ECSおよびepi:nephrineの尿中C1
画面と性周期に及ぼす効果
関 口茂 久
Effects of ECS and epinephrine, alone or in combination, on urinary Cl excretion and estrus cycle of the female rat Shigehisa Sekiguchi 1937年Bini flS ExPerimental Reseacrhes on EPilePtic Attacks induced by the Electric Current lzついて報告して以来,電気痙攣ショ ヅク(ECS)効果に関する研究は,実験的臨床 ・ 的に広範に進められたのである。精神病治療法 としての電気シヨヅク療法(EST)が,比較心 理学の分野において研究されることは,異常行 動の発現機序を解明することと痙攣それ自体の 生理心理学的分析の2つの目的をもっている。 動物を用いての実験的異常行動の研究は, Pavlov(1928)のイヌの実験神経症に始まり, その後Maier(1938)がラソテにおいて観察し た神経症的発作に発展したのである。Maier型 の発作行動は,1950年頃まで心因説psychoge・ nic factorsと聴原説audiogenic factors(Mor・ gan,1940)の2説に分れ論争し,現在において は,発作発現の主要因は,聴刺激であり心因的 な葛藤は発作発現を高めるに過ぎないと考えら れている。きらにラヅテにおいては,餌の申に 含有されているMg.とPyridoxineの量にょっ て自然的に痙攣発作を生起し,心因説に対する いくつかの反証を明らかにしたのである(Pa− tton et al,1941−1949)。 Finger(1947)は,これ ら神経症的発作neurotic seizures,栄養欠乏痙 攣nutritional deficient convulsionsと薬物痙 攣drugs convulsionsや電気痙攣electroshock convulsionsの生理心理学的類似性を強調した。 一般に痙攣発作は,生体の痙攣感受性と刺激 特性との函数関係によって発現し,その反応パ ターンは,刺激直後の強直性反射tonic reflex と間代性反射clonic reflexに続いて昏睡状態 comaに終る型と間代期の消失した型に分類さ れる。このような痙攣発作を独立変数として, その効果機序を生体的・行動的に解明する研究 がある。それは,異常行動あるいは行動障害が 如何なる機序によって発現するかを明らかにす ると同時に,精神病が所謂ショック療法によっ て如何なる機序によって治癒されるかに関する 解答を示唆するのである。 問 題 実験的臨床的にECS処置が,動物や患者の 行動あるいは性格の心理的・情動的構造を変化 させると報告されているが,それはECSの単 なるside・effectsにすぎない。それにも拘らず ECSの効果機序がそれらside−effectsに基づ くと考えられている。 それ故,連続的に処置したECS後に発現す る学習成績の低下,記憶喪失,倦怠や無感動な どは,大脳皮質特に運動領・連合野の機能低下 によると解釈されるのである。 他方,ECS処置によるそのような変化は, 寧ろ皮質下中枢機能の変動によるものであると して,皮質下中枢系のいくつかの機能的水準を 把えてその効果を検索しょうとする実験がある。 それは視床下部下垂体系hypothalamic pitui・ tary・systemsに関する精神病理学説として, 最近の隣接科学とくに電気生理学・生化学およ び精神薬理学の知見に負うている。 {列えば,Hoaglandら(1953)は,精神分裂 病者と正常者との間には下垂体副腎皮質機能 pituitary−adrenocortical functionが異なり,前者が明らかに充進状態にあると述べ,また Michael(1956)は,分裂病者にECS療法を 行った際現われる月経周期延長amenorrheaが その病源型によって異なることから,各種の分 裂病者の下垂体生殖腺系pituitary−gonadotro・ phic systemsの機能的差異から大脳機能の役 割を重要視した, 一方,ラッチを用いた研究によってもRos− voldら(1948−1953)は,妊娠・母性行動・体 温および副腎皮質に及’ぼすECS処置効果を明 らかにした。またSekiguchi(1958)は,無機 質溶液の自由選択場面において痙攣ラッチと副 腎捌出ラッチの摂取量を比較し,痙攣ラヅテが 明らかに副腎機能冗進を現わすと報告した。こ のような行動的・代謝的に把えられた傾向は, 副腎アスコルビン酸・コレステロール量の減少 (Royce&Rosvold,1953)や尿中17−KS排泄 量の増加(Sekignchi,1958)によっても検証さ れた。さらにECS処置によって生起した雄ラ ヅテの性行動の減退は,雌ラッチにおいても性 周期延長を結果するのである。Sekiguchi(1960) は連続ECS処置回数と発情周期との関係につ いて処置回数の増加に伴って周期延長も増大す ると報告した。 このようなECSの精神内分泌的効果が,副 腎皮質ホルモン分泌と生殖腺ホルモン分泌に働 く機序は,(a)内分泌性のepinephrineが媒 介物質として下垂体系機能を高めるとする説( Long,1947),(b)下垂体より血中へACTH過 剰放出により皮質ホルモン生成が増加し,その 結果逆にACTH生成が抑制されるという説(In・ gle,1951;Sayers,1949)と(c)視床下部の下 垂体支配説(Harris,1949;Selye,1950)とに よっていると仮定されている。 Gellhornら(1941)は, ヒトと正常ラッチ においてECS処置後,過量のepinephrineが 分泌されることを見い出し,Ingleらの説を支 持する結果を報告したのであるが,処置後の副 腎皮質刺激がepinephrine欠乏時にも生起し, あるいわまたepinephrineが処置後の重要な内 分泌的効果を惹起しないという決定的証拠もな いのである。 さらにECSの行動的効果機序に関しても処 置後の情動皆野進が学習行動を低下させ(Sta・ inbrook,1946),あるいは神経運動系neuromo− tor integrationの破壊によって動物の活動水 準(この場合はperformance)の減退を結果す る説(McGinnies,1947;Siegel,1949)と,大 脳皮質機能損傷説(Duncan,1948;Stone,1946) などが仮定されている。 これら精神内分泌的機序と行動的効果機序の 両者を統合する仮説は,行動が主として神経 系の働きによることから,少くとも前者に働く 神経系の作用を仮定しなければならないであろ う。それ故Nembutal麻酔後のECS処置が, 副腎皮質に対しても(Rosvold et a1,1952)行動 に対しても(Porter,1947;Siege1,1949.)抑制 的効果しか現わさないという事実は,視床下部 自律神経系hypothalamic−autonomic nervous systemsが,何等かのInediatorとして働いて いることを示唆するものである。 実 験 目 的 本実験は,上述のいくつかの仮説を検証する
ために,ECSとepinephrine投与との重積処
置によって性周期および尿中Cl排泄が,いかな る効果をうけるかを検索し,さらに一般活動性 に対する相互作用を考察する目的で行われた。 方 法 動物:WK−A(F154)の兄妹交配による雌ラ ッチ30匹が実験に用いられた。全うッチは,生 後80日令より個室代謝箱において,オリエンタ ルーMF飼料と水道水とを自由に給餌し飼育さ れた。 測定:毎日午前11時より体重・餌摂取量・飲 水量・尿:量およびOpen・Boxにおける2分間 活動量locomotive activitiesを測定した。24時間尿については,Mohr氏法により尿中C1
排泄量を滴定定量した(Sekiguchi,1960)。性 周期は,Long&Evans法により検鏡決定し, 発情期(E)を基準に周期を測定した。 処置:全うヅテは,正常性周期4周期を経て より各群10匹ずつECS処置群(EC), epineph− rine投与群(EP)と両処置併用群(EE)の3群 にグルーピングした。ECS処置法は,既報の手続と同一条件で行っ7。epinephrine投与法は, epinephrine hydrochloride(1,㎜懇懇)を体 重100gmにつき0,1ml皮下注射した。EE群に おいては,epinephrine注射30分後ECS処置
騨騨轡ll
轍
甥馨覧、 飛轟鎮 =輪 灘セ“鼻 轡鵬 饗灘 を行った。 全処置は,24時間おきに1回,10日間続けた。 処置期終了後礫測定は20日間にわたって後効果 を観察した。難
鯉。
欝
懸
織
Fig. 1 Vaginal smear pictures of each stage in the estrus cycle of the normal rat, (P, proestrus; E, estrus; M, metoestrus and D, diestrus). 難癖》igXk願解
齢撫
畷懸
鱗
轟燕 “礁、 ゼ喚協 轡㍗㌔幾
Fig. 2 Vaginal smear pictures of the estrus stages in rats subject to ECS and epinephrine, alone or in combination. (see text for the explanation).結 果 期次第にEC群に見られる変化 を現わし始める。Fig.2の5,6 はそれぞれ処置期10日目と後期 10日目の標本である。 正常期の全うッチの平均周期 は100.8時間±9.5で,EC群 群おいては,処置後周期は第4 周期まで明らかに増加している (p>0.01)。EP群においては, 処置後第1と第4周期が正常周 期に比して著しく減少し (p> 0.01),第6,7周期で正常に回 復している。またEE群にわい ては処置後第2周期のみが著し く増加し(p>0.01),第1,3, 5周期は逆に減少傾向を示して いる(それぞれp>0.05)。各 玉蔵の平均第1周期の間には,
EP群とEE群とに有意差がな
く,その他においてはEC群の 顕著な増加とEP, EE両群の減 少が認められる(p>0.01)。E P群とEE群の平均第5周期間に おいては,EE群の方が明らか 正常雌ラッチの性周期はFig.1に示す如く, 発情前期(P),発情期(E)発情間期(M)と発情 後期(D)の4期からなっている。発情期は, Fig.1(E)の如く角質化した上皮細胞より成り, 大体40時間前後継続する。痙攣 ラヅテの発情周期は,一般にE が消失し,D期に粘液層が著し く見られる。Fig.2の1,2は, EC群ラヅテの処置後5日と10日 目の標本である。他方,EP群 は,epinephrine投与後Eが数 日続き,P,Dの時期が見られず, 処置期10日目と後期10日目でも Fig.2の3,4の状態が多く現 われる。またEE群のラッチに おいては,処置期中はEP群の 鏡像に類似しているが,処置後 め ﹄ooの Obρ に減少し(p>0.05)まtEC群に比しても差を認 めることができる(p>0.01)。全体としてEC 群の他は,処置後周期が減少し,EE群の第2周 期以外はEC群より減少傾向が著しいと云える。 Fig.3は全群における各測定値の処置後変 動曲線を示したものである。 十15 Eody脚e玉ght・ ρ 十10¥5
_1ア〉㌧・ 鵬 Q_。 み炉。紳脚{へ雇三! \ノ 轟 0 隔篤 一5 ¥40 ¥20 Water工ntako, @ 舞 @酒 ハ/、 Y、〆ぜ、! v 憶 .。’・脹、/甑 蟹 ∼へ燈・・r「 、・ 、’ 八 f \・拶脳ヘノ 覧 ’ 0│20
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Treatment period Post−treatment period Days after experiments Fig.3 Effects of ECS一 and Epinephrine−treatments on weight, water intake, urine output, urinary Cl excretion and loco− motion. Ordinate is % change in each measure from control values at zero time.24時間尿量,尿中Cl排泄および2分間活動 量の処置期と後期(各10日間の2期)における 群平均の統計的分析は,Table 1.に示した。 尿量においては,3群間に差がみられないけれ ども処置期3期との交互作用が有意であるから, Fig.3の変動曲線から少くとも処置期および処 置後期前半10日間の変化に群差が認められる。 尿中Cl排泄量においても同じ傾向があると云 えるが,3群間に有意差を示している。Open・Box 内での2分間平均通過量においては,階差は認 められるが,処置期間には差がない。しかし両 者の交互作用が有意であるから,Fig.3に見 られる如く,変動経過が各群において異なると 云えるのである。 Table 1. Variance table for group means during and after the treatments. 化においては,3群とも後期後半に増加傾向を 示し,とくにECとEE両群においては,後期 前半で減少傾向を示している。活動量変化にお いては,ECとEE両群が処置期および後期前 半まで減少傾向を示している。 Table 2. The t tests of differences for mean scores among periods in the same group. (C, control period; T, treatment−period; A, the lst post−period; B, the 2nd post−period).
C−T C−A C−B T−A T−B A−B
Urine output (ml/day) EC 2.037* 1.704 4.333** O.333 EP 1. OOO O.209 L 444 1.086 EE 1.346 2.741** O.753 L 395 6. 370** 6.037** 2.272* 1.235 L420 2.691** Urinary Cl excretion (mg/day) Source dfMS
F Urine output (ml/day) EC O.802 EP O.555 EE O. 185 2.469* 4.506** 1.235 3.737** 2.037* O.OOO 3.148** O.555 3.737** 3.148** 5.247** 5.123** 5.432** 5.403** O.123 Group Period Interaction Subject Within cel122474占
2﹁0
15.669 L718 111.655 32.975 ** 61.409 8.136 ** 9.120 2.693 ** 3. 386 Loco皿tive activities(No. traversed/2min.) EC 1.131 2.358* 3.671** 1.226 EP 2. 153* O. 883 O. 774 1. 270 EE 2.044* 1.897 2.489* O.145 2. 540* 1. 379 0. 445 1. 313 0. 109 0. 591 Urinary Cl excretion (mg/day) * Significant at the O. 05 level. ** Significant at the O. Ol level. Group Period Interaction Subject Within cel19臼2﹂474
2﹁0
1.722 4.948 * 3.964 29.363 ** O. 562 4. 163 ** O.348 2.578 * O. 135 Table 3. The t tests of differences among group means during and after the treat− ments. treatment一 post− period treatment (days) ( 1−10) (11−20) post圃 treatment (21−30) Locomotive activities (No. traversed/2min.) Group Period Interaction Subject Within cell Urine output (ml/day)9臼9臼474
2﹁0
1942. 00 608.85 1850. 85 425. 00 205.08 4. 569 * 2. 969 9.025 ** 2.072 * EC vs. EP EC vs. EE EP vs. EE 1. 050 0. 700 0.350 1. 938* 1. 050 2. 987** 2. 925** 4. 313** 1. 388 Urinary Cl excretion (mg/day) * Significant at the O.05 level. ** Significant at the O. Ol level. Table 2.は晶群内の正常期・処置期と処置 後期2期の平均間の差を示したものである。尿 量変化においては,EC群は処置期の著しい減 少から後期の増加がみられ,EP群は処置期と 後期後半との間に差が認められるだけである。 EE群は,後期前半が正常期と後期後半に比較 して著しい減少を示している。尿中Cl排泄変 EC vs. EP EC vs. EE EP vs. EE 1.375 1. 000 0. 375 2. 500** 3. 438** 5. 312*L * 1. 375 1. 250 2. 625** Locomotive activities (No. traversed/2 min.) EC vs. EP EC vs. EE EP vs. EE 1.022 0. 876 0. 145 1.475 0. 460 1.015 2. 898** 1.183 1. 715 * Significant at the O.05 level. ** Significant at the O. Ol level.さらに処置期わよび後期2期の各群論の群平 均間には,Table 3.に示したようにいずれも 処置後期に差を示している。EC群は明らかに 尿中CI排泄変化と活動:量変化との間に拮抗関 係がみられるが,EP群とEE群とは処置後期前 半にのみその傾向がみられる。活動量変化にお いては,EC群とEP絶間の後期後半にのみ有 意差が認められた。 一般に,EC群においては,尿量および尿中 Cl排泄変動は,活動量変化と対応せず処置期 のみの低下を現わし,後期においてはむしろ増 加傾向を示している。活動量変化は相対的に性 周期延長と関連し,処置後期後半においても正 常周期に回復していないことが注目されるQ性 周期延長効果を現わさないEP群においては, 活動量変化はむしろ増加し,尿量においても増 加傾向が著しい。またEE群においては,第2 周期のみが著しい延長効果を示し,活動量変化 の後期前半の減少と対応している。さらに尿量 変動に対しては,他心に比して著しい対照関係 を現わしている。 体重変化においては,いずれも処置期当初に 減少傾向を示し,その後次第に増加している。 また飲水量変化は,3群とも尿量変化にほぼ対 応しているのであるが,EP群のみが後期後半 に減少傾向を示している。 考 察 ECSおよびepinephrine処置の性周期・尿 中Cl排泄および活動性に及ぼす効果は,全期 を通じて性周期変動と活動量変化とに対応関係 を見い出した。すなわちECSの周期延長は活 動量減少を結果し,処置後20日間においても正 常周期に回復しないことが,活動量減少傾向に 対応していると云える。このような効果は, epinephrine投与によって明らかに対照的であ る。すなわち性周期は著しく短縮し,それに伴 い活動量の増加とその周期性がみられる。 雌ラヅテにおいて性周期と一般活動性gene・ ral activityとの関係は,発情期に達すると wheel activity (Wang, 1923; Richter, 1927) や走行活動(Young,1941)の増加が現われ, 性周期に対応した活動周期性があると云われて いる。しかし妊娠・偽妊娠・授乳および卵巣別 出時には活動周期性が消失するのみならず全活 動量水準も減少するのである(Wang,1923)。 Richter(1927)によると,卵巣届出は,活動 水準が,60∼95%減少を惹起するが,卵巣組織 を一部残余する別出後では,周期性は消失する けれども,活動水準の減少は軽減しうるのであ る(Wang&Guttmachter,1927)。このような 傾向は,別出ラッチに卵巣組織を移植すること によって少くとも術前水準に回復し(Richter, 1927)estrogen投与によっても回復しうる( Bugbee&Simond,1926)と報告されている。 従って活動量の周期性とその水準は,卵巣機能 とくに濾胞ホルモン機能に関連していると考え られるのである。他方副腎との関係においても, 両側副腎別出後の活動性は著しく減少し,正常 走行活動の90%の減少を示すと報告されている。 (Richter,1936)。さらにこのようなラッチに対 して皮質ステロイド投与を行うと活動水準は増 加し,また高塩含有餌を与えても同様の効果を 云い出すと述べている。甲状腺機能との関係に ついても同様の傾向が見られる(Sekiguchi,1960 参照)。 雌ラッチの活動性と性ホルモン系との相互関 係は,その機能低下が活動水準減少に密接に働 き,副腎・甲状腺ホルモン系も関与していると考 えられる。これらの中枢機構である下垂体列出 posterior lobectomyによっても活動周期性 は25∼40日周期となり,全活動水準は減少傾向 を示す。また海馬回両側損傷hippocampal le− sionsによっても同様の傾向がみられるのであ る(Richter,1958)。 このような現象の発現機序が視床下部・下垂 体と甲状腺・卵巣・副腎機能とのホメオスター シスの混乱状態によるものであり,特に視床下 部と辺縁系limbic systemに関連した構造的 損傷が重要な役割を演じていると考えられる。 われわれは,これらの内分泌追行動的相関を外 的状態の変動なしに内部環境のみの機能的傷害 として把えることができるならば,周期的疾患 をもつ精神病患者の行動的情緒的代謝的変化の 病源を推察しうると思う。従って周期的症状が 診断的治療的にetiologicalとなるのである。
動物によって賢い出された周期性異常から,ヒ トの異常性の病因をRichter(1958)は次の諸要 因に帰している。すなわち(1)甲状腺・卵巣の内 分泌障害,(2)サルファ剤(thiourea derivatives) の長期服用,(31女性ホルモンの長期服用,(4)脳 損傷,C5>強烈な急性ストレス,〈6>下垂体前・後 葉の障害,(7)第3側室の損傷などである。 しかしながら,規則的周期性の内部環境要因 が決定されたからと云って,不規則的周期性の それがないと云うのではない。 むしろ一過性に消失する周期性そのものが精 神病の周期性病因に基づく例も仮定されうる のである。実験的には,正常ラソテにECSを 処置することによって生起した性周期混乱がよ り複雑な学習行動の障害(Bending,1952;Braun et al,1952;Russell,1949)を惹起すると考え られる。Gellhorn(1941)が述べたようにECS が生体の学習行動を形成する神経系に逆択的に 作用するより,身体機能の広範囲を司る生理学 的水準に溢択的効果を及ぼす方が強いと考えら れる。 一般に生殖腺機能の神経支配に関しては,ラ ッチにおける排卵,発情が下垂体前葉adenohy− pophysisからの黄体形成ホルモン(LH)分泌 によって起り,自律神経の支配をうけていると 知られている。例えばウサギlc epinephrineを 前葉に作用させると排卵が起こる。ラッチにお いても発情11時間前にdibenamine, atropine を投与すると発情が抑制きれ,また発情後期第 3日目にprogesteroneを投与すると排卵が促 進される(Markee et al,1948)。 それ故,下垂体前葉の内分泌活動調節に関与 する神経系作用は,副交感神経系が興奮し,その 結果Achが分泌され,それが交感神経系より epinephrine分泌を促し,前葉に作用してLH分 泌を促進すると考えられるのである。Cleghorn (1955)はさらに交感・副交感神経系作用に加え て・estrogen, progesteroneも視床下部の性中 枢の興奮水準を高めると述べている。 従ってECS処置ラヅテの性周期延長は内分 泌的にepinephrine分泌が減少したからか,交 感神経系作用に拮抗する副交感神経系作用が促 進されたからか,あるいはestrogen分泌減少に . よるものか,異なるいくつかの可能性が考えら れる。しかしいずれにせよ,本実験からepine・ phrine前処置の痙攣ラヅテの性周期が明らか に痙攣ラヅテのより短縮していることは,外的 epinephrine投与が性周期に促進的に働き, EC S処置によって生起した発情機能低下を回復す ると云えるのである。 尿量および尿中Cl排泄変動に関しては,既 報(Sekiguchi,1960)において報告したのであ るが,epinephrine投与後の変化は,尿量の増 加とC1排泄の減少傾向を示している。投与後 ECS処置を行った場合,前者は,処置期と後 期前半に,後者は処置期のみに減少傾向を現わ しているのであるが,明らかに外的epineph・ rine投与効果が及ぼされていると考えられる。 尿量,尿中Cl排泄機能は,下垂体後葉neu− rohypophysisの支配をうけているのであるが, 最近のBargmann(1958)の研究によって視床 下部系との連関が明らかにされている。それ故 ECS処置による減少傾向は,この系の機能的 障害が何等かの神経路において惹起されるもの と仮定きれる。その一つとしてACTH放出に 関する視床下部の働きが考えられるが,ストレ ス曝露当初においては副腎髄質よりnoradre・ nalineが分泌され,長期に渡るにつれてepine− phrine分泌が持続的に増加する。これは副腎 髄質捌出ラヅテの情動ストレス,外温変化,
insulinに対してACTH分泌が促進される事
実(Fortier,1952)からも予想することができ るのである。 さらに最近,向精神薬として用いられている chlorpromazine(4 mg/kg)が条件性回避反応 conditioned avoidance responseの習得を遅 延し,消去を促進すると報告され(Niki,1960), 自律神経系の選択的作用が明らかにきれたので あるが,各内分泌器官にも選択的に働くと云わ れている。Reiss(1958)は, chlorpromazine投 与量を1,4,8mg/kgと増加すると副腎重量増加 と甲状腺,胸腺,卵巣と子宮重量の減少を惹起 すると報告している。またECSおよびchlor− promazine処置効果の比較実験において,前 者では対照ラッチに比して明らかに副腎・甲状 腺・卵巣重量の増加を結果するが,後者(6mg/3, days)の前処置にECS(3 days)処置を行うと 卵巣重量の著しい減少(一30%)を惹起する。