明らかと なった(1.3.4)。イヌカタヒバ生体内にはSmMDSやSmCPSKSL1のB型環化反応によるnormal CDP

(Sugai et al., 2011 (2); Mafu et al., 2011), SmTPS9によって合成されるent-CDPは少なくとも存在し ていると考えられるが, SmDTC3の生体内における基質がどのCDPであるのか, そもそもSmDTC3 は生体内で何らかの機能を果たしているのかは不明である。【図1–22】に示す系統樹解析において

SmDTC3と同じクレードに属する多機能型環化酵素SmMDSやSmCPSKSL1もnormal CDPをA型

環化反応に用いることを考えると, SmDTC3が生体内で機能をもつならばnormal CDPが基質である 可能性は高いかもしれない。試験的にGGDP, SmMDSを混合した酵素反応液に同時にSmDTC3を 加えたところ, SmMDSのB型環化反応生成物をSmDTC3が“横取り”して, SmMDS生成物である miltiradieneに加えてSmDTC3生成物であるsandaracopimaradieneが生成することがGC-MS分析で 確認された。生体内においてもこのような“横取り”が発生しうるのかどうか, SmDTC3の生体内 での機能については推定することはできない。イヌカタヒバを用いた遺伝子導入・形質転換体の作 出法などは2014年11月現在確立されていないが, SmDTC3の生体内での機能を明らかにするため にはそれらの手法を用いた解析が必要となるであろう。

69 LjCPSKS

PpCPSKS JsCPSKS

SmTPS9 SmTPS10

SmDTC2

OsCPS4 AtCPS SmKS

AtKS LsKS

OsKS1

OsKSL5 OsKSL10 SmDTC8

SmCPSKSL1 SmMDS

SmDTC3 SmDTC5 PaIso

PaLAS TbTXS

Phaeosphaeriasp.ent-CPS/KS 100

100

100 46

100 100 94

100 100

100

100 94 91

99

55

99 53

81

61 23

0.5

図1–22 植物由来ジテルペン環化酵素の分子系統樹

本研究で取り上げたジテルペン環化酵素及び主な植物由来ジテルペン環化酵素について, 最尤法に基づ き分子系統樹を作製した。各枝下に示した数値はブートストラップ検定(100回)の結果を示す。系統 樹の作製はMEGA6(Tamura et al., 2013)を用いて行った。

JsCPS/KS, ツツソロイゴケent-CPS/KS; LsKS, レタス(Lactuca sativa L.)KS

コケ植物ent-CPS/KS<B/A型環化反応を触媒>

CPS<B型環化反応を触媒>

KS及びKS様酵素

<A型環化反応を触媒>

イヌカタヒバ二次代謝系酵素(?)

<B/A型環化反応, A型環化反応を触媒>

裸子植物二次代謝系酵素

<B/A型環化反応, A型環化反応を触媒>

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O

H COOH OC

O H

O H

O

H COOH OC

O H

O

H

COOMe OC

O

H

COOMe OC

(Anemia属シダ4種) (Anemia mexicana)

(L. japonicum, L. circinnatum)

(Lygodium属シダ3種)

Antheridic acid GA107

GA73methyl ester GA9methyl ester

A.

ent-kaurene

GGDP LjCPS/KS Methyl transferase?GA9 GA9 methyl ester

GA4 GA9 methyl ester Methyl esterase?

造精器形成の促進 個体B, 未熟な前葉体

GID DELLA

GA応答

GID DELLA GA応答

分解

造卵器形成の阻害 個体A, 先に成熟した前葉体

GA9 methyl ester

B.

An

図1–23 Anの化学構造・分布(A)とカニクサにおけるAn活性作用モデル(B

Anの分布についてはYamauchi et al., 1997を参考にした。また, カニクサにおけるAn活性作用モデルは Tanaka et al., 2014をもとに作成した。

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第2章 陸上植物における ent- カウレン合成酵素の基質認識多様性