6 Weierstrass の最大値定理 (1 次元版 )
9.5 一様連続性
定義 9.10 Ω⊂Rn, f: Ω→Rm とする。f が Ω で一様連続 (uniformly continuous)であ るとは、
(∀ε >0)(∃δ >0)(∀x0 ∈Ω)(∀x1 ∈Ω :|x1 −x0|< δ) |f(x1)−f(x0)|< ε が成り立つことをいう。
fがΩで連続であるとは、
(∀x0 ∈K)(∀ε >0)(∃δ >0)(∀x1 ∈K :|x1−x0|< δ) |f(x1)−f(x0)|< ε
ということであるから、一様連続性は連続性よりも強い条件である。後者はδが εと aによっ て決まるが、前者は δ が ε のみによって決まる。
例 9.11 (C1級の関数で考えてみる) f: R→R,f(x) =x2 (x∈R),K := [a, b]とする。
M := max
x∈[a,b]|f′(x)|= max
x∈[a,b]|2x|= 2 max{|a|,|b|}
とおくと、x0, x1 ∈[a, b] に対して
|f(x1)−f(x0)| ≤ sup
θ∈(0,1)
|f′(x0+θ(x1−x0))| |x1−x0| ≤M|x1−x0| が成り立つ。ゆえに任意の正の数 ε に対して、δ := Mε+1 とおくと、
(∀x0, x1 ∈[a, b] :|x1−x0|< δ) |f(x1)−f(x0)|< M δ ≤ε が成り立つ。ゆえにf は K = [a, b] で 一様連続である。
しかしf は R で一様連続ではない。maxx∈R|f′(x)| が存在しないので、上の議論が成立し ないことに注意しよう。
問 96. 例9.11の fはRで一様連続でないことを示せ。
定理 9.12 K は Rn の有界閉集合、f: K →Rm は連続とするとき、f は K で一様連続 である。
証明 背理法を用いる。f が K で一様連続でないと仮定すると、ある正の数 ε が存在して (7) (∀δ >0)(∃x∈K)(∃y∈K :|x−y|< δ) |f(x)−f(y)| ≥ε
が成り立つ。n= 1,2,3, . . . に対して,δ:= n1 とすると xn∈K, yn∈K, |xn−yn|< 1
n, |f(xn)−f(yn)| ≥ε
を満たす xn, yn 取れる。こうして点列 {xn}, {yn} を作ったとき、K の点列コンパクト性に より、{xn}の収束部分列 {xnk}k∈N が存在する。すなわち
(∃a ∈K) lim
k→∞xnk =a.
このとき
|ynk−a|=|(ynk −xnk)−(a−xnk)| ≤ |ynk−xnk|+|(a−xnk| ≤ 1
nk+|xnk −a| →0 (k → ∞).
f は a で連続であるから、
f(xnk)→f(a), f(ynk)→f(a).
ゆえに
|f(xnk)−f(ynk)| ≥ε で k → ∞ として
0 =|f(a)−f(a)| ≥ε(>0).
これは矛盾である。ゆえに f は K で一様連続である。
例 9.13 K = (0,1],f(x) = 1x (x∈K) とするとき、f: K →R は一様連続ではない。任意の δ >0 に対して,
δ′ := min {
δ,1 2
}
, x= δ′
2, a= δ′ 4 とおくと、
|x−a|= δ
4 < δ, |f(x)−f(a)|= 2
δ′ − 4 δ′
= 2 δ′ ≥1.
これは ε= 1 として (7)が成立していることを意味する。ゆえに f は一様連続ではない。
10 積分
10.1 はじめに
積分の計算の話は1年次の微積分で学んだはずであるが、理論も重要である。
色々な話があるが、ここではRiemann積分の基礎を説明する。具体的には、積分の定義と、
「[a, b]上の連続関数 f は積分可能である」ことの証明と、多次元への一般化である。
それ以外に重要なことに、広義積分、Lebesgue 積分があるが、前者については「画像処理 とフーリエ変換」、後者については「応用測度論」で説明を聴くことが出来る。
高校数学では、次のように定積分を定義した。関数f の原始関数 F (F′ =f を満たす関数 F) をとり、
∫ b a
f(x)dx:= [F(x)]ba=F(b)−F(a) とおき、これを f の [a, b] における積分と呼ぶ。
以上の定義で、十分豊富な議論が出来たが、「原始関数はいつでも存在するのか、何か条件 が必要か」、「原始関数が存在するとして、どうやって見つけるか」という問にどう答えたら 良いだろう。
高校数学では、ほとんどの場合、原始関数がすぐ分かる場合だけを扱った(事前に色々な関 数の導関数を調べておいて、その知識を逆引きして用いた)。
実際には、原始関数が分からないことは多い。次の各積分は、被積分関数の原始関数が初等 関数で求まらない。
∫ 1 0
xα−1(1−x)β−1 dx (α, β >1, 非整数の場合も考える),
∫ x
0
sint t dt,
∫ x 0
e−t2 dt,
∫ 1
0
√ dx
(1−x2)(1−k2x2).
(ここでは詳しいことは説明しないが、どれも名前がついている重要な積分である。)
そこで、原始関数を使わないで積分を定義することになる。アイディアは簡単で、座標軸と グラフで挟まれた領域の面積として定義する。高校数学では、積分を原始関数を用いて定義し て、後から、それが面積を表すことを導くわけだが、それとは逆に面積を用いて定義して、後 からそれと原始関数を結びつけるのである。
(歴史的には、積分は面積を用いて定義されたと言える。つまり、高校数学流は由緒正しい ものではないことになる。)
元々、面積・体積については、非常に古くから研究されていて、すでに古代ギリシャ(紀元 前!) のエウドクソス (BC 408〜BC 355, 現トルコのクニドス(Cnidus)に生まれ、クニドス にて没する)、アルキメデス (シュラクサイの Archimedes, BC 287頃–BC 212, 現イタリアの
Syracuse に生まれ、Syracuse にて没する)の段階で、高度な議論がなされていた。
ニュートン、ライプニッツの時代に、「微分積分学の基本定理」と呼ばれる事実が発見され た。それは言葉で言うと、微分と積分が互いの逆演算であることを意味する。
(1) (積分してから微分)
d dx
∫ x
a
f(t)dt=f(x).
(2) (微分してから積分) ∫ b a
F′(x)dx= [F(x)]ba.
高校数学はこの(2) の事実を利用して、原始関数で積分を定義した、ということになる。