第一部 海運国
6 その他(償却、買い換え特例、純賃金制度)
(1)償却
通常の船舶は 12%の定率償却であるが、新造船については初年度のみ 20%の割増償却が認められている。
(2)買い換え特例
船舶を売却した年度と同一年度若しくは翌年度に船舶を取得した場合、
当該取得価額を売却益から控除することが認められている。
(3)純賃金制度(Net Wage System)
純賃金制度は、DIS(1(2))などとともに導入されたもので、デンマ ーク人船員の雇用に係る費用を軽減することで、海運企業の国際競争力及 びデンマーク人船員の雇用を回復することを目的とするものである。純賃 金制度の対象となる船員が一定の船舶において労働したことで得た賃金に ついては、所得税が当該税額分軽減される(同所得については所得税がか からないということ。)。
純賃金制度の対象となる船員は、デンマークに居住し、デンマークに納 税義務を有する者であって、次の船舶に乗り組む船員である。
①DIS に登録された船舶であって、旅客又は貨物の輸送に関する商 業活動に従事する船舶。
②EU/EEA 域内での曳航及び救助に用いられるEU/EEA 籍船舶であっ て、年間稼働時間の 50%以上が海上輸送の性質を有する活動(港 間の移動を伴う活動)に従事した船舶。
なお、対象となる船員は、通常の所得税法の下では享受できる所得控除
(例えば扶養控除)を利用できないため、かかる所得控除によって得られ るはずの金銭的利益については、労使協定の下で当該船員の申請に基づい て、海運企業が設立した基金より補償される。
【データ編】
1.デンマーク経済の概況
(1)デンマークの概況(JETRO・海外ビジネス情報より)
面積:43,098平方キロメートル(日本の約 10%)
人口:556万人(2011 年、出所:デンマーク統計局) 首都:コペンハーゲン 人口51万人(2011 年初) 言語:デンマーク語
宗教:プロテスタント
(2)デンマーク経済の概況(JETRO・海外ビジネス情報及びIHS「Global Insight」より)
名目GDP総額:1 兆 7,427 億デンマーク・クローネ 名目GDP総額:3,098 億ドル(単位:100万)
一人あたりの GDP(名目):5万 5,986 ドル 実質GDP成長率:1.7%
貿易収支(国際収支ベース):86 億 7,600万ドル 経常収支(国際収支ベース):162 億 8,700万ドル 外貨準備高:735 億 300万 ドル
海上荷動き量:輸入9,625,299 トン、輸出 16,297,492 トン 海上コンテナ荷動き量:輸入255,382TEU、輸出 226,641TEU
デンマークの人口は 2011 年初現在 556万人、主要産業は金融・不動産、運輸・
交通・通信、鉱業・エネルギーである。1994~2007 年の 14 年間は、国内需要 と輸出の増加により好景気を維持し、実質 GDPが年平均プラス 2.44%を記録し てきた。しかし、2008 年 9 月の金融危機による世界経済の減速、特にドイツ、
スウェーデン等近隣諸国の製造業の業績悪化に伴い輸出が停滞した。その結果、
実質経済成長率は 2008 年にマイナス 0.87%、2009 年にマイナス 4.74%を記録し た。その後2009年第2四半期を境にドイツ・スウェーデン等近隣諸国経済が徐々 に回復したことによって、2010 年の実質経済成長率はプラス 1.95%を記録した。
金融危機以前の失業率は 2007 年には 3.6%であったが、危機以降漸増傾向が 続き、2010 年に 7.2%を記録した。財政収支は金融危機以前まで概ね黒字であり、
2008 年は対GDP比で 3.3%であったが、2009 年には対GDP比でマイナス 2.8%と 赤字に転じている。
今後 5 年以内の短期的な見通しとしては、失業率は 6~7%台を推移し、財務 収支もマイナス 3%台を維持すると見られており、金融危機以前の水準まで戻る のは 2010 年代中盤以降と見込まれている。
IHS の Global Insight の統計によれば、デンマークの 2010 年の海上荷動き 量は、輸入が 9,625,299 トン、輸出が 16,297,492 トンで、同年の海上コンテナ 荷動き量は、輸入が 255,382TEU、輸出が 226,641TEUである。
(3)行政機構
運輸部門を所管するのは、経済産業省(Ministry of Economic and Business Affairs)であり、6のエージェンシーを設置している。そのひ とつであるデンマーク海事局(DMA: Danish Maritime Authority)が海運 行政を行っている。