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逆関数定理とその証明

ドキュメント内 数学解析 (ページ 97-101)

6 Weierstrass の最大値定理 (1 次元版 )

11.4 逆関数定理とその証明

定理 11.4 (逆関数定理, the inverse function theorem) Ω は Rn の開集合、f: Ω RnC1 級、a Ω, detf(a) ̸= 0 ならば、(∃U: a を含む開集合) (∃V: b = f(a) を含 む開集合) fe= f|U: U Vfe(x) = f(x) (x U) で定めると feは全単射で、逆関数 fe1: V →UC1 級である。

特にfe:U →V は全単射で、feと fe1 は連続である。このような写像を同相写像(homeo- morphism) と呼ぶ。

証明の方法にはいくつかあり、解析学の常套手段である「逐次近似法」を使う証明は非常に 魅力的だが、準備に手間がかかるので、ここでは Weierstrass の最大値定理に持ち込む方法を 採用する。

おおまかな方針の説明: xa に十分近いとき(δ を小さな正数として |x−a| < δ で考 えて)、f(x) ≒ f(a)(x−a) +f(a) であるから、f は1次関数で十分良く近似される。特に

f(a) = I の場合を証明すれば良いことが分かるので、f(x)≒x+c となっている。与えられ

y に対して y =f(x)を満たす x を求めるため、x7→ |y−f(x)|2 の最小値を考える。

証明

1 A := f(a), g(y) := A1y, ˜f :=g ◦f とおくと、( f˜

)

(a) = g(f(a))f(a) = A1A = I (I は単位行列)となる。f˜について定理を証明すれば、f =g1◦f˜について示せたことにな る。そこで以下 f(a) = I と仮定として証明すれば十分である。

2 (∃δ >0)K :=B(a;δ)とおくとき、K Ωかつ (a) (∀x∈K) |f(x)−f(a)|< 1

2. (b) (∀x∈K) detf(x)̸= 0.

(c) (∀x∈K\ {a}) f(x)̸=f(a).

主張 (a), (b), (c) の証明 f の連続性により、x 7→ |f(x)−f(a)| は連続で、x = a の とき0 であるから、

(∃δ1 >0)(∀x∈B(a;δ1))|f(x)−f(a)|< 1 2. 同様に x7→detf(x) は連続で、detf(a) = 1̸= 0 であるから、

(∃δ2 >0)(∀x∈B(a;δ2)) detf(x)̸= 0.

(c) については、まず fa で微分可能であることから

xlima

|f(x)−f(a)−f(a)(x−a)|

|x−a| = 0.

ゆえに (∃δ3 >0)

() (∀x: 0<|x−a|< δ3) |f(x)−f(a)−f(a)(x−a)|

|x−a| < 1 2.

これから 0<|x−a| < δ3 ならば f(x)̸=f(a) が成り立つ。実際、もしも f(x) =f(a) と すると |f(x)−f(a)−f(a)(x−a)|

|x−a| = |0−I(x−a)|

|x−a| = |x−a|

|x−a| = 1

となり () に矛盾する。δ := min1, δ2, δ3} とおけば δ >0で、(a), (b), (c) が成り立つ。

3 (d) (∀x1 ∈K) (∀x2 ∈K) |x1−x2| ≤2|f(x1)−f(x2)|.

これから fK に制限したものが単射であることはすぐ分かるし(x1, x2 K, f(x1) = f(x2) ならば x1 =x2 が成り立つ)、後述の逆写像が連続であることの証明の鍵となる。

主張 (d) の証明 g(x) :=f(x)−x (x∈K) とおくと

g(x) = f(x)−I =f(x)−f(a) であるから、(a) を用いて

maxxK |g(x)| ≤ 1 2. g の変化を g を用いて評価する。

g(x1)−g(x2) = [g(x2+t(x1−x2))]t=1t=0 =

1 0

d

dtg(x2 +t(x1−x2))dt

=

1

0

g(x2+t(x1−x2))(x1−x2)dt であるから

|g(x1)−g(x2)| ≤

1 0

|g(x2+t(x1−x2))| |x1−x2|dt

max

xK |g(x)| |x1−x2|

1

2|x1−x2|. すなわち

|(f(x1)−f(x2))(x1−x2)| ≤ 1

2|x1−x2|. ゆえに (不等式 |a| − |b| ≤ |a−b| を用いて)

|x1−x2| − |f(x1)−f(x2)| ≤ 1

2|x1−x2|. 移項して両辺を 2倍すれば、(d) を得る。

4 S :=閉球 K の境界={x∈Rn| |x−a|=δ}はRnの有界閉集合であり、x7→ |f(x)−f(a)| は連続であるから、d:= min

yS |f(y)−f(a)| が存在する。(c) より |f(x)−f(a)|>0 (x∈S) であるから、d >0. V :=B(f(a);d/2)とおくと、

(e) y∈V ∧x∈S ⇒ |y−f(a)|<|y−f(x)|.

(図を描くとほぼ明らかである。Vf(a) を中心とする半径 d/2 の開球である。f(x) は

f(S) 上にあるが、それは f(a)を中心とする半径 d の開球の補集合に含まれる。) 主張 (e) の証明 実際、まず V の定義から

|y−f(a)|< d 2. 一方x∈S であることと、d の定義から

|f(x)−f(a)| ≥min

yS |f(y)−f(a)|=d

であるから

|y−f(x)|=|y−f(a) +f(a)−f(x)| ≥ |f(x)−f(a)| − |y−f(a)|

> d−d 2 = d

2 >|y−f(a)|. 5 (f) (∀y∈V) (!x∈K \S=B(a;δ)) f(x) = y.

主張 (f ) の証明 任意の y∈V を固定して、関数 h: K Rを h(x) := |y−f(x)|2 (y−f(x), y−f(x))

で定義する。(これが 0になる点の存在を示すわけだが、それは最小値を与える点であるこ とに注目しよう。) このh は Rn の有界閉集合K 上の連続関数であるから、最小値を取る 点 x∈K が存在する。ところで(e) より

x∈S ⇒h(a)< h(x)

であるから、S 上の点が h の最小値を与えることはない。ゆえにx̸∈S. ゆえにh は内点 x で最小値を取ることになり、∇h(x) = 0.

一般に「F: ΩRnが微分可能ならば、h(x) := |F(x)|2 とおくと、∇h(x) = 2F(x)TF(x)」 となるので、∇h(x) = f(x)T(f(x)−y). (b)よりf(x)は正則行列であるからf(x)−y= 0.

すなわち f(x) = y. xの一意性は (d) から分かる。

6 ここまでで分かったことをまとめる。δ >0, d >0があって、

K =B(a;δ), S ={x∈Rn| |x−a|=δ}, V =B(f(a);d/2) に対して

再掲(d) (∀x1 ∈K) (∀x2 ∈K) |x1−x2| ≤2|f(x1)−f(x2)|. 再掲(f) (∀y∈V) (!x∈K\S) y=f(x).

このとき

B :=K\S=B(a;δ), U :=B ∩f1(V) とおくと、a∈U かつU は Rn の開集合である。実際、

a B(a;δ) = B, また f(a) B(f(a);d/2) = V であるから a f1(V). ゆえに a∈U.

B は開球であるから開集合である。

後は f1(V) が開集合であることを示せば、U は2つの開集合の共通部分として開集 合である。その証明は、本質的に命題 8.5 (p. 75) の証明と同じである。b f1(V) とすると、f(b) V であり、V は開集合であるから、(∃ε > 0) B(f(b);ε) V. f が連続であることから、(∃δ > 0) (∀x Ω: |x−b| < δ) |f(x)−f(b)| < ε. ゆえに f(x)∈V. x∈f1(V). これは f1(V)が Rn の開集合であることを示している。

このとき V ⊂f(B)に注意すると

f(U) = f(B∩f1(V))⊂f(B)∩f(f1(V))⊂f(B)∩V =V.

そこでfe:=f|U: U →Vfe(x) =f(x) (x∈U)で定めることが出来て、feは全単射とな り、逆写像 fe1: V →U が存在する。

7 fe1 は連続である。実際 (d) よりy1, y2 ∈V とするとき () ef1(y1)−fe1(y2)2|y1−y2| であるから。

8 ∀x∈U に対して、fe1y:=f(x) で微分可能で (fe1)(y) = (f(x))1.

主張の証明 x0 ∈U に対して、A:=f(x0)とおく。(b) より det= 0 であるから、Aの 逆行列が存在する。微分可能性の定義から

(12) f(x)−f(x0) = A(x−x0) +ε(x) によって ε(x) を定めるとき

() lim

xx0

(x)|

|x−x0| = 0.

さて ∀y∈V に対して x:=fe1(y)とおくと x∈U であり、f(x) = y. それで(12) の両辺 に A1 をかけ、y0, y で書き直すと

A1(y−y0) = fe1(y)−fe1(y0) +A1ε(fe1(y)).

ゆえに

fe1(y)−fe1(y0) =A1(y−y0)−A1ε(fe1(y)).

そこで次のことを示せばよい。

ylimy0

A1ε(fe1(y))

|y−y0| = 0.

これを示すには

ylimy0

ε(fe1(y))

|y−y0| = 0 を示せばよい。

ε(fe1(y))

|y−y0| =

ε(fe1(y)) ef1(y)−fe1(y0) ·

ef1(y)−fe1(y0))

|y−y0| .

fe1 の連続性より、y y0 のとき fe1(y) fe1(y0) = x0. ゆえに () により右辺の第 1 因子0. 一方第2 因子は、()より 2で押さえられる。

9 fe1C1級であること。fe1 のヤコビ行列 (fe1)(y) は f(x) の逆行列であり、成分は Cramerの公式から、分母が detf(x),分子は ∂fi

∂xj(x) の多項式として表現できる。これは y の関数として見て連続である。ゆえに fe1C1級である。

12 陰関数定理

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