ガスクロマトグラフによる密閉空間内のにおい成分測定方法(PDF)
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(2) JOURNAL OF POLYTECHNIC SCIENCE VOL. 36, NO.3 2019 し,固有の時間において,カラムを通過する物質は排出. 2.3.2.. 吸着剤を用いたサンプリング. される.投入から排出されるまでの時間は保持時間(リ. アクリル箱内のガスサンプリングする際に,目的成分. テンションタイム)と言われる.また炭化水素のうちア. を熱により脱着することができる吸着・脱離剤(信和化. ルカンについては,どのような装置においても,炭素数. 工社製 Needlex,有機溶剤用,以降,吸着剤と称す)を用. の増加に対し,カラムが一定昇温をする条件においては. いた.ルアーロック式横穴針(内径:0.5mm,外径:0.7mm,. 比例,恒温条件においては指数関数的な保持時間となる. 長さ:85mm)の内部に,揮発性有機化合物吸着材が固定. ことが知られている.これらを”ものさし”として,ある. された構造である.使用前には,ガスクロマトグラフの. 物質の保持時間を規格化した値は保持指標(リテンショ. 注入口を使って,吸着剤を 100kPa で 1 分間前処理を行. ンインデックス)と言われ,文献やカタログにデータと. い,吸着ガスを脱離させた.ガス採取器と吸着剤を接続. して記載されている.. し,試験環境下で 100mL のサンプリングを行った(図 4. ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC-2014),キャリ. 参照) .その後,窒素 1mL を充填したシリンジに吸着剤. アガスについては純窒素(G3),検出器については炭化水. を付け替え,ガスクロマトグラフ注入口で 8 秒加熱し吸. 素の検出に優れる FID(水素炎イオン化型検出器,280℃. 着剤から脱離をさせた.シリンジ内の窒素ガス 1mL を使. に設定)を用いた.結果として得られるクロマトグラム. ってガスクロマトグラフに注入した(図 5 参照) .この一. の縦軸については,検出器の出力電圧[mV]となる.カラ. 連の操作により,大気中の濃度から約 100 倍の濃縮を可. ムについては,キャピラリーカラム(膜厚 0.25μm,内径. 能とした.. 0.25mm,長さ 30m)を用い,対象となる物質と同様にフェ. ガスタイト シリンジ. ニル基を持つ微極性カラム(Phenomenex 社製 DB-5 5% フェニル-95%-ジメチルポリシロキサン)を選定した.. セプタム. 保持指標から保持時間を算出するために,ものさしと なる保持時間の測定には,直鎖の飽和炭化水素の混合液,. バイアル瓶 (容積10mL). 炭化水素混合試料(GL サイエンス製 Cat.No.1021-58321, 0.6μL 液体をシリンジで注入)を用いた.ヘキサン(炭. 基準臭液. 素数 c=6)を溶媒として,c=9(ノナン)から c=40(テト ラコンタン)までを含む.また c=10(デカン) ,c=20(エ 図 3 ヘッドスペースにおけるサンプリング. イコサン)等は他成分より高い濃度となっている. カラムオーブンは恒温条件,及び昇温条件とした.. 吸着剤 (針内部). 恒温条件においては,気化室温度 250℃,カラム温度. ガス採取器 (100mL). 150℃とし,試料導入法としてスプリット分析(スプリッ ト比:80)とした.試料の大部分を排出して,一部分だ けカラムに導入する一般的な方法である.キャリアガス については線速度 15cm/min とした. 図 4 ガス採取器と吸着剤の外観. 昇温条件については,45℃から 240℃まで,昇温速度 10℃/min とし,サンプル時間 1 分間のスプリットレス分. 注入口. 析とした.スプリットレス分析については,一定時間(本. ガスタイト シリンジ. 実験では,サンプリング時間の 1 分間) ,ベントを閉じ, その間に気化室(設定温度 280℃)で気化したガスは,カ ラム入口付近(初期温度 45℃)で濃縮される.スプリッ ト分析に比べ,スプリットレス分析は低濃度試料に用い られる方法であるが,カラムオーブンは昇温条件でなけ れば使用ができない.キャリアガスについては,線速度 20cm/min とした. (ガスクロマトグラフ上面). 2.3. サンプリング方法 2.3.1.. 図 5 ガスクロマトグラフへの注入. ヘッドスペースにおけるサンプリング. ヘッドスペースサンプリング時の器具外観を図 3 に示. 保持指標から保持時間の算出法. 3.. す.周囲温度は室温とし,10mL バイアル瓶にβ-フェニ ルエチルアルコールを含む基準臭液を数 mL 入れ,試料. 文献から得た保持指標を表 1 に示す[8].β-フェニル. 上部の気体をガスタイトシリンジで 1mL サンプリング した.シリンジの針はセプタムを通すことから,バイア. エチルアルコールは,Undecan(C=12)と Dodecane. ル瓶を開けることなくサンプリングできる.この方法で. (C=11)の間となる.そこでβフェニルエチルアルコ. は,高濃度,かつ実状に近い揮発した物質を測定できる.. ールの保持時間の算出については,次の式を用いた[9].. - 18 -.
(3) 技能科学研究,36 巻,3 号 式(1)は恒温条件であり,式(2)は昇温条件である. 𝑇𝑇𝑇𝑇−log10 𝑇𝑇11 10 12 −log10 𝑇𝑇11. T −T. RI = 100 × N + 100 × T x −T11 12. 11. 5. 式(1). Output Voltage [mV]. log. RI = 100 × N + 100 × log 10 𝑇𝑇. 式(2). ここで,Undecane の保持時間を T11[min],Dodecane. C10. 4 3. C6 C9. 2. C11 1. の保持時間を T12[min],N=11 とし,Tx[min]が目的(こ こではβ-フェニルエチルアルコール)の保持時間,RI. 0. 物質名称. 2. 4 6 Retention Time [min]. 8. 10. 0.5. 保持指標. 日本語表記 ヘキサン. 6. 600. Nonane. ノナン. 9. 900. Decane. デカン. 10. 1000. Undecane. ウンデカン. 11. 1100. Dodecan. ドデカン. 12. 1200. Tridecane. トリデカン. 13. 1300. Tetradecane. テトラデカン. 14. 1400. -. 1114.9. Phenethyl Alcohol βフェニルエチルアルコール. Output Voltage [mV]. Hexane. 4.. C13. 図 6 混合炭化水素試料に対する 恒温条件におけるクロマトグラム. 表 1 各物質における保持指標 炭素数. C12. 0. は目的の物質の保持指標(ここでは,1114.9)である.. 英語表記. 2019. 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0. 2. 4 6 Retention Time [min]. 8. 10. 図 7 ヘッドスペースサンプリングに対する 恒温条件におけるクロマトグラム. 実験結果および考察. 4.1. 恒温条件による評価. 予測された保持時間 10.14 min に対し,10.25 min におい. 炭化水素混合試料を恒温条件で評価した際のクロマト. てピークが現れた.10.25min の前後にピークは存在しな. グラムを図 6 に示す.溶媒である Hexane (C=6)のピーク. いことから,このピークがβフェニルエチルアルコール. が保持時間 4min 付近に大きく出る.そのあと,Nonane. であると考えられる.また図 6 と比較しても,高い検出. (C=9)から順にピークとして表れる.Undecane (C=11)の保. 感度を得られたことは,スプリットレス分析による効果. 持時間は 5.3 min,Dodecane (C=12)の保持時間は 6.3 min. と考えられる.. であった.式(1)より算出した,βフェニルエチルアルコ. アクリル箱内の大気をガスタイトシリンジで 1mL サ. ールの保持時間 Tx は 5.4min となった.. ンプリングし,昇温条件で評価したクロマトグラムを図. バイアル瓶内で揮発充満した試料から,ヘッドスペー. 10 に示す.吸着材を使用していない.そのため,スプリ. スによるサンプリングを行い,ガスクロマトグラフのカ. ットレス分析を行ったにもかかわらず,10.25min 付近に. ラムは恒温条件として測定を実施した.クロマトグラム. ピークは得られなかった.直近の 10.00min にピークが生. を図 7 に示す.予測された保持時間 5.4 min に対し,5.6. じているが,ヘッドスペース分析の結果から考えても,. min においてピークが生じた.前後に大きなピークが存. このピークはβフェニルエチルアルコールを示したピー. 在しないことから,このピークがβフェニルエチルアル. クではないと考えられる.. コールのピークであると考えられる.検出器からの出力. アクリル箱内の大気を,吸着剤を用いてサンプリング. 電圧が低いことから,5.4min から±1min 程度離れた場所. した結果を図 11 に示す.ヘッドスペース分析と同じ保持. に,他の物質のピークも現れたものと考えられる.. 時間である 10.25min において,他ピークと比較しても明 らかに高いピークが得られた.この結果により,アクリ. 4.2. 昇温条件による評価. ル箱内に揮発した,低濃度のβフェニルエチルアルコー. 炭化水素混合試料を昇温条件で評価したクロマトグラ. ルも評価することができることが示された.. ムを図 8 に示す.Undecane (C=11)の保持時間は 9.91 min,. 濃度として評価する場合は,濃度が分かる試料を準備. Dodecane (C=12)の保持時間は 11.45 min であった.この. する必要があるが,現在はそこまで至っていない.例え. 値を式(2)に代入すると,βフェニルエチルアルコールの. ば,濃度の分かるβフェニルエチルアルコール試薬をヘ. ピークは 10.14min に現れると予測される.. キサンに溶かし,その溶液をガスクロマトグラフに添加. バイアル瓶内で揮発充満した試料から,ヘッドスペー. することで,検量線をひくことができる.ピークに生じ. スによるサンプリングを行い,ガスクロマトグラフによ. る面積から濃度に換算することも可能となる.. り恒温条件で測定した.クロマトグラムを図 9 に示す.. - 19 -.
(4) JOURNAL OF POLYTECHNIC SCIENCE VOL. 36, NO.3 2019 600. Output Voltage [mV]. 500. おわりに. 5.. C10. 今回の方法により,βフェニルエチルアルコールを測. C11. 400 300. C12. C13 C14. 定でき,濃度の増減について評価が可能となった.ただ し濃度を値として評価するために,濃度の分かる試料を. C9. 200. 測定から検量線を求めることなど,今後検討を進める.. C6. 100. Keywords: Gas Chromatograph, Odor, Splitless Injection, Electrostatic Precipitator, Qualitative Analysis, Retention Index. 0 0. 5 10 Retention Time [min]. 15. 参考文献. 図 8 混合炭化水素試料に対する 昇温条件におけるクロマトグラム. [1]. 25(1980). 50. [2]. 矢内雅人編,においの分析・評価と最新脱臭/消臭技術実 務集,技術情報協会,東京,pp.3-15 (2008). 40. Output Voltage [mV]. エレセラ出版委員会編,セラミックセンサ,学献社,pp.17-. [3] 30. 環境省環境管理局,臭気指数ガイドライン,P.11,平成 13 年 3 月(2001). [4]. 20. 中川勝博,田中幸樹,宮川治彦,GC-MS を用いた異臭分 析について,におい・かおり環境学会誌,Vol.44,No.1,. 10. pp.28-37(2013) [5]. 0 0. 5 10 Retention Time [min]. 大川翔太郎,川田吉弘,清水洋隆,コロナ放電によるガス 状物質の除去に関する研究,PTU フォーラム 2018. 15. [6]. 大川翔太郎,川田吉弘,清水洋隆,正コロナ放電による気 中香り成分の除去に関する研究,2018 年度静電気学会春. 図 9 ヘッドスペースサンプリングにおける 昇温条件におけるクロマトグラム. 期講演会論文集,pp.65-68(2019) [7]. 7. 川田吉弘,大川翔太郎,清水洋隆,成形炭素電極を用いた 正コロナ放電によるにおい物質低減に関する研究, 静電. Output Voltage [mV]. 6. 気学会講演論文集 2019(第 43 回静電気学会全国大会),. 5. pp.145-148 (2019). 4. [8]. Frequently Reported Compounds of Plant Essential Oils,. 3. J.Phys.Chem.Ref. Data, Vol.40, 043101 (2011). 2. [9] ㈱日本分析化学会ガスクロマトグラフィー研究懇談会. 1. 編 “キャピラリ―ガスクロマトグラフィー”朝倉書店,. 0 0. 5 10 Retention Time [min]. pp.54-57 (1997). 15. 図 10 アクリル箱内大気のガスクロマトグラム (吸着剤を使用せず,直接シリンジでサンプリング). (原稿受付 2019/10/26,受理 2017/12/12). *川田 吉弘, 博士(工学) 職業能力開発総合大学校, 〒187-0035 東京都小平市小川 西町 2-32-1 email:[email protected] Yoshihiro Kawada, Polytechnic University, 2-32-1 Ogawa-NishiMachi, Kodaira, Tokyo 187-0035. 7 6 Output Voltage [mV]. V.I.Baushok, P.J.Linstrom, I.G.Zenkevich, Retention Indices for. 5 4. *大川 翔太郎, 広島職業能力開発促進センター, 〒730-0825 広島県広島市中区光南 5-2-65 Syoutarou Ookawa, Hiroshima Polytechnic Center, 5-2-65 Konan, Naka-ku, Hiroshima, 730-0825. 3 2 1 0 0. 5 10 Retention Time [min]. 15. *清水 洋隆, 博士(工学) 職業能力開発総合大学校, 〒187-0035 東京都小平市小川 西町 2-32-1 email:[email protected] Hirotaka Shimizu, Polytechnic University, 2-32-1 Ogawa-NishiMachi, Kodaira, Tokyo 187-0035. 図 11 アクリル箱内大気のガスクロマトグラム (吸着剤を使用して,サンプリング). - 20 -.
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