137 学術情報 東京女子医大学会講演会 日 時:昭和62年11月10日(火) 午後4時∼5時30分 場 所:東京女子医科大学 臨床講堂2 講演者:木村 淳 Professor of Neurology
Chief, Division of Clinical Electro−
physiology
Department of Neurology
The University of Iowa College of Medi・ cine
Iowa City, Iowa, USA.
演 題:反躬の電気生理と臨床応用
木村淳先生はアイオワ大学医学部教授としてご活躍 中であり,神経電気生理学の分野で国際的な評価の高 い先生です.また神経学領域における必読の教科書と の評価の高いBectorodiagnosis in Diseases of Nerve and Muscleの著老として知られています, (担当:神経内科) 反射’の電気生理と臨床応用 木村 淳 中枢神経検査法には瞬目反射や咬筋反射があり,反 射経路全長の伝導検査や中枢部の興奮性の測定に用い られている.角膜反射は,神経内科の診察にはかかす ことのできない検査の一つであるが,一般臨床でおこ なわれているように角膜に刺激を加え眼輪筋の収縮を 観察するだけでは反射を定量的に分析することができ ない.これに比べて,電気的に誘発される眼輪筋反射 は,オシロスコープoscilloscopeを使用してその潜時 と振幅を正確に測定することが可能であるため,臨床 検査法としてより有意義なものと考えられる.本法は 角膜反射と同様,三叉神経,顔面神経,脳幹,ならび に大脳半球などの検査法として用いられ,角膜反射に くらべ反射弓の神経伝導をより客観的に測定できるこ とが特徴である. 通常の伝導検査法は主として末梢神経遠位分節を対 象とし,末梢神経近位部の障害にはF波,H波, T波 などが利用される.F波の起源についてはまだ不明な 点が多いが,運動神経線維の逆行性刺激が脊髄前角の α運動ニューロンを興奮させ,その再発射で生ずるイ ンパルスが筋電位を誘発するものと考えられている. したがってF波の潜時で刺激部位から脊髄前角まで の運動神経伝導を測定することがでぎる.刺激部位よ り中枢側の運動神経伝導の検査は,最初Chrcot・ Marie−Tooth病の患者で検討されたが,その有用性 は,後に他の各種末梢神経疾患で確認された. 下腿三頭筋の伸展反射は,運動ニューロンの興奮性 や反封経路の伝導性を検討するのに利用される.しか し,アキレス腱の叩打による臨床検査では,反射の強 弱や伝導速度を正確に測定できない.これに反して, 表面電極を用いて反射による筋活動電位を導出すれ ば,筋固有反射が客観的に分析できる.膝窩部で後経 読神経に電気刺激を加えて得られるH波とアキレス 腱の機械的刺激によるT波は,いずれも単シナプス反 射で反射経路も同一だが,H波は筋紡錘そのものでは なく,そこに起始を持つ筋知覚線維の刺激で誘発され る.したがって,H波とT波とを比較すれぽ,γ運動 線維に支配されている筋紡錘の興奮性を間接的に分析 できる. 反射を利用した神経伝導検査法は比較的簡単な原理 に基づくが,技術的難点は多く,実際には種々の測定 誤差の生ずることが多い.神経刺激で頻繁におこる問 題点として記録装置の欠損,刺激法における技術的限 界,反感反応の個人差などがある.一般に行なわれる 神経刺激法では,誘発電位の起始潜時を測定し,最大 伝導速度を算出するが,これ以外に神経伝導の他の特 性を検査する方法もある.このうち一部の検査室でよ く用いられているものに,中枢神経興奮性の分析があ り,通常,二重刺激法の原理が利用される.これらの 技法は中枢性疾患の診断法として有望だが,その臨床 的価値や限界はいまだ確立されていない. 一305一