2002 経済原論Ⅱ 2002.4.22
資本主義的生産のしくみ②:剰余価値と労賃 5.
1.一般商品と労働力商品の相違
G
−W Pm …W'
−G'
A
(1)一般商品・使用価値=それぞれの商品が有する何らかの有用性
・価値=その商品を生産するのに社会的平均的に必要な労働時間(抽象的人間労働の投下量)
=生産手段商品に含まれていた価値部分と抽象的人間労働の働きによって新しく形成さ れた価値部分との合計
労働力商品 (2)
・使用価値=消費することによって新たな価値を形成するという「有用性」
・価値=労働力商品を生産(再生産)するのに社会的平均的に必要な労働の投下量(時間)
=労働者の生活に必要な消費財等の生産に社会的平均的に必要な労働の投下量(時間)
※生活費,家族扶養費,修業費等。物質的充足だけでなく文化的充足も。
2.剰余価値 剰余価値の源泉 (1)
・雇用主(資本家=生産手段所有者)が労働力商品の代金として労働者に支払う価値(労働賃 金)と、労働者が雇用主の下でおこなう生産過程(労働過程)で新しく形成する価値との差 額が剰余価値(雇用主にとっての儲け部分)
※なぜ差があるのか? なぜ後者がより大きいのか?
※こうした条件が維持されるのは,①生産力の一定の発達,②階級間系があるから。
※グローバル化による影響=労働力商品価格の価値以下への押し下げ圧力
・商品の価値をその構成部分によって表示すれば、
商品価値=生産手段+新形成価値=生産手段+労働力商品+剰余価値
・例えば、労賃が
8000
円、 時間労働の評価額が8 16000
円、生産手段が4000
円の場合、商品 価値は20000
円、剰余価値は8000
円。不変資本と可変資本 (2)
・剰余価値は労働力商品のはたらきによって形成されるのであって、生産手段はたんに新しく
(生産手段も過去の労 生産される商品のなかに自らの価値を再現(移転)するにすぎない。
働の産物である)
・投下資本Wのうち、生産手段に投下される部分を不変資本C、労働力商品に投下される部分 を可変資本Vという。剰余価値をM、商品価値をW とすると、
'
W
=C
+V
→W'
=C
+V
+M
剰余価値率と利潤率 (3)
・現象としては
W
→W'
に見えるが、現実にはC
+V
→C
+V
+M
ではなくV
→V
+M
。・資本の増殖度=価値がどれだけ増えたか=剰余価値がどれだけ得られたか 但し「何に対して増えたか」が問題
・総資本利益率(利潤率)=投下資本( + )に対する剰余価値( )の比率
C V M
・剰余価値率=可変資本( )に対する剰余価値( )の比率=「搾取率」
V M
3.剰余価値生産のしくみ 絶対的剰余価値生産 (1)
・資本主義的生産=飽くなき利潤追求=飽くなき剰余価値の生産
したがって剰余価値率を高めることが資本にとっての至上命題→どうやって?
・一日の労働時間をつうじて生産される価値部分はV+M。見方を変えると、一日の労働時間 のうち、ある時間はV部分の、他の時間はM部分の価値を生産していることになる。前者す なわち労働者自身の価値(労賃)と同等の価値を生産する時間を必要労働時間(支払労働時 間 、後者すなわち必要労働時間を超えて雇用主(資本家)に所属するM部分の価値を生産) する時間を剰余労働時間(不払労働時間)という。
・一日の労働時間の限界
=
24
時間−労働力商品の再生産を最低限保障するために必要な生活時間・条件が同じであれば、必要労働時間の長さは一定。したがって、この限界内で最大限度に労 働時間を延長すればよい。=絶対的剰余価値生産
6h 4h 67%
必要( ) 剰余( ) =剰余価値率
6h 6h 100%
必要( ) 剰余( ) =剰余価値率
※労働日をめぐる闘争(
19
世紀初頭から)イギリス工場法
年 紡績工場における最初の工場法(徒弟の 時間労働と深夜労働禁止)
1802 12
年 紡績工場における 歳以下の雇用禁止, 〜 歳の 時間労働
1819 9 9 16 12
年 一般工場法 〜 歳の 時間労働, 歳以下の 時間労働
1833 9 13 9 18 12
年 歳以上の全女性について 時間
1844 19 12
年 〜 歳の少年と全女性について 時間
1847 13 18 10
フランス
1848
年2
月革命 全労働者について12
時間 国際労働者協会1866
年8
時間の労働時間を要求アメリカ合衆国
1886
年8
時間労働制を要求して5
月1
日ゼネスト ロシア1917
年ロシア革命 全労働者について8
時間労働制を宣言 国際労働機関ILO 1919
年に設立 第1号条約で8
時間労働制 日本 労働基準法1947
年( 時間を規定するも,形骸化)8
相対的剰余価値生産 (2)
・生産性の上昇=単位時間あたりの生産量の増加
→社会的平均的な商品価値が変わらなければ、何らかの努力や工夫によって生産性を上昇さ せた企業の剰余価値生産にどのような変化がみられるか?
例えば・・・
時間 個生産される商品の価値が 円、 日 時間 個 円の売上高
1 10 1,000 1 8 80 80,000
生産手段(単純に原材料だけと考える)が30,000円、労賃が10,000円×3名=30,000とすれば、
剰余価値は20,000円というケースを想定。いま1時間20個生産できる企業が現れたとすると
*通常どおり1個1,000円で販売すれば1時間20,000円、 日1 160個160,000円 生産手段は2倍すなわち60,000円、しかし労賃は30,000円(+α)のまま したがって剰余価値は70,000円に増大!
*1時間労働の市場評価は10,000円。価値どおり1個500円で販売すれば・・・
*少し安めに1個900円で販売すれば・・・
・こうして発生する剰余価値の増分を特別剰余価値という。各企業はこの特別剰余価値の獲得 をめざして生産性を上昇させようと競争を繰り広げる。新生産力が市場全体に行き渡り、そ れが社会的平均的となるに及び、商品価値が相対的に低下する。消費財等の生活手段の価格 が低下し、したがって相対的に安価な労働力商品の確保が可能になると、もし労働時間が一 定であっても、必要労働時間が短縮することによって剰余労働時間が増大する。つまり剰余 価値が増大する。=相対的剰余価値生産
6h 4h 67%
必要( ) 剰余( ) =剰余価値率
5h 5h 100%
必要( ) 剰余( ) =剰余価値率
4.労賃 (1)本質規定
・私たちの目には一定時間の労働に対する報酬すなわち「労働の価格」として映るが、実際に
「 」 。 。 「 」 、
は 労働力商品の価格 である
---
この区別は大事 もし 労働の価格 であるとすれば 労働者の全労働に対して報酬が支払われることになり、剰余価値の源泉、したがって搾取の 根拠がなくなってしまう。・労賃=労働力商品の価格=労働者の生活費だとすると,平均的な労賃は妥当な水準と言える
→資料参照 だろうか?
(2)労賃形態
①時間賃金
・労働時間を基準に「賃金率」が決められ、個々人の就労時間に応じて賃金収入が決まる
・一日あたりの労働力価値を標準的な労働時間で割ることによって時間賃が固定化
・雇用主にとっての意味=労働者自身による労働時間の延長
・例えば
※一日8時間×22日=176時間 月給26万円とすれば,時間あたり約1500円(一日12000円)
いま一日分の平均的生活費(労働力商品の価格=労働力の日価値)が10000円だとすれば,
パート・アルバイトの時給が1000円であれば,10時間労働が必要(但し時間外手当は無視)
時給1500円だと8時間労働で済むが,就労時間を延長すればするほど収入増
⇒長時間労働の誘因に
4 3 1
雇用主の都合で労働時間が 時間に削られた場合,生活費(労働力の日価値)の 分の
⇒「過少就業」ないし「部分失業」状態に(それでも雇用主には剰余価値が保障される!)
②出来高賃金
・生産物量を基準に「単価」が決められ、個々人の生産量に応じて賃金収入が決まる
・一日あたりの労働力価値を標準的な生産量で割ることによって出来高賃が固定化
・雇用主にとっての意味=労働者自身による労働の強化
・例えば
時間労働=生産物 個 支払単価 円の場合(販売価格は 円)
1 20 × 50 100
同じ労働時間内に多く生産すればするほど賃金上昇
時間に 個生産していたが、労働者の個人的努力で 個生産できるようになれば、
8 160 200
当初は賃金が8,000円から10,000円に上昇、剰余価値は10,000円
しかし他の労働者も努力し、全体として生産性が上がれば生産物単価は下落
単価40円の場合、賃金は8,000円に戻るも、販売価格を据え置けば剰余価値は12,000円に 単価35円の場合、賃金は7,000円に減少し、販売価格を据え置けば剰余価値は13,000円に
③能力給・年俸制
・近年増加している賃金形態 「職務能力」や「業績・成果」を基準に賃金を決定。
・出来高賃金の変形。ただし、労働者の「やる気」をうまく引き出しながら、賃金の客観的基 準を曖昧にし、労働者自身による長時間労働や労働強化を誘発するとともに、労働者間の競 争激化による労務管理上の統制強化をねらったもの。
5.労働基準法について (1)理念
・第
1
条「①労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすものでなけ②この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当 ればならない。
事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上
」 を図るように努めなければならない
・第
32
条「①使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四〇時間を超えて労働さ せてはならない。②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日に ついて八時間を超えて労働させてはならない」※時間外労働=男
300
時間、女150
時間※割増残業手当=
25%
増,深夜の場合は+25%
増,休日の場合は25or35%
増労基法「改正」の動き (2)
=深夜労働や上限規制のない長
・女子保護規定の撤廃(
1997
年6
月可決、1999
年4
月施行)時間労働に女性労働者を駆り立てるもの。
=実際に働いた時間に関係なく、労使で
・裁量労働制(
1998
年9
月可決、2000
年4
月施行)あらかじめ決めた時間だけ働いたと見なす制度。雇用主側にとって法定労働時間を超えた長 時間や残業代不払いを合法化できる。これまでは研究職、情報処理、マスコミ等の取材・編 集・制作、会計士・弁護士・建築士等に限られていたものをさらに拡大しようというもの。
※これを個別能力管理(査定強化)と年俸制に結びつけることが企図されている
= ヶ月、 ヶ月、 年単位で平均が
・変形労働時間制(
1998
年9
月可決、1999
年4
月施行)1 3 1
週
40
時間以内であれば特定の日の労働時間を偏在させてもいいという制度。これまでは一日
9
時間、週48
時間という上限があったが、これを一日10
時間、週52
時間まで緩和しよ うというもの。さらに導入要件の緩和も。<参考>ILO条約・・・変形期間の上限を3週間に限定
欧州諸国の事例 (3)