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日本口腔インプラント学会 第26巻 4号

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Academic year: 2021

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34 ─ 684 Objective:Several dental implant placements in the  maxillary molar region currently need sinus elevation  due to alveolar bone resorption and maxillary sinus ex- pansion. Previous clinical studies have reported that im-plants with sinus elevation have survival rates within the  range of 90 to 97.6%, suggesting its high degree of stabil-ity. This study examined risk factors of dental implants  with sinus elevation.  Subjects and methods:The subjects were 234 patients  (82 males and 152 females, mean age:55.3 years) who  underwent sinus elevation between 2000 and 2011. Dur-ing the observation period (1─12 years), we examined  the following parameters such as implant survival rates,  frequency of implant loss, causes of implant loss, and gen-eral and local factors related to implant loss.  Results:Implants were lost in 15 of the 234 cases, in-dicating a survival rate of 93.6%. In terms of frequency  of implant loss, the implant survival rate of less than one  year after sinus elevation was 97.3%, whereas the sur-vival rate more than three years after sinus elevation  was 96.3%. The implant survival rate in simultaneous  implantation was 96.4%, whereas the survival rate in de- layed implantation was 96.3%, thus showing no differenc- es in survival rates between the two procedures. Statisti-cally  significant  differences  were  observed  in  cases  where simultaneous implantation was performed on pa-tients  with  respiratory  illnesses,  as  well  as  in  cases  where cover screw exposure was observed post-opera-tively.  Discussion and Conclusion:Approximately 70% of im- plant losses occurred less than one year after sinus eleva-tion, suggesting that comprehensive monitoring plays a  major role in preventing secondary infections and in im-proving recovery time. Monitoring may also decrease the  number of risk factors associated with sinus elevation,  such as respiratory illness and postoperative cover screw  exposure. 

Key words:sinus elevation, lateral window technique, survival rate, risk factors

1)東京医科歯科大学歯学部附属病院回復系診療科インプラント外来 2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻口腔機能再構築学講座インプラント・口腔再生医学分野 1)Implant Dentistry, Clinic for Oral and Maxillofacial Rehabilitation, Dental Hospital, Tokyo Medical and Dental University 2) Oral Implantology and Regenerative Dental Medicine, Department of Oral Health Sciences, Medical and Dental Sciences  Track, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University 平成 25 年 4 月 30 日受付

上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療のリスク因子に関する臨床的検討

山本  愛1)  宗像 源博1)  立川 敬子1)  湯川  健2) 鶴見 和久1)  小林 裕史1)  春日井昇平1,2)

Prognosis for Risk Factors of Dental Implant Placement with Sinus Elevation

YAMAMOTO Ai1), MUNAKATA Motohiro1), TACHIKAWA Noriko1), YUKAWA Ken2), 

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緒  言 上顎洞底挙上術は,1977 年に Tatum によって最初 に試みられ,1980 年に Boyne と James1)によって論 文として報告された.その後,Peleg ら2)は 731 症例 中インプラント体の残存率が 97.9%であったと報告 し,また Chiapasco ら3)は,952 症例中残存率が 90~ 97.6%であったと報告するなど,上顎洞底挙上術は予 知性の高い治療法となっている.しかし,上顎洞底挙 上術の外科術式などに関しては数多く検討されている ものの,側方の骨窓を形成するラテラルウィンドウテ クニックと歯槽堤側からのオステオトームテクニック の適応基準や,ラテラルウィンドウテクニックによる インプラントの埋入時期などに関する明確な基準はい まだ定まっていない.また,上顎洞底挙上術に関する リスク因子として Testori ら4)が,1 日 15 本以上の喫 煙習慣と既存骨高径量が 4 mm 未満の患者は,インプ ラント体の喪失率が有意に上昇していることを報告し ている.他にも全身的要因,局所的要因,術中・術後 経過など,インプラント治療の予知性に影響を与える と考えられる因子などとの関連性について分析した研 究は少ない.  今回われわれは,ラテラルウィンドウテクニックに よる上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療に影 響を及ぼす因子に関して検討したので報告する. 対象および方法 東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来 において,2000 年から 2011 年までに上顎洞底挙上術 を施行し,インプラントを用いて治療を行った 234 症 例 490 本を対象とした.各々のインプラント体の内訳 は,ブローネマルクインプラント(Brånemark System®  MK Ⅲ,Mk Ⅳ,Nobel Biocare,Göteborg,Sweden) 119 症例 263 本,アストラテック(Astra Tech Im-plant SystemTM, Astra Tech,Göteborg,Sweden) 48 症 例 99 本, ス ト ロ ー マ ン(Straumann® Dental  Implant System,Straumann,Basel,Switzerland) 37 症例 74 本,ノーベルスピーディー(Nobel SpeedyTM Groovy,Nobel Biocare,Göteborg,Sweden)21 症 例 35 本,POI(POIEX FINAFIX Tapered,京セラ メディカル株式会社,滋賀)5 症例 11 本,3i(Os-seotite®  Implant, Biomet 3i, Inc, Florida, the Unit-ed States of America)2 症例 4 本,リプレイス(Replace  SelectTM  Tapered, Nobel Biocare USA. LLC, Cali-fornia, the United States of America)2 症例 4 本で あり,表面性状はすべて粗面であった.性別では,男 性 82 名,女性 152 名,平均年齢 55.3 歳を対象とし, 平均観察期間は,埋入後 4.97±4.0 年であった. これらの症例について,診断用テンプレートを装着 した状態で,インプラント術前にエックス線 CT 画像 を撮影した.CT 画像上にて,埋入部位の既存骨高径 量および洞粘膜肥厚量を計測した.初期固定について は,埋入トルク値が 10 Ncm 未満でカバースクリュー 装着時にインプラント体ごと回転を生じたものを不良 とした.さらに全身疾患および術中所見,術後経過と 喪失時期について調査し,インプラント体の残存率, 喪失原因,喪失に関わる全身的・局所的要因について 検討を行った.なお呼吸器疾患は喘息,気管支炎の有 無を,鼻疾患は花粉症,アレルギー性鼻炎,慢性副鼻 腔炎の有無を確認した. 統計学的処理は,上顎洞底挙上術と各々の因子に関 してχ二乗検定を用い,サンプルサイズが 5 例以下の 場合は Fisher の正確確率検定を行い,オッズ比と 95%信頼区間を算出した. 本研究は,東京医科歯科大学歯学部倫理委員会の承 認(承認番号 884)を得て実施し,その内容を十分に 被験者に説明し,同意を得た. 結  果 1. インプラント体の残存率 上顎洞底挙上術を併用してインプラント体を埋入し た 234 症例 490 本中,12 年間におけるインプラント 体の残存は 219 症例 472 本であり,残存率は 96.3%で あった. 2. 上顎洞底挙上術後のインプラント体の累積残存 インプラント体の埋入時期と累積残存率は,インプ ラント体埋入後 6 カ月で 98.8%,1 年で 97.3%,3 年 以上では喪失が認められず,全体で 96.3%という結果 であった(図 1).特に,埋入後 1 年未満の喪失本数

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は全喪失数 18 本中の 12 本であり,約 7 割を占めた. 3. インプラント体の残存率と手術方法との関連 上顎洞底挙上術とインプラント体の埋入時期におけ る検討では,同時法,待時法ともにインプラント体残 存率に統計学的有意差は認められなかった(表 1). 埋入後 1 年以上経過した症例におけるインプラント体 の喪失原因としては,咬合負荷によると考えられたも のが 5 本,インプラント周囲炎が 1 本であり,埋入後 1 年未満の症例では,局所感染が 4 本,オッセオイン テグレーション獲得不良が 8 本であった. 4. 既存骨高径量との関連 既存骨高径量に関しては,209 症例 442 本を対象と した.既存骨高径量 3 mm 未満が 230 本,3 mm 以上 5 mm 未満が 152 本,5 mm 以上が 60 本であった.既 存骨高径量 3 mm 未満では,インプラント体の残存率 は同時法で 93.3%,待時法で 95.7%であり,両群間で 統計学的有意差は認められなかった.しかし,既存骨 高径量 3 mm 未満の同時法が最も低い結果を示した. また,既存骨高径量が 5 mm 以上の残存率は同時法, 待時法ともに 100%であった(表 2). 5. 洞粘膜肥厚量との関連 洞粘膜肥厚量に関しては,147 症例 328 本を対象と し,Evans ら5)の報告を参考にして 5 mm を基準に検 討を行った.洞粘膜肥厚量 5 mm 未満が 304 本,5 mm 以上が 24 本であった.5 mm 以上の場合,インプラ ント体の残存率は同時法では 94.1%であり,待時法で は 85.7%であり統計学的有意差が認められなかったも のの,残存率が低い傾向を示した(表 3). 6. 全身疾患および喫煙との関連 全身疾患および喫煙との関連に関しては,234 症例 を対象とした.表 4 に示すように,糖尿病および喫煙 の有無とインプラント体の残存率との関連は低く,統 計学的有意差は認められなかった.しかし喫煙者のイ ンプラント体喪失本数は 4 本であり,その内 3 本は上 部構造装着前に喪失が認められた.一方,喘息,気管 支炎などの呼吸器疾患と花粉症,アレルギー性鼻炎, 図 1 累積残存率 表 1 手術方法とインプラント埋入後 1 年前後の結果 観察期間 手術方法 1 年未満 残存率 (残存本数/埋入本数) 1 年以上 残存率 (残存本数/埋入本数) 同時法 97.8% (271/277) 98.2% (266/271) 待時法 97.2% (207/213) 99.5% (206/207) 同時法 待時法 残存 本数   喪失 本数 残存率 (%) 残存 本数   喪失 本数 残存率 (%) 既存骨 高径量 (mm) 3 mm 未満 83 6 93.3 135 6 95.7 3 mm 以上 5 mm 未満 105 5 95.5 41 1 97.6 5 mm 以上 35 0 100 25 0 100 表 2 インプラント残存:既存骨高径量との関連

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慢性副鼻腔炎などの鼻疾患を有する患者の残存率が 88.0%と,統計学的有意差は認められないものの,残 存率が低い傾向を示した.このうち同時法で呼吸器疾 患または鼻疾患を有する患者においては,インプラン ト体埋入後 1 年以内に 4 症例すべてが喪失に至り,残 存率が 81.0%,オッズ比 4.575 と統計学的有意差を認 めた. 7. 術中および術後経過との関連 術中の洞粘膜の穿孔に関しては,234 症例を対象と し,穿孔を生じた症例は 50 症例で 21.4%であった. 術中の洞粘膜の穿孔とインプラント体の残存率との関 連は低く,統計学的有意差は認められなかった(表 5). インプラント体埋入時の初期固定に関しては,181 症例 405 本を対象とした.初期固定が不良ではない場 合には,同時法と待時法の差は認められなかった.不 良の場合には,同時法でインプラント体の残存率が 88.2%,待時法で 100%であり,統計学的有意差は認め られなかったものの, 同時法で低い傾向を示した (表 6). 術後経過時のカバースクリューの露出に関しては, 490 本を対象とした.カバースクリューの露出を認め た 52 本のうち,8 本が喪失し,インプラント体の残 存率は 84.6%であった.オッズ比は 6.738 と統計学的 有意差を認めた(表 7).  8. 移植材料との関連 移植材料に関しては,234 症例を対象とした.自家 骨細片骨を用いた場合のインプラント体の残存率が 1 番高く 96.3%,次にハイドロキシアパタイトを用いた 残存率が 93.8%,b-TCP を用いた残存率が 88.1%の順 であったが, 統計学的有意差は認められなかった (表 8). 表 3 インプラント残存:洞粘膜肥厚量との関連 同時法 待時法 残存 本数   喪失 本数 残存率 (%) 残存 本数   喪失 本数 残存率 (%) 洞粘膜 肥厚量 (mm) 5 mm 未満 183 10 94.8 105 6 94.6 5 mm 以上 16 1 94.1 6 1 85.7 総 症例数 喪失発生 症例率 非喪失 症例率(%) オッズ比 糖尿病 あり なし 8 226 0 15 100 93.4 1.246 喫煙 あり なし 53 181 4 11 92.5 93.9 1.262 呼吸器疾患 あり (うち同時法) なし 50 (21) 184 6 (4) 9 88.0 (81.0) 95.1 2.652 (4.575) 表 4 インプラント残存:全身疾患および喫煙との関連 総 症例数 喪失発生 症例率 非喪失 症例率(%) オッズ比 洞粘膜穿孔 あり 50 4 92.0 1.368 なし 184 11 94.0 表 5 インプラント残存:洞粘膜穿孔との関連

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考  察 1. 上顎洞底挙上術を併用したインプラント体の残 存率について 本研究におけるインプラント体の累積残存率は 96.3%であり,Chiapasco ら3)の 952 症例中残存率が 90~97.6%との報告とほぼ同様であった.また,埋入 後 1 年以上経過したインプラント体の残存率は 98.3% であり,十分な骨量の上顎臼歯部インプラント累積残 存率である Testori ら4)が報告した 98.4%と同様の結 果であった. 本研究では,埋入後 1 年未満に喪失したインプラン ト体は全喪失数の約 7 割と早期に喪失が多く認められ た.Peleg2)は,咬合負荷開始後 1 年以内に喪失した インプラントは全喪失数の 75%を占めたと報告し, 喪失原因としてオッセオインテグレーション獲得不 良,感染をあげている.したがって,オッセオインテ グレーション獲得までの免荷期間を長めに設定するこ とや術後感染に十分留意することにより,埋入後 1 年 未満の喪失数の減少が期待できるのではないかと考え られた.一方,埋入後 1 年以上経過し,エックス線上 で明らかな骨吸収が認められなかったにも関わらず喪 失を生じた症例は,新生骨による二次固定が十分得ら れていない段階で,天然歯と同様の咬合負荷を与えた ため脱落に至った可能性が考えられた.  既存骨高径量に関しては,同時法,待時法ともに, 既存骨量が増加すると残存率が高くなる結果であっ た.この結果は Peleg ら2)の,既存骨高径量が 1~ 2 mm の 残 存 率 は 95.9%,3~5 mm は 98.5%, 5 mm より大きい場合は 98.4%であったとの報告と同様で, 既存骨高径量が高いほど残存率は高かった.   手術方法と喪失時期との関連については,同時法, 待時法ともに残存率の差は認められず,関連は低い結 果となった.Tawil と Mawla6)は,5 mm 未満の既存 骨高径量に対して同時法での埋入を行ったインプラン ト体の残存率 56%は,5 mm 以上で同処置を行った場 合の残存率 100%よりも有意に低いことを報告してい るが,本研究ではその傾向は認められなかった.本研 究においては,既存骨高径量 3 mm 未満で同時法を選 択した場合,残存率が 92.5%と低い傾向を認めている ことから,オッセオインテグレーション前の骨のリモ デリングを考慮し,既存骨高径量 3 mm 未満では待時 法を選択すべきであると考えられた. 洞粘膜肥厚量に関して,5 mm 以上の症例で同時 法,待時法ともに残存率が低い結果であった.Evans ら5)は,術前に洞粘膜肥厚が 6 mm 以上の場合には, 細菌培養の結果が 72~96%で陽性であったと報告し ていることからも,術後の感染を考慮し,術前の CT 検査にて洞粘膜肥厚量を測定することが必要であると 考えられた. 2. 全身疾患,喫煙との関連について コントロール良好な糖尿病患者のインプラント体の 同時法 待時法 残存本数  喪失本数 残存率 (%) 残存本数  喪失本数 残存率 (%) 初期固定 良 217 9 96.0 143 7 95.3 不良 15 2 88.2 12 0 100 表 6 インプラント残存:初期固定との関連 移植材料 総 症例数 喪失 発生 症例率 非喪失 症例率 (%) 自家骨 HA b-TCP 移植材料なし 134 32 59 9 5 2 7 1 96.3 93.8 88.1 88.9 表 8 インプラント残存:使用した移植材料との関連 総本数 喪失 本数 残存率 (%) オッズ比 カバースク リュー露出 あり 52 8 84.6 6.738 なし 438 10 97.7 表 7 インプラント残存:カバースクリュー露出との関連

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残存率が非糖尿病患者よりも低いという報告7)や,2 型糖尿病患者が非糖尿病患者より統計学的に有意に喪 失率が高いという報告8)など,糖尿病はインプラント 治療の喪失に関わる因子であるといわれている.しか し,Tawil ら9),Khandelwal ら10)の最近の報告にお いては,糖尿病患者におけるインプラント体の残存率 は高く,本研究でも残存率との関連が低い結果となっ た.この結果は,当施設においてインプラント適用患 者は HbA1C(JDS 値)6.5%以下を基準として,血糖 コントロールが不良な患者については,内科医との連 携のもと加療を行ったのち,抗菌薬投与下での埋入手 術を施行したためと推測される. 喫煙と残存率の関係について,Holahan ら11)はイ ンプラント体埋入後 1 年以内の喫煙者の喪失が非喫煙 者と比して有意に多く,1 年以内の残存率が 90%未満 であることを報告している.また前述したように Testori ら4)は,1 日 15 本以上の喫煙患者では既存骨 高径量が 4 mm 未満の場合,インプラント体の脱落が 有意に増加していることを報告している.本研究にお いて全体としては喫煙との関連は低かったが,喪失し たインプラント体 4 本中 3 本が上部構造装着前に喪失 していることからも,喫煙が術後の創傷治癒およびイ ンテグレーションの妨げになっている可能性があるこ とが考えられた.  全身疾患との関係については,呼吸器疾患または鼻 疾患を有する患者のインプラント体の残存率が低く, 特に同時法を選択した場合に有意に低い傾向を示し, 喪失した症例すべてが 1 年以内であった.これは,同 時法によりインプラント体を埋入する際,術式によっ てはインプラント体の尖端部が上顎洞粘膜に直接接触 し,術後の洞粘膜の反応性炎症,浮腫,粘膜肥厚が生 じた可能性や,気管支炎や気管支喘息による好酸球浸 潤から副鼻腔の炎症が生じやすく,中鼻道自然孔ルー トが閉塞した可能性があり,早期のインプラント体喪 失が生じたのではないかと考えられた. 3. 術中術後経過との関連について 本研究結果において,洞粘膜の穿孔,初期固定,移 植材料と残存率との関連は低く,術後経過時のカバー スクリューの露出との関連が有意に高い結果となった. 術中の洞粘膜穿孔に関して, Pjetursson ら12)の上顎 洞底挙上術におけるシステマティックレビューでは, 術中に上顎洞粘膜の穿孔が平均 19.5%生じたものの, 3 年後の累積残存率の平均が 90.1%と比較的高いこと を報告している.本研究においても,術中の洞粘膜の 穿孔とインプラント体の残存率に統計学的有意差は認 められず,関連性は低いことが示唆された.これに関 しては,穿孔部にはメンブレン等の被覆処置を行って いること,また穿孔部をメンブレン等により閉鎖する ことが困難と判断された場合には,手術を中止してい ることが理由として考えられた. 初期固定に関しては,同時法で初期固定が不良の場 合,インプラント体の残存率が低い結果であったこと から,待時法に変更するべきと考える. 本研究においては,術後経過時におけるカバースク リューの露出とインプラント体の喪失に,有意な相関 が認められた.Kim ら13)は,インプラント体を埋入 後早期にカバースクリューの露出が生じる原因は,歯 槽頂部のインプラント体周囲の骨吸収によるものであ ると報告している.また Schwartz-Arad ら14)は,喫 煙者は高頻度でカバースクリューの露出を生じるが, 喪失には至っていないと報告している.通常のインプ ラント治療では,カバースクリューの露出等によりイ ンプラント周囲骨が吸収した場合でも既存骨で支持さ れている.一方,上顎洞底挙上術の場合には,既存骨 高径量が少ないためインプラント周囲骨の吸収量に よっては,移植材料のみでインプラント体を支持する 場合も生じる.そのためカバースクリューの露出を生 じた場合には,免荷期間の延長を検討する必要性があ ると考える.  今回の結果と過去の著者らのインプラント周囲粘膜 厚の研究15)を含めて,当院での上顎洞底挙上術のプ ロトコールを考案した(図 2).プロトコールの内容 は,呼吸器疾患または鼻疾患を有する場合や,術前 CT 上で洞粘膜肥厚量が 5 mm 以上であった時には耳 鼻咽喉科に対診し,待時法を選択する.また,洞粘膜 肥厚量が 5 mm 未満で既存骨高径量が 3 mm 未満の場 合は,待時法を選択することを原則とする.既存骨高 径 量 が 3 mm 以 上 5 mm 未 満 で, 顎 堤 粘 膜 厚 径 が 3 mm 以上の場合は同時法で免荷期間の延長,3 mm 未満の場合はカバースクリュー露出の危険性を考慮 し,待時法を選択することを原則とする.待時法を選 択し,かつ露出が生じた場合にも,免荷期間の延長を 選択するべきであると考える. 

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結  論 1. 既存骨高径量の不足した上顎臼歯部に,ラテラ ルウィンドウテクニックによる上顎洞底挙上術 を併用したインプラント治療は,骨造成を併用 しないインプラント体の残存率と比較しても差 がなく,予知性の高い治療方法である.  2. 上顎洞底挙上術のリスクファクターとして,呼 吸器疾患または鼻疾患と術後経過時のカバース クリューの露出があげられ,十分に留意する必 要性がある. 3. 既存骨高径量に関しては,本研究ではリスク因 子としていないが,他のリスク因子と組み合わ さることでインプラント体の残存率に影響を及 ぼす可能性がある. 本論文の要旨の一部は,第 32 回公益社団法人日本口腔イン プラント学会関東・甲信越支部総会・学術大会(平成 25 年 2 月 10,11 日,東京)において発表した. 文  献   1)  Boyne PJ, James RA. Grafting of maxillary sinus floor  with autogenous marrow and bone. J Oral Surg 1980; 38:613─616.    2)   Peleg M, Garg AK, Mazor Z. Predictability of simultane-ous implant placement in the severely atrophic posterior  maxilla:A 9-year longitudinal experience study of 2132  implants placed into 731 human sinus grafts. Int J Oral  Maxillofac Implants 2006;21:94─102.     3)  Chiapasco M, Zaniboni M, Rimondini L. Dental implants  placed  in  grafted  maxillary  sinuses:A  retrospective  analysis of clinical outcome according to the initial clini-cal situtation and a proposal of defect classification. Clin  Oral Implants Res 2008;19:416─428. 

   4)  Testori T, Fabbro MD, Feldman S, Vincenzi G, Sullivan  D, Rossi Jr. R, Anitua E, Bianchi F, Francetti L, Wein-stein  LR.  A  multicenter  prospective  evaluation  of  2-months loaded osseotite implants placed in the posteri-or jaws:3-year follow-up results. Clin Oral Implants Res  2002;13:154─161.     5)  Evans FO Jr, Sydnor JB, Moore WE, Moore GR, Man-waring JL, Brill AH, Jackson RT, Hanna S, Skaar JS,  Holdeman LV, Fitz-Hugh S, Sande MA, Gwaltney JM Jr.  Sinusitis of the maxillary antrum. N Engl J Med 1975; 293:735─739.     6)  Tawil G, Mawla M. Sinus floor elevation using a bovine  bone mineral (Bio-Oss) with or without the concomitant  use of a bilayered collagen barrier (Bio-Gide):A clini-cal report of immediate and delayed implant placement.  Int J Oral Maxillofac Implants 2001;16:713─721.     7)  Fiorellini JP, Chen PK, Nevins M, Nevins ML. A retro-spective study of dental implants in diabetic patients. Int  J Periodontics Restorative Dent 2000;20:366─373.    8)  Morris HF, Ochi S, Winkler S. Implant survival in pa-tients with type 2 diabetes:placement to 36 months.  Ann Periodontol 2000;5:157─165.     9)  Tawil G, Younan R, Azar P, Sleilati G. Conventional and  advanced implant treatment in the type II diabetic pa-図 2 上顎洞底挙上術のプロトコール案

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tient:surgical protocol and long-term clinical results.  Int J Oral Maxillofac Implants 2008;23:744─752.   10)  Khandelwal  N,  Oates  TW,  Vargas  A,  Alexander  PP, 

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参照

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