さて、これですべて終わりだ。
---とうとう終わりですか。もっと聞いていたかったな〜。
前半では、基礎理論となる学習についての3つの心理学理論をやったね。そし て、後半では、実際に学習コースをどうやって作るかということを学んだ。
---でも、実際にうまく教えられるかどうか、不安です。
そりゃ、そうだ。実践を積み重ねていくことが必要だ。テニスのレクチャーを受 けたからといって、すぐにラリーがうまくなるわけじゃないからね。
---実際に教えるという体験を積むということですね。
そうだ。その中でどうしたらいいのかいろいろと迷うこともあるだろう。そんな ときにもう一度、IDの考え方を思い出してもらえばいい。
---そうすれば大丈夫と?
そう。100%とは言わないが、70%は大丈夫だろう。
---え? 100%じゃないんですか? 残りの30%が気になるな。
まあ、今は気にしなくていい。とにかく君はIDの正攻法を学んだわけだから。
---はい。どうもありがとうございました。
また、どこかで会おう。
13.1 IDの全体像
この講義では、前半では、行動分析学、認知心理学、状況的学習論の理論によって、
学ぶことのしくみを取り上げ、後半では「向後の宇宙船モデル」の形で学習コースの 設計を学んできました。
最初に、行動分析学、認知心理学、状況的学習論の理論によって、学ぶことのしくみ をみてきました。しかし、これらの心理学的な理論は、そのままでは実践として使い にくいところがあるので、IDの先駆者たちが中間理論としてまとめあげたのが、ガニ エの9教授事象や、ケラーのARCS動機づけ理論などです。それをこの講義では、学習 活動・教育活動の中に活用していこうとしています。ここでいう、中間理論とは、生 のままでは使えない理論をまとめあげてレシピにして、実際の学習活動・教育実践に 使いやすくした理論のことを指しています。
後半では、実際の教授・学習活動を、宇宙船モデルの形で進めていきました。これは 下記のようなステップで行っていきます。
• ニーズを確定する
• 確定したニーズを満たすためのゴールをたてる
• 設定したゴールを小さなタスクに分解し、ゴール分析を行う。
• ゴールを実現するため、リソースと活動とフィードバックの3つをデザインす る
これらのステップを行うことで、学習コースをデザインし、実施することができます。
また、学習活動を行う前と後でテストを行って、自分がこのように進歩したという部 分がこの学習活動の成果になります。進歩しなければ、この活動はダメだったという ことになります。ダメだったということは、学習者の問題ではなく、学習コースがダメ であるということです。
13.2 教えるということ
教えることは、教員、塾の講師やコーチの仕事というだけではなく、自分の子供を教 えることや、会社での新人教育など、日常生活の一部になっています。どんな人にも、
誰かに何かを教える機会があります。人類の進歩も、人が人に教えるという活動がな ければこれほどにはならなかったでしょう。この意味で、教えるというのは人間の基 本的な行動であるといえるでしょう。これを科学にしたものがIDであり、広くいうと 教育工学になります。
教えるときに、今まで学んだ理論とモデルを思い出し、IDプロセスにしたがって教え る活動をデザインすればうまくいきます。また、もし失敗しても、小さい失敗であ り、その失敗も次の改善に活かせばよいのです。失敗を、より良くするための材料と して、うまくいかない原因を理論を使って調べ、改善すれば、次にはきっとうまく行 くでしょう。
ここで学んだインストラクショナルデザインの考え方を、皆さんの仕事や生活に活か してくれることを期待しています。
索引
■数字、アルファベット
10年修行の法則 ABC分析 ADDIEモデル ARCS動機づけモデル CAI
GBS IDプロセス Iメッセージ KR情報 LPP PSI Wason課題 Youメッセージ
■あ行
アイメッセージ アフォーダンス
アンカード・インストラクション 維持リハーサル
意図的教育
インストラクショナルデザイン ウェンガー(E. Wenger)
運動技能 エピソード記憶
エリクソン(K. A. Ericsson)
■か行
学習
学習コンテキスト
36 11 61 104 22 55 61 83 95 46 22,56 37 83
83 45 39,56 29 3 2 46 68 30 36
71
学習者分析
学習2(学習の学習)
ガニエ
ガニエの9教授事象 ガニエ(R. M. Gagné)
ギブソン(J. J. Gibson)
記憶
記憶のネットワーク構造 期待・価値モデル
教育
教育ゴール 教育工学 強化 強化子 強化刺激 教師制御 言語情報 ケラー
ケラー(F. S. Keller)
ケラー(J. M. Keller)
嫌悪刺激 嫌子
嫌子出現による弱化 嫌子消失による強化 ゴール
ゴール分析 ゴールベース
ゴールベース・シナリオ 向後の宇宙船モデル
69 106
77 77 45 28 29 70
67 4 9 10 10 89 68
22 104 10 9 10 10
68 3 55 77
好子
好子消失による弱化 好子出現による強化 行動
行動主義心理学 行動随伴性 行動分析学 固定強化
個別化教授システム コンテキスト分析 コンピュータ支援教育 コーチ
コーチング
■さ行 作業記憶 事後テスト 事前テスト 実践コミュニティ
ジャスパー・プロジェクト 弱化
熟達化 状況
状況的学習論
状況に埋め込まれた学習 事例ベース推論
シェイピング
システムズアプローチ 死人テスト
シャンク(R. Schank)
消去 真正の文化
シーグラー(R. S. Siegler)
スキナー(B. F. Skinner)
スキャフォルディング スキーマ
9 10 10
8 9 8 19 22,56 70 22 90 54
28 71 71 47 40 9 36
45 46 55 20 61 12 55 12 52 31 8 54 30
スモールステップの原則 前提テスト
成功的教育 精緻化
精緻化リハーサル 正統的周辺参加 正の̶
正の強化 正の強化子 正の罰 宣言的知識
即時フィードバック
■た行
体制化 態度 短期記憶 知的技能 チャンク 中間テスト 長期記憶
テストのウオッシュバック効果 手続き的知識
転移 天秤問題
■な行
内観報告 認知
認知心理学 認知的徒弟制 認知的方略 ニーズ分析 沼野一男 ノード
ノーマン(D. A. Norman)
21 71 4 29 29 46
10 10 10 30 18
29 68 28 68 28 72 28 104 30 38 31
27 27 27 53 68 62 3 29 36