第 2‑3図 ゲレロネグロ農地内の EC(1:5),pH(1:2.5)平 面分布
‑30‑
10.0
O
O
G4(自
然 土 壌)ECe(dS m 1)
0 1 2 3 4
8
pH
年 間 灌 漑)
(dS m‐1)
2 3 4
G2(4年
間 灌 漑)ECe(dS m 1)
01234
1
⁚ e
< C l E G 0
︵E じ 和 К
0 20 40 60 80 100 120
8
pH
赤褐色層 ―●― ECe
第 2‑5図 断面内における ECeと pH(ゲ レロネグロ
)‑32‑
に含 まれ て い るの で
,ナ
トリウム高濃度 障害 によ るカル シ ウム の 吸収 阻害 が生 じてお り,農
地 内で トマ トの初 期着果果実 に尻腐 れがみ られた。 さ らに,土
壌pHが
高 い ことか ら
,作
物 は,鉄 ,亜
鉛,銅
等 の不 可給 化 に よ り,微
量 要 素 の欠 乏症 を引き起 こす危 険性 を有す る.農
地 内では重炭 酸塩 が多 い こともあ り,作
物 による鉄 吸収が阻害 され, 鉄 欠 乏 によ る トマ トの葉 に黄 白化症状がみ られた。 さ らには,硝
酸化 成能 も抑 制 され,窒素肥効 も低下 して いた。
ビス カイ ノで は
,灌
漑 水 の水 質 を詳細 に測 定す る こ とが で きなか ったが,塩
化 物 イ オ ン濃 度 か ら判 断す る と,ナ
トリウムイ オ ン も多 量 に含 まれて いる と推察 され た (第2‑2表 ).土
壌飽和抽 出液 のpIIは 8,0〜 8.3で 著 しく高 い とは言 えないが,pH(1:2.5)
は8.9〜 9,7と 非 常 に高 い値 を示 した
.土
壌 中 に炭 酸 ナ トリウム,重
炭 酸 ナ トリウムが 含 まれ てお り,多
量 の水 の添 加 によ り溶 出 され た結果 と考 え られた.し
か し,当
農 地 は畝 間灌 漑 によって管理 されて いるため,大
量 の濯漑 水が一度 に導入 され る ことによっ て,一
時 的 に土 壌 のpHが
急 激 に上 昇 されて い る危 険性 が示 唆 され た。 また,当
地 はゲ レロネ グ ロ と同様 に砂 質で,灌
漑 によ り塩 類 が 洗脱 されや す い環 境 下 で あ ったが,表
層 に塩類集積 がみ られ
,ECe値
は4dS m 1を
超 えて いた.表
層 に集積 して い る塩類 の形 態 は塩化 ナ トリウム,重
炭酸 ナ トリウム等 のナ トリウム塩 主体 の易溶性塩類 で あった。これ はゲ レロネ グ ロに比べ灌漑水 の水質 が悪 い こと
,灌
漑 水 量 が多 い こ と,管
理歴 が長 い こと等 に起 因 して い る と考 え られ た。
しか し
,塩
濃度 の高 い灌 漑 水 を利 用 して い る に も関わ らず10年
以 上安 定 した収穫 を 得 て い る こ とは,砂
質 で あ るた め に塩 類 が下 層 に洗脱 され 易 く,表
層 に溜 ま りに くい 事 を反映 して いる.地
下水 に10mg
ビ1以上 の多量 の硝酸態 窒 素が検 出 された ことは,この ことを裏 付 けるものである.
ヘススマ リアで は
,自
然土 壌 の断面 内のECe値
は全層 にわ た りldS m■
程度 で,顕
著 な塩類 集 積 は認 め られ な か った。 しか し,11年
間 の管 理 後,表
層 には多 量 の塩類 集 積 が み られECe値
が10dS In司
を超 えて いた。集 積塩類 は主 に塩化ナ トリウム,塩
化 マ グ ネ シウム,塩
化 カル シウム等 の塩化 物 を主体 と した水 に溶 けやす い形態 で あった 。 こ れ らの可溶 性 塩類 は,土
壌 が粘 土 質 で あ るた め灌 漑 によって下層 に洗脱 され に くく,激 しい蒸発 によ り
,表
層 に集積 され た と考 え られ た。 これ まで の灌漑,施
肥 の繰 り返 しによ り,灌
漑水 中,肥
料 中 に含 まれて い る塩 類 がそ の ま ま土 壌 中へ残 存 した結果 と 考 え られ た 。粘 質 な土 性 で あ るた め,灌
漑水 中の塩 が 下層 に浸 透 され に く く,塩
がその ま ま土 壌 中 に残留 された結果 といえ る
.し
か し,低
い地 下 水位 のた め下層 か らの地‑33‑
下水 の上昇 によ る塩 類 の付加 は懸念 されなか った。
カ リ フ ォル ニ ア 半 島 で は
,古
くか ら灌 漑 農 業 が 行 わ れ て き た 先 進 農 業 地 域 にお い て 塩 類 集 積 が 深 刻 な 問題 とな って きて い る.農
業 の 歴 史 が 比 較 的 新 しい ゲ レ ロ ネ グ ロ周 辺 で も塩 類 化,ア
ル カ リ化 が 顕 在 化 して い た.こ
の 周 辺 で は 近 代 農 業 の 歴 史 が 浅 く,塩
類 集 積 の 問 題 意 識 は 希 薄 で あ る 。メ キ シ ヨ にお い て は 農 地 改 革 に合 わ せ
,今
後 早 急 に土 地 資 源,水
資 源 等 の 評 価 を見 直 し,乾
燥 地 農 業 に対 して 対 応 して い か な け れ ば な らな い 。 各 地 に分 布 す る 乾 燥 地 にお い て も,絶
え ず 土 地 資 源,水
資 源 等 を十 分 に考 慮 して 対 応 して い か な け れ ば な らな い 。2.3.カザ フス タ ン・ シル ダ リア川下流域 の灌漑農地の上壊環境 2.3.1.背景
カザ フス タ ン共 和 国 (以下
,カ
ザ フス タ ン と称 す)は
遊牧 民 の土 地 で あ っ たが,旧
ソ連 時 代 に穀物 輸入量 の削減 と遊牧 民の定住 化 のため に
,1950年
代 か ら大 規 模 な農 業 開発 が始 め られ た 。 全 農 用 地 面 積2億 2,000万 haの
うち 約82%は
放 牧 地 で,残
りの3,500万 haが
耕 作地 で あ る.農
業 生産 は約8,000の
国営農 場 と集 団農 場 に組織 化 され,一農場 あた りの平均耕地面積 は約4万
haで
ある (レオニー ドら,1996).
ア ラル 海 に流 入 す る シル ダ リア川
,ア
ム ダ リア川 流 域 にお いて も,1950年
代 か ら1960年
代 にか けて大規模 な灌 漑農 業 開発 計画 が実施 され,約 760万 haの
広 大 な灌 漑農 地 が 開発 され た。そ して,一
時 的 にはカザ フス タ ンの米 生産 の約70%を
産 出す る までに至 ったが
,1980年
代 後 半 に入 る と,土
壌塩 類化 等 によ り,生
産 量 は低 下 して きて い る。特 に,ア
ラル海周 辺地域 は年 間降水量 が150mnl以
下 の乾 燥 気候 下 にあ るため,土
壌 の塩 類化 が急 速 に広 が って い る。 同時 に両河 川 か らの流 入量 の減 少 によ り、 ア ラル 海が急速 に縮 小 してお り、深刻 な環 境 問題 とな って いる。 中央 アジアで は既 に
100万 ha
の土 地 が不 適切 な灌 漑 によって失 われ た とされて い る (筒井
,1996)。
また,カ
ザ フ ス タ ンの灌 漑農 地 の内,60〜 70%が
土 壊 塩 類化 の影 響 を受 け,作
物 収 量 の低 下 が み ら れ る(Khakimov,1989),
シル ダ リア川 上 流域 お よび 中流域 で は綿花 中心 の灌 漑農業 が展 開 されて い るが
,綿
花 の灌 漑栽 培 を続 けて い く内 に
,低
地 部 に地 下水 の上 昇 と湛水 化 が 生 じ,同
時 に著 し い塩類集積 が み られ るよ うにな った 。 シル ダ リア川下 流域 で は,上
記 の経 験 を も とに 始 めか ら水稲 を含 めた輸 作が導入 され た (荻野 ら,1996)。
‑34‑
以 上 の背 景 か ら
,本
節 で は,カ
ザ フス タ ンの シル ダ リア川 下 流域 の灌 漑農地 を研 究 拠 点 と して,当
地 で進行 して い る塩 類集 積 の実態 と塩類集積機 構 を解 明 し,
これ と農 地 の立 地 条件 あ る いは輪 作 システム の関係 を明 らか にす る ことを 目的 と して,土
壌 の 諸性質 と土 壌塩類化 の関係 を論 じる。2.3.2.調査地域 の概況
第2‑6図に調査対象地域 を示 した。調査対象地域 はカザ フスタン・クズ リオルダ州 ジャ ガ ラシ村 の集 団農 場で あ る。 この地 域 は
,天
山 山脈 とパ ミー ル 高原 を水 源 とす る シル ダ リア川 を灌 漑 水源 とす る地 域 で,ア
ラル海 か らシル ダ リア川 上流 約350kmの
右 岸,クズ リオル ダ市 の北西約
75kmに
位 置す る。 この地域 の年 間降水 量 は平均120mmで
あ り,降
水 は主 に秋 か ら春 にか けて で あ る,夏
には降雨 が ほ とん どな く,非
常 に乾 燥 し て いる。調査 地 域 は海洋 か ら遠 く離 れて いるため,極
端 な大 陸性気 候 を呈す る。高緯 度 (北緯45° )イこも関わ らず,夏
は極端 に暑 く,平
均気 温 は27℃ ,最
高気 温 は40℃
を超 え る。冬 は極端 に寒冷 で
,平
均気温 は‑5℃,最
低気温 は‑25℃
を下 回 る (大成建 設株 式会社 計画技術部環 境計画室,1996).
調査 を行 った農 場 は
,シ
ル ダ リア川北側 の氾濫源 に位置 して いる。1970年
代 に整備 が 開始 され,そ
の全体 面積 は19,200haで
あ る。農 場 内 に数 ヶ所 の灌漑 プ ロックが点在 し,灌
漑農地 面積 は]0%に
あた る1900haで
ある。農地 の分布 状況 か ら,農
地 開発 は主 に灌漑水 の供給が容易で,か
つ 比較 的低平 な地形 の ところにお いて優先 的 に行 われて きた と推測 され る。比較 的起伏が あ り,水
供給 が 困難 な ところは開発 されず,放
置 さ れて いる。農 場で は,ソ
連邦時代 に政府 か らの指 示 によ り,1970年
代始 めか ら水稲,牧草
,休
閑 を含 む八 圃式輪作 が行 われて きた (第2‑7図
)。 これ は,節
水 と地 力の回復 のため に,ブ
ロック内 を八つ に分 けて作付 けす る方 法で ある。 この方法 では,畑
作 区 の揚水量 は水稲 区か らの地下水補給 で まかなえる と して,節
水 面 で の効果 が期 待 され た。 しか し,水
稲栽 培 を行 って いる農地 の近 隣 の畑 地 で は,水
田の地 下水位 上 昇 の影 響 を受 け,農
地 の塩 類化 が助長 され た。 この ことを受 けて,農
場 で は最 近輪 作 を廃 止 しつつ あ り,ブ
ロ ック毎 に同一作物 を栽培す る傾 向 にある。農場 の主要栽培作物 は水 稲,ア
ル フ ァル フ ァ,小
麦で あ る。農 場で は
,灌
漑 開始 直後 か ら農地 の塩類化 が進行 し,調
査 時点 で は耕 作地約1,900ha
の内,塩
害 に伴 う放棄地 は約600haを
占めてお り,土
壌塩類化 面積 は拡大 し続 けて い る。この地域 で今後 も農業 を行 って い くため に
,有
効 な灌漑水 の利 用法や土 壌 の管 理,改
良策 が示 され る ことが急務 とな って いる。
‑35‑
カ ザ フ ス タ ン
◎アクモラ バルハン湖 クジルオルダア 生 房
アルマトイク ジ ル オ ル ダ 州 ジ ャ ガ ラ ン 村 集 団 農 場 タ ジ キ ス タ ン
︲ωω︲
カ ザ フ ス タ ン 共 和 国 500 km 第 2‑6図 カ ザ フ ス タ ン 共 和 国 と 調 査 対 象 地 域
第2‑7図 八固式輪作体系
‑37‑
2.3,3.供試土壊 および分析 方法 2.3,3.].供 試土壊
第
2‑8図 ,第 2‑9図
に土 壌 断面調査地点 と採水地点 を示 した。土壌調査 は灌漑 プ ロッ クの内,最
も塩 害が深 刻 な メシ ッ トブ ロ ック とサル タバー ンブ ロックお よび比較的近 年 に開発 され たイエル タイ ブ ロ ックで行 った.イ
エル タイで は開発が比較 的近年 のた め放棄地 が少 な く,八
圃式輪作 が唯一行 われて い るブ ロ ックで あ る.調
査 時 には,メ
シ ッ トブ ロ ックで は小麦 とアル フ ァル フ ァの混作
,サ
ル タバ ー ンブ ロックで は水稲 作 が行 われ て いた,ま
た,イ
エル タイ ブ ロックは一部で牧草 の栽培,残
りの部分 で水稲 作 が行 われて いた 。最 も早 くか ら開発 され,塩
類化 の進行 して い るメ シ ッ トブ ロック で はアル フ ァル フ ァ耕作 地(M2),小
麦耕 作地(M4),放
棄地2地点 (M上,M3)の
合 計4地点
,主
に水稲作が行 われて い るサル タバー ンブ ロックで は水 田に近接 した放棄 水 田(Cl),水
田か らやや遠 く離れ た放棄 地(C2)の
合 計2地点,最
も新 しく整備 さ れたイエル タイ ブ ロックで はァル フ ァル フ ァ耕作地2地点(E2,E3),放
棄 地 (El) の合 計3地点 につ いて,土
壌調査 を行 った。農地 の土 壌調査 を行 う際 には,水
稲 作 が地 下水位 と塩類集積 に及 ぼす影 響 を見 るため,水
田か らの距離 を変 えて行 った。それぞ れ の土壌 断面調査 を行 い
,試
料 を採取 し,分
析 に供 した, 調査土壊 断面形態 を第2‑10図
に示 した。2.3.3,2.分析 方法 2.2.3.2.に準 じた。
2.3.4.結果 および考察 2.3.4.1.耕作土壊 の特 徴
写真
2‑8〜
写真2‑11に
土壌 断面写真,第 2‑6表
に土 壌 断面 形態 を示 した。2,3.4.1.1.放棄水 田隣接耕作地
(M2)
メシ ッ トブ ロック内の放棄 地 に隣接す る耕作地 で
,小
麦・ アル フ ァル フ ァ収穫後, 土 壌調査 を した。耐塩 性植物 の ソ リヤ ンコ ビ (soFya=27COViye)が 比較 的多 く見 られ,耕 作地東端 か ら約
1/4程
度 のエ リア 内で生育 し始 めてお り,土
壌塩 類化 が進行 して い る ことが うかが え られ た。 また,隣
接 して いる水路 で繁茂 して いる ヨシの根 が,耕
作地 内 に も進 出 してお り,所
々で ヨシが生育 して いた。土壊 断面 形態
:全
層 にわ た り土壌が 非常 に緻 密で硬 く締 まって いた。植 物根 が非常 に多 く認 め られ,表
層 にはルー トマ ッ トが形成 されて いた。 また,
ヨシの根が70cm付
近 まで認 め られ た