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部分領域 − 対応する力学系の不変領域.

ドキュメント内 数理物理学 - Random walk と self-avoiding walk (ページ 116-119)

E くりこみ群の視点から見た Sierpi´ nski carpet における等方性の回復.

F.3 部分領域 − 対応する力学系の不変領域.

そこで,2変数への拡張に際して,第一象限の中に部分領域を考えて,そこでの臨界点の唯一性を論じる.

1変数の場合に問題が極めて簡単だったことを生かすべく,2つ目の変数y1つ目の変数x に比べて小 さいというイメージ で取り扱う.このため,部分閉領域として

D={(x, y)R2+\ {(0,0)} |yx2} をとる.

41 もちろん,この選択は必然ではない.1次元に近いというイメージを重視したことと,(離散)力学系 における臨界点の分岐が複雑微妙な問題であることに鑑みて,強い目の条件をおいた.

さらに,wの臨界点はW の勾配写像

gradW = (Wx, Wy) : R2+R2+

が定義する力学系の固定点である,という視点から,D がgradW の不変領域であるようなW を考察の 対象とする.

以上をまとめて,次の問題を設定する.

問題1 (19981031).  実2次元平面の第一象限(境界含む)R2+ の中に D={(x, y)R2+\ {(0,0)} |yx2}

をとり,次の二つの性質を持つ(恒等的にゼロではない)2変数多項式W を考える:

(i) W は(xy の合計の)次数が3 以上の項からなる多項式で,各項の係数は正である.

(ii) W の勾配写像gradW = (Wx, Wy)に対して,gradW(D)⊂ {(x, y)∈D |y=x2}である(WxWx偏導関数).

このとき,W に負係数の2次の項を加えた多項式

w(x, y) =W(x, y)(x2+y2)/2

の臨界点(gradw(x, y) = 0を満たす点)が Dの中にただ一つ存在するための十分広く,かつ,容易に検証

できる自然な十分条件を求めよ.

42 W に対する二つ目の条件は D がgradW の不変領域であることを意味する.(もう少し強く,放物 線 y=x2 上の点がD の内部に移ることも意味する.これは,この先いろんな結果を得る場合に「等号の 場合を除く」煩わしさが起こる可能性を前もって避けるため.)

F.4 1 変数に近い特別な状況 − 臨界点が x 軸上にある場合.

W(x, y)がy について1次の項を含まないとき,ある一つの正数xに対してx軸上の点(x,0) がw の臨 界点になるので,このとき問題1D\ {(x,0)|x >0}wの臨界点がないための十分条件を求めるこ とになる.

このとき0< z1,x >0,に対してz(Wx2/Wy)(x, x2z)>1が成り立てば,y/x2D\{(x,0)} |x >0} において,gradW が定義する力学系(Xn, Yn)のリャプノフ関数になる.即ち,(Xn, Yn)がD\ {(x,0)| x >0}にあるとき,Yn+1/Xn+12 < Yn/Xn2 が成り立つ.従って特に,wの臨界点がないための十分条件に なる.

以上に基づいて次の問題を考える.

問題2

F(x, y) = (y/x2)(Wx2/Wy)(x, y)

とおく.問題1の設定に加えてW(x, y)が yについて1次の項を含まないとき,0< yx2 ,x >0,に対 してF(x, y)>1 が成り立つための,「良い」十分条件を求めよ.

Wy への依存が単項式のときは問題2は次の意味で解決する.

命題 105 ((19981226)) 問題2においてWyへの依存が単項式のときを考える,即ち,W が問題1の 設定を満たし,かつ,正係数1変数多項式f と定数b >0,k0,k2を用いてW(x, y) =f(x) +bxkyk と書けるとする.f の項のうち最低次数を L,最高次数をH とおく.

このとき,次のいずれかが成り立てば F(x, y) のD における最小値は D の境界(無限遠を含む)で とる.

(i) k= 0または k = 2,

(ii) L4β/(k+ 2) またはH 4β/(k+ 2)(ここで β=k+ (k/2) とおいた),

(iii) 以上以外の場合で,xf(x)/f(x) = 4β/(k + 2)1 の(唯一の)正根を x = x0 とするとき,

f(x0)x102βbk(k+ 2)/(k2).

43 (i) 命題105の十分条件は,2次元領域D の内部で2変数関数W の詳細な性質を調べる必要が ないことに注意.即ち調べるべきことはいずれも高々1変数関数の問題に帰着している.そしてD の 境界においてF(x, y)>1ならばy/x2 はリャプノフ関数になって,D の内部ではgradW の固定点 (wの臨界点)がないことを保証する.この意味で w の臨界点のD における唯一性の「容易に検証 可能な」十分条件になる.

(ii) 問題1の設定の下では F(x, x2)>1 なので,D の境界のうち y=x2 のところでは自動的に望むべ き性質が成り立つ.

(iii) 命題105で陽にリストされている条件は問題の量が D の内部で最小にならないことを保証するだけ

なので,D の境界におけるチェックが必要.特に「xの大きいところ」を調べる必要がある.(W の 最高次付近を調べればいいので,検証可能性は保たれている.)

例えば,W(x, y) =x3/3 + 4x2y3/3 は命題105の仮定のうちH 4β/(k+ 2) を満たすが,D にお ける w(x, y) =W(x, y)(x2+y2)/2 の臨界点は,(1,0),(0.939352,0.283324),(0.734382,0.46355) の3つ.

実際,この例では,F(x, y) = (1 + 8y3/(3x))2/(4y)1/(4y), x→ ∞,となるので,y >1/4のとき xの大きいところで左辺が 1 より小さくなり,y/x2D でリャプノフ関数ではないことが分かる.

命題105の証明. まず,問題1 の

W(x, y) =f(x) +bxkyk(b >0, k0, k2)

に対する仮定から, L3 (即ち,f の各項は全て3以上)かつk+k3となることに注意.

R(x, z) =F(x, x2z)1/2=z1/2(Wx/Wy1/2)(x, x2z) = (bk)1/2(f(x)xβ+1z1k/2+bkxβz1+k/2), とおく.ここでβ=k+ (k/2).

もしk= 0 またはk = 2ならば R(x, z)はz に関して単調だから,F(x, y) =R(x, y/x2)2D の境 界z= 0またはz= 1で最大,最小となる.よって,最初からk >1 かつk>2とおいてよい.

g(x) =xf(x)/f(x)とおく.R(x, z)が極値を(x, z)でとるとすると,

Rx(x, z) =Rz(x, z) = 0,

となる.ここでRx偏微分をRx などと書いた.計算すると,極値条件は g(x) = 4β

k+ 2 1, bkzk =k2

k+ 2f(x)x12β, となる.

f が単項式f(x) =axm(a >0,m >2)ならば,g(x) = 4β

k+ 2 1 からL=H =m= 4β/(k+ 2)を 得るので,Rの極値はx→ ∞にあるので,F の極値はD の境界にある.

これより,f は2項以上よりなるとしてよいので,

f(x) =aLxL+...+aHxH (aLaH >0, H > L3)

とおく.計算するとg(x)>0,x >0,を得る75 ので,L−1 =g(0+)< g(x)< g() =H−1,x >0.特 に,L4β/(k+ 2)またはH 4β/(k+ 2)ならばg(x) = 4β/(k+ 2)1は x >0に解はないので,F の極値はDの内部ではとらない.よって, H >4β/(k+ 2)> Lと仮定してよい.

このとき,x0xf(x)/f(x) =g(x) = 4β/(k+ 2)1 の唯一の正根とし,極値を(x0, z0)とおくと,

Rの極値条件から,

bkzk0 = (k2)f(x0)x102β/(k+ 2).

よって,この等式の右辺がbk 以上ならば,Rの極値はD の内部では取らない.よって主張の場合は全て

尽くされた.

44 境界でのF(x, y)>1のチェックは(特に大きなxで)必要である.例えば,W(x, y) =x3/3+4x2y3/3 は,H 4β/(k+ 2)だから,命題105の仮定を満たす.しかし,対応する w=W(x, y)(x2+y2)/2 は D の内部に3個の臨界点がある:(1,0),(0.939352,0.283324),(0.734382,0.46355). 実際,

F(x, y) = (1 + 8y3/(3x))2/(4y)1/(4y), x→ ∞,

なのでy >1/4ならばF(x, y)はxが十分大きければ1 未満になる.よってy/x2Dの内部でLyapnov

関数にならない.

Wy への依存が単項式でない場合は,まず次のことがわかる.

命題 106 ((19981018)) 以下のいずれかの場合,問題1の設定の下で無条件(余分な条件なし)に結論

D における wの臨界点の唯一性)が成立する:

(i) W が 同次式のとき,

(ii) W が4次以下の項よりなる多項式のとき.

証明. (i) 例えば,3次の同次式

W(x, y;a, b, c, d) =ax3+bx2y+cxy2+dy3

の場合を考える.このとき問題1の仮定はb=c= 0,a, d0, 3a2dに同値.他方,b=c= 0かつ a, d0ならば,w(x, y) =ax3+dy3(x2+y2)/2の第1象限における臨界点は(0,0), (0,1/(3d)), (1/(3a),0), (1/(3a),1/(3d)).よって,wD における臨界点は(1/(3a),0)ただ一つである.W は 同次式ならば何次であっても同様の証明が成り立つ.

(ii)

p(x, z) =Wx(x, x2z)/x2, q(x, z) =Wy(x, x2z)/(x4z), とおく76.ここで,Wx,WyW の偏導関数.

全次数 4以下の多項式の一般形は

W(x, y) =ax3+bx2y+cxy2+dy3+ex4+f x3y+gx2y2+hxy3+ky4. 問題1の仮定からb=c=f = 0 なので,特にy次数1の項はない.計算すると,

p(x, z) = 3a+ 4ex+ 2gx3z2+hx4z3, q(x, z) = 2g+ 3dz+ 3hxz+ 4kx2z2.

751自由度のスピン系(!)Griffithsの不等式を使う.

76落合啓之氏の変数!

pの各項について,x次数はz次数以上であり,q の各項について,x次数は z次数以下であること に注意.これから,もし 0< z <1 かつx >0 ならば

p(x, z)2p(xz,1)2q(xz,1)q(x, z).

等号が全部成り立つためには a から k までの全ての係数が 0 でなければならず, W が恒等的 に 0 になってしまう.よって p(x, z)2 > q(x, z) となり,F(x, y) = (y/x2)(Wx2/Wy)(x, y) > 1 が D\ {(x,0)|x >0} で成り立つ.即ち,主張が成り立つ.

45 (i) 実際は W が 同次式のとき,問題1の設定の下ではy を含む項は単項式になって,命題105 に含まれる.例えば,3次同次式

W(x, y;a, b, c, d) =ax3+bx2y+cxy2+dy3

の場合,問題1の条件を満たすのは b = c = 0, a, d 0, かつ 3a2 > d の場合だが,このとき w(x, y) = W(x, y)(x2+y2)/2 の第一象限における臨界点は(0,0),(0,1/(3d)), (1/(3a),1/(3d)),

(1/(3a),0)となり,D にあるのは最後の一つだけとなる.

(ii) W が4次以下の場合は,問題1の条件下で y について1次の項は許されない.従って単項式でない 問題2の十分条件の例になっている.

なお,この場合の証明では,あらわな計算は必要ないが,一般的にやっても5次以上の多項式には適 用できない.

ドキュメント内 数理物理学 - Random walk と self-avoiding walk (ページ 116-119)