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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2025

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氏 名 楊や んEA AEじ ーEA A EりゃんE 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第490号

学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 自 閉症 スペ クト ラム 障害 の遺伝 学的 解析-シ ナプ ス足 場タ ンパ ク質

MUPP1 および時計関連遺伝子変異解析

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 富 永 眞 一

(委 員) 准教授 佐 藤 滋 講 師 須 田 史 朗

論文内容の要旨

1 研究目的

自閉症スペクトラム障害 (ASD) は、社会的な相互コミュニケーションの障害、興味の限定と常 同的な行動を呈する疾患である。ASD患者の15%から56%は知的障害 (ID) を合併する。これま で、小児科学講座では、ASD患者にCADM1変異を見出し、ASDの病因遺伝子の1つであること を明らかにし、CADM1が、13個のPDZ領域を持つ足場タンパク質であるMUPP1と結合し、シ ナプスでのタンパク質複合体形成が重要であることを示唆した。また、ASD患者の44~83%には、

睡眠障害の合併が見られる。ASDの分子病態と、生物時計により形成される睡眠リズムは、時計 遺伝子制御下における脳機能障害が関与すると考えられる。概日リズムに関連する遺伝子とシナ プス機能との関連を推測する報告があり、ASD における概日リズム関連遺伝子がシナプス構造・

機能と密接に関わっている可能性がある。本研究では、ASDへのシナプス関連遺伝子の関与と病 態解明研究の候補として、①これまで小児科学で同定したASD候補遺伝子CADM1とPDZ領域 を介してタンパク質複合体を形成するMUPP1 の遺伝子変異の解析と、②ASD患者に併発する睡 眠障害に着目し、時計関連遺伝子変異解析からのASD病因解明のアプローチを行った。

2 研究方法

同意が得られたASD患者のリンパ芽球からgenomic DNAを抽出した。MUPP1遺伝子変異解析 では、各エクソンを PCR法により増幅した。得られたPCR産物に標識を付加した。時計関連遺 伝子変異解析では、genomic DNAを断片化して、18種類の各時計関連遺伝子のエクソンを捕捉し た。それぞれの DNA 精製断片物を emulsion PCR で増幅後、次世代シークエンサー (GS junior sequencer) を用いてシークエンス後、解析ソフトGS reference mapperで変異を検出した。検出さ れた変異は、ダイレクトシークエンス法で確認した。なお、時計関連遺伝子変異については、各 グループの変異検出率をFisher’s exact test with IBM SPSS statistics 21 softwareを用いて統計学的有 意差を算出した。

(2)

3 研究成果

MUPP1遺伝子変異解析では、113人のASD患者 (日本人79名、Caucasian 58名) を解析し、11 種類のアミノ酸変異を見出した。変異 p.I200V (PDZ1)、p.I781T (PDZ5)、p.E702M (PDZ5)、p.G782R (PDZ5)、p.SI1011T (PDZ6)、p.1194R (PDZ7)、p.R1880K (PDZ12) は、PDZ領域に局在していた。

その中で、既に報告されているSNPs以外に検出された変異は、日本人患者でのp.I200V (PDZ1) と p.I781T (PDZ5)、Caucasian患者のp.E702M (PDZ5) であった。p.I200V、p.I781Tはコントロール群 で検出されなかった。なお、アミノ酸変異がない塩基変異は8種類存在した。

時計関連遺伝子変異解析では、日本人ASD患者の中で、睡眠障害を示す群と示さない群それぞ れ14人と23人のコントロールの検体について解析した結果、11種類の遺伝子に33種類のアミノ 酸変異を見出した。睡眠障害を示すASD患者群と示さないASD患者群の間に有意差はなかった (p=1) が、ASD 患者とコントロールの間に有意差が見られた (p=0.001)。ASD 患者のみに検出さ れた遺伝子変異について、タンパク質機能における影響を PolyPhen-2 で解析したところ、PER2 のp.P1228A、PER3のp.R366Q、TIMELESSのp.F498Sとp.A325Tがprobably damagingという結 果であった。また、SIFTによる解析では、PER3のp.R366QとTIMELESS のp.F498Sがdamaging、

mutation t@stingによる解析では、NR1D1のp.S20R、CLOCKのp.H542R、ARNTL2のp.L473S、

ARNTLのp.S13T、PER3のp.R366Q、TIMELESSのp.F498Sとp.A325Tがdisease causingとなっ た。これらにより、タンパク質機能へ影響を及ぼすことによる疾患発症の可能性が示唆された。

4 考察

MUPP1 遺伝子変異解析では、SNPsの報告がなく、なおかつコントロール群に変異がなかった 2種類の変異であるp.I200V (PDZ1) とp.I781T (PDZ5) がASDに関与する可能性が高いと考えら れ た 。ASD 患 者 に お い て CADM1 変 異 だ け で な く MUPP1 変 異 が 存 在 し た こ と か ら 、

CADM1-MUPP1タンパク質複合体の病態への関与が示唆された。MUPP1の直接的なPDZ結合の

変化、及びMUPP1の変異によるMUPP1タンパク質の構造変化による障害が考えられる。

時計関連遺伝子変異解析では、コントロール群と統計学的有意差を示し、ASD患者群に高率に 時計関連遺伝子変異を検出したことから、時計関連遺伝子はASD病態との関連が高いことが示唆 された。ASD患者に検出された時計関連遺伝子は多岐にわたった。特にPER2、PER3、TIMELESS に検出された変異はタンパク質機能に影響を及ぼすことが考えられた。コンピューター解析でタ ンパク質への影響が考えられた変異について、実際のタンパク質機能や他要因との組み合わせに よるASDの発症との関連を今後検討する必要がある。

5 結論

MUPP1 遺伝子変異解析では、見出されたMUPP1 の変異の中にASDに関与する可能性が高い 変異が存在した。それらの変異はタンパク質結合領域であるPDZ領域に含まれており、タンパク 質複合体 (CADM1-MUPP1タンパク質複合体) の異常によるASDの病態への関与が示唆された。

時計関連遺伝子変異解析では、コントロールとの比較により、ASD患者群に時計関連遺伝子変 異を多く検出したことから、時計遺伝子はASD病態との関連が高いことが示唆された。

(3)

論文審査の結果の要旨

自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders 以下 ASD と略)は、特に小児科領域で 重要な疾患で、療育治療は開始時期が早いほど効果が高いとされているが、未だにその分子病態 については不明の部分が多い。

ASDは遺伝性疾患であると推定され、病因遺伝子の解析は治療につながる重要な研究であるが、

今までの成果から多遺伝子関連疾患と考えられている。

本研究は従来自治医科大学小児科学講座で展開されてきた病因候補遺伝子の探索をさらに進展 させることから開始された。申請者はまずシナプスタンパク質複合体の中のMUPP1をコードする 遺伝子の解析を行った。さらにメラトニン受容体がMUPP1に結合していること、およびASD患者 に睡眠障害が併発することに着目して時計遺伝子群の変異解析に発展させていった。

申請者は次世代シークエンス技術、および変異がタンパク質の機能に与える影響を解析する 3 種類のソフトウェアを駆使して以下の結果を得た。

(1)シナプスに関わる遺伝子MUPP1についての遺伝子変異をASD患者で解析し、アミノ酸変異を 生じる11種類の変異を見出した。その中の2つの変異がASDとの関連がすでにわかっているCADM1 との結合に影響する可能性が高いことを示した。

(2)時計遺伝子群の解析では、ASD 患者において11 種類の遺伝子に変異が検出された。その中 で、コントロールにはない変異であり 3種類の解析ソフトウェア全てでタンパク質機能への障害 が示唆されたのが、2遺伝子2箇所であった。

本研究はASDと関連すると考えられるシナプスタンパク質をコードする遺伝子MUPP1の変異を 見出し、さらに時計遺伝子群にもその変異が ASDと関連するものがある可能性を示した点で、こ の研究領域に新たな足がかりを与えるものと評価された。従って委員全員一致で、審査論文は博 士論文に値すると判断された。なお、この研究内容は原著論文としてすでに投稿され、revised versionが現在審査中である。

最終試験の結果の要旨

申請者は、審査論文に関して、その研究目的、実験方法、結果およびその解釈について、要領 よく説明できた。質疑応答まで全て日本語でこなし、申請者のこれまでの努力が評価できた。遺 伝性疾患であるASDについて臨床的な側面でも一定の知識を有していた。高度な技術、解析ソフ トについては必ずしも専門的知識を持つわけではないが、研究に必要な部分の理解は妥当なもの であると認識された。質問への応答も言葉の壁はあるものの、趣旨をよく理解して適切に対応し ていた。またこの研究の将来への展望も述べることができた。

以上により、申請者の学識、研究能力は学位を授与するに値すると全員一致で認められた。

参照

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