第3章 「ふしづくりの音楽教育」の足跡
第1節 「ふしづくりの音楽教育」その経緯
(1) 「ふしづくり一本道」の草案期
「ふしづくり一本道」は、昭和40年筏に古川小学校において実践さ れた事例に関して、最も知れわたっている。しかも、筆者は幸運にも資 料収集の段階で、 「ふしづくり一本道」の創案者である山本弘・中村好
明両氏の興味深い話を聞くことができたのである。それは、 「ふしづく り一本道」のシステムの 基となっている 指導段階表 は、昭和38 年頃に、表のみが存在したという話であった。もちろん、山本弘氏の著 書性1)に掲載されているものとは異なるものである。
「ふしづくり一本道」は、岐阜県高山市において山本・中村両氏が中 心となり、市の音楽教育の行き詰まりを打開しようということをきっか けに、高山市の全教員により研究がはじめられたものである。その後、
山本氏が県の教育委員会に移り、岐阜県下における平均においても高山 市と同じ問題を感じ、岐阜県全県に「ふしづくり一本道」は広まること
となった。
両氏により、高山市ではじめられた研究の足跡を、中村氏がまとめた 年表(注2)をもとに、両氏から聞いた話をつけ加える形で、以下に表わ す(資料35参照).年表には、高山市および岐阜県の「ふしづくり一 本道」に関係する事項を記すこととする。
[資料35]
年代 昭和24年頃 昭和25年 昭和29年 昭和30年 昭和34年 昭和36年頃 昭和37年
昭和38年頃 昭和38年 昭和39年
昭和40年
昭和40年頃 昭和41年 昭和42年
昭和43年 昭和45年 昭和46年
ふしづくりの音楽教育に関する事項
・高山の小学校音楽科教育に関して改善が必要であることを、山本・中村両氏が中心 となり、高山全市の教員に呼びかける。
・『基底カリキュラム』出版
・『音楽のおけいこ』初版出版
・『音楽のおけいこ 指導書』出版
・『音楽のおけいこ』松本民之助氏の監修を受ける
・『小学校 音楽学年別能力表(試案)』作成
・岐阜県郡上郡美並村立高山小学校が県の研究指定校となる。r小学校 音楽学年別 能力表(試案)』を使用して研究発表会(2月)
・『小学校 音楽学習指導の手引(音楽感覚段階別能力表)』作成
・「ふしづくり一本道段階表」作成(県指導課)
・岐阜県揖斐郡池田町立温知小学校がが県の研究指定校となる。 「ふしづくり一本道 段階表」を使用して研究をする。
・『音楽のおけいこ』をrそうさくのおけいこ』に改訂
・岐阜県揖斐郡池田町立温知小学校が引き続き県の研究指定校となる。「ふしづくり 一本道段階表」を使用して研究発表会
・岐阜県恵那郡大井町立大井小学校が県の研究指定校となるく39年度)
・『小学校 音楽学習指導の手引(音楽感覚段階別能力表)』改訂
・岐阜県揖斐郡池田町立温知小学校が文部省の研究指定校となる(40年度)
・岐阜県恵那郡大井町立大井小学校が引き続き県の研究指定校となる(40年度)
・幼稚園カリキュラムにふしづくりを導入
・岐阜県揖斐郡池田町立温知小学校が文部省の研究指定校となる(41年度)
・岐阜県吉樹郡古川町立古川小学校が県の研究指定校となる(41年度)
・岐阜県揖斐郡池田町立温知小学校において文部省音楽研究発表会(2月)
・岐阜県吉樹郡古川町立古川小学校が県の研究指定校となる(42年度)
・rそうさくのおけいこ』をrふしづくりのおけいこ』に改訂、低学年用指導テープ 作成
・大西保育園において幼児ふしづくり研究発表会
・岐阜県吉樹郡古川町立古川小学校が県音楽研究発表会(2月)
・rふしづくりのおけいこ』に幼児ふしづくりの実践を導入
・r小学校 音楽学習指導の手引(音楽感覚段階別能力表)』改訂
・r中学校 音楽学習指導の手引(基礎能力指導段階表)』
・中級用『ふしづくりのおけいこ』指導テープ作成
この表に見られる経緯をたどり、「ふしづくり一本道」は生まれるこ
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ととなる。
② 「ふしづくりの音楽教育上の拡がり
高山市を中心に始められた「ふしづくりの音楽教育」は、岐阜県に広 まり、さらにこの効果が全国へ拡がるかのように、大勢の参観者を集め、
全国各地において実技講習が行われた。以下、山本弘氏が各地で行った
実技講習を、一・覧表に表わす。(注3)
年 月 日 主張先 備考(注4)
40 2 11〜13 和歌山県和歌山市 S.38年
5 19〜22 奈良県香芝町 ・温知小学校県指定校
5 29〜30 石川県輪島 (作見小学校) S.39年
41 10 18〜19 石川県輪島 (三見小学校) ・温知小学校県指定校
42 1 24〜26 福井県小浜市 ・大井小学校県指定校 43 87 26〜27 愛知県西尾市〜刈谷市 S.40〜41
@9P0 27Q3 P9
富山県新湊市 コ庫県神戸市
、知県刈谷市 (小垣江小学校)
・温知小学校文部省指定
@校
E大井小学校県指定校
10 22 愛知県一宮市 r.42・温知小学校、文部省音
45 6 18 愛知県 (寺部小学校) (小垣江小学校) 楽研究発表会
8 26 愛知県豊田市 (2月)
46 5 20 福島県会津若松市 ・古川小学校県指定校
5 21 山形県天童市 (11月)
9 10 愛知県名古屋市 S.43
11 7 石川県金沢市 ・古川小学校県指定研究
47 10 15 青森県五所川原 発表く2月)
48 10 13 青森県弘前市 〈参観者400名〉
11 10 福岡県八女市 S.43年度
49T0
7
@6@8 P2
10@2
@6@5
兵庫県淡路島 コ庫県尼崎市
、知県豊橋市 汢ェ県久留米市
・古川小学校 音楽参観
@者169名
r.44年度・古川小学校 音楽参観
@者357名
52 10 21〜22 青森県音楽研究大会(ふしづくり) S.45年度
53 6 28 富山県高岡市 ・古川小学校 音楽参観
6 29 富山県富山市 者365名
7 26〜27 全国ふしづくり講習会(高山市) S.46年度
11 14 青森県青森市 ・古川小学校 音楽参観
12 1 三重県 (畔名小学校)…?研究会だったかも 者1,990名
54 6 19 岩手県 (宿戸小学校) S.47年度
7 26〜27 全国ふしづくり講習会(高山市) ・古川小学校音楽参観
55 2 25 大阪府 (教育大付属小学校) 者2.382名
8 27 福井県敦賀市 S.48年度
? 8 6 岡山県津山市 ・古川小学校 音楽参観
8
@8P1 12Q5 Q6
奈良県香芝町
、知県豊田市 (寺部小学校)
、知県豊田市 (寺部小学校)
者2.002名
r.49年度・古川小学校 音楽参観
@者2898名
58 8 1 岡山県津山市
一覧表は、当時の手帳(山本氏所有)より抜粋されたものをもとに、
作成した。また、一部、印刷不明瞭により、掲載できていない部分があ る。他に、岐阜県主催および岐阜大学音楽科主催の講習会に関する年月 日の記載もある。書簡によると、文部省指定校であった北海道札幌の小 学校に出かけたとの記載もあり、 「ふしづくり一本道」の講習会は、さ
らに広範囲にわたり実施されたものと思われる。
また、備考欄を設け、岐阜県における「ふしづくりの音楽教育」の実 践および古川小学校における音楽参観者数を書き込んだ。限られた資料 からの抜粋ではあるが、年を追う毎に飛躍的な増加をみせるその数から、
「ふしづくり一本道」が全国にもたらしたであろう影響を、みてとるこ とができよう。
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第1節注
注1;『音楽教育の診断と体質改善』山本弘/1968/明治図書出版 注2;「高山市小中学校音楽教育50年の変遷」山本弘,中村好明
注3;「ふしづくりの音楽教育実技講習出張覚え」山本弘(H.8.10.20付 山本氏からの書簡より抜粋)
注4:第3章第1節掲載の年表(p.88参照)
『ふしづくりの教育』古川小学校/pp.182〜183
第2節 集大成「ふしづくり一本道」
「ふしづくりの音楽教育」の大まかな流れは、1節において掲載した 年表に記した通りである。ここでは、昭和37年に岐阜県郡上郡美並村 立高山小学校が県音楽研究指定校に指定されて以降を「ふしづくり一本 道」のはじまりと考え、説明を付す形で述べる。
「研究指}定校って一・体何したらいいんですか」(注1)という高山小学 校サイドの疑問に対し、当時主事をしていた山本弘氏は、 「今の昔楽聖
斯界は美しさだけに努力しでいますが、ここでは三楽のカxだけを追 求してみてぐださい」(注2)と依頼をしたそうである。そして昭和37 年2月、高山小学校は『小学校 音楽学年別能力表(試案)』(注3)を 使用して、研究発表会を開催した。
次に、温知小学校が指定校に選ばれた。この小学校においても、前回 と同じ質問が出され、山本氏は「ふしづくりの音楽教育」を勧めたので
ある(注4)。
温知小学校において、音楽は今まで教えたことがないという教師も、
子どもたちと一緒になって音楽教育を進め、その成果が文部省指定校と なった後も引き継がれた。その結果、 「ふしつぐ0の音楽教育がθの身 をみることとなった」(注5)そうである。
温知小学校の県音楽研究指定校は2年間続き、その後、大井小学校が 指定校となる。再度、「限定校ってどうしてもやらんならんのかな」と 言われながら、高山・温知の両校における成果を話し、引き受けてもら
うことになる。
この大井小学校においても、みるみる成長する子どもの姿を目のあた りにした教師がまず、変化したそうである。
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次の指定校となったのは、古川小学校である。指定校となった2年間 の2年目に校長先生となったのが、中家一郎氏である。中家氏の理解を 得ることができ、授業・教師・子どもはすこぶる変化をきたしたそうで ある(注6)。昭和43年2月9日、参加者400名(注7)の中、研究発表
会が行われた。
「ふしづくりの音楽教育」の足跡をたどってみると、そこにも系統的 で積み上げる教育がある。以下に上記4校の経過を挙げる。
「高山小学校…音楽能力を育てるとどんないいことがあるか
温知小学校…音楽能力を遊びのように楽しみながら育てる方法はない だろうか
大井小学校…その遊びを学年別に位置付けし、音楽能力表に出来ない か
古ノ〃小学校…音楽能力表によって学年毎に育てる授業パターンは出来 ないか 」(注8)
この4校の実践が「ふしづくり一本道」へさらに大きく飛躍をもたら したといいっても過言ではないであろう。4校において、具体的に如何 なる実践がなされ、各々の学校にどのような問題が出たのか、調査する 予定でいた。しかし、諸事情により現在は不可能であるため、今後の課 題の1つとしたい。
推測ではあるが、4校の実践および問題点を解決していくことにより、
継続があり、また、積み重ねとなったに違いないと筆者は考えるのであ る。もしこの仮説が正しいとすれば、昭和25年より始まった「ふしづ