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調査は 2007 年及び 2008 年の 2 年間にわたり行った。

調査コドラートは、固定試験地内のアカマツの林冠下(C 区)及び南東側斜面において調査前年の 2006 年秋に発生 した倒木の根返り跡(D 区)の、2 種類の生育環境下に設 定した(図 1) 。C 区では、20m の等間隔に一直線上に位置 する 5 地点において、0.5m×2.0m=1.0m

2

のコドラートを 各 2 箇所ずつ、計 10 箇所(計 10.0m

2

)設定した。一方、

D 区では、3 地点の根返り跡において、0.25m

2

~1.0m

2

の方 形区を各 2 箇所ずつ、計 6 箇所(計 3.5m

2

)設定した。

前年秋の種子散布量を把握するため、2006 年及び 2007 年の秋には、C 区の 5 地点において、0.5m

2

(直径約 0.8m)

図 1 アカマツ林試験地における胸高直径 5cm 以上の個体の 立木位置と、実生調査コドラートの位置図

0 10 20 30 40 50 m

モニタリング試験地

(20m×140m=0.28ha)

C2 C3 C4

C1 C5

D1

D2 D3

N N N

の円形の種子トラップを各 1 台ずつ、9 月初旬~12 月中 旬にかけて 3 ヶ月あまりの間設置した。捕捉されたアカ マツの散布種子数をトラップ毎に計測し、各年のトラッ プ当たりの 1m

2

当たりの平均散布種子数を算出した。

各年 5 月中旬から 10 月中旬にかけて、 2~4 週間おきに、

発生したアカマツ当年生実生をマーキングし、その生存 を追跡した。年次毎に、C 区及び D 区における 1m

2

当たり の累積実生発生数及び各調査時期での生存数をそれぞれ 集計し、C 区での実生の発生率(累積発生数/散布種子数)

及び C 区及び D 区での実生の 10 月までの生存率(10 月時 点での生存数/累積発生数)を算出した。

3 結果と考察

(1) アカマツの種子散布量及び当年生実生の発生 調査した 2007 年及び 2008 年における、前年秋の散布 種子数、 当年生実生の累積発生数と 10 月時点での生存数、

及び実生の発生率と 10 月までの生存率を表 1 に示す。C 区におけるアカマツの 2007 年の平均種子散布数は、2006 年の約 4.2 倍であった。また、翌年のアカマツ実生の累 積発生数は、2007 年では C 区と D 区の生育環境間で大き な差が見られなかった一方で、前年秋の散布種子数が大 きかった 2008 年では、D 区において C 区の約 2 倍の実生 の発生が観察された。散布種子数と実生の累積発生数か ら推定された、C 区におけるアカマツ実生の発生率は、

2007 年の方が 2008 年よりもやや高かった。

以上の結果から、2006 年秋と 2007 秋の 2 年間では、布 種子数が多かった 2007 年秋の方がより種子生産の豊作年 であったと判断される。また、2008 年では D 区において 実生の発生密度が特に高かったことから、根返り跡にお ける当年生実生の発生が、豊作年で特に促進されている ことが示唆される。

一方で、実生の発生率に関しては、豊作年と考えられ

る 2008 年の方が 2007 年よりもやや低かった。実生の発 生率に影響を与える要因の一つとして、種子の散布密度 や、散布種子の充実度等が考えられる。散布種子密度が 高いほど、動物や昆虫などによる被食率の増加や、個体 間競争による発芽に必要な資源量の不足等により、発生 率が低下する可能性が考えられる。あるいは、種子の充 実度には受粉した花粉の質や、母樹のもつ資源量の違い 等が関係し、豊作年である 2008 年では、自己の産出した 花粉による自家受粉の割合が多いことで、近交弱勢の増 大が影響している可能性も考えられる。今回の結果から だけでは、2008 年の方が 2007 年よりも上記条件が不良で あったと確定することは難しいが、今後とも豊凶と実際 の発生数の推移を継続して調査していくことが重要と思 われる。

(2) アカマツの当年生実生の生存

実生の生存率は、調査した 2 ヶ年を通じて生育環境間 で大きな差が見られた。C 区では、発生した実生は 10 月 までの間にほとんどが枯死したのに対し、D 区では両年と も 50%以上もの実生が生存した(表 1) 。また、いずれの 生育環境下においても、2007 年の方が 2008 年よりも生存 率が高かった。

調査した 2007 年及び 2008 年での、C 区及び D 区におけ

表 1 調査した 2007 年及び 2008 年における、前年秋の散布種 子数、当年生実生の累積発生数と 10 月時点での生存数、及 び実生の発生率と 10 月までの生存率

①前年秋の ②累積実生 ③10月時点で 実生発生 10月までの 年次 生育環境 散布種子数 発生数 の生存実生数 率(%) 生存率(%)

(/m2) (/m2) (/m2) (②/①) (③/②)

2007年 C区 57.6 6.20 0.40 10.8 6.5

(10.0m2

D区 - 8.86 5.43 - 61.3

(3.5m2

2008年 C区 241.6 19.30 0.60 8.0 3.1

(10.0m2

D区 - 38.86 19.43 - 50.0

(3.5m2

図 2 調査した 2007 年及び 2008 年での、C 区及び D 区におけ るアカマツ当年生実生の生存数の推移

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 0.0 3.0 6.0 9.0 12.0

調査時期 生 存 実 生 数 (個 体 /m

2

D区

C区

累積発生数 生存数

50.0%

3.1% D区

C区

61.3%

6.5%

(b) 2008年 (a) 2007年

5月 6月 7月 8月 9月 10月

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 0.0 3.0 6.0 9.0 12.0

調査時期 生 存 実 生 数 (個 体 /m

2

D区

C区

累積発生数 生存数 累積発生数 生存数

50.0%

3.1% D区

C区

61.3%

6.5%

(b) 2008年 (a) 2007年

5月 6月 7月 8月 9月 10月

5月 6月 7月 8月 9月 10月

アカマツ林内に設定した林木遺伝資源モニタリング試験地における 2年間の当年生実生の動態

林木育種センター 遺伝資源部 保存評価課 岩泉正和 高橋誠 探索収集課 矢野慶介

1 はじめに

林木遺伝資源の生息域内保存(現地内での保存)は、基 本的な林木遺伝資源の保存形態の一つであり、特定の樹 種を保存対象とする林木遺伝資源保存林や、自然生態系 を構成する生物を保存対象とする森林生物遺伝資源保存 林等の保護林の設定によって行われている。しかし、時 間の経過とともに、個体の成長、枯死及び新規加入、ま たは大規模な撹乱等、諸要因によって保存林の林分構造 は刻々と変化し、それに伴い、保存林内の遺伝資源の状 況も変化すると考えられる。今後、林木遺伝資源の生息 域内保存を継続して行うに当たり、保存対象となってい る遺伝資源の劣化や滅失のリスクを回避し、これらを確 実に次世代へ存続させる上では、実生や稚幼樹の発生や 生存、成長といった、保存対象樹種の天然更新の状況を 調査し、林分の自律的な維持力を直接的に評価すること が重要である。林木遺伝資源保存林等の保護林を継続的 に調査することにより、実生の生存可能な条件等、保存 対象樹種の更新特性を明らかにし、その林分の維持メカ ニズムを理解することが可能になると期待される。

現在、林木育種センターでは、阿武隈高地森林生物遺伝 資源保存林内のアカマツの優占する林分に固定試験地を 設定し、その遺伝資源の推移を把握するために、モニタ リング調査を実施している。この固定試験地は 2001 年に 設定され、5 年後の 2006 年には第 2 回目の毎木調査を実 施した。当該試験地で得られた調査データについては既 に、2001 年から 2006 年までの 5 年間の林分構造の推移

5)

や、アカマツ個体を対象にした利用上の実用形質及び繁 殖状況(着果状況及び種子散布状況)

1)

、DNA マーカーを 用いた遺伝子流動の状況

3)、4)

等に関する結果を報告して きた。

アカマツの更新状況については、中村

6)

や陶山・中村

11)

が人工林において、また武田ら

8)、9)

が海岸防災林にお いて、当年生実生の消長を追跡した結果を報告している が、体系的な更新特性の把握には至っておらず、遺伝資 源の生息域内保存に資する知見があまり多く得られてい

ない。本報では、アカマツ天然林内における当年生実生 の発生、生存及び成長の状況を、連続する 2 年間にわた り調査した結果を報告する。そして、実生の生育環境や 前年秋の種子散布量等との関係も踏まえ、アカマツ実生 の更新可能な条件について考察した。

2 方法

調査は、福島県いわき市に所在する阿武隈高地森林生 物遺伝資源保存林内の、尾根沿いに生育するアカマツ林 において行った。そのうち、固定試験地は林分の中央部 に位置しており、面積は縦 20m×横 140m=0.28ha である

(図 1) 。

調査は 2007 年及び 2008 年の 2 年間にわたり行った。

調査コドラートは、固定試験地内のアカマツの林冠下(C 区)及び南東側斜面において調査前年の 2006 年秋に発生 した倒木の根返り跡(D 区)の、2 種類の生育環境下に設 定した(図 1) 。C 区では、20m の等間隔に一直線上に位置 する 5 地点において、0.5m×2.0m=1.0m

2

のコドラートを 各 2 箇所ずつ、計 10 箇所(計 10.0m

2

)設定した。一方、

D 区では、3 地点の根返り跡において、0.25m

2

~1.0m

2

の方 形区を各 2 箇所ずつ、計 6 箇所(計 3.5m

2

)設定した。

前年秋の種子散布量を把握するため、2006 年及び 2007 年の秋には、C 区の 5 地点において、0.5m

2

(直径約 0.8m)

図 1 アカマツ林試験地における胸高直径 5cm 以上の個体の 立木位置と、実生調査コドラートの位置図

0 10 20 30 40 50 m

モニタリング試験地

(20m×140m=0.28ha)

C2 C3 C4

C1 C5

D1

D2 D3

N N N

の円形の種子トラップを各 1 台ずつ、9 月初旬~12 月中 旬にかけて 3 ヶ月あまりの間設置した。捕捉されたアカ マツの散布種子数をトラップ毎に計測し、各年のトラッ プ当たりの 1m

2

当たりの平均散布種子数を算出した。

各年 5 月中旬から 10 月中旬にかけて、 2~4 週間おきに、

発生したアカマツ当年生実生をマーキングし、その生存 を追跡した。年次毎に、C 区及び D 区における 1m

2

当たり の累積実生発生数及び各調査時期での生存数をそれぞれ 集計し、C 区での実生の発生率(累積発生数/散布種子数)

及び C 区及び D 区での実生の 10 月までの生存率(10 月時 点での生存数/累積発生数)を算出した。

3 結果と考察

(1) アカマツの種子散布量及び当年生実生の発生 調査した 2007 年及び 2008 年における、前年秋の散布 種子数、 当年生実生の累積発生数と 10 月時点での生存数、

及び実生の発生率と 10 月までの生存率を表 1 に示す。C 区におけるアカマツの 2007 年の平均種子散布数は、2006 年の約 4.2 倍であった。また、翌年のアカマツ実生の累 積発生数は、2007 年では C 区と D 区の生育環境間で大き な差が見られなかった一方で、前年秋の散布種子数が大 きかった 2008 年では、D 区において C 区の約 2 倍の実生 の発生が観察された。散布種子数と実生の累積発生数か ら推定された、C 区におけるアカマツ実生の発生率は、

2007 年の方が 2008 年よりもやや高かった。

以上の結果から、2006 年秋と 2007 秋の 2 年間では、布 種子数が多かった 2007 年秋の方がより種子生産の豊作年 であったと判断される。また、2008 年では D 区において 実生の発生密度が特に高かったことから、根返り跡にお ける当年生実生の発生が、豊作年で特に促進されている ことが示唆される。

一方で、実生の発生率に関しては、豊作年と考えられ

る 2008 年の方が 2007 年よりもやや低かった。実生の発 生率に影響を与える要因の一つとして、種子の散布密度 や、散布種子の充実度等が考えられる。散布種子密度が 高いほど、動物や昆虫などによる被食率の増加や、個体 間競争による発芽に必要な資源量の不足等により、発生 率が低下する可能性が考えられる。あるいは、種子の充 実度には受粉した花粉の質や、母樹のもつ資源量の違い 等が関係し、豊作年である 2008 年では、自己の産出した 花粉による自家受粉の割合が多いことで、近交弱勢の増 大が影響している可能性も考えられる。今回の結果から だけでは、2008 年の方が 2007 年よりも上記条件が不良で あったと確定することは難しいが、今後とも豊凶と実際 の発生数の推移を継続して調査していくことが重要と思 われる。

(2) アカマツの当年生実生の生存

実生の生存率は、調査した 2 ヶ年を通じて生育環境間 で大きな差が見られた。C 区では、発生した実生は 10 月 までの間にほとんどが枯死したのに対し、D 区では両年と も 50%以上もの実生が生存した(表 1) 。また、いずれの 生育環境下においても、2007 年の方が 2008 年よりも生存 率が高かった。

調査した 2007 年及び 2008 年での、C 区及び D 区におけ

表 1 調査した 2007 年及び 2008 年における、前年秋の散布種 子数、当年生実生の累積発生数と 10 月時点での生存数、及 び実生の発生率と 10 月までの生存率

①前年秋の ②累積実生 ③10月時点で 実生発生 10月までの 年次 生育環境 散布種子数 発生数 の生存実生数 率(%) 生存率(%)

(/m2) (/m2) (/m2) (②/①) (③/②)

2007年 C区 57.6 6.20 0.40 10.8 6.5

(10.0m2

D区 - 8.86 5.43 - 61.3

(3.5m2

2008年 C区 241.6 19.30 0.60 8.0 3.1

(10.0m2

D区 - 38.86 19.43 - 50.0

(3.5m2

図 2 調査した 2007 年及び 2008 年での、C 区及び D 区におけ るアカマツ当年生実生の生存数の推移

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 0.0 3.0 6.0 9.0 12.0

調査時期 生 存 実 生 数 (個 体 /m

2

D区

C区

累積発生数 生存数

50.0%

3.1%

D区

C区

61.3%

6.5%

(b) 2008年 (a) 2007年

5月 6月 7月 8月 9月 10月

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 0.0 3.0 6.0 9.0 12.0

調査時期 生 存 実 生 数 (個 体 /m

2

D区

C区

累積発生数 生存数 累積発生数 生存数

50.0%

3.1%

D区

C区

61.3%

6.5%

(b) 2008年 (a) 2007年

5月 6月 7月 8月 9月 10月

5月 6月 7月 8月 9月 10月