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トラニラストで改善した皮膚 肺サルコイドーシス 症例報告 皮下病変と肺内びまん性粒状影を呈し トラニラストで改善を得た サルコイドーシスの1例 濱田邦夫 1 大沼法友 1 大田光仁 2 要旨 症例は50歳代男性 両側膝伸側に疼痛を伴う皮下硬結が出現したため当院皮膚科を受診した 皮膚生検で非乾酪性肉芽

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日サ会誌 2013, 33(1) 〔症例報告〕 トラニラストで改善した皮膚・肺サルコイドーシス

皮下病変と肺内びまん性粒状影を呈し,トラニラストで改善を得た

サルコイドーシスの1例

濱田邦夫1),大沼法友1),大田光仁2)

Kunio Hamada1), Noritomo Onuma1), Mitsuhito Ota2)

【要旨】

症例は50歳代男性.両側膝伸側に疼痛を伴う皮下硬結が出現したため当院皮膚科を受診した.皮膚生検で非乾酪性肉芽 腫が認められ,胸部画像では両側肺門と縦隔リンパ節腫大および両肺野びまん性に粒状影を認めた.サルコイドーシスと 診断し経過観察をしたが,病状が進行したためトラニラスト(300 mg/日)単剤による治療を試みた.治療開始4ヵ月後 には皮下病変と肺病変の有意な改善を認め,現在も治療は継続中である.文献的考察を含めて報告する. [日サ会誌 2013; 33: 117-121] キーワード:サルコイドーシス,皮下病変,びまん性肺粒状影,トラニラスト

A Case of Sarcoidosis with Subcutaneous Lesions and Diffuse Pulmonary

Nodules Improved with Tranilast

Keywords: sarcoidosis, subcutaneous lesions, diffuse pulmonary nodules, tranilast

1)市立千歳市民病院 内科 2)同 皮膚科 著者連絡先:濱田邦夫(はまだ くにお) 〒066-8550 北海道千歳市北光2丁目1-1 市立千歳市民病院 内科 E-mail:kunio.hamada@city.chitose.hokkaido.jp

1)Division of Internal Medicine, Chitose City Hospital 2)Division of Dermatology, Chitose City Hospital

はじめに

トラニラスト(リザベン®)はもともと抗アレルギー薬 として,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,ケロイ ドなどに臨床応用されてきた.トラニラストについては, 皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン合成抑制, マクロ ファージからのTNF-αの遊離抑制,単球から多核巨細胞 の形成と類上皮細胞肉芽腫の形成抑制などが報告されて いる1, 2).皮膚科領域では,サルコイドーシス治療におけ るトラニラストの有効性について多くの報告がなされて いるが,そのほとんどが多剤併用療法であり,トラニラ スト単剤での治療成功例は必ずしも多くはない3–6).肺病 変を伴ったサルコイドーシス症例でのトラニラストによ る治療成功例の報告は少ない.重松らは両肺びまん性粒 状影と皮下型病変の双方がトラニラストとミノサイクリ ンの併用療法で改善した症例を,堀口らは両側肺門リン パ節腫脹と瘢痕浸潤型皮膚病変がトラニラストで改善し た8例を,宍倉らはびまん性肺病変と皮下病変がトラニ ラスト単剤で改善した症例を報告している7–9).今回,わ れわれは,宍倉らが報告したのと同様な病像を呈し,ト ラニラスト単剤治療が著効した症例を経験したので,文 献的考察を加えて報告する.

症例提示

●症例:50歳代男性 ●主訴:両膝周囲の皮下硬結と疼痛 ●既往歴:41歳時,頸椎ヘルニア手術.アレルギー歴: ハムスター ●家族歴:特記事項なし ●生活歴: 現喫煙,20歳〜 10本/日. 飲酒, ビール500 mL+焼酎500 mL/週6回.職業:倉庫管理,粉塵暴露な し. ●現病歴:2011年9月に両側膝関節上部の皮下に硬結が 出現,次第に増強して関節の屈曲時に疼痛を伴うように なった.同年10月に当院を初診,皮膚科および内科的精 査が開始された.初診時,呼吸器症状は認めず,また, 結核患者との接触歴もない. ●初診時現症: 身長167 cm, 体重51 kg, 体温 36.5℃, SpO2 97%(室内気),心雑音なし,呼吸音 清,両膝上部 と両外顆上に硬結と圧痛を認める(Figure 1). ●初診時検査所見:血算では異常値はみられず,血液生 化学では血清ACE活性値が32.3 IU/Lと高値を示した以外 には異常値を認めなかった.尿検査で異常を認めず.ツ ベルクリン反応は9×9mm(陰性),クォンティフェロ

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トラニラストで改善した皮膚・肺サルコイドーシス 〔症例報告〕 ンTBは陰性であった.心電図は正常範囲内であり,心臓 超音波検査および呼吸機能検査でも異常値は認められな かった. ●胸部正面単純X線写真,胸部CT(Figure 2a):両側 肺門および縦隔リンパ節の腫大および両肺野びまん性に 粒状影を認めた. ●全身ガリウムシンチグラフィー(Figure 3a):両肺野, 肺門および縦隔リンパ節,両側膝周囲に異常集積を認め た. ●気管支鏡検査:可視的には気管支粘膜に異常所見は認 めなかった.気管支肺胞洗浄液は回収率50%,細胞分画 では,マクロファージ 76.4%,リンパ球 22.0%,好中球 1.4%,好酸球 0.2%と喫煙者ながらリンパ球比率の増加が 認められ,CD4/CD8比は4.4と上昇を認めた.一般細菌, 抗酸菌ともに培養結果は陰性であった. ●皮膚組織検査および組織培養:皮下脂肪組織内に散在 する非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められた(Figure 4). 抗酸菌培養および抗酸菌PCR結果は陰性であった.また, 異物の存在も否定された. ●経過:上記検査結果からサルコイドーシスと診断した. 眼科的異常は認めなかった.ステロイド,メトトレキサー トなどの治療に対して本人が消極的であったため,当初 は無治療で経過観察とした.しかし,病状の改善がなく, 膝の屈曲障害が出始めたため,初診4ヵ月後からトラニ ラスト(300 mg/日)を開始した.治療開始2ヵ月頃から 皮下硬結の改善傾向が認められ,6ヵ月後には皮下病変 が著明に縮小し,膝の屈曲障害も消失した.胸部画像で はびまん性粒状影,縦隔および肺門リンパ節腫大の有意 な改善が認められた(Figure 2b, Figure 2c).また,ガ リウムシンチグラフィーですべての病変部位で集積の改 善が認められた(Figure 3b).血清ACE活性値は初診時 32.3 IU/L,治療開始時には41.6 IU/Lに上昇したが,治療 開始6ヵ月後には22.4 IU/Lと正常値になり,その後も低 下傾向が続いている(Figure 5). 2013年2月現在(本稿 作成時),トラニラスト治療は継続中であり,再燃傾向は 認められていない. a) b) c) Figure 1. 皮下病変の外観.左下肢(a)および足関節上部(b)と右下肢の膝関節部(c)に認め られた皮下硬結(点線で表示).

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日サ会誌 2013, 33(1) トラニラストで改善した皮膚・肺サルコイドーシス 〔症例報告〕 肺病変については,両側肺門リンパ節腫大(以下BHL) を伴った皮膚サルコイドーシス症例でのトラニラスト治 療有効例の報告が,堀口ら,国定らによってなされてい る8, 12).本症例と同様に肺内びまん性粒状影と皮下型病変 を呈する症例でのトラニラスト治療について,重松らは ミノサイクリン併用での有効例を報告し,宍倉らはトラ ニラスト単剤での有効例を報告した7, 9).注目すべきこと に,宍倉らの症例はトラニラスト治療を終了した後も再 発なく経過している.皮膚科領域でも,トラニラストに より皮膚病変が消失して治療を終了した後も,再発なく 経過している症例が報告されている.本症例も,重松ら や宍倉らの報告と同様にびまん性粒状影と皮下型病変を 呈し,トラニラスト単剤治療でいずれの病変も著明に改 善し,血清ACE活性値も有意に低下した. 皮下型病変でのトラニラスト治療報告が目立つ印象が あるが,その背景として,皮下型病変は真皮層や脂肪組 織内に類上皮細胞肉芽腫が形成されるため,ステロイド 外用では効果が得られず,内服治療に依存せざるをえな いという治療上の制限があるかもしれない.皮下型病変 が他の皮膚サルコイドーシス病変と組織学的に異なると いう報告はなく,むしろ,同一の病理像を呈している. したがって,本例のようなびまん性粒状影と皮下型病変 を呈するサルコイドーシスの病態が,サルコイドーシス として特殊な病態であるとは考えにくい.トラニラスト 治療でBHLが縮小したとの報告も複数あることから,す べてのサルコイドーシス病変についてある程度の有効性 が期待できるかもしれない. 実際のサルコイドーシス臨床現場では,トラニラスト は皮膚病変を呈している症例にのみ使用されてきた.今 後は皮膚病変の有無にかかわらずに,皮膚以外の臓器病 変に対する有効性についても検証される必要がある.び まん性粒状影以外の画像所見を呈する肺病変についての 検討も興味深いところである.一方,これまで皮膚病変 については治療無効例の報告も多数あることから,さま ざまな臓器病変について有効例と無効例の比較・検討も 今後の課題であろう. トラニラストはわが国で開発された薬剤であるが,臨 床応用されているのは日本と韓国に限られている.今後, 十分なエビデンスが得られれば,世界に向けて有用な情 報を発信できるであろう.

結論

トラニラスト単剤にて肺病変と皮下病変が著明に改善 したサルコイドーシス症例を経験した.トラニラストが サルコイドーシス治療薬になりうる可能性が示唆された が,その有効性についてはさらなる検討が必要である. 本症例は,第32回日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾 患学会において報告した.

引用文献

1) Yamada H, Tajima S, Nishikawa T, et al. Tranilast, a selective inhibitor of collagen synthesis in human skin fibroblasts. J Bio-chem 1994; 116: 892-7.

2) Mizuno K, Okamoto H, Horio T. Inhibitory influences of trani last on multinucleated giant cell formation from monocytes by supernatant of concanavalin A-stimulated mononuclear cells. J Dermatol Sci 2000; 24: 166-70.

3) Yamada H, Ide A, Sugiura M, et al. Treatment of cutaneous sarcoidosis with tranilast. J Dermatol 1995; 22: 149-52.

4) 藤井弓子,松村由美,宮地良樹.四肢に散在する局面型皮膚サ ルコイドが契機となって診断に至ったサルコイドーシスの1例. 臨皮 2011; 65: 22-5.

5) 藤川沙恵子,米澤理雄,谷岡未樹,他.両側下腿に板状硬結を 呈した皮下型サルコイドーシスの1例.臨皮 2007; 61; 343-5. 6) Nakahigashi K, Kabashima K, Akiyama H, et al. Refractory

cu-taneous lichenoid sarcoidosis treated with tranilast. J Am Acad Dermatol 2010; 63: 171-2. 7) 重松由紀子,松田史雄,三宅亜矢子,他.板状硬結を呈し塩酸 ミノサイクリンとトラニラストの内服が奏効した皮下型サルコ イドーシスの1例.皮膚臨床 2010; 52: 2033-6. 8) 堀口裕治,高瀬早和子.サルコイドーシスの皮膚病変を知る 興 味ある症例 トラニラストが奏効した例.Visual Dermatol 2003; 2: 370-1. 9) 宍倉 裕,笹森 寛,泉山典子,他.肺野病変にトラニラスト が有効であった皮下型サルコイドーシスの1例.日呼吸会誌 2012; 1: 165-9. 10) 前島英樹,嶋村祐美,白井京美, 他.トラニラストが著効した 皮下型サルコイドの1例.臨皮 2002; 56: 727-30. 11) 斧山淳子,幸野 健,石井正光.サルコイドーシス 2000 びま ん浸潤型皮膚サルコイドーシス.皮病診療 2000; 22: 725-8. 12) 国定 充,足立厚子,林 一弘.両下腿の板状硬結を呈した皮 下型サルコイドーシスの1例.皮膚臨床 2002; 44: 781-6.

参照

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