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4.21 BaV13O18(# 1)の光学伝導度の温度依存性(a)a軸、(b)c

4.22 BaV13O18(# 1)spectral weightの温度変化

る。また、Ttrにおいてa軸方向では増加しており、c軸方向では減少しているように見え、抵抗 率の振る舞いと一致している。

最後に、研磨面と劈開面の違いについて述べる。変化が見やすいので、元の反射率の温度依存 性を図4.23に示す。# 1、# 2の試料とも電荷整列は起きることから、この温度変化に注目する と、研磨面では温度を下げていくと、反射率が減少するエネルギーは0.2eV以下であるに対して、

劈開面では反射率の減少するエネルギーは0.3eV以下となっている。研磨面の方が反射率の減少 するエネルギースケールが小さく、これは、乱れに対して脆い電荷'軌道整列が、研磨による格子 の乱れの影響を受けたためであると考えられる。[14]。

4.23 研磨面と劈開面の反射率の温度変化の違い(a)研磨面、(b)劈開面

分解溶融を示すBaV13O18の単結晶を育成するには、急冷により種結晶としての単結晶を作製す ることが重要な要素であることを明らかにした。また、作製に成功した単結晶試料(BaV13O18&$) においてstoichiometricに近い試料($(0.1)とo$stoichiometricな試料($(0.8)では低温における 振る舞いが異なることを見出した。stoichiometricな試料では、Ttr(65Kにおいて三量体転移が 起き基底状態は絶縁体的となることが分かった。一方で、o$stoichiometricな試料では、三量体 転移は見られず基底状態は金属的になることが明らかになった。金属相において電子比熱の値と パウリ常磁性の値からWilson比を求め、電子相関が強いことを示唆する結果を得た。このこと は、近藤効果の発生を示唆しており、局在モーメントと遍歴キャリアが近藤singletを組み、準粒 子を形成することで金属的な振る舞いの原因になっていると考えられる。準粒子の有効質量を求 めると、自由電子の50倍となり、重い電子的振る舞いをすることを示した。

光学反射率から求めた光学伝導度において、室温でのスペクトルの構造がBaV10O15と非常に 似ていることを見出した。このことは、電子構造が局所的なVOからなる八面体配置による 結晶場とクーロン斥力の影響を大きく受けていることを示している。o$stoichiometricな試料に おいて、電荷整列による伝導度スペクトルの急激な減少が観測され、!/(0において伝導度は有 限値をとることから、電子構造に擬gapが開いていることを示している。また、抵抗率から予想 される伝導度の上昇は観測されなかった。これは、測定を行ったエネルギー領域よりも小さい

0.01eV以下において観測されるためであると考えられる。stoichiometricな試料において、電荷

整列と三量体転移に対応する伝導度スペクトルの変化を観測した。この試料は、最低温で絶縁体 的な振る舞いを示すことから電子構造にgapが開くことが期待されるが、測定範囲内のエネル ギー領域において観測されなかった。従って、gapの開きは測定を行ったエネルギー領域よりも

小さい0.1eV以下において観測されると考えられる。

参考文献

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第 5

総括

本研究では、複数の自由度に由来する新奇秩序状態の観測と解明を目的として、BaV10O15 を 対象としてフォノンラマン散乱測定を用いて軌道の秩序状態の観測を行い、またBaV13O18を対 象として単結晶の作製と物性の測定を行った。その結果、フォノンラマン散乱測定は軌道の観測 に対して有力な手法であることと、多量体を形成するBaV13O18物質において特異な振る舞いを 示すことを明らかにした。

以下に、本研究で得られた結果をまとめる。

第3章では、BaV10O15の単結晶試料に対してフォノンラマン散乱測定の結果について述べ、軌 道整列がフォノンにどのような影響を与えるか考察した。測定は研磨面と劈開面に対して行い、

研磨面においては、構造相転移温度TCでのスペクトルの変化が抑制されているように見えるこ とが分かった。これは、研磨の際に試料にかかるストレスが試料表面の格子を歪め、このストレ スが残っているため試料表面の構造相転移が抑制されていると考えられる。その為、ラマンスペ クトルの議論は劈開面の結果を用いて行った。

ラマンスペクトルにおいて、構造相転移温度以下で新たなフォノンピークが出現することを見 出した。さらに、同一のモードにおいて、高温相に比べて低温相では、フォノンピーク幅の減少 とピーク強度の増加が観測された。また、40K以下の低温においていくつかのフォノンピークの 振動数が温度の低下に従って減少するソフト化が生じることが明らかになった。BaV10O15では TN(43Kにおいて反強磁性転移が存在することから、フォノンのソフト化の原因は、Vのスピン が反強磁性的に整列するときにスピン-格子結合によってV-V結合が弱くなるからであると考 えられる。さらに、構造相転移温度よりも高温側でも、温度を下げていくとピークが徐々につぶ れていく振る舞いが観測された。NMRの結果においてこの温度領域でピークの分裂が報告され ており、この対称性の低下を示す結果は、V三量体が形成されているためであると解釈されてい る。ラマンスペクトルの拡がりも、NMRの結果と同様に結晶内のランダムな場所に局所的にV 三量体が形成されているためであると考えられる。一方で、室温において同じ結晶構造をとるが 最低温まで構造相転移を起こさないSrV10O15のラマンスペクトルでは、上記の変化は観測され なかった。

得られたラマンスペクトルに対して、より定量的な解析を行った。フォノン振動数の計算にお いては、各イオン間の結合をバネと仮定し、最近接のBa-OV-VV-OO-Oの各結合のバネ定数

の設定を行った。バネ定数の決定には、反射スペクトルから求めた光学伝導度スペクトルを用い た。V-V結合を除く他の3つの結合のバネ定数は光学伝導度スペクトルから決定できたが、V-V 結合のみラマンスペクトルも用いて決定を行った。ラマンスペクトルの強度の計算は結合分極率 モデルにより行った。これは、物質の電子分極を、各原子のペアに対して定義される個々の結合 分極率の和で与えるモデルである。定量的解析により、Vイオンが主に動くモードは350cm!1 下であり、Oイオンが主に動くモードは350cm!1以上に現れることが明らかになった。また、こ れらのモデルは220'350cm!1の実験結果を振動数、強度とも準定量的に再現することが出来た。

この解析から、構造相転移において、V-V結合のバネ定数のみ75%も増加し、ピーク幅が約1'2 に減少することが明らかになった。このような振る舞いを説明するシナリオとして、高温相では 軌道の自由度から生じる軌道の非秩序状態が軌道のゆらぎを引き起こしV-V結合のバネ定数の値 を減少させるが、TCで軌道整列を起こすことでゆらぎが抑制されるというモデルが考えられる。

本研究の結果は、実験的に困難とされる軌道の揺らぎや軌道の非秩序を観測する方法として、

ラマン散乱測定によるフォノンスペクトルの観測は軌道の非秩序状態を見つける有力な実験であ ることを示している。

第4章では、BaV13O18の単結晶の作製方法と、作製した単結晶を用いた抵抗率、磁化率、比熱、

光学反射測定の結果について述べ、多量体が物性に与える影響の観点から考察を行った。分解溶 融を示すBaV13O18の単結晶作製には、フローティングゾーン法において急冷により種結晶を作 製する過程を加えた方法を考案した。作製に成功した単結晶試料(BaV13O18&$)に対するTGA測 定によって、stoichiometricに近い試料($(0.1)とo$stoichiometricな試料($(0.8)が存在するこ とが分かった。どちらの試料もTCO'200Kにおいて電荷整列を起こし、TCO以下において電子 が局在した振る舞いを示すことが明らかになった。しかし低温(T 70K)では、異なる振る舞い を示すことを見出した。stoichiometric に近い試料においては、Ttr(65Kにおいて三量体を形成 する構造相転移が起きる。このとき抵抗率は、a軸(+a)は急減し、c軸(+c)は急増する。また、

磁化率は両軸とも減少する。さらに温度を下げると、抵抗率は増加し続け、基底状態は絶縁体的 となることが明らかになった。この試料の電子比熱の値は'1mJ'mol K2であり、絶縁体的振る 舞いと一致する。

一方o$stoichiometricな試料においては、65Kにおける三量体転移は観測されず、温度を下げ

ると抵抗率は減少を続け、基底状態は金属的となることが明らかになった。この試料の電子比熱

の値は'12mJ'mol K2であり、金属的振る舞いと一致する。しかし磁化率では、局在モーメント

の存在を示すCurie-Weiss的な振る舞いを示し、金属的な基底状態と一見すると一致しない。そ こで、磁化率の温度依存性を低温において、飽和する振る舞いと増加する振る舞いの和として解 釈した。磁化率の飽和値3.5#10!4cm2'molをパウリ常磁性の値とみなすと、この値と電子比熱 の値から有効質量の比であるWilson比は'2であった。これは、電子相関が強く働いているこ とを示しており、可能性の1つとして近藤効果が生じていると考えられる。低温において、局在 モーメントと遍歴キャリアが近藤singletを形成し準粒子として振る舞うことが金属的振る舞い の起源であると考えられる。キャリア数をV13個あたり1つと仮定すると、準粒子の質量は自由 電子の50倍となり重い電子的振る舞いをする。

光学反射率をKramers-Kroning変換することで求めた光学伝導度スペクトルは、室温のスペク

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