九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科
【略歴】
平成 5年(1993年)九州大学医学部医学科卒業
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
(旧・第二内科)入局
平成 8年(1996年)九州大学大学院医学系研究科内科系専攻入学
(大学院/生化学)
平成12年(2000年)九州大学病院・医員
平成17年(2005年)UMDNJ-NewJerseyMedicalSchool・
PostdoctoralFellow留学
平成20年(2008年)九州大学病院・腎・高血圧・脳血管内科・助教 平成28年(2016年)九州大学病院・腎・高血圧・脳血管内科・講師 中 枢 神 経 系 特 有 の 構 造 で あ る 血 液 脳 関 門(Blood-brain barrier, BBB)を維持することは,神経細胞機能維持にお いても極めて重要なことである.BBBは内皮細胞間のtight junctionによって形成されているが,その構造維持には周囲 を取り巻くペリサイトと内皮細胞の相互作用が不可欠であ る.加齢や生活習慣病によってペリサイト機能不全や細胞死 が生じると,BBB破綻による血液内容物の漏出や炎症が生 じるのみならず,脳内老廃物の血液への排出不全,血流制御 不全,血管床減少などが順次生じて,神経細胞機能不全の原 因となる.脳虚血病態において,灌流域における細胞死は一 様でないことが知られている.げっ歯類を用いた脳梗塞モデ ルにおいて,灌流域内皮細胞は虚血抵抗性を有し比較的長期 に生存しうるのに対して,ペリサイトは数時間で機能不全・
細胞死を生じる.ゆえに脳虚血早期のBBB破綻はペリサイ ト機能不全・細胞死によってもたらされ,また,近年可能に なった再灌流治療の重要な標的は神経系細胞とともにペリサ イトである可能性がある.一方,脳梗塞発生後は,梗塞巣辺 縁の微小血管ペリサイトが梗塞内部に残存する内皮細胞に 沿って増殖・遊走し3-5日の経過でBBBの再構築を完了させ る.BBB再構築完了後,ペリサイトの一部は血管壁より遊 離し線維芽細胞様の細胞へ形質転換して傷害組織の充填・修 復を担う.これらの細胞は種々の神経栄養因子や抗炎症タン パク質を産生し,梗塞周囲アストログリオーシスの促進や神 経ネットワーク再構築に寄与する可能性がある.ゆえに迅速 かつ良好な脳梗塞・組織修復は良好な転帰に寄与しうると考 えられる.以上のように,ペリサイトは脳虚血病態の様々な 場面で重要な役割を担っており,ペリサイト機能制御を標的 とした神経機能維持・回復治療の発展に期待が持たれている.
本講演では上記に関連したペリサイトの役割について,我々 の研究成果を中心に紹介してみたい.
24 シ ン ポ ジ ウ ム 日 シンポジウム 06
5月24日(木)8:00 ~ 9:30 第3会場 (さっぽろ芸術文化の館3F 蓬莱の間)
公募 Jp
S-06-2 これからの医師養成
○石丸 文至
厚生労働省医政局医事課
【略歴】
平成23年4月 愛媛県立中央病院 初期臨床研修医 平成24年4月 愛媛大学医学部附属病院 初期臨床研修医 平成25年4月 厚生労働省入省
厚生労働省 健康局総務課主査として 原爆被爆者援護施策等に従事 平成26年4月 厚生労働省 健康局疾病対策課主査として
難病新法関係の業務に従事 平成27年4月 厚生労働省 大臣官房厚生科学課主査として
厚生労働科学研究関係等の業務に従事 平成28年4月 内閣官房に出向
内閣官房 健康・医療戦略室主査・参事官補佐として次世 代医療基盤法(医療ビッグデータ新法)の法案作 成等の業務に従事
平成29年8月 厚生労働省 医政局医事課課長補佐・医政局医療勤務環境改 善推進室長補佐として医師養成・医師偏在対策・
医師の働き方改革等の業務に従事
医師臨床研修制度については、平成16年度に導入されて以降、
14年が経過し、現在、3回目(平成32年度)の見直しにおいて、
必修診療科の見直し等が行われる見込みであり、また、新た な専門医制度についても、平成30年度からの養成が開始され る見込みである。
医師の養成にあたっては、臨床実習を含めた卒前教育、国家 試験、臨床研修、専門研修の連続性に十分配慮し、全体とし て質の向上を図っていくことの重要性が指摘されているとこ ろであるが、他方、医師偏在に対するアプローチとしても、
医師の養成は重要なファクターとなっており、地域の医師確 保など地域医療に十分配慮される仕組みとすることが重要で ある。
こうした背景を踏まえつつ、行政の観点から、医師養成の現 状と今後について展望する。
S-06-3 AMEDの難病研究に対
する取り組み
○古澤 嘉彦
日本医療研究開発機構
【略歴】
学歴①獨協医科大学(平成11年4月~平成16年3月)
②山梨大学大学院(平成22年~平成26年)学位取得
職歴①手稲渓仁会病院 総合内科研究医(平成16年4月~平成19年3月)
② 国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科後期研修医
(平成19年4月~平成23年6月)
③ 国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科医師
(平成23年7月から平成27年3月)
④日本医療研究開発機構戦略推進部難病研究課 主幹(平成27年4月~現在)
2015年1月1日から「難病の患者に対する医療等に関する法 律」が施行され、難病医療費助成制度の対象が56疾病から110 疾病へ増えた。現在は330疾病が指定難病となっている。ま た小児慢性特定疾病も722疾病まで増えるなど、国も難病対 策に力を注いでいる。
難病の治療法開発は、患者数が希少であるために、研究開 発が困難で多くの時間と経費を必要とするが市場は小さい、
という疾患領域の特殊性により企業単体での取り組みが困難 な一方、核酸医薬や再生医療、遺伝子治療等、新しい技術が 豊富な領域でもあり、オープンイノベーション等による企業 とアカデミアの連携が期待されている。
AMEDの難治性疾患実用化研究事業では、難病の克服を 目指して、病態解明を行う研究課題、開発候補物の探索を行 う研究課題、薬事承認を目指した非臨床試験や医師主導治験 等を行う研究課題、診療に関するエビデンスの創出を行いガ イドラインへの反映を目指す研究課題、難病患者の遺伝子や オミックス情報の解析を行う研究課題、未診断疾患の診断体 制を構築する研究課題、難病の情報基盤を構築する研究課題 等が設定されている。いずれの研究課題でも実用化に向けた 出口戦略を設定し、着実な研究推進のための進捗管理を実施 している。
2015年度に開始した未診断疾患イニシアチブ(IRUD)につ いては、未診断疾患に対する全国診断体制の整備が順調に進 捗し、新規疾患概念や原因遺伝子の同定に至っている。そ の成果をさらに発展させる取り組みとしてIRUD Beyondを 2017年度に新たに立ち上げた。この中には診断率の向上を目 指したモデル動物コーディネーティングセンターの構築や、
実用化を加速するためのゲノム編集技術を活用した研究等も 含まれており、IRUDの成果を実用化につなげていくための 新たな研究をスタートさせている。
さらに、2016年度に開始した情報基盤構築研究(難病プラッ トフォーム)では、各難病班がもつレジストリのカタログ情 報を公開した。2018年度から開始するレジストリ構築支援や データの集約と二次活用にむけた準備がすすめられている。
上記の通り、AMEDではアカデミアの実用化研究を支援 する体制整備を進めている。本発表では上記話題に加えて、
AMEDが目指す難病研究の方向性などについて紹介する。
24 日 シ ン ポ ジ ウ ム
シンポジウム 07
5月24日(木)8:00 ~ 9:30 第4会場 (さっぽろ芸術文化の館3F 黎明の間)
公募 Jp
S-07-2 VEGF~t-PA療法後の出血 合併症に対する治療標的~
○金澤 雅人
1、髙橋 哲哉
1、 下畑 享良
21 新潟大学脳研究所 神経内科、
2 岐阜大学医学部 神経内科・老年科
【略歴】
現職:新潟大学脳研究所(新潟大学医歯学総合病院) 神経内科 助教 2000年 福島県立医科大学医学部卒業
2009年3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科神経内科医学博士号取得 2010年4月 ワシントン大学医学部客員研究員(Gregory J del Zoppo教授)
2012年6月 新潟大学医歯学総合病院神経内科助教
所属学会; 日本・米国神経学会,日本・米国内科学会,日本・米国脳卒中学会,
日本脳循環代謝学会
受賞歴; 第36回日本脳卒中学会・日本心臓財団草野賞,第31回成人血管病 研究振興財団岡本研究奨励賞,平成29年度日本医師会医学研究奨 励賞,第1回日本脳循環代謝学会賞
BIOGRAPHY
Current: Assistant Professor,
Department of Neurology in Niigata University Medical and Dental Hospital
AWARDS:
2012 Kusano Award from Japanese Stroke Society (JSS)/Japan Heart Foundation
2015 Young Investigator Okamoto Award
2017 Medical Research Encouragement Prize of the Japan Medical Association
2017 Japanese Society of Cerebral Blood Flow and Metabolism Award
Tissue plasminogen activator (t-PA) treatment is beneficial for patients with ischemic stroke within 4.5 h of stroke onset, because the risk of intracerebral hemorrhagic transformation (HT) increases with delayed t-PA treatment. The benefits of t-PA thrombolysis are heavily dependent on time to treatment. Development of vasoprotective drugs that attenuate HT after delayed t-PA treatment might improve the prognosis of stroke patients and extend the therapeutic time window of t-PA and endovascular thrombolysis. An angiogenic factor, vascular endothelial growth factor (VEGF), might be associated with the blood-brain barrier (BBB) disruption after focal cerebral ischemia. By using a rat thromboembolic model, delayed t-PA treatment at 4 h after ischemia promoted expression of VEGF in BBB, matrix metalloproteinase-9
(MMP-9) activation, degradation of BBB components, and HT. We demonstrated that HT was inhibited by intravenous administration of an anti-VEGF neutralizing antibody/VEGF receptor antagonist.In addition, for clinical application, reverse translation studies, a path from bedside to bench, are necessary. We had conducted a clinical study to demonstrate the importance of VEGF as a therapeutic target using human samples. We are planning to conduct a phase II clinical trial.
S-07-3 脳虚血におけるインクレ
チン(GLP-1)の役割と脳 保護作用
○田中 亮太
1、黒木 卓馬
2、
寺本紳一郎
3、山城 一雄
1、宮元 伸和
1、 上野 祐司
1、新井 一
3、服部 信孝
1、 卜部 貴夫
41 順天堂大学医学部 脳神経内科、2 順天堂大学医学部附属練 馬病院 脳神経内科、3 順天堂大学医学部 脳神経外科、4 順 天堂大学医学部附属浦安病院 脳神経内科
【略歴】
1996年 3月 順天堂大学医学部医学科卒業
1996年 4月 順天堂大学医学部 脳神経内科 入局 (水野美邦 教授)
2000年 4月 順天堂大学大学院(神経学)
2003年 3月 学位 博士(医学) 授与
2003年 5月 カルガリー大学医学部生物学・解剖学 博士研究員 (Samuel Weiss教授)
2005年 5月 順天堂大学医学部 脳神経内科 助手 2006年 1月 順天堂医院救急診療科 助手(出向)~同年8月 2006年 9月 順天堂大学医学部 脳神経内科 助手 2008年 4月 順天堂大学医学部附属浦安病院 脳神経内科 助教 2008年 10月 順天堂大学医学部附属浦安病院 脳神経内科 准教授 2011年 4月 順天堂大学医学部 脳神経内科 准教授
2012年 1月 順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科 外来医長 2013年 1月 順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科 病棟医長~同年12月 2016年 9月 順天堂大学医学部 脳神経内科 医局長~ 2017年12月 研究テーマ
脳梗塞急性期に対する新規脳保護薬の開発 免疫制御を介した脳卒中の治療法の開発 脳卒中における血糖コントロールと再発予防治療 脳卒中における慢性炎症
高血糖や糖尿病は脳梗塞の発症リスクである一方で、脳梗塞急性 期における梗塞巣拡大や出血性梗塞にも強く影響している。しか しながら脳梗塞急性期における厳格な血糖コントロールが脳梗塞 の予後を改善するという報告はいまだない。これは血糖コント ロール単独の効果に限界があることや低血糖のリスクが影響して いると予想される。近年インスリン分泌を促進する消化管因子の インクレチンが、血糖コントロールのみならず、腎保護や心血管 保護などの臓器保護作用を有することが明らかになってきた。
我 々 は マウス 中 大 脳 動 脈 虚 血 再 灌 モデル にGLP-1 agonist
(exendin-4)を静脈内投与することによって、虚血再灌流後24時 間、72時間、1週間後の梗塞巣を有意に抑制し、神経機能障害を 軽減することを報告してきた。Exendin-4投与はvehicle投与に対 して、インスリン値や血糖値に有意な影響を及ぼさなかった。一 方でexendin-4投与は8-OHdGやHHEなどの酸化ストレスのマー カーやiNOSなどの炎症マーカーを有意に抑制していた。これら の脳保護作用には細胞内cAMPの増加と転写因子CREBの活性化 が影響していた。さらに一過性に高血糖を誘導したマウスにおい てもexendin-4の脳保護効果について同様の実験を行った。高血 糖マウスは梗塞巣増大や出血性梗塞の発現に有意に影響していた が、exendin-4投与は梗塞巣を有意に縮小した。一方インスリン を用い血糖管理を行っても同様の脳梗塞縮小効果は認められな かった。Exendin-4の投与は梗塞後の梗塞巣内の出血性変化を抑 制し、血液脳関門の破綻を軽減していた。これらの効果はmatrix metalloproteinases 9 (MMP-9)活性の抑制が関係していた。
これらのデータから脳梗塞急性期におけるGLP-1 agonistの新た な脳保護薬としての役割が期待される。脳梗塞以外にもパーキン ソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患への治療応用の研 究成果も報告されている。本シンポジウムではインクレチンの脳 保護作用と新たな治療戦略について解説する。