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木村幸雄先生追悼 - fukushima-u.ac.jp - 福島大学

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Academic year: 2025

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木村幸雄先生追悼

澤 正 宏

わたしたちの学会である 「福島大学国語教育文化学会」 は、 それ以前には

「福島大学国語学国文学会」 と称していましたが、 その時期に、 長らくこの 学会の会長として御尽力くださった木村幸雄先生が、 2017年9月25日に84歳 の生涯を閉じられました。 ここに先生の御逝去を悼み、 先生と学会とのこと、

或いはその周辺のことなどを中心に書かせていただきます。

木村先生が福島大学教育学部 (人間発達文化学類の前身) に赴任なさった のは1967年4月でした。 赴任前に仲人であった作家の野間宏に挨拶に行った とき、 「福島に行けば、 日本がわかります」 と言われたそうですが、 これは 先生にとっては、 44年後の福島の核災害を予見する言葉になりました。 赴任 早々、 先生は中野重治、 萩原朔太郎、 中原中也など抒情詩系の詩人や、 青春 を描いた近現代小説、 戦後派作家の小説などを講義、 演習でとりあげていま す。

勿論、 学会の企画、 運営にも力を入れられ、 とくに学会員の希望を大切に されて、 70年代以降の、 近現代文学の最前線で新しい研究をしている、 錚々 たる研究者を積極的に学会に招くこともなさいました。 平岡敏夫、 前田愛、

亀井秀雄、 小森陽一などの諸先生方、 「内向の世代」 の作家の一人といわれ た黒井千次などが招かれ、 学会で講演をしています。 わたしたちの学会では ないのですが、 全国組織である 「日本近代文学会」 の東北支部での第1期 (初代)・第2期会長も務められ (1991年5月〜1995年5月)、 先生は中央ば かりではなく、 東北の文学研究者への支援、 東北の文学研究推進などにも目 配りなさいました。 現在の東北支部学会の基盤は先生が固められたと言えま す。

現在の学会の前の学会である 「福島大学国語学国文学会」 と木村先生の関 わりで忘れられないのは、 先生が長い間、 「日本近代文学会」 の理事を務め られていたこともあり、 1993年10月に日本近代文学秋季大会福島大会 (2日 間) が福島大学であったことです。 とくに学会員であった在学生の皆さんに は全国大会は大きな経験であり、 開催に当たっては大変お世話になりました。

先生は学会誌 言文 にも論文をたくさん発表され、 わたしたち会員に、

近現代文学における論文の在り方、 論及の仕方などを間接的に示してくださ いました。 今でもどの論文をとっても、 問題設定は新鮮で、 問題追及の方法

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は鋭く、 論文全体の構成がしっかりしています。 こうした論理性は、 先生の 専門の研究のひとつであった戦時中までの政治と文学、 戦後文学の動向など における厳しい批評、 論争を充分に踏まえられているからだと考えます。 論 理性だけでなく、 先生は文学における感受性と心の成長の問題、 感受性と日 本の風土の問題など、 小説、 詩歌における感受性の在り方にも言及されてい ます。

木村先生が退官される1995年度には、 「福島大学国語学国文学会」 では学 会誌 言文 (第43号/同年12月) で 「近代文学特集号」 を組み、 正式なメ モリアルではありませんが、 先生の退官の記念号としました。 ここには主に、

先生が29年の間、 教育学部で教えら、 その後、 教育現場に出て行き、 小、 中、

高等学校などの学校現場で活躍している、 それぞれの世代の方々の論文が掲 載されています。 先生は中国からの留学生の指導 (大学院) にも熱心でした ので、 そのなかには、 現在では日本の大学で教鞭をとっている方の論文もあ ります。 こうした意味では、 先生は優れた教育者でもあったと言えます。

木村先生は近現代文学研究者としては、 福島大学に赴任される頃 (33歳) には既に学会で、 詩人で小説家の中野重治研究の第一人者として認められて いました。 東京教育大学文学部文学科英語学英文学に入学して、 最初は英文 学を志したのですが、 ご自分の生き方に照らして、 また強く惹かれる日本近 代文学に向かうなかで、 同科の国語学国文学に再入学し、 さらに同大学大学 院の日本文学専攻に進まれています。 先生の行き方には一本の確りした筋が 通っていて、 そこで、 地方出身で豊かな感性をもって1920年代以降の激動の 時代と社会とを生きた、 中野重治という作家を選ぶことになったのです。 先 生も東京教育大に在学中は同大学の学会に入り、 学会誌に論文を発表されて います。

最後になりましたが、 かつての 「福島大学国語学国文学会」 の一会員とし て、 木村幸雄先生の同学会での御活躍を中心に書かせていただきました。 先 生の御冥福をお祈り申し上げます。

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