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区間縮小法

ドキュメント内 数学解析 (ページ 55-58)

3.3 “ 多項式関数 ” 、有理関数は連続である

5.1 区間縮小法

極限が存在することを示すための、有名な区間縮小法を紹介する。まず図形的なイメージを 頭に浮かべやすい形で述べる。

定理 5.1 (区間縮小法の原理) {In}nN を縮小するR の閉区間列とする。すなわち任意の n∈N に対して In は R の閉区間で

I1 ⊃I2 ⊃ · · · ⊃In⊃In+1 ⊃ · · · を満たすとする。このとき ∩

nN

In̸= が成り立つ。[an, bn] := In とおくとき、lim

n→∞(bn−an) = 0 が成り立つならば、

(∃c∈R) lim

n→∞an= lim

n→∞bn=c (そして ∩

nN

In ={c}).

言葉で表すと「縮小する閉区間の列の共通部分は空でない,幅が 0 に収束するならば共通 部分は1点のみからなる」。

念のため復習: ∩

nN

In ={x|(∀n N)x∈In}.

n=1

In とも書く。

実際に証明をするには、次のように述べた方がやりやすいと思われる。

26この講義ではRnの有界閉集合のこと。

命題 5.2 (書き直し) {an}nN は単調増加数列、{bn}nN は単調減少数列で (∀n∈N) an< bn

を満たすならば、次の(1), (2)が成り立つ。

(1) {an}nN{bn}nN は収束列である。そして A:= lim

n→∞an, B := lim

n→∞bn とおくとき、

A≤B, (∀n N) an ≤A≤B ≤bn. (2) lim

n→∞(bn−an) = 0 ならば、lim

n→∞an= lim

n→∞bn.

(証明に用いるのは、定理 2.15 と、命題 2.11 (の系) くらいである。) 証明

(1) ∀n N に対して an ≤bn ≤b1 であるから、{an}nN は上界 b1 を持つので上に有界であ り、単調増加であるから、{an}nN は収束し、極限は上限に等しい: A= sup{an|n N}. 同様に、∀n N に対して bn an a1 であるから、{bn}nN は下界 a1 を持つので 下に有界であり、単調減少であるから、{bn}nN は収束し、極限は下界に等しい: B = inf{bn |n∈N}.

任意のn Nに対して an ≤bn であるから (極限でも順序は保たれ) A = lim

n→∞an lim

n→∞bn =B.

また

an sup{an |n∈N}=A, B = inf{bn|n N} ≤bn. (2) lim

n→∞(bn−an) = 0 と仮定すると B−A= lim

n→∞bn lim

n→∞an = lim

n→∞(bn−an) = 0 であるから A=B.

区間の記号 [A, B] は、普通 A < B の場合にのみ用いるが、次の証明では、A =B の場合 も [A, B] ={A} という意味で使うと約束する。

定理5.1の証明 In= [an, bn] で {an},{bn} を定めると、命題5.2 の仮定が満たされる。

A:= lim

n→∞an, B := lim

n→∞bn とおくと、∀n∈N に対して an≤A≤B ≤bn であるから、

[A, B][an, bn] =In. ゆえに [A, B]

nN

In である。

一方、x

nN

In とするとき、任意の n N に対して、x In であるから、an ≤x bn. n → ∞として、A ≤x≤B. すなわち x∈[A, B]. ゆえに ∩

nN

In[A, B].

ゆえに ∩

nN

In= [A, B]. 特に

n=1

In̸=. A=B ならば c:=A=B とおくと、lim

n→∞an=A=c, lim

n→∞bn =B =c,

nN

In={c}. 余談 5.1 上の証明では用いなかったが

(∀m, n∈N) an < bm

が成り立つ。実際 n ≥m のときは、an < bn ≤bm. n < m のときは an ≤am < bm であるか ら、いずれの場合も an< bm.

65. 定理5.1 から、In が閉区間という条件を除くと、結論が成り立たないことを示せ。

(次の例は、後で中間値の定理を証明すれば、もっと簡単に議論できるので、授業では飛ば すと思う。)

5.3 (正数 pm 乗根 m

p の存在) p >0, m∈ N とするとき、pm 乗根が存在する、

すなわち

(∃x >0) xm =p が成り立つことを証明する27

a1 := 0, b1 :=

{

1 (p≤1) p (p >1) とおくと、0< a1 < b1, am1 < p ≤bm1 .

n N, 0< an< bn, amn < p < bmn とするとき、x:= an+bn

2 とおく。xm < p ならば

an+1 :=x, bn+1 :=bn, xm ≥p ならば

an+1 :=an, bn+1 :=p とおくと、

0< an≤an+1 < bn+1 ≤bn, amn+1 < p≤bmn+1, bn+1−an+1 = (bn−an)/2.

ゆえに数列 {an}, {bn}で、

0< a1 ≤a2 ≤ · · · , b1 ≥b2 ≥ · · · , (∀n N) an < bn∧amn < p ≤bmn,

nlim→∞(bn−an) = lim

n→∞

b1−a1 2n1 = 0

27後で、連続関数を定義して、中間値の定理を証明して、色々な方程式の解の存在を示すことになるが、f(x) =xm については、連続性に相当することが、命題2.7からすぐに導けるので、現時点で (連続性を定義することなし )m乗根 mpの存在証明が出来る。これは杉浦[2]に載っている例であるが、なかなか面白い。もちろん、中 間値の定理を知っていればその系になってしまうので、スキップしても問題はない。

を満たすものが作れる。区間縮小法の原理から (∃c∈R) lim

n→∞an = lim

n→∞bn=c.

このとき

cm = (

nlim→∞an )m

= lim

n→∞(amn)≤p, cm = (

nlim→∞bn )m

= lim

n→∞(bmn)≥p.

ゆえに

cm =p.

66. 自然数m と正数p, εを入力したとき、例5.3 のa1, b1,a2,b2, a3,b3,· · ·bn−an < ε となるまで計算するプログラムを作成せよ(ε は「要求精度」で、106 や 1015 のような “小 さい”数を入力すると m

p の近似値が高精度で求まる)。

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