木材の収縮を圧締に用いた丸ほぞ接合の引抜き性能
北海道大学農学部森林科学科 木材工学分野
蓮佛 喬
目次
1. 背景と目的 ... 1
2. 実験 ... 2
2.1. 引抜き試験 ... 2
2.1.1. 試験体 ... 2
2.1.2. 実験方法... 6
2.2. 面圧試験 ... 7
2.2.1. 試験体 ... 7
2.2.2. 試験方法... 8
3. 結果と考察 ... 9
3.1. 引抜き試験 ... 9
3.1.1. 最大荷重の比較及び乾湿繰返しの影響 ... 9
3.1.2. 最大荷重後の挙動 ... 10
3.1.3. 破壊形態... 11
3.1.4. 接合部に関する考察 ... 13
3.2. 面圧試験 ... 15
4. 結論 ... 16
謝辞 ... 17
参考文献 ... 18
巻末資料 ... 19
1 1. 背景と目的
再生可能な材料である木材は、工業においてだけでなく個人の趣味としての木工におい ても利用されてきた。欧米では古くからグリーンウッドワーク(green woodwork)という 生木を加工する手法が用いられており、少ない労力と道具でも可能な木工として親しまれ てきた。グリーンウッドワークでの接合部において、収縮接合(shrink-fit joint)という技 法が使われることが多い1-2)。この技法は、水分を多く含む生材が乾燥に伴って収縮するこ とにより接合部の強度を高める。収縮接合は、金属加工においては焼嵌めという技法とし て工業的にも広く用いられているが、木材においては工業的生産にはあまり適しておらず、
その研究例は世界的に見ても少ない。
本研究では収縮接合を利用した接着接合(以下、収縮接着接合とする)を対象とし、そ の引抜き性能及びほぞにかかる圧締圧を評価することを目的とした。一般にグリーンウッ ドワークでは接着剤を用いないが、木材の寸法変化によるほぞ接合後の接着面の圧締が引 抜き性能に与える影響を調べるために、本研究では接着剤を用いた。また、季節によって 湿度条件が異なる日本における実用性を調べるため、試験体の一部に乾湿繰返しを設けた。
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2. 実験
接合の引抜き性能を測定するために引抜き試験を、収縮接着接合において丸ほぞにかか る圧締圧を測定するために面圧試験をそれぞれ以下のように行った。実験にはいずれもサ トウカエデ(Acer saccharum)を使用した。
2.1. 引抜き試験
2.1.1. 試験体
試験体寸法を図1に示す。ほぞ部材(25mm×25mm×190mm、二方柾)について、5/8”
Power Tenon cutter(veritas社)を横軸ボール盤に取り付けて直径15.5mmの丸ほぞを加
工した(図2)。ほぞ部材上部から 50mm の位置に引抜き試験の際にボルトを通す孔
(ø10.5mm)を空けた。ほぞ孔部材(30mm×30mm×96mm、二方柾)は表1に示す条件
別にø15.5mm及びø16.0mmのほぞ孔を空けた。ただし収縮接着接合の試験体のみ、含水
率が繊維飽和点以上になるまで約一週間浸水させた後にほぞ孔を加工した。ここで、嵌合 度はほぞ径からほぞ孔径を引いた値とし、予備実験の結果から各接合条件に適した嵌合度 とした。また、下部にほぞ孔と同じ直径で深さ約5mmの孔を掘削し、これを引抜き試験後 にほぞ孔直径を測定するための参照孔とした。両部材を接合する際は酢酸ビニル樹脂エマ ルジョン接着剤(コニシ社、#40007)とエポキシ樹脂接着剤(ハンツマン、アラルダイト ス タンダード)の二種類の接着剤を用いた(図3。それぞれ以下、酢酸ビニル及びエポキシ とする)。接着剤をほぞ表面とほぞ孔内側に薄く塗布した後に、両部材の収縮率が同じにな るように接線方向を揃えて接合した(図4)。これは木材の収縮・膨潤にみられる異方性が 一般に接線方向:半径方向:繊維方向=10:5:0.5~1 とされている3)ためである。エポ キシは充填性のある接着剤であり、接着後に圧締を行う必要がない。そのため収縮接着接 合との比較としては乾燥材同士による接着接合のみとした。接合後に約一週間を調湿期間 とし、両部材とも気乾状態になった後に引抜き試験及び乾湿繰返しを行った。
乾湿繰返しには恒温恒湿槽(ESPEC、LHL-113)を使用した。湿潤条件(25℃、90%RH)、 乾燥条件(20℃、40%RH)各10日間の計20日間を1サイクルとし、4サイクルまで行っ た(図5)。乾湿繰返しの1、2、4サイクル後にそれぞれ5体ずつ引抜き試験を行った。
なお、予備実験では表1の3条件に加え、嵌合度-0.5mmの酢酸ビニル接着接合と嵌合度
±0mmの収縮接着接合の計5条件で引抜き試験を行った。その結果酢酸ビニル接着接合及 び収縮接着接合ともに嵌合度による大きな差は見られず、嵌合度±0mmの酢酸ビニル接着 接合と嵌合度-0.5mmの収縮接着接合がそれぞれやや強い値を示したため、それらを本実験 で用いることとした。
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表1 試験体の条件
図1 引抜き試験の試験体
図2 ほぞ加工の様子 ほぞ孔部材の
加工時含水率 ほぞ孔径(mm) 嵌合度(mm) 試験体数
酢酸ビニル 気乾 15.5 ±0 20
エポキシ 気乾 16.0 -0.5 20
収縮接着接合 酢酸ビニル FSP以上 16.0 -0.5 20
接着剤 接着接合
5/8” Power Tenon cutter(veritas社)
横軸ボール盤
ほぞ部材
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図3 接着剤(左:酢酸ビニル、右:エポキシ)
図4 試験体接合方向
(黒矢印:ほぞ部材接線方向及び半径方向 白矢印:ほぞ孔部材接線方向及び繊維方向)
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図5 乾湿繰返しの経過図
6 2.1.2. 実験方法
引抜き試験は油圧式試験機(東京衡機)を用いた単調加力方式とし、ほぞが完全に引抜 けるまで引張方向に加力した(図6)。ほぞ部材とほぞ孔部材を固定する金具との変位量を 2つの変位計(図6中の矢印)で測定し、その平均値を変位とした。
引抜き試験後にほぞ孔部材の参照孔の直径をイメージスキャナ(EPSON、GT-D1000)
で読み取り、ほぞ孔の収縮量及び収縮率を求めた。
図6 引抜き試験の様子
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2.2. 面圧試験
2.2.1. 試験体
引抜き試験の試験体(図1)を加工したものを面圧試験の試験体として使用した(図7)。 ほぞ部材はほぞ部分のみの約40mmを切断したもの、ほぞ孔部材はほぞ孔を二等分するよ うに刃の厚さ3mmの昇降盤で切断したものを使用した。試験体数は5体とした。
図7 面圧試験の試験体
8 2.2.2. 試験方法
面圧試験はモーター式試験機を用いた単調加力方式とし、鋼板を介した全面圧縮とした
(図8)。二等分したほぞ孔部材でほぞ部材を挟み、参照孔から算出した引抜き試験での収 縮接着接合試験体のほぞ孔部材の収縮率(表2)より設定した変位まで圧縮した。なおク ロスヘッドの移動量を変位とした(変位計は図8中の矢印)。
表2 引抜き試験での収縮接着接合試験体のほぞ孔部材の収縮率
図8 面圧試験の様子
L方向平均収縮率(%) T方向平均収縮率(%) 試験時平均嵌合度※(mm)
乾湿繰返しなし 0.171 6.673 0.518
1サイクル 0.071 6.259 0.283
2サイクル 0.079 6.503 0.266
4サイクル 0.158 5.431 0.132
※T方向の値
9 3. 結果と考察
3.1. 引抜き試験
3.1.1. 最大荷重の比較及び乾湿繰返しの影響
図9に乾湿繰返しサイクル数と引抜き強さの関係を示す。乾湿繰返しなしの場合は収縮 接着接合が最も高い値を示した。続いてエポキシ接着接合、酢酸ビニル接着接合という結 果となった。乾湿繰返しを経ることで収縮接着接合の引抜き強さは低下し、2サイクル以 降ではエポキシ接着接合が最も強く、続いて収縮接着接合、酢酸ビニル接着接合となった。
エポキシ接着接合及び酢酸ビニル接着接合はどちらも乾湿繰返しによる影響は少なく、
線形回帰直線をあてはめた。エポキシ接着接合の引抜き強さはわずかに増加傾向で、これ はエポキシ樹脂接着剤の接着構造4)によるものだと考えられる。エポキシ樹脂接着剤はエ ポキシ基を多く含む主材とアミン類や酸無水物の硬化剤とを混ぜ合わせて使用する。その 過程でエポキシ樹脂が架橋構造をつくる際に時間がかかるため、このような結果となった と考えられる。乾湿繰返しを経て引抜き強さが低下した収縮接着接合について非線形回帰 曲線をあてはめると収束値は8.28kNと求められた。これは酢酸ビニル接着接合の引抜き強 さの平均値の約2倍の値であり、収縮接合の原理を利用することで引抜き強さが大幅に増 加する結果となった。
図9 乾湿繰返しサイクル数と引抜き強さの関係
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3.1.2. 最大荷重後の挙動
条件によって引抜き試験での最大荷重後の挙動に差が見られた(図10)。酢酸ビニル接 着接合及びエポキシ接着接合では、最大荷重後は 1~2kN の荷重で徐々にほぞが引抜けて いった。それに対して収縮接着接合では、部材同士の摩擦のみによって約3kNの荷重に耐 えた。ほぞ孔部材の収縮によるほぞの締め付けが強く、接着が切れてもほぞが一気に引抜 けるといった急激な破壊が起こりにくいと言える。この挙動は酢酸ビニル及びエポキシ接 着接合においても乾湿繰返しを行った試験体の一部に見られ、乾湿繰返しによってもほぞ がやや締め付けられていたことが考えられる。
図10 各条件の代表的なP-δ曲線(いずれも1サイクルの試験体)
11 3.1.3. 破壊形態
引抜き試験の破壊形態について、ほぞ部材せん断破壊、ほぞ孔部材割裂、接着層せん断 破壊の三種類の破壊形態が観察された(図11)。酢酸ビニル接着接合は接着層せん断破壊 が多く見られたが、収縮接着接合及びエポキシ接着接合については破壊形態の偏りはなか った(表3)。また、破壊形態による引抜き性能の違いは見られなかった。
引抜き試験後の収縮接着接合の試験体において、ほぞの柾目面に圧締によって繊維が変 形したと考えられる部分が観察された(図12。以下、圧締痕とする)。この圧締痕は幅5mm 程度だったが、その部分がかなり強く圧締されていたと考えられる。接着接合の試験体で も乾湿繰返しを経たものには圧締痕が観察されたため、接着後の調湿時の圧締、乾湿繰返 しの乾燥サイクルあるいは引抜き試験時のいずれかの段階で圧締痕が発生したと予想され るが、本実験からは正確な時期は分からなかった。
表3 引抜き試験における破壊形態 ほぞ部材
せん断破壊 ほぞ孔部材割裂 接着層
せん断破壊 圧締痕
酢酸ビニル接着接合 0% 0% 100% 0%
繰り返しなし エポキシ接着接合 40% 20% 40% 0%
収縮接着接合 80% 0% 20% 100%
酢酸ビニル接着接合 0% 80% 100% 100%
1サイクル エポキシ接着接合 20% 80% 40% 80%
収縮接着接合 20% 40% 100% 100%
酢酸ビニル接着接合 0% 100% 0% 100%
2サイクル エポキシ接着接合 40% 60% 40% 100%
収縮接着接合 60% 40% 40% 100%
酢酸ビニル接着接合 0% 40% 60% 100%
4サイクル エポキシ接着接合 40% 60% 60% 100%
収縮接着接合 40% 0% 60% 100%
※各条件5体の内観察された試験体の割合(重複あり)。
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図11 引抜き試験の破壊形態
(左上:ほぞ部材せん断破壊 右上:ほぞ孔部材割裂 下:接着層せん断破壊)
図12 圧締痕
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3.1.4. 接合部に関する考察
この項で接合時から試験時までの接合部の含水率や圧締に関する考察を行う。はじめに 収縮接着接合における接合部から述べる。接合時はほぞ部材が気乾状態、ほぞ孔部材が含 水率FSP以上で、接合後に両部材が気乾状態になるまで調湿を行った。調湿期間において、
ほぞ孔部材は乾燥し、それに伴う収縮によってほぞを圧締した。ほぞ部材は吸湿するがほ ぞ孔部材によって膨潤が抑制される。なお、この段階で酢酸ビニルが硬化して接着層を形 成したものと考える。乾湿繰返しを行わない試験体は調湿後に引抜き試験を行った。乾湿 繰返しを行う試験体は2.1.1.で述べた方法で乾湿繰返しを行った。湿潤条件では両部材とも 吸湿して膨潤する。両部材の向きが同じ(図4参照)接線方向については特に応力はかか らないが、ほぞ孔部材の繊維方向に対してほぞ部材は収縮率の高い半径方向であるため膨 潤が抑制され、ほぞ部材及び接着層に圧縮応力が生じる。乾燥条件に移ると、両部材とも 乾燥して収縮する。ほぞ孔部材はほぞ部材を締め付けるが、湿潤条件において圧縮応力が 生じていたため加圧収縮となり、締め付けはあまり強いものではなかったと考えられる。
また、この際接着層には引張方向へ力が加わり、特に湿潤条件で圧縮応力が生じていた箇 所で接着が弱くなる部分があったと考えられる。その後の湿潤条件、乾燥条件においては 上記の現象が繰り返され、引抜き試験を迎えたこととなる。
次に酢酸ビニル及びエポキシ接着接合における接合部について述べる。接合時は両部材 とも気乾状態であるため、その後の調湿期間では部材の大きな寸法変化はなく接着層の形 成のみがなされたと考える。湿潤条件においては収縮接着接合の試験体と同じく、両部材 とも吸湿して膨潤するが、ほぞ孔部材の繊維方向とほぞ部材の半径方向の接着層に圧縮応 力が生じる。乾燥条件では両部材とも乾燥に伴い収縮する。両部材の接線方向の収縮率は 同じであるが、試験体の表面から乾燥していくことを考慮するとほぞ部分よりもほぞ孔部 材の乾燥及び収縮が先に起きたと考えられるため、ややほぞが締め付けられたと推察され る。更にこの時点では既に接着層が形成されているため、この締め付けは接着強度にそれ ほど影響を与えなかったと考えられる。
以上の考察と 3.1.1.で示した結果とを併せて考えると、以下のようなことが示唆される。
収縮接着接合において乾湿繰返しなしの時点でエポキシ接着接合より高い値を示したこと に関して、収縮接着接合の試験体における接合後のほぞの圧締が主な要因として挙げられ る。酢酸ビニルは接着後に圧締を行った方が強い接着を形成するが、通常のほぞ接合では 接合後に接着面を圧締することができない。今回の収縮接着接合では、ほぞ孔部材の乾燥 に伴う収縮により接着面の圧締が可能となった。それによってより強い接着層が形成され たことが推察される。また、接着面が接着剤でぬれやすい状態であったことも要因として 考えられる。一般に接着剤を用いる際は接着面のぬれが接着性能に影響を与える5)とされ ている。収縮接着接合の試験体ではほぞ孔部材の含水率が高く、接着剤が接着面をぬらし やすい状態であっため、接着性能が増したと考えられる。
乾湿繰返しの影響については次のように考えられる。収縮接着接合において乾湿繰返し
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を経ることで引抜き強さが低下したことに関しては、接着層に生じた応力によって接着が 部分的に切れたことが考えられる。ただし、引抜き強さの低下後でも酢酸ビニル接着接合 を上回っていたことから、ほぞ孔部材によるほぞの圧締の効果が大きかったことが推察さ れる。また、酢酸ビニル及びエポキシ接着接合において乾湿繰返しを経ても引抜き強度の 変化が少なかったことについては、接着層に生じた応力が小さかったことと乾湿繰返しに 伴う寸法変化の前に接着層の形成がなされていたことが要因として考えられる。酢酸ビニ ル接着接合については、乾湿繰返しを経て強度のばらつきが増した。これはほぞの締め付 けによる引抜き強さの上昇と接着層に生じた応力による接着強さの低下とが試験体によっ て現れ方が異なるためだと考えられる。エポキシ接着接合については、接着層自体の強度 が酢酸ビニルに比べて大きく6)、生じた応力の影響を受けにくかったことと、3.1.1.で述べ た接着層の形成過程も要因として考えられる。なお、本実験では図3に示した向きでのみ 接合しており、その他の向きでの接合を行っていない。しかし、繊維方向による収縮率の 違いを考慮すると、収縮接合を行う際は接合する部材の繊維方向に留意する必要があると 言えるだろう。
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3.2. 面圧試験
図13に面圧試験で得られた P-δ曲線を示す。移動量を測定したクロスヘッドの振動に よって散布図が大きくばらついてしまったため、多項式の曲線をあてはめている。いずれ の試験体もS字の曲線を示し、圧締圧を算出する上で参照する変位を次のように求めた。
表2より、収縮接着接合試験体のほぞ孔部材のT方向の平均収縮率は6.216%となる。ほ ぞ孔部材の幅は30mmであるからほぞ孔部材の収縮量は30mm×0.06216より1.86mmと なる。収縮接着接合試験体の接着時の嵌合度は-0.5mm(表1)であるから、1.86mm-0.5mm
より1.36mmを面圧試験における参照変位とした(図13中の縦線)。
次に参照変位からほぞにかかった圧締圧を求めた。ほぞの圧締面積を、ほぞを横から見 た時の長方形15.5mm×30mmとし、この値で変位1.36mmでの荷重は6.5~7.3kNを除 した。その結果、圧締圧は 13.98~15.70kN/mm2と算出された。この値はサトウカエデの 横圧縮比例限度7)10.1N/mm2を上回っており、圧締には十分な大きさだったと考えられる。
ただし、引抜き試験における収縮接着接合試験体は3.1.4.で述べたように含水率の変化を 伴いながら時間をかけて圧締されたのに対して、面圧試験では乾燥した試験体を短時間で 圧縮した。このため、収縮接着接合の試験体では加圧収縮によって寸法変化が大きかった と考えられる。したがって面圧試験で参照した変位及び得られた圧締圧は過大評価であり、
上記の圧締圧は実際にほぞにかかった圧締圧の最大値として扱うこととする。
図13 面圧試験のP-δ曲線
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4. 結論
今回の実験で行った収縮接着接合、すなわち木材の収縮を圧締に用いた丸ほぞ接着接合 は、複数回の含水率変動を経るとエポキシ接着接合にはやや劣るが、酢酸ビニル接着接合 の約2倍の引抜き強さを示すと予想され、椅子接合部としては十分な引抜き性能だと言え る。また、引抜き試験における最大荷重後の挙動から、急激な破壊の起こりにくい接合で あることが分かった。面圧試験より、ほぞ孔部材の乾燥に伴う収縮によって得られる圧締 圧は、木材の横圧縮比例限度を超えるほど高くなる可能性があると言える。
収縮接着接合は高含水率の木材を加工する技法であるため、収縮接合と同様に工業的な 生産には不向きだと考えられる。しかし、本研究によってグリーンウッドワークに関連す る研究が進み、実用性が評価されるあるいは現在より普及していくことを期待する。
17 謝辞
本研究を行うにあたり、多くの方々のご協力を頂いた。小泉章夫准教授には実験計画か ら考察まで、また実験装置の取り扱い等研究全般においてご指導頂いた。ゼミで細部に関 するご指導を頂いた平井卓郎特任教授並びに澤田圭助教授、実験装置の準備と取り扱いの ご指導を頂いた佐々木義久技官に厚くお礼申し上げます。そして私と同じ木材工学研究室 の学生の皆様にも深く感謝申し上げ、謝辞とさせて頂く。
18 参考文献
1)佃猛司,小泉章夫,澤田圭,佐々木義久:グリーンウッドワークにおける丸ほぞ収縮接 合の性能評価,北海道大学演習林研究報告大,第70巻,第1号(2015),pp.9-20
2)C. Eckelman,E. Haviarova,A. Tankut,N. Denizli,H. Akcay,Y. Erdil:Withdrawal capacity of pinned and unpinned round mortise and tenon furniture joints,Forest
Products Journal,54(12),pp,185-191(2004)
3)伏谷賢美,木方洋二,岡野健,佐道健,竹村冨男,則元京,有馬孝禮,堤壽一,平井信 之:木材の物理(1985),pp.61-62
4)接着技術便覧編集委員会:接着技術便覧(1962),pp.113-127
5)林業試験場編:木材工業ハンドブック,新版(1973),pp.459-492
6)日本工業規格(1965)接着-一般工作用接着剤,JIS S 6040,日本規格協会,pp.278-290
7)Forest Products Laboratory:Wood handbook(2010),pp.5-5
19 巻末資料
乾湿繰返し 接合条件 含水率(%)
9.80 9.38 9.46 9.43 9.27 9.99 10.06
なし 10.00
9.58 9.54 8.67 8.20 8.27 8.31 8.19 7.60 7.52 7.90 7.59 7.56 7.83 7.91
1サイクル 8.15
7.96 8.09 7.84 8.01 7.67 7.25 7.27 7.50 7.53 7.33 6.66 7.53 7.71 7.73
2サイクル 7.73
7.86 7.65 8.57 7.01 7.73 7.63 8.36 収縮接着接合
酢酸ビニル接着接合
エポキシ接着接合
収縮接着接合 引抜き試験時の含水率
酢酸ビニル接着接合
エポキシ接着接合
収縮接着接合
酢酸ビニル接着接合
エポキシ接着接合
20
7.59 7.50 7.21 7.18 7.07 7.72 7.85
4サイクル 7.86
7.92 7.96 7.65 8.51 8.50 6.58 7.39 収縮接着接合
酢酸ビニル接着接合
エポキシ接着接合
21
引抜き試験P-δ曲線
乾湿繰返しなし 1サイクル
22
2サイクル 4サイクル