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葉山幸嗣先生を偲ぶ(葉山幸嗣准教授追悼号)

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葉山幸嗣先生を偲ぶ(葉山幸嗣准教授追悼号)

著者 稲田 圭祐

雑誌名 和光経済

巻 52

号 1

ページ ix‑ix

発行年 2019‑12

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00004697/

(2)

葉山幸嗣先生を偲ぶ

稲 田 圭 祐

 葉山先生と私の出会いは 2003 年,私が明治大学大学院博士後期課程の学生となった年のことであっ た。当時,明治大学駿河台校舎の 23 階にあった院生用研究室は 4 人部屋で,葉山先生とは隣室であっ た。同室者と仲が良かった先生は,よく私たちの研究室を訪ねてこられ,自然と面識を持つようになっ た。あの頃から先生は,痩身で頭脳明晰な印象であったが,眼差しは柔和で,お人柄は「温容」そのも のであった。先生は優秀であったため,私より 1 年早く博士号の学位を取得し,研究者としての途に就 かれた。その後,お会いすることはなかったが,ご活躍のお噂は伺っていた。

 2013 年,非常勤講師として和光大学に来校するようになった際,すでに和光大学の専任講師であっ た葉山先生と再びお会いする機会を得た。大学院修了後から,7 年程の月日が経っていたが,講師控室 で私を見つけた先生が,院生時代と何も変わらず,にこにこ笑いながら「お久しぶりですね」と声を掛 けられて,真っすぐ私の方へ歩いて来られたことを覚えている。次の年,私も経済学科の専任として和 光大学に就任し,彼とは同僚となった。

 同僚となってからは,お互いの研究室を行き来し,雑談めいた日常会話から学問に関することまで,

憚りながら申すと,学生の頃に戻ったように忌憚なく語り合う時間を過ごした。仕事のみならず,少々 アルコールを交えた時間をも共有させてもらうようになると,彼の優しい目が,メガネレンズの中で次 第に細くなり,眦を吊り上げる瞬間を見るときもあった。そのようなときは,たいてい研究についての 見識の違いがあったときであり,年配の教員の主張に対しても恐れずに立ち向かい,執拗に食い下がる 姿は,彼の学問に対する真摯な姿勢の表れと見受けられた。

 「温容」な人柄でありながら,時には毅然として自らの主張を崩さないという一面をお持ちになられ ていたということは,誤解を恐れずに言えば,既成観念にとらわれず全ての可能性を考慮した上で物事 の真理を探求する方法,いわば学問の本質を探る方法を身に付け,そして,その本質にすでに達せられ ていたのではないだろうか。そう思うと,今更ながら,畏敬の念をおぼえないではいられない。

 はたしてどこまで葉山先生の思考を正確に理解できていたかと考えると甚だ覚束ないが,彼との会話 は,書物や論文からは得られない学問上のヒントに結びつくことがあり,彼からのアドバイスは私の仕 事や研究に益することが極めて大きかった。

 急逝の知らせを聞いたとき,ショックのあまり言葉がでず,深い悲しみにおそわれた。葉山先生を偲 び,個人的な想いをここに記したが,今は,先生のご冥福を祈るばかりである。

 私より 1 年先に博士号を取得し,1 年先に和光大学の専任となり,常に 1 歩先を歩いていた彼の背中 が目の前にあったから,迷わずに進むことができたと思っている。しかし,今後は,背中が見えなく なってしまったので,迷わず進めるか大変心もとない。

ix

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