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真核生物におけるリボソームの品質管理と分解機構 - J-Stage

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真核生物のリボソームは4本のrRNAと約80個のリボソーム タンパク質からなる巨大複合体である.栄養豊富な条件下で はリボソームは非常に安定であることが知られている.しか し近年になって,このようなリボソームを必要に応じて迅速 に 分 解 す る 機 構 が 細 胞 内 に 備 わ っ て い る こ と が 明 ら か に な っ て き た.本 稿 で は 筆 者 ら の 研 究 し て い る 機 能 不 全 リ ボ ソームの選択的分解経路を紹介すると同時に,ほかの分解経 路についても研究の進展をまとめ,細胞内でのリボソームの ダ イ ナ ミ ク ス が 次 第 に 明 ら か に な っ て い る 現 況 を 解 説 し た い.

はじめに

リボソームの合成には,非常に多くのエネルギーが必 要である.そのため,細胞は完成されたリボソームを非 常に長い時間にわたり使用する.増殖中の酵母では,あ まりに安定性が高いため,実験的にはほとんどリボソー ムの分解を観察することができないことが知られてい る.

このように安定なリボソームも,「必要な場合」には 極めて効率的に分解されるということが明らかになって きている.一つの例としては,合成時のエラーや成熟化 後の損傷などにより,リボソームが機能を失い,役割を 果 た せ な く な っ た 場 合 で あ る.こ の よ う な 分 子 が mRNA上に停滞すると必要な翻訳ができなくなるだけ でなく,ほかのリボソームの進行を妨げたり,場合に よっては有害な封入体を形成する可能性がある.こうし た問題を防止するしくみとして,異常リボソームを選択 的に分解する「品質管理機構」が細胞に備わっているこ とがわかってきた.

異常のないリボソームも分解される場合がある.代表 的な例は栄養飢餓の場合である.栄養源が払底しそうな 場合,細胞はリボソームの量を減らして余分なタンパク 質合成を抑制すると同時に,分解したリボソームから栄 養素を抽出し,生存に最低限必要な分子の合成に転用し ているらしい.飢餓以外の条件,たとえば酸化ストレス やERストレスの場合にもリボソームの分解が観察され る.これらも基本的にはタンパク質合成を抑制するため に行われると考えられている.

本稿ではまず,「リボソームの品質管理」についてこ

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● 化学 と 生物 

【解説】

Quality Control and Degradation of Eukaryotic Ribosomes Makoto KITABATAKE, 京都大学ウイルス・再生医科学研究所

真核生物におけるリボソームの品質管理と分解機構

リボソームの分解を誘導するシグナルと解体のメカニズム

北畠 真

(2)

れまでにわかってきたことを解説し,残りのスペースを 使って,栄養飢餓の場合を含むさまざまなリボソームの 分解について近年の研究を紹介する.

機能不全リボソームの分解

1.Nonfunctional rRNA decayNRD)の発見(1) 2006年にLaRiviereらは出芽酵母を用いて,機能不全 になったリボソームが細胞内で選択的に分解されるとい う現象を報告した(2).上述のとおり,正常な機能をもつ 野 生 型 の18S rRNAと25S rRNAは,そ れ ぞ れ40Sと 60Sの成熟粒子に正常に取り込まれ,細胞内で極めて安 定に存在する.しかし18S rRNAの重要塩基(mRNA のコドンとtRNAのアンチコドンの正確な対合を認識す る場であるdecoding centerに含まれる塩基)に点変異 を導入した機能不全18S rRNAを発現させて追跡したと ころ,40Sには正常に取り込まれたものの,その後迅速 に細胞内から消えていくということが明らかになった.

同様に,ペプチド結合形成が行われるpeptidyl-transfer- ase center中の重要塩基に点変異を導入した25S rRNA は60Sには取り込まれたが,その後短い時間で消失して いった.

これらの重要塩基の近傍の塩基を置換した場合でも,

その置換がリボソームの機能を障害しない場合には RNAの分解は誘導されない.機能不全となる変異の場 合には,塩基置換の種類にかかわらず分解された.これ らの結果からLaRiviereらは「細胞には機能不全リボ ソームを分解する品質管理機構が存在する」と結論し,

この現象をnonfunctional rRNA decay(NRD)と名づ けた(2)

2.18S NRDmRNA品質管理機構のクロストーク 細胞はどのようにして機能不全リボソームを検出して いるのであろうか.18SのNRDについては,最初の報 告から数年後,説得力をもったモデルが同じ研究グルー プから提示されている.

Coleらは,Dom34やHbs1の欠損株では18S NRDの 顕著な低下が起こることを見いだした(3).これらは mRNAの品質管理機構であるno-go decay(NGD)に必 要な因子であった.NGDは,RNAの高次構造などが原 因でORFの途中でリボソームが翻訳を停止してしまう 場合に,そのmRNAを分解・除去する品質管理機構で ある(4).図1に示したように,翻訳が停止したリボソー ム に は 空 のA-siteが 生 じ て い る が,こ れ を 標 的 に

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タンパク質生産工場の解体を巡って

リボソームは細胞のタンパク質生産工場である.

活発に分裂を繰り返している状態の出芽酵母の場合,

1個の細胞中に20万個ものリボソームが存在し,細胞 の活動を支える.しかしこの数は環境によって大き く変化する.増殖に適さないストレス条件下や栄養 飢餓の際には速やかな解体が起こり,リボソームの数 が大きく減少することが古くから知られている.

この「リボソームの解体」がどのようなしくみで行 われるかについては,現在に至るまではっきりした ことがわかっていない.分解のきっかけとなるシグ ナルを受信している分子は何なのか.非常に安定な リボソームが突然迅速な分解を始めるのはどういう しくみなのか.多くの分子がひしめきあう細胞質で の巨大複合体の分解はどのような手順で行われてい るのか.これらの素朴な疑問にはまだ答えが出てい ない.

この解説記事では,主に出芽酵母を用いて明らか になってきた,リボソームの分解に関する最近の知見 を横断的にまとめてみた.興味深いことに,同じ生 物を使って同じ栄養飢餓や薬剤処理を使っているに

もかかわらず,それぞれのグループの出した結論は 必ずしも首尾一貫していない.オートファジー経路 により液胞で分解されるという見解あり,オートファ ジーの起こらない細胞でも細胞質で急激に分解され るという見解あり.「品質管理」としての分解につい ては目立った矛盾はなさそうだが,それ以外の分解 についてはグループによって見ている結果が異なる ことが多い.記事中ではできるだけ多様な報告を記 載し,それらの報告の根拠となった実験結果,特に 観察方法の違いを詳しく紹介した.そこから見えて きたことは,使った観察方法によって結論が違う,と いう傾向である.

細胞のしくみは私たちが考えているより,もしか したらずっと複雑なのかもしれない.栄養飢餓時に おけるリボソームの分解には明確な合理性がある.

余分なタンパク質の合成を抑制しつつ,解体したリ ボソームから栄養素を回収して再利用できると見込 まれるからである.このわかりやすいストーリーに 引きずられ,私たちは結論を急ぎすぎているのかも しれない.「クロポトキンの蟹」を確認するために沢 蟹を長時間観察し,意外な真実を見いだしたという 南方熊楠の逸話を,本稿を書きながら筆者は思い出 していた.リボソームの分解についても,さらに根 気強い観察が必要になるに違いない.

コ ラ ム

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Dom34‒Hbs1の複合体(それぞれ,翻訳終結因子eRF1 とeRF3に相同性をもつ)が結合し,細胞内での代表的 なRNA分解複合体であるエキソソームをリクルートす ると考えられている.mRNA上でのリボソームの停滞 がmRNAの 高 次 構 造 の み な ら ず18S rRNAの 異 常 に よっても生じうることを考えれば,同じ因子が分解に関 与しているのは合理的である(1)

近年になって,mRNA上に停滞したリボソームに多 くの因子が結合し,途中までで合成を停止した新生ペプ チド鎖を分解する「Ribosome quality control(RQC)」

と呼ばれる経路が存在することがわかり,精力的に研究 されている(5).しかし現在においてもなお,停滞したリ ボソームの分解について明快に説明するモデルは存在し ないようである.停止したリボソームを検出した後,細 胞はmRNAとリボソームのどちらに異常があるかを見 分けて,異常のあるものだけを分解することができるの だろうか.RQCとNRDの関係を明確にすることは,今 後の研究の重要な課題の一つである.

3.25S NRDの分子機構の解明(6, 7)

筆者らはLaRiviereらの研究とは独立に,ペプチジル 基転移中心に変異をもつ25S rRNAの細胞内での運命に ついて研究を行ってきた.現在までに15個を超える因 子が25S NRDにかかわっていることを見つけ出してい

る(未発表の因子を含む).

初期のスクリーニングから,ユビキチンE3リガーゼ 複合体の構成因子の一つであるMms1が25S NRDに必 須な因子であることがわかった.同じE3複合体に含ま れ るRtt101も25S NRDに 必 要 で あ っ た.一 方 で18S  NRDにはこれらの因子は不要であった.詳しく調べて みると,25S NRDにおいては基質となるリボソームの ユビキチン化が起こることが明らかになった.同じ細胞 から正常なリボソームと機能不全25S rRNAを含むリボ ソームをそれぞれ分離したところ,後者にだけユビキチ ン化のシグナルをもつリボソームが検出されたのであ る.ユビキチン化はMms1に依存していた(6)

さらに関連因子の検討を行い,この経路にCdc48‒

Ufd1‒Npl4複合体とプロテアソームが必要であることも 明らかになってきた(7).Cdc48複合体はユビキチン化さ れた基質に結合し,プロテアソームにリクルートするた めに使われるATPaseである.Cdc48複合体を阻害する と機能不全25S rRNAは安定化して,80Sの大きさの粒 子に蓄積することがわかった.プロテアソームを阻害し た実験でもrRNAは安定化し,この場合には60S粒子に 蓄積した.

以上から明らかになった経路をまとめたのが図2であ る.機能不全となる変異をもつ25S rRNAはおそらく正 常に成熟化し,mRNA上で80Sを形成する.ペプチド 図118S NRDRQCは停滞したリボソー ムを標的にする

図225S NRDにはリボソームのユビキチ ン化がかかわる

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結合を形成できないので,おそらく開始コドン上でいつ までも停滞しているだろう.Mms1を含むE3リガーゼ がこの状態のリボソームを認識し,ユビキチン化を行 う.ユビキチンに誘引されたCdc48‒Ufd1‒Npl4複合体 は80Sに結合して,おそらくはATPaseの活性を利用し て40Sを解離しつつ,残された60Sにプロテアソームを 結合させる.プロテアソームによりタンパク質の除かれ たリボソームには,RNaseがアクセス可能となり,変異 25S rRNAの分解が開始されるのだろう.

25S NRDにおいて残された課題は,「Mms1を含むE3 リガーゼがどのようにして機能不全リボソームを検出で きるのか」ということである.上記のモデルでは「開始 コドン上で停滞している」ことがシグナルの一つである ような説明を加えたが,これは状況証拠からの推定で あって具体的な物証はない.今後詳しい検証が必要であ る.最近になって筆者らのグループでは,機能不全リボ ソームに選択的に結合する因子の同定に成功している.

これらの因子を研究することで,細胞がリボソームの機 能を監視して分解すべきリボソームを選ぶメカニズムを 理解することができるようになるものと期待している.

正常なリボソームが分解される経路 1. 窒素源枯渇:リボファジーの発見(8)

オートファジーは,細胞質のさまざまな分子を膜で取 り囲み,液胞へと運んで分解する,細胞内の生体材料リ サイクルの経路である.はじめは細胞質の分子をランダ ムに取り囲んで分解すると考えられていたが,研究が進 むにつれて,分解の対象には選択性がある場合があるこ とがわかってきた.そのような流れのなか,Kraftらは 窒素源飢餓に置かれた出芽酵母の中でリボソームが優先 的に分解される選択的オートファジー経路があることを 報告し,リボソームのオートファジー,リボファジー

(Ribophagy)という名称を提案した.

彼らの報告(8)では,2つの方法によりリボファジーが 観察されている.まず一つは,リボソームタンパク質 Rpl25のC末端にGFPを融合したタンパク質を発現さ せ,GFPの局在を蛍光顕微鏡観察する方法である.通 常の増殖条件ではGFPシグナルは細胞質全体に存在す るが,窒素源のない培地に交換して培養を続けると,

GFPのシグナルは液胞の中に濃縮された.オートファ ジーの起こらないAtg7欠損株ではこのような濃縮は起 こらない.このことから,窒素源飢餓によりリボソーム がオートファジーの標的になり,液胞に運ばれたことが 確認された.

もう一つの観察方法は,同じRpl25-GFPをウエスタ ンブロッティングで検出する方法である.液胞に運ばれ たリボソームは高いプロテアーゼ活性のために分解され るが,この際にGFPは難消化性であり,融合タンパク 質のうちRpl25の部分が消化された後も遊離のGFPと して液胞内にとどまる.抗体で遊離のGFPを検出する ことで,窒素飢餓誘導後4時間くらいから液胞でリボ ソームの分解が始まっていることが示された.

彼らはこれらの方法でリボファジーに関与する因子に ついても調査を行い,Ubp3とBre5という,互いに複合 体を形成して働く脱ユビキチン化酵素がかかわっている ことを示した(8).これらのどちらかが欠損した酵母で は,顕微鏡観察でもウエスタンブロッティングでも,リ ボファジーのシグナルが(完全に消えはしないが)低下 したり,遅延したりしていた.重要なことに,これらの 変異株においても,遊離GFPの検出から判断する限り,

GFP-Atg8やRps2-GFPの切断は正常のタイミングで進 行していた.つまりこれらの因子は60Sサブユニットの 分解にだけ選択的に働く因子であることがわかった.

リボソームは多くのタンパク質成分とRNA成分を含 む栄養価の高い構造体である.飢餓の場合,新規タンパ ク質合成を抑制する意味でも,栄養物をリサイクルする 意味でも,細胞の生存にとって魅力的な分解対象であ る.このような観点から,リボソームを選択的に分解す るリボファジーは非常に合理的なシステムだと考えら れ,その発見は多くの研究者に受け入れられることと なった.

2. リボファジー以外のオートファジーによる分解 Huangらは2015年の報告(9)の中で,出芽酵母をさま ざまな栄養飢餓の状態に置き,細胞内のRNA分解を代 謝産物の側から,つまり生産された遊離のヌクレオチド やヌクレオシドを測定することによってモニターする実 験を行った.その結果,窒素飢餓開始後1時間程度で,

オートファジー経路依存的に,RNA分解に由来するヌ クレオチドの一過的上昇が観測されることがわかった.

ヌクレオチドはさらに分解され,ヌクレオシドや塩基の 形で細胞外へ漏出していることも明らかにされた(分解 の過程で窒素原子の一部はリサイクルされる).

興味深いことに,液胞に存在するRNaseであるRny1 の欠損株では,遊離のヌクレオチドの上昇は起こらな い.その代わりに液胞内部にRNA鎖が強く濃縮するの である.Rny1と同時にオートファジーに必要な遺伝子 を欠損するとこのようなRNAの濃縮は起こらない.以 上の結果から彼らは,窒素源飢餓においてリボソームは

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オートファジー経路によって液胞へと運ばれ,Rny1に よりrRNAが切断されて代謝される,という結論を導い ている.

彼らはまた,リボファジーとの関連性を調べるために Ubp3とBre5についても欠損株を作製して実験してい る.意外なことに,彼らの指標においてはこれら2つの 因子のRNA分解(最も多いRNAはrRNAであり,計算 上彼らの見ている分解はrRNAの分解である)への影響 はほとんど見られなかった.これらの結果は,決してリ ボファジーの最初の報告を否定するものではない.しか し多くのrRNAがUbp3やBre5に依存せずに分解される という事実が明らかになったことで,それと比較して少 数の「選択的なリボソームの分解」が起こることの意義 について,新たな説明が必要になったように思われる.

なおリボファジーの分子機構についてはRpl25-GFP を指標にその後も研究が続いており,E3リガーゼLtn1 によるRpl25のユビキチン化がリボソームをオートファ ジーから保護していること,Ubp3とBre5はこのユビキ チン化を除去することでリボファジーを誘導すること,

などが明らかになっている(10).25S NRDに関与してい るCdc48がリボファジーにも関与しているという報告が あるが,この場合のCdc48複合体はNRDの場合と異な り,Cdc48‒Ufd1‒Npl4ではなくCdc48‒Ufd3複合体とし て働いているようである(11)

3. ラパマイシン処理

ラパマイシンはTORを阻害することで栄養飢餓シグ ナルを発動し,翻訳開始の阻害やオートファジーの誘 導,リボソーム合成の停止などを導く薬剤である.リボ ファジーの研究でもラパマイシンが使われるケースがあ り,Rpl25-GFPの切断も誘導されることがわかってい る.

Pestovらは,ラパマイシンを投与された出芽酵母に おいてrRNAの急激な分解(投与後4時間で全リボソー ムの半数が分解されている)が起こることを報告してい る(12).彼らはこの現象をさまざまな変異株で確認して いるが,驚いたことにこの分解にはオートファジーは関 与していないらしい.Ubp3やBre5の欠損株でも急激な rRNAの分解は再現されるし,Atg7欠損株でも分解速 度は低下しない.NRDにかかわるHbs1やMms1の欠損 株でも同じであった.彼らが調べた中で唯一この分解へ の寄与が認められたのは,エキソソームとその関連因子 Ski複合体だけである.これらの因子は協力して細胞質 でのRNAの分解を行う.これらの欠損株の場合に限 り,25S rRNAの分解が阻害され,分解中間体となる

RNAが蓄積された.

エキソソームの阻害によって見られる中間体のバンド は,酵母株の液体培養でのオーバーグロース(48時間 カルチャーを継続する)によっても蓄積した.つまりこ の分解経路はラパマイシン投与に対して起こる特別な分 解ではなく,実際の栄養飢餓を契機としても起こる分解 のようである.栄養飢餓条件でも,あるいはラパマイシ ン投与後でも,細胞では活発にオートファジーが誘導さ れているはずである.そこではリボソーム粒子が旺盛に 分解されているはずにもかかわらず,それらの影響がほ とんど無視できるほどの急激なrRNAの分解が細胞質の エキソソームに依存的に起こっていることになる.

4. そのほかの分解経路

酵母に過酸化水素を投与するとrRNAの切断が誘導さ れることが知られている.この切断に,前述のRNase であるRny1がかかわっているという報告がある(13).報 告によればRny1は酸化ストレス下においては液胞を脱 出して細胞質に移動し,各種のtRNAやrRNAを切断す る.Rny1による切断はオートファジーが欠損した株で も起こり,過酸化水素処理だけでなく,液体培養2日以 上のオーバーグロースでも観察される,とのことであ る.Rny1はさまざまな局面でrRNAを切断する役割を 果たすようだ.今後この酵素の局在変化や活性化の条件 などを詳しく明らかにする必要があるだろう.

rRNAの分解はこのほかにも多様な原因により誘導さ れる.動物細胞の抗ウイルス応答の場合,RNase Lが rRNAを切断することが古くから知られている(14).昆虫 細胞にはRNase Lのホモログが存在しないが,同様の 現象が報告されている(15).動物細胞のERストレスの場 合も,Ire1が28S rRNAを切断する(16).植物細胞には RicinなどのrRNA障害性のタンパク質が貯蔵される場 合があるが,ウイルスの進入などで細胞が破砕された場 合,自らのrRNAを切断してタンパク質合成をシャット ダウンさせ,感染の拡大を防ぐ役割があるものと考えら れている.これらはすべて,細胞のタンパク質合成を低 下させる目的で行われると考えられるが,rRNA切断前 後のリボソームに何が起こっているかについてはほとん ど明らかになっていない.

おわりに

リボソームの分解についての最近の知見を駆け足にま とめた.正常なリボソームの分解に関してはそれぞれの 報告の間にいくらか齟齬があるようである.窒素源飢餓

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の際,あるいはラパマイシン処理の際にリボソームの急 激な分解が起こるのは間違いなさそうであるが,細胞質 で起こるのか,液胞で起こるのか,両方で同時に起こる のか,はっきりしない.この解説ではそれぞれの報告に 使われたレポーターに少し詳しく触れたが,俯瞰して見 てみると,Rpl25-GFPなどのタンパク質を使ったグルー プは液胞での分解を見いだしており,rRNAを調べたグ ループは細胞質での分解を確認しているようである.分 解の全体像を正確に理解するためには今後,両者を組み 合わせた定量的な研究が必要となってくるだろう.

リボソームの分解は細胞の生存戦略について極めて重 要なステップであると考えられる.細胞には複数の分解 経路が並列に存在していて,状況に応じてそれぞれの経 路の寄与は変わってくるのかもしれない.現在の研究結 果の混乱は,大きな未解明の領域がこの分野に残されて いることを明確に予言していると筆者は考えている.

文献

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プロフィール

北 畠  真(Makoto KITABATAKE)

<略歴>1991年京都大学理学部生物物理 学教室卒業/1996年同大学大学院理学研 究科博士後期課程修了/学術振興会海外特 別研究員,Yale大学,理化学研究所を経 て現所属<研究テーマと抱負>真核生物リ ボソームの品質管理と分解の分子機構<趣 味>読書,音楽鑑賞

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.532

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