6 Pre-Sierpi´ nski gasket 上の self-avoiding walk .
6.5 SAW の本数と mean square displacement.
命題37から(xc−(,0)∈Doであり,Do⊂R2+ は開集合なので,δ >0 がとれて,(xc−(, δ)∈Do とで きる.|Zn,i(βc−√
−1λ−nt)||Zn,i(βc)|,t∈R,に注意すると,系42からn0n1 なる自然数がとれて,
nn0 で|Zn,2(βc−√
−1λ−nt)|δ.よって,
|Zn+m,1(βc−√
−1λ−nt)|Xm,1(xc−(, δ), nn0, m1, t∈A . これと 命題39からC >0と γ >0 が存在して,
|Zn+m,1(βc−√
−1λ−nt)|Cexp(−γ2m), nn0, m1, t∈A, (116) および,
Zn+m,2(βc+λ−n)Cexp(−γ2m), nn0, m1, t∈A . (117) n0を上記のものにとり,n > n0とする.t∈Rを|t| ∈[1, λn−n0−1]を満たすものとし,m=
&
log|t| logλ '
+1
([·]は整数部分)とおくと,n−mn0 かつλ−1λ−m|t|<1を満たす.よって,
|φn(t)||Zn,1(βc−iλ−nt)|
Zn,1(βc) =|Zn−m+m,1(βc−iλ−(n−m)(λ−mt))| Zn,1(βc)
Cexp(−γ2m)
Zn,1(βc) Cexp(−γ|t|ν) Zn,1(βc) . その上, lim
n→∞Zn,1(βc) =xc と lim
n→∞φn(t) =g(√
−1t)だから,命題49と優収束定理から,
nlim→∞
R|χ[0,λn−n0−1](|t|)φn(t)−g(√
−1t)|dt= 0.
他方,
R|χ[0,λn−n0−1](|t|)φn(t)−φn(t)|dt
2
∞
λn−n0−1
exp(−h2nt2/2)dt
2 (h2nλn−n0−1)−1exp(−(hnλn−n0−1)2/2)
= 2λn0−1b−2λnn−1exp(−λ−2n0+2b2n/2), となるが,bが十分大きければ,右辺はn→ ∞で0 に収束する.即ち,
nlim→∞
R|φn(t)−g(√
−1t)|dt= 0
を得るので,主張は証明された. ✷
命題 53 正定数 C1,C2,および実定数γ1 γ2 が存在して,
C1kγ1exp(βck)N(k)C2kγ2exp(βck), k∈N. 証明. W(0)=
∞ k=0
W(k)とおき,D: W(0)→Zを,
D(w) = min{n∈Z+|w(i)∈Fn, i= 0,1,· · ·, L(w)} (118) で定義する.
Mn =
w∈W(0), D(w)n
exp(−βcL(w)), n∈Z+,
とおいて,くりこみ群(命題36)を証明したときのようにMn+1 の和を分類すると,2変数正係数多項式f1 があって,
Mn+1f1(ZMn(βc))Mn, n∈Z+, (119) と書けることが分かる.系42からZMn(βc)は n→ ∞で収束するから,A1>0と A2>1 がとれて,
MnA1An2, n∈Z+. (120)
定義から2D(w)−1L(w)なので,
exp(−βck)N(k)M[logk/log 2]+1A1A22Alog2 k/log 2 となって,主張の上からの評価を得る.
下からの評価を得るために,bを 命題52が成り立つ(十分大きな)数とする.kn =√
2 logλbnλ−n と おくと,
(p∗n(Mxc)∗gn)(ξ) =
R
gn(ξ−η)p∗n(Mxc)(dη) において
R\[ξ−kn,ξ+kn]
gn(ξ−η)p∗n(Mxc)(dη)gn(kn) = (2πb2n)−1/2→0, n→ ∞, となるので,命題52から,
nlim→∞sup
ξ∈R|ρ(Mxc)(ξ)−
[ξ−kn,ξ+kn]
gn(ξ−η)p∗n(Mxc)(dη)|= 0.
これと 命題50から,自然数 n2と ( >0がとれて,
h−n1p∗n(Mxc)([ξ−kn, ξ+kn])(, nn2, ξ∈[λ−1, λ2].
k∈Nとする.nを,λ−nk∈[1, λ]なる自然数とする.kが十分大きければnn2となり,kn1−λ−1 が従うので,
p∗n(Mxc)([λ−nk−2kn, λ−nk])hn(.
w∈W1(n)かつL(w)kならば,まっすぐ外に延長することでL=kなるW(0) のpathを得ることがで きることを合わせると,
Zn,1(βc)hn(
w∈W1(n), k−2knλnL(w)k
exp(−βcL(w))exp(βc2knλn) exp(−βck)N(k).
よって
N(k)Zn,1(βc)(bλ−nn1/2exp(−2βcb(2 logλ)1/2n) exp(βck).
n logk
logλ なので,これは主張の下からの評価を意味する. ✷
問 17 (119)の証明を図を書いて確認せよ.特に f1 を具体的に与えよ. ✸
注 19 次節のmean square displacementの結果を強化するためには,pathの本数の漸近評価(命題53)も
sub-leading orderまで強化しないといけない. ✸
6.5.2 大偏差型評価とreflection principle. 自然数n, mに対して,
Un,m=
w∈W(0), D(w)n, L(w)λn+m/2
exp(−βcL(w)),
Vn,m=
w∈W(0), D(w)=n+1, L(w)λn−m
exp(−βcL(w)),
とおく.
命題 54 正数A2,C,γ が存在して,
Un,mCAn2exp(−γλm/2),
Vn,mCAn2exp(−γ2m), n∈N, m∈N. A2 は (120) と共通にとれる.
証明. r= (λ−√
λ)/4とおいて,
Sn,m,i =
w∈Wn,i, L(w)λn+m/2r
exp(−βcL(w)), n∈N, m∈N, i= 1,2,
を定義する.(119)のときの類似の図形的考察により,そこでのf1 (2変数の正係数多項式,f(0,0) = 1) を用いて,
Un+1,mf1(ZMn(βc))Un,m+1+
# 2
i=1
Sn,m,i∂f1
∂xi(ZMn(βc))
$ Mn,
を得る.(120)を得たときと同様に,自然数n1 が存在してf1(ZMn(βc))A2,nn1,を得る.ここでA2 は(120)と同じもの.系42と(120)からC1>0がとれて,
A−2(n+1)Un+1,m A−2nUn,m+1+C1 2 i=1
Sn,m,i, nn1, m0. (121)
L(w)2·3D(w)に注意すると,λn+m/2>2·3n ならばUn,m= 0となるが,条件はm2nかつn >1 ならば満たされる.n1>1 ととってよい.これより,
A−2nUn,mC1 [23n]
k=0
2 i=1
Sn−k−1,m+k,i, n4n1, m0. (122) 他方,
Sn,m,iexp(−rλm/2)
w∈Wn,i
exp(−(βc−λ−n)L(w)) = exp(−rλm/2)Zn,i(βc−λ−n). (123)
系42と 命題47からC2>0 がとれて,
Zn,1(βc−λ−n) =g(n)1 (1)Zn,1(βc)C2, n∈Z+. また,命題38から,xc,n= exp(−βc+λ−n)およびMxc,n = (xc,n, x2c,n)とおくと,
Zn,2(βc−λ−n)Rn(Mxc,n)Zn,1(βc−λ−n)R0(Mxc,n)C2=xc,nC2.
よって,Zn,i(βc−λ−n),i= 1,2,n∈Z+,は有界である.これを(122), (123)と合わせると,Un,mについ ての主張を得る.
Vn,mの評価を得るには,
Tn,m,i=
w∈Wn+1,i, L(w)λn−m
exp(−βcL(w)), n∈N, m∈N, mn, i= 1,2,
とおく.上と同様の図形的考察から,TMn,m= (Tn,m,1, Tn,m,2)とおくと,
Vn,mf1(TMn,m)Mn−Mn= (f1(TMn,m)−f1(0,0,0,0))Mn. L(w)λn−m ならば1−λm−nL(w)0 となることに注意.これより,
Tn,m,i
w∈Wn,i
exp(−(βc+λm−n)L(w) + 1) =e Zn,i(βc+λm−n), i= 1,2, n, m∈N, nm.
これと(117)と (120)からVn,mについての主張を得る. ✷
問 18 命題54 の主張を一般のdSGに一般化し,証明も一般化せよ.(rの定義の分母,Sn,m,i,Tn,m,i のi の種類,(121) の下から(122) までの数値,等が変わる.また,Zn,i(βc−λ−n)が有界である理由はiに
よって違うが,この部分は,仮定した上で証明してみよ.) ✸
定理51 の証明. 定理51の前半は 命題53で証明されたので,後半を証明する.
k∈Nに対してK(k) =
&
logk logλ '
とおくと,λK(k)k < λK(k)+1である.命題54から,mK(k)を 満たすm∈Nと k∈Nに対して,
{w∈W(0)|L(w) =k, D(w)K(k)−m}exp(βck)UK(k)−m,2m Cexp(βck+ (K(k)−m) logA2−γλm)
Cexp(βck+ logλA2 logk−γλm). これと 命題53から,十分大きな αに対して,
P˜k[D(w)K(k)−αlog logk]
C C1−1exp((logλA2−γ1) logk−γ(logk)αlogλ)Cexp(−(logk)3). 定義から,2D(w)−1w2D(w)である.よって十分大きなαに対して,53
klim→∞
P˜k[w<(logk)−αkν] exp((logk)2) = 0. 次に,m, !∈Nに対して 命題54から,
{w∈W(0)|L(w) =k, D(w) =K(k) +m+!+ 2}exp(βck)VK(k)+m++1,m+
Cexp(βck)AK(k)+m++12 exp(−γ2m+)
CA2exp(βck+K(k) logA2+mlogA2−γ2m−1)A2exp(−γ2−1).
よって,
P˜k[D(w)K(k) + (α/log 2) log logk] = ∞
=0
P˜k[D(w) =K(k) +!+ (α/log 2) log logk]
C(C1A2)−1 ∞
=0
A2exp(−γ2−1)
×exp((logλA2−γ1) logk+αlog2A2log logk−γ
8(logk)α). よって,十分大きな αに対して,
lim
k→∞
P˜k[w>(logk)αkν] exp((logk)2) = 0. 以上より,α >0が存在して,
lim
k→∞
P˜k[w<(logk)−αkν または w>(logk)αkν] exp((logk)2) = 0. (124) k∈Nおよびs >0とする.Reflection principle ([35, Lemma (4.2)])により,
Ek[ 2(D(w)−1)s, |w(k)|2D(w)−1]Ek[ 2(D(w)−1)s, |w(k)|2D(w)−1].
これと|w(L(w))|w2D(w)から,
2−s−1Ek[ 2sD(w)]Ek[|w(k)|s]Ek[ ws ]Ek[ 2sD(w)]. (125) 次に,
Ek[ ws ]((logk)−αkν)s(1−P˜k[w(logk)−αkν]). これと(124)から,
lim
k→∞(logk)sαk−sνEk[ ws ]>0. (126) 同様に,
Ek[ ws ] ((logk)αkν)s+ksP˜k[w(logk)αkν], を得て,これと(124)から,
lim
k→∞(logk)−sαk−sνEk[ ws ]<∞. (127) (125), (126), (127)から主張を得る.
✷
53[32]ではνはκと書かれているが,序章の定理の主張では1/κとなっていたため,証明中の以下の部分では1/κとなってい て,誤って,証明中の以上の部分と逆数になっていた.
注 20 (i) Mean square displacementの指数は,Floryの議論と呼ばれる「物理的近似」(近似の数学的 意味や精度に関する数学的保証のない近似)の数値がZdでは良い値を与えているとされる.この議 論を dSG に拡張したものと厳密な結果の数値比較を§A.11に掲げておく.
(ii) Sierpi´nski gasket上のself-avodiding walkの連続極限についてはこの講義では触れないので,[29, 32]
を参照されたい.
✸ 問 19 (i) 定理51の証明中で引用した reflection principleを(必要ならば[35, Lemma (4.2)] を参考に
して)詳しく説明せよ.
(ii) 一般の dSG上のSAWについてくりこみ群軌道の存在と唯一性を証明せよ54 .
(iii) Sierpi´nski gasket上のSAWについて,mean square displacementの指数を∼の意味で(既に知られ ている ≈の意味より強く)証明せよ55 .
✸