131 していくといわれている現在,2千年以上前に出来た 漢方の処方が,東洋の各地でずっと生きつづけてきた だけではなしに,世界の医学界でもトップレベルにあ るといわれる日本で,わずか10年の間に医師の約半数 が使用するようになってきているという事実は,考え てみれば,いくつもの大切な事柄を物語っているのだ と思われます. その中でも一番大切な理由は,漢方の処理の1つ1 っは,皆それぞれに性格,言いかえれば主張を持った 存在なのだ,ということだと思います.たとえぽ,よ くカゼなどに用いられます葛根湯という,漢方の処:方 の中では比較的ポピュラーな処方があります.これは 葛根(クズの根)を主薬とした7種類の生薬が一定の 分量で組合わされている処方ですが,この処方は,「私 は,もし急性感染症に用いられるなら,体力が中等度 以上にあり,頭痛,悪寒,発熱があって,首のうしろ が凝って気持がわるく,汗の出る気配は全くなくて, 脈に力があり,表在性で,』 ャ搏数もやや多いという状 態の人に差向けてくださるのでなければ私は働きませ んよ」という主張をもっているのです,ですから病人 が,これと一致した病状を呈していると判断し,その 判断すなわち漢方的診断が間違っていなかった場合に は,葛根湯を与えれば,その病人の諸症状はたちどこ ろに消失し去るのです.漢方の診療のかんどころは, 錠前のカギ穴(病人の自他覚症状)とカギ(それぞれ 主張をもつ漢方の各処方)との関係だ,と冒頭に申し 上げた所轄はここにあるのです. このことは,免疫の分野で,Aという抗原に対して は,抗Aという抗体だけが特異的に働いて,からだの 恒常性を維持するという,免疫系に特有なパターン認 識と,まことに相似たものがあります.「傷寒論」とい う経験医学書は,この生体内で常時行なわれているパ ターン認識のありかたを,透徹した古代人の英知でさ く吻当て,そして構築した類型診断学の極致とでもい うものではないかと思われます. 第11回東京女子医大漢方医学研究会 日 時 場 所 演 題 昭和61年6月25日(水)午後5時30分∼7時 中央校舎 1階 会議室 1.循環器疾患の漢方治療一その現況一 5:30∼5:40 循環器内科 関口 守衛 2.高血圧の漢方治療(基礎を中心に) 5:40∼6:25 大阪医科大学薬理学教室 石井 権二先生 3.高血圧の漢方治療(臨床) 6:30∼6:55 東京女子医大第二病院内科助教授 菊池 長徳先生 当番世話人 関口 守衛 1.循環器疾患の漢方治療 一その現況一高血圧と漢方と降圧剤 (循環器内科)関口 守衛 漢方治療は単に血圧を下げることを主目的としな い.漢方薬には降圧を目的としたものは存在しなかっ た.漢方における高血圧治療の基本は高血圧における 身体障害,症状をとり除き全身の不調和を整えること にある. 症例:高血圧に伴う頭痛 耳鳴,腰痛,目のかすみ,口渇,のぼせ,胸部圧迫, 動悸,不眠,排尿不全,手指のしびれなどが存在. 中医的考察:肝・腎・心の内臓異常 心:血行障害←丹参 院:衰弱←堅甲地黄丸 肝と心:熱性興奮←竜胆潟町平 冠心II号方(北京中医研究院酉宛医院) “異病覚治”の概念 1.血栓形成予防と溶解促進 2,冠状動脈硬化改善 3.血中脂肪値降下 4.組成:丹参,赤有,川菖,紅花,降香 2.高血圧の漢方治療(基礎を中心に) (大阪医科大学・薬理)石井 権二 循環器疾患,特に高血圧症およびその随伴症候群に 対して用いられる釣藤散の薬理作用について,本態性 一1169一
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