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「ナノテク活用技術のすべて」㈱工業調査会

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Academic year: 2025

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(1)

「ナノテク活用技術のすべて」㈱工業調査会

アルコールを用いた単層カーボンナノチューブの大量合成

東京大学 大学院工学系研究科 丸山茂夫

(リード文)

炭素原子が直径約1

nm

の円筒状に配列した単層カーボンナノチューブは,炭素 の配列によって金属や半導体となる電気的特性,優れた機械的強度,極めて高 い熱伝導率などからナノテクノロジーのキー素材として注目されています.最 近,アルコールを炭素材料とした触媒化学気相反応法によって単層カーボンナ ノチューブの高純度・大量合成が可能となりつつあります.

(本文)

1993

年に

NEC

の飯島氏らによって発見された単層カーボンナノチューブは,図 1

(a)

のように炭素原子が筒状に配列した直径約

1nm

長さは数十µm 以上にもな る炭素材料です.この単層カーボンナノチューブは固体材料とも巨大分子とも 考えられ,従来から工業材料として用いられてきた炭素繊維の究極の形である とともに,その直径と巻き方によって金属や半導体になるなどの電気的特性,

極めて強靱な機械的特性,ダイヤモンドを超える熱伝導特性などが期待され,

ナノテクノロジーの代表的な新素材として,広範な応用が考えられています.

例えば,電界効果トランジスタ(

FET

)などの電子素子や究極の電気配線,平面 型ディスプレーなどのための電界放出電子源,走査型プローブ顕微鏡の探針,

高熱伝導素子,高強度複合材料,導電性複合材料や水素吸蔵材などとして利用 するための応用研究が活発に行われています.

単層カーボンナノチューブは,従来,図2に概要を示すようなレーザーオーブ ン法やアーク放電法によって生成されてきました.集光したレーザー光やアー ク放電の高エネルギーで黒鉛とわずかに添加した触媒金属原子を蒸発させて,

適当な冷却条件で炭素が再結合する際に,単層カーボンナノチューブが生成さ れます.これらの方法で,少量の材料が作れますが,どうしてもアモルファス カーボンや金属微粒子などの不純物が混入してしまいます.強酸によってこれ

(2)

らを溶かしてしまうなどの精製もいろいろと工夫されていますが,単層カーボ ンナノチューブも劣化してしまうという問題があります.さらに,レーザーや アーク放電の生成装置は,どうしても高価となり,大量合成には向いていませ ん.

そこで,すでに工業レベルで大量生成されている炭素繊維や多層ナノチューブ と同じように,触媒化学気相反応法

(CVD

)

によって生成する方法がいろいろ 試みられています.単層ナノチューブを生成するキーとなるのは数ナノメート ルの金属微粒子を触媒として活用することにあると考えられています.鉄・コ バルト・モリブデンなどの金属微粒子をアルミナやゼオライトなどに担持して,

炭化水素を高温で反応させる方法が一般的ですが,従来の方法では,なかなか 高純度の単層ナノチューブは生成できませんでした.少しかわった方法で,高 温

(

1000

)

・高圧(数十気圧)の一酸化炭素を炭素源とする

HiPco

と呼ばれる 方法で,アモルファスカーボンの混入の少ない単層ナノチューブが生成されて いますが,多量の金属微粒子が含まれることと,高温・高圧の一酸化炭素の取 り扱いが容易でない点が問題となっています.

最近,今まで用いられてきた炭素供給源の炭化水素をアルコールにかえると高 純度の単層カーボンナノチューブを比較的低温でかつ簡単な装置で生成できる ことがわかってきました.生成装置の概要を図3に示します.触媒としては,

名大の篠原教授らの方法で,鉄とコバルトをゼオライトに担持して用います.

これを石英ボートにのせて電気炉中で加熱し,アルコール蒸気を導入するだけ の簡単な方法です.図4には,エタノールを炭素源とし,反応温度

800

℃として 生成されたサンプルの電子顕微鏡像を示します.いっさいの精製を行わずに,

アモルファスカーボン,多層ナノチューブや金属微粒子がほとんど存在しない 高純度生成が実現できています.図4の中央付近には単層カーボンナノチュー ブが一本だけの像が見えますが,それ以外は束(バンドル)になっています.

この束の分子イメージは図1(

b

)です.図5には,様々な温度で生成されたナ ノチューブの直径分布を共鳴ラマン分光という方法で測定した結果を示します.

生成温度が低いほど細めのナノチューブが生成されていることがわかります.

また,従来の炭化水素を用いた触媒

CVD

法によっては,

900

℃以下の温度では ほとんど単層ナノチューブが生成できないのに対して,

600

℃程度までの低温で も生成が可能であることがわかります.

図6には,分子動力学法シミュレーションで約

1nm

の金属微粒子に反応して 付着した炭素原子が単層カーボンナノチューブを生成する過程を計算した結果 を示します.高温の金属微粒子表面に衝突した炭化水素やアルコール分子は,

金属の触媒作用で分解し,炭素原子を表面に残します.適当な条件下ではこれ らの炭素原子がナノチューブとして析出すると考えられます.このような過程

(3)

で,アルコール分子が炭素源の場合には,触媒金属によって分解して生成され る

OH

ラジカルがアモルファスカーボンや多層ナノチューブとなる余分な炭素 原子と選択的に反応・除去してくれ,比較的低温でも単層ナノチューブのみが 生成されやすくなると考えられます.

アルコールを炭素源とすることで,高純度の単層カーボンナノチューブが比 較的低温で生成可能になったことで,安価な大量合成の道が開けるとともに,

単層ナノチューブの生成温度が

600

℃以下となり,アルミ配線されたシリコン基 板への直接合成も可能となりつつあります.

(4)

(a)

(b) (a)

(b) (a)

(b)

図1 単層カーボンナノチューブの分子構造

(5)

電気炉 レーザー光

触媒金属添加黒鉛

真空容器

触媒金属添加黒鉛 アーク放電 (a)

(b)

電気炉 レーザー光

触媒金属添加黒鉛

真空容器

触媒金属添加黒鉛 アーク放電

電気炉 レーザー光

触媒金属添加黒鉛

真空容器

触媒金属添加黒鉛 アーク放電 (a)

(b)

図2 レーザーオーブン法とアーク放電法

(6)

Manometer

Quartz Tube

Vacuum pump Pirani Gage Electric Furnace

Ar gas

Mass flow controller

Carbon reservoir

Alcohol Manometer

Quartz Tube

Vacuum pump Pirani Gage Electric Furnace

Ar gas

Mass flow controller

Carbon reservoir

Alcohol

図3 アルコールを用いた触媒CVD装置

(7)

10nm 10nm 10nm

図4 アルコールを用いた触媒

CVD

法によって生成された単層ナノチューブの 電子顕微鏡像

(8)

100 200 300 400

2 1 0.9 0.8 0.7

シグナル強度

ラマンシフト

(cm

–1

)

直径

(nm)

(d) 900°C (a) 600°C

(b) 700°C

(c) 800°C

(e) レーザーオーブン

図5 エタノールを用いた触媒

CVD

で生成される単層カーボンナノチューブの 直径分布

(9)

金属原子

炭素原子

金属原子

炭素原子

図6 分子動力学法シミュレーションによる金属微粒子からの単層ナノチュー ブ生成

参照

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