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自己脂肪組織由来細胞による次世代再生医療システム

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Academic year: 2021

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「肥満研究」Vol. 11 No. 2 2005 <トピックス> 前田和久

トピックス

はじめに

再生医療は,従来不可能あるいは困 難と考えられてきた様々な疾病や外傷 などで大きく損傷あるいは失われた人 体の細胞や組織を元通りに修復し,そ の機能を回復させる画期的な医療とし て現在大きな注目を受けており,その 早期実用化が強く望まれている. 大阪大学医学部付属病院未来医療セ ンターではそうした再生医療実践の場 として,平成16年度に大阪大学医学部 倫理委員会の承認を経た3件の臨床研 究が始まろうとしている. このうち筆者らが共同プロジェクト として実施し,従来の積み上げ型研究 とは異なる未来型医療として注目され ているのが,自己角膜培養シート移植 治療1) に自己脂肪組織由来細胞を用い たプロジェクトである.

再生医療と動物由来感染症の

現状

ではそもそも何故,脂肪を使って再 生医療を行おうとするプロジェクトが 誕生したのか.その理由は,トランス レーショナルリサーチの推進という名 のもとに,まさに臨床応用されようと した従来型再生医療の中に,現在大き な社会問題ともなっている動物由来感 染症に対する懸念が払拭できていない という背景が存在していたからである. すなわち,幹細胞のみでは自己の複製 を行うことが困難であり,組織を再生す るためには上皮系幹細胞,造血幹細胞, 胚性幹細胞(ES細胞)などの幹細胞を, マウス由来のフィーダー細胞と共にシ ャーレの中で増幅する必要があった (図). しかし,これでは移植を受けた患者 が,マウス細胞に由来する未知の感染 症 に 暴 露 さ れ る 危 険 性 が 存 在 す る . FDAが発表した異種移植に関する指 針(http://www.fda.gov/cber/gdlns /xenophs0101.pdf)においても,マウ ス由来細胞を用いた場合は,ヒトに対 する病原性ウィルスの潜伏期間などを 考慮して50年間の臨床記録やサンプル の保持を提唱しており,実際にマウス 由来の細胞成分を再生医療に用いるこ とは避けるべきものであると考えられ るようになっている. それでも,マウス細胞を移植医療に 用いても経験的に大丈夫であろうと楽 観視する研究者もいたが,この2月に 報告された米国におけるヒトES細胞 株における動物由来感染症の現状は驚 くべきものであった2, 3) .米国におけ る政府公認のヒトES細胞株自身が, 培養過程に用いられてきた動物由来の 蛋白を産生し,つまりコンタミネーシ ョンを起こし,ヒトに対して免疫反応 を起こす可能性のあることが報告され たのである.

自己脂肪組織由来システムの

確立

そこで今回,未来医療センターでは, マウス由来フィーダー細胞3T3に代わ りうる細胞群の確立をヒト組織より試 みた. 上皮再生に用いられるマウス由来フ ィーダー細胞3T3細胞が,マウス胎児 由来線維芽細胞(EF細胞)に由来する ことにまず注目し,われわれはEF細 胞を単離し,脂肪細胞への分化過程の

自己脂肪組織由来細胞による次世代再生医療システム

―始まった自己アディポサイトカインの臨床展開

大阪大学医学部付属病院未来医療センター代謝内分泌部門 同大学院医学系研究科分子制御内科学

前田 和久

Culture insert 組織再生細胞 フィーダー細胞 FEED (分泌因子など) 図 フィーダー細胞とは 胚性幹細胞,組織幹細胞,分化細胞など,組織再生に必要不可欠と考えられる細胞を分化 または維持するための細胞 問題点:マウス由来 異種移植(FDAの指針) 異種動物由来感染症の危険性

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自己脂肪組織由来細胞による次世代再生医療システム 検討に用いえる事を証明した4) .同様 の処理調整により,ヒト皮下脂肪組織 よりEF細胞と同程度に多系統の細胞 に分化する細胞群を単離しえた.そし て,同細胞群を用いてマウスEF細胞 に代わるヒト脂肪組織由来のフィーダ ーシステムを構築したのである. われわれはこれまで代謝学的観点か ら脂肪組織を内分泌臓器として位置づ け5) ,アディポサイトカインの概念を 確立してきた.未来医療センターでは このアディポサイトカインを有効に分 泌する自己脂肪組織由来ヒトフィーダ ー細胞を提供することで,動物由来感 染症の危険性が懸念される従来型再生 治療に貢献したいと考えている.

メタボリックシンドロームと

再生医療

アディポサイトカイ

ンの意義とは

アディポサイトカインは文明社会に おいて恒常性の破綻を来たし,糖尿病 や動脈硬化を起こすために存在してい るとは考え難い.エネルギーを脂肪滴 に置き換える.そして脂肪細胞が肥大 化した体積を保持するために,上皮を 伸展させ,血管を新生し,神経を進展 させる.つまり脂肪組織を再構築する 必要がある.そのために他の組織や細 胞に脂肪(トリグリセリド)が溜まっ たというシグナルを送る.それがアデ ィポサイトカインの本来の意義ではな いだろうか.エネルギー備蓄臓器とし て体内で特別に脂肪細胞に備わった生 理機能.われわれはそれを単に体外に 取り出して,フィーダー効果と呼んで いるだけかもしれない. 肥満に伴う合併症の主役としてのイ メージがすっかり定着した感のある脂 肪組織であるが,本プロジェクトを皮 切りに再生医療細胞ソースとして医療 に貢献しうる組織としての開発を行い たいと考える. 文 献

1) Nishida K, Yamato M, Hayashida Y, et al.:Corneal reconstruction with tissue-Engineered cell sheets com-prising autologous oral mucosal epithelium. N Engl J Med 2004,

351:1187―1196.

2) Hampton T: Human embryonic stem cells contaminated. JAMA 2005, 293(7):789.

3) Martin MJ, Muotri A, Gage F, et al.: Human embryonic stem cells express an immunogenic nonhuman sialic acid. Nat Med 2005, 11(2): 228―232. Epub 2005 Jan 30.

4) Maeda K, Cao H, Uysal K, et al.: Adipocyte/macrophage fatty acid binding proteins control integrated metabolic responses in obesity and diabetes. Cell Metabolism 2005,

1:107―119.

5) Maeda K, Okubo K, Shimomura I, et al.: Analysis of an expression profile of genes in the human adi-pose tissue. Gene 1997, 190(2): 227―235.

参照

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