イギ リスにお け るプ ライバ シー保護 法論
飯 塚 和 之
は じ め に
イギ リスには,「イギ リス人の家 は彼の城である」 (AnEnglishman'shouse ishiscastle)という有名 な諺が存在す る。 これは個人のプライバ シーに対 す
る尊重の習慣が, イギ リスの伝統 であることを示す言葉 と理解することができ る。それゆえ,イギ リスの裁判所がプライバ シーをそれ自体法的保護に値する 権利 として承認 していないことは理解 し難いところである。その最 も一般的な 意味において,プライバ シーは個人主義の重要な要素の一つであり,それゆえ に近代市民社会の中心的かつ不可欠の観念 と考 え られている。アメ リカの哲学 者 コンヴィッツ (M.R.Konvitz)は, それを次の ように言 う。「いったん, 文明が 『外 なる人』と 『内なる人』,魂 の生命 と肉体 の生命,精神 と物質,神 聖 と世俗,神の世界 と君主の世界,教会 と国家,固有 ・不可譲の権利 と授与 ・ 剥奪権限政府保有の権利,公 と私,社会 と独居のそれぞれの区別 を した以上,
どのような名称でそれを呼 ぼうともプライバ シーの観念 を回避することは不可 能 となる。」(1)そ して, プライバ シーの観念 は,現代社会 においてはプライバ
シーの権利 として法的権利 に結晶化 され,世界的承認 を獲得 している。(2)
ところが, イギ リスにおいては, コモ ン ・ロー上の権利 としても,憲法上の 権利 としてもプライバ シーの権利 は承認 を受 けてい ない。法的な保護 を必要 と しないほどイギ リス国民 はプライバ シーを尊重 されているのであろうか。その
(1)Konvitz,PrivacyandtheI,aw /A PhilosophicalPrelude,31LAW & CoNTEMP PROBS.272,273(1966)
〔373〕
374 商 学 討 究 第 37巻 第1・2・3号
答 は否 で あ る。種 々の調 査 か らも,(3)ま た提起 され る裁 判 か らも,プ ラ イバ シー の侵 害 が存 在 す る こ と, そ して そ の保 護 の必 要 な こと を知 る こ とが で き る。 そ して, そ の保 護 の努 力 は, 部 分 的 に は判 例 法 お よび制 定 法 に よ って な され て き て い る。 しか し, そ の保 護 は全 面 的 で は な い。様 々 な プ ラ イバ シー保 護 論 が展 開 され る現 実 的基 礎 が こ こ に あ る。 本稿 は, イギ リス ・プ ラ イバ シー法 研 究 の 一 環 と して, プ ラ イバ シー の保 護 を求 め て展 開 され て い る現 代 イギ リス にお け
る プ ラ イバ シー保 護 法 論 の紹 介 ・検 討 を 目的 とす る。
Ⅰ プライバ シー保護の問題状況
1 プ ラ イバ シー の概 念
プ ラ イバ シー の 保 護 を考 え る場 合 に は, そ の 保 護 の 対 象 と され る プ ラ イバ シーの概 念 が 明 らか に され なけ れ ば な らな い。 こ こで は, プ ラ イバ シー権 論 を み る前 提 と して, イギ リス にお いて , プ ラ イバ シー と い う言葉 に どの よ うな意 味 内 容 が 付 与 さ れ て い る, と理 解 さ れ て い る の か を ポ ー ル ・シー グハ ー ト
(paulSiegh art) の 分 析 に依 拠 して 明 らか に して お こ う。(4)シー グハ ー トに よれ ば従 来 の プ ラ イバ シー に関 す る論 議 の不 透 明 さの原 因 は, プ ラ イバ シー に
(2)世界人権軍言 (1948年 ) : 「第12条 (私生活,名誉,信用の保護 )何人 も,そのプ ライバ シー,家庭,住居若 しくは通信 に対する専断的な干渉又 はその名誉及び信用 に対する攻撃 を受 けることはない。何人 も, この干渉又は攻撃 に対 して法の保護 を 受 ける権利 を有する。」
国際人権規約 〔市民的及 び政治的権利 に関する国際規約〕(1966年 ) :「第17条 (プ ライバ シー,家庭,住居,通信,名誉及び信用の尊重 )(1)何人 も,その私生活,家 族,住居,若 しくは通信 に対 して悪意的に若 しくは不法 に干渉 され又 は名誉及 び伝 用 を不法 に攻撃 されない。(2)すべての者 は,(1)の干渉又 は攻撃 に対する法律の保護 を受 ける権利 を有する。」など。(訳 は芹田健太郎編 『国際人権条約資料集』(有信望, 1979年 )による。)
(3)最近の興味ある事例 として,事務弁護士 を対象 にプライバ シー問題 でどの ような相 談 を市民か ら受 けているか を調査 したワックス (Wacks)教授の報告がある。相 談の絶対数 は少ないが,プライバ シー侵害の項 目数では,(i)個人データの乱用,(ii) 無権限の公表,(iii)スパ イ,(iv)電話盗聴,(V)盗聴,(vi)氏名の盗用の順で申立 てがなさ れている。Wacks,PrivacyandthePractitioner,[1983]PUB.L.260.
(4)PAUL SIEGHART,PRIVACYAND CoMPUTERS(1976).
イギ リスにおけるプライバ シー保護法論 375
関する三つのまったく異 なった概念 についての混同 にあった。(5)三つの概念 と は,(i)プライバ シーの状態 (stateorconditionofprivacy),(ii)プライバ シー に対 す る要求 (needordesireforprivacy),(iii)プライバ シーの権利 (right of(orto)privacy)であ り, これ らの違 いが明 らかにされなければならない,
とする。まず,第一の 「プライバ シーの状態」概念 は,いわば通常,人々が理 解 している辞書的な意味でのそれである。 シ‑グハ ー トは,オ ックスフォー ド 英語辞典の 「プライバ シー」の項 目の第一番 目の意味を引用する。そこには 「他 の社会 または公衆 の関心 か ら引 き下 がって いる状態 :隠遁」(6)と書かれてい るム この意味でのプライバ シーは相当古 くか ら用 い られ,人々にとって親 しみ やすい概念 となっている。
第二の 「プライバ シーに対する要求」概念 の意味するところは,人間は社会 的動物であ り他人か らまった く離れて生活できない,と同時に他人か ら離れて いたいという要求 をもっている,というものである。 ここでは,状態が語 られ ているのではな く,その状態 を達成 しようとする人々の要求 ・欲求が語 られて いることになる。客観的事実の記述か ら主観的感情の検討 に重点が移 っている わけである。そ して,社会学,人類学等のこれまでの研究が明 らかにしている ところに従えば, プライバ シーへの要求に関 しては,その要求が個人個人で大 いに異 なること,同一人物でも異 なった時期 や異なった状況では異なること, 一つの文化 と他の文化でも異 なること,・そ して同一の文化 内でも異なった時期 と異 なった状況では異 なることである。そ して, このような要求の可変可能性 が重要な意義 を有することになる。
第三の 「プライバ シーの権利」概念 は,ある人のプライバ シーに対する要求 と他の人 々のそれと反対の要求 との利益の対立が存在する場合に問題 となる。
法律家は,相対立する要求 という言葉でよりは権利 ・義務 という言葉で考えた り,語 った りすることを便宜的であ り有用であるとみてし.1る。 ここで, プライ バ シーに対 する要求か らプライバ シーの権利へ と論議 をすすめることができ
(5) 〟 at7‑ll.
(6) OXFORD ENGLISIIDICTIONARY1388(1933)
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る。そ してそのプライバ シー権 の内容 は,言語学 や心理学 あるいは人額学や社 会学の理論 によって決 めることはできず,法律学,法理学,哲学 そ して究極的
に政治学 の主題 である価値判断 によって解決 され ることになる。
以上が,三つの プライバ シーの概念 に関す るシーグハー トの見解であるO プ ライバ シーの状態 ・要 求 ・権利 とい う三つ の段階 を明 らか にす ることによっ て,法律上の議論 は最後の 「権利」段階に集 中すべ きことを指摘 したものであ る。 プライバ シーに三つの段階のあること,およびその相互の関係 を示 し得 た という点で意義 のある分析 と言えよう。
2 プライバ シー保護の問題状況
イギ リスにおいて, プライバ シー保護の法的対応 が遅れていることについて は,すでに触 れたところであるが,それはどうしてであろうか。現代 における プライバ シーの問題状況 とい う視点 か ら, イギ リスのある論者 の見解(7)を借 用することが許 されるな らば,それ は次の ように整理することができよう。
(i) この間題 は法律上 も行政上 も本質的 に複雑であ り, どの ような立法 も政 府 が提出することを求 めている。プライバ シーは議員提出法案で扱 われるには ふ さわ しくない。
(ii) プライバ シーは営業上 および政治上の重大 な利害の衡突 を伴 う。 どの よ うな立法 も営業上 の秘密 および個人の情報の営業上の利用の問題 に触れ ざるを 得 ないであろう。同 じく,行政の行動 に対す る絶大 な影響 を有す るであろう。
(iii) プライバ シーについての人々の関心 は変革のための政治的勢 いを生みだ すほど十分ではない。スキ ャンダルが繰 り返 し発生 し,めんどうな事件 がかな り公表 されている。 しか し,それ らのどれ も行政の怠惰 を克服す るほどには大 き くもまた継続 的でもない。
(iv) プライバ シーについての関心 の焦点がそれ自体移 ってきた。つ ま り, プ レスの活動か ら私立探偵 や信用情報機関の活動,公的機関 による個人情報の収 集 や利摘iそ して警察 による監視へ と移 ってきた。 これ らはすべて監視 の技術 や 自動 デー タ処理の技術が急速 に発展 しているという認識 の深 ま りによって倍
(7) Collloprd,TheProspectsforPrivacy,52PoL.Q.295,296‑297(1981)
イギ リスにおけるプライバ シ‑保護法論 377
化 されている。
(∨)そ して, その焦点 が移 るにつれ て,次 の ような矛盾 が生 じて きた。(a)情 報 へ の ア クセスの権利 と秘 密保 護 の権 利 に対 す る同時的要 求 (の矛盾 ),(ち)社 会 的 ・財 政 的正義 の促 進 の支持 と不正 防止 の監視 シス テム に従 う ことの拒否 (の矛盾 ),(C)個 人 と して認 め られかつ扱 われ たい との欲求 を持 ちなが ら, 同 時 に匿名 を維持 したい とい う欲 求 を持 つ (矛 盾 ), そ して,(d)自己 につ いての 記録 に含 まれてい るすべ ての ものに即座 にア クセス したい とい う望 み と統 一個 人 識別制 (総 背番 号制 ) を拒否 す る こと (の矛盾 )。以上 の五 つ で ある。 ここ には,現在 の プライバ シー問題 の状況 が的確 に要約 されて いるといえ よう。問 題 の複雑性 ,利害 の衝突 ,政治 的 ア ピールの欠除,関心 の焦点 の移 動, そ して 様 々 な要求 間の矛盾 が プ ライバ シーの法 的保護 の実現 を妨 げて きたので ある。
しか し,今 日その状況 は変化 しつつ ある。 その変化 をもた らした もの は,覗 代 イギ リスの他 の法分野 において も多かれ少 なかれ見 られ るところで あるが, イギ リス 国外 か らの挑 戦 で あ る.(8)一 般 的 プ ライバ シー権 につ い て は, ヨー ロ ッパ人権 条約 の影響 ,(9), ま た個 人情報 の保護 に関 して は ヨー ロ ッパ評議会 の 「個 人 デー タの 自動処 理 に関 す る個 人 の保 護 の ための条約」(10)や OECDの
「プライバ シー保 護 お よび個人 デー タの国際流通 を規律 す るガイ ドライ ン」(ll)
(8)現代 イギ リス法 にたいする国外か らの挑戦 については,スカーマ ン卿がその問題性 を的確 に指摘 している。LESLIEScARMAN,ENGLISHLAW‑THENEW DIMENSION, (1974),邦訳 :田島裕訳 『イギ リス法 ‑ その新局面』10頁以下 (東京大学出版会, 1981年 )を参照のこと。
(9) EuropeanConventionfortheProtectionofHumanRightsa7uiFu7uklmentalFreedoms, (1950).同条約第8条 は, プライバ シーにつ いて規定 を置 いている。「(1)何人 も,
その私的な家庭 の生活,住居及 び通信 の尊重 を受 ける権利 を有する。(2)法律 に合致 し,かつ,国の安全,公 けの安全又 は国の経済的福利のため,無秩序又は犯罪の防 止のため,衛生又 は道徳の保護のため,又 は他人の権利及び自由の保護のために民 主的社会 において必要であるものの外 は, この権利の行使 に対 していかなる公権 に
よる介入 もあってはな らない。」 (芹田編 ・前注(2)による。)。
(10) CoUNCIL OFEUROPE,ConventionfortheProtectionofIndividualswithregard to AutomaticProcessingofPersonalData,(1980).
(ll) OECD,RecommendationoftheCounciloftheOECDconcemingGuidelinesgoverning theProtectionofPrivacyandTransborderFlowsofPersonalData,(1980).
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の影 響 を指摘 す る ことが で き る。 も と よ り国外 か らの影 響 を受 け入 れ る素地 が 国 内 に存 在 しな けれ ば, その影 響 につ いて語 る ことはで きな い。現 代 的 プ ライ バ シー権 といえ るデー タ ・プ ライバ シー権 につ い て は,長 年 の論 議 の末1984年 に 「デ ー タ保 護 法」 (DataProtectionAct1984)の成 立 を はか って い る。(12)
ま た,伝 統 的 プ ラ イバ シー権 の領 域 にお いて も,通信 の傍 受 に関 す るマ ロー ン 事 件 を契 機 に イギ リス政府 は立 法 的 対応 を余 儀 な くされ た。(13)これ らは, しか
しなが らあ くまで も部 分 的措 置 で しか な い。
Ⅱ プライバシー保護におけるイギリスの特殊性と普遍性
イギ リスで は, コモ ン ・ロー上 もま た制 定 法上 も一 般 的 に プ ライバ シー権 が
● ●● ● ● ●●● ● ●● ●
認 め られ て い な い結 果 ,実 定 法上 の プ ライバ シー権 の定 義 や制 定 法上 の分類 は 存 荏 しな い。 そ の定 義 をす る必 要 が あ る時 は,大 西 洋 の 向 こう側 (す な わ ちア メ リカ合 衆 国 )の用 法 を借 用 す るの が常 で あ る。(14)プ ラ イバ シー保 護 に お ける イギ リス法 の特 徴 を象徴 す る一事 例 と言 え よ う。 こ こで は, プ ライバ シー権 論 の展 開 を規 定 して い る プ ライバ シー保 護 に お ける イギ リス的特徴 につ い て, そ (12) この立法については,さしあたり拙稿 「イギリスにおける1984年データ保護法の成
立」法律時報57巻11号108頁以下 (1985年),および同 「情報公開と個人情報保護 (イ ギリス)」比較法研究48号63頁 (1986年)を参照のこと.
(13)マローン事件 とは,犯罪捜査のためになされた電話の盗聴 に関 して,被疑者 として 訴追 された者か ら,その盗聴の違法性が主張 された事件である。イギリスの裁判所 は原告の主張 を否定 した (Malonev.MetropolitanPoliceCommissioner,[1979】Ch.
344)。原告 はヨーロッパ人権条約 の手続 に従って人権委員会への申立 を行ない, 同委員会の認容決定 を得た。事件 はヨーロッパ人権裁判所 に係属 し,同裁判所 は, 1984年8月,傍受を正当化 しうる制定法の規定を欠いているので,マローンの電話 の盗聴は国内法の規定に従 って遂行 されたとは言えない,との理由でイギ リス敗訴 の判決 を下 した1(Malonev.UnitedKingdom(1985)7E.H.R.R.14.)その後,この 判決の指摘 を履行するためにイギリスは,1985年7月,通信の傍受法 (Interception ofCommunicationAct1985)を成立 させるに至 った。 この主題 に関 しては,倉 持孝司 「イギ リスにおける通信の傍受と市民的自由に対する法的アプローチ(1),(2)」 法政論集 (名古屋大学 )102号 1頁以下 (1984年),112号187頁以下 (1986年 ),同 「イ ギ リスにおける通信の傍受 と市民的 自由」比較法研究47号151頁以下 (1985年)が 参照 されるべき貴重な研究である。
(14) TheLegalProtectionofPrivacyIA ComparativeSurveyofTenCountriesbytheInter‑ nationalCommissionofJurists,14INTLSoc.ScI.J.417,458(1972).
イギリスにおけるプライバ シー保護法論 379 の特殊性 と普遍性 の両側面 か ら,検討 す ることにす る。
1 特殊 性
(1)プライバ シー権 の未承認 特殊性 の第一 は,すでに述べ た ように イギ リ スで はコモ ン ・ロー上 プライバ シー権 が承認 されて いない ことであ る。言 うま で もな く, イギ リス法 に起源 を有 す るアメ リカ法 において は, ウ ォー レン‑ブ ラ ンダイス論文(15)の強 大 な影 響 も預 って不 法行 為法上 の プライバ シー権 が判 例法 または制定法 によって承認 されて いる。西 ドイツで も,学説 ・判例 に よ り 一 般 的人格 権 の名称 の下 で プライバ シー権 が認 め られ てお り(16)また, フ ラン スで も判例法 の発展 の後 に, 1970年 に民法典第 9条 を新設 し,私生活 の保護 を 認 めている。(17)
これ に対 して, イギ リスの判例法 はプライバ シー権 を承認 していない。近時 の不 法行為法 の代表 的 テキス ト ・ブ ックと目 されている著作 において, ダイア ス‑マ‑ケ シニス は,第七章 を 「名誉 お よび プライバ シーの保護」 にあててい るが, プ ライバ シーに関す る本文 の記述 では名誉穀損 , トレスパ ス,ニ ューサ ンス,著作権侵害 などの不法行 為類型 に よ り, プ ライバ シーの保護 が部分 的 に は, はか られ ている ことを認 め た後 で次の よ うに言 う。「これ に もかか わ らず, これ らを よ り広範 な個 人 の人格権 の諸例 と して扱 う試 み はすべ て拒否 され た。
その理 由 は,一つ にはイギ リス法 に深 く根差 した一般的 な権利 の宣言 をす る こ とに対 す る不信 で あ り, また一 つ にはその よ うな新 しい権利 は立法府 の創造物 で あ り,裁 判所 の それで はない, との信念 で ある
。
」(18)先 きに言及 したマ ロー ン事件 において も,盗聴 の違法性 の根拠 の一 つ と して プライバ シーの侵害 が主 張 されたが,裁判所 は,一般的 プライバ シ‑権 はもちろんの こと,原告側 の主 張 した 「特定 の プ ライバ シーの権利 ,す なわ ち妨害 な しに 自分 の家 で内密 に電 話 で会話 をす る権利」(19)の存在 も否定 してい る。(15) WarrenandBrandeis,TheRighttoPrivacy,4EARV・L・REV・193(1890)・ 86ト 斉藤博 『人格権法の研究』(一粒社,1979年)に詳 しい。
(17) この法律 を検討 している最近の研究 として,Remond‑Cooper,ThePressandthe LawofPrivacy,34INT,L&CoMP・L・Q.(1985)が あ るo
(18)R.W .M.DIAS&B.S.MARKESINIS,ToRTLAW,359(1984)A
(19)Malonev.MetropolitanPoliceCommissioner,[19791Ch・344,357,372・
380 商 学 討 究 第 37巻 第1・2・3号
結 局 ,約 半 世 紀 前 に公表 され た プ ライバ シー に関 す るわ が国 で の最 初 の本格 的 な研 究 で あ る末 延 博 士 の 論 文 「英 米 法 に於 け る秘 密 の 保 養 ‑ い は ゆ る Righ ttoPrivacyにつ い て ‑ 」 (1935年 発 表 ) の次 の結 論 は い ま な お有 効 性
を失 っ て は い な い。 す な わ ち
,
「英 国 の裁 判 所 は未 だ所 謂 プ ラ イ ヴ ァシーの 問 題 と正 面 衝突 を しな い。従 って その 態 度 は明 瞭 で な い。併 し乍 ら種 々 の傍 論 を 綜 合 す る と,未 だ秘 密 其 自体 につ い ての権 利 を認 め ん とす る傾 向 に あ りと は言 ひ難 い。財 産 権 の保 護 の名 で私 信 の発 表 が禁 じられ た。講 義 の出版 が差 止 め ら れ た。絵 画 の 目録 の頒 布 が不 法 と され た。契 約 違 反 を理 由 と して写 真 の販 売 が 禁 ぜ られ た。併 しプ ラ イ ヴ ァ シ」 其 物 につ いて は判 決 と して何 等 の 回答 を与 え て ゐ な い。」(20)I(21)(2)憲 法典 の 不 存 在 特 殊 性 の第 二 は, イギ リスが成 文 の憲 法 典 を持 たず , その た め に プ ラ イバ シー権 が基 本 的人 権 の一 つ と して宣 言 され て い な い こ とで あ る。 イギ リス にお け る 「法 の あ らゆ る分 野 につ い て詳 し く説 明 を した大項 目 主 義 の エ ンサ イ クペ デ イア」(22)で あ るHalsbury'sLawsofEnglandは 「憲 法 」 の項 目 にお いて憲 法上 の諸 権 利 の カ タロ グの一 つ と して 「プ ラ イバ シー の権 利 」 (Therigh ttoprivacy) を掲 げて は い るが ,本 文 で は一 般 的 プ ラ イバ シー権 eo) 末延三次 「英米法 に於 ける秘密 の保護 ‑ いはゆるRighttoPrivacyにつ いて
‑ (1),(2)」法学協会雑誌53巻11号 1頁以下,12号60頁以下,引用 は53巻11号16
‑17貢 (1935年 ),同論文 は,戒能通孝‑伊藤正己編 『プライヴァシー研究』 (日本 評論新社,1962年 )に収録 されている。
CZl) プライバ シー権 を承認 しない理由はなにか。伊藤教授 は,第一に,イギ リスの法律 家 に根づよく残 っている伝統的な考 え方,第二 に, イギリスの不法行為には,なお 訴訟方式 にもとづ く類型化の考え方が反映 してお り, この類型 に属 しない新 しい救 済手段 には消極的にならざるをえないこと,第三 に,プライバ シーの権利が言論や 出版の自由と対立 し,それを制限す る役割 を演ずることになるが, イギ リスではこ のような制限 は法的手段 によらず, 自由を行使する者の自主的な抑制にまつべきで あるという態度が反映 していることをあげている。(伊藤正己 『プライバ シーの権利』
16‑17頁,岩波書店,1963年 ). このほかに,アメ リカ法 と比較 して,第‑ に,厳 格 な先例拘束制の原則が存在 すること,第二 に,基本的人権 を宣明する成文憲法が 存在 しないこと,第三に,学説の裁判所への影響が相対的に弱 いことなどが指摘 さ れている。(Brittan,TheRightofPrivacyinEnglanda7uitheUnitedStates,37TUL.
L,REV.235(1963)・,Yang,Privacy・.A ComparativeStu
d
yofEnglishdhdAmerican Law,15INT,L&CoMP.L Q.175(1966))0¢2)田中英夫 ほか編 『外国法の調べ方』44頁 (東京大学出版会,1974年 )
イギ リスにおけるプライバ シー保護法論 381
はイギ リス法 で は存荏 しない, と している。(23)憲法上の プライバ シー権 という 主題 に即 して言 えば, イギ リスでは憲法上二重 の意味でプライバ シー権 は承認
されていない ことになる。一つ には成文憲法 が存在 しな くとも承認 されている 種 々の 「市民 的 自由」 または 「基本的権利」 のカタログにプライバ シーの権利
はそれ 自体 の名称 において実効性 を有 す る権利 と して苛 まれていない, とい う 意味であ り,二つ には,通常認 め られている 「憲法上の諸権利」 も議会主権 の 下 で議会 による制約 を受 け議会 自身 も侵 す ことので きない権利 と して承認 され ているわ けではな く,その ような意味 で もプライバ シー権 は承認 されていない のである。 この二重 の意味 での未承認 を解決 する方法 は,現代 イギ リス憲法学 の論議 の中心主題 の一つ となっている人権宣言規定 の成文化すなわち権利章典
(BillofRights)の立法化 のなかでの, プライバ シー権 の宣言で ある。
2 普遍性
I(1)プ ライバ シー保護の必要性 プライバ シー保護の必要性 はイギ リスに秦 いて も存在す る。不法行為法の領域 で は,名誉穀損 その他 の不法行為額型 によ る保護が部分的 にはか られていることは,すでに述べ たところで ある。 このほ か に制定法 による保護 がなされている。一定 の行為 に刑罰 その他 のサ ンクシ ョ ンを加 える方法 によ り,間接的 にプライバ シーを保護 しようとするものである。
この点 は各国 と同 じで ある。代表的立法例 をみてお こう。
① 1949年無線電信法 (WirelessTelegraphyAct1949)1条 1項 は,郵便 ・ 通信大臣の許可 を得 ず に無線電信装置 を設置 または使用す ることを犯罪 と して
いる.同法 5条(bXi)は, なん らかの通信 の内容,発信人,受信人 に関す る情報 を取得 す る目的で無線電信装置 を権 限な しに使用 す ることを禁止 している。同 法 5条(bXii)は, その ように して取得 した情報 の開示 を犯罪 と している. これ ら
は通信の プライバ シーを保護 しようと しているということができる。
② 1953年 郵便 局法 (PostOfficeAct1953) は,郵便 の妨害 を禁止 す る ためにい くつかの犯罪 を規定 している。まず,同法55条 は,郵便物 の不正保持,
¢3)8Halsbury'sLawsofEngland(4thed・)para・843・
382 商 学 討 究 第 37巻 第1 ・2 ・3号
悪意保管 または留置 を禁止 している。また同56条 は,他人 を害する意図 をもっ てその者 に引 き渡 されることになっている郵便物 を開封することを犯罪 として いる。 これ らの規定 は郵便局の外部 の者 に適用 され,内部の被用者 につ いては 同57条,58条 により同様の規制がある。これ らは郵便物 に関 してのプライバ シー を保護 しているが,大臣の明示の令状による郵便局員の開封 を例外 としている 点 は問題 とされている。
③ 1967年 郵 便 局 (デー タ処 理事 業 )法 (PostOffice(DataProcessing Service)Act1967)2条 は,現代的プライバ シーに特別の保護 を与 えた数少
ない規定の一つである。同条 は,データ処理事業 を郵便局が行 なう場合,その 事業か ら郵便局員が取得 した情報 を依頼者の同意 な しに開示することを禁止 し ている。郵便局の外部 に対するデータ処理事業の普及 に伴 う立法化であ り,デー タ保護法の初期形態 とみることができる。
④ 1969年郵便局法 (PostOfficeAct1969)75条 は,他人 に対 す る電話 の内容が極めて不快 なもの,わいせつ もしくは脅迫的な性格の もの,または迷 惑,不都合 もしくは不必要な不安 をもたらす ものである場合には,その ことを 犯罪 としている。いわゆる迷惑電話の問題であるが, ここでは私生活への不当 な侵入 という側面でのプライバ シーの保護が間接的にはか られている0
⑤ 1971年 非注 文 品 ・サー ビス法 (UnsolicitedGoodsandServicesAct 1971)4条 は,注文 を受 けないで,かつその内容が人の性技 を表現 している 書籍等 を他人に送付することを犯罪 としている。郵便 によるわいせつ物の送付 がプライバ シーへの侵入 になるとすれば, この規定 はその一部 を規制 したもの
と言えよう。
⑥ 1974年消費者信用法 (ConsumerCreditAct1974)157条 によれば, 与信者 は消費者 にたい して自分が情報 を得 た信用情報機関の名称 ・住所 を通知 しなければな らず,また同法158条 によれば,信用情報機関は消費者か らの問 い合わせにたい して同機関の有するその消費者 に関するすべての情報の コピー を与えなければな らない。 さらにその与え られた情報 に誤 りがあれば,消章者 はその訂正 を要求することが同法159条の規定 により認 め られている。(24)本法
イギ リスにお けるプライバ シ‑保護法論 383
は, 自己の情報 にたいするコン トロ‑ル権 としての現代的プライバ シー権 を極 めて限定的ではあるが法制度化 したものである。個人情報 にたいするデータ主 体のアクセス権の一部 を認めているか らである。
⑦ 1974年犯罪者社会復帰法 (RehabilitationofOffendersAct1974)は, 刑期 を終 えた犯罪者の社会復帰 を容易 にするための立法であるがそのなかで同 法 9条 は,犯罪者の過去の有罪決定 に関する情報 を一定期間経過後 に権限な し に開示 した者 を処罰する旨を規定 している。一定のセ ンシテ ィブな個人情報 に ついてその取 り扱 いに慎重な態度 を求めた立法 と言 うことができよう。
⑧ 1980年放送法 (BroadcastingAct1980)は,放送苦情処理委員会の設 置 を規定 し,同委員会の権限の一つ と して,同法18条(1Xb)は 「実際に放送 され た ラ ジ オ も し く は テ レ ビ番 組 に お け る プ ラ イバ シー の 不 当 な 侵 害 (unwarrantedinfringementofprivacy)またはその番組 に含 まれ る素材 の 入手 に関連するプライバ シーの不当な侵害」 について申立て られた苦情 を審理 Lかつ裁決することを認 めている。おそ らく, この法律 はイギ リスの制定法で
「プライバ シ‑」 という言葉 を明示的に採用 した最初 の立法 と思われるが,同 法 は 「プライバ シー」 または 「プライバ シーの不当な侵害」 に定義 を与えてい ない。
(2) データ ・プライバ シー保護立法制定の必要性 普遍性の第二 は,判例法 上 もまた立法上 も一般的 プライバ シー権 はいまだ承認 されてはいないけれど も,それ らとは別個 にデ‑夕 ・プライバ シーに関する立法化の必要性の存在す ることである。もっとも,この点 に関 しては,1984年 データ保護法の成立によっ て,立法的解決がはか られたことは先 きに述べたところである。
Ⅱ プライバ シー権論の検討
裁判所がプライバ シー権 を承認 しない,という状況の下でイギ リスのプライ バ シー権論 はいかなる様相 を示 したであろうか。それ らは次の六つ に分類する
如) 長尾治助 「イギ リスにおける個人信用情報業務 の状況 と法規制 一 関示規制 と誤情 報提供等の民事責任‑」判夕536号179頁以下 (1984年 )参照の こと。
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ことができる。(i)判例上のプライバ シー権承認論,(ii)一般的プライバ シー権立 法承認論,(iii)一般的 プライバ シー権立法不承認 ・漸進的改革論,(iv)プライバ シー 権概念否認 ・個別的保護立法論,(V)憲法上の プライバ シー権宣言論,(vi)データ ・
プライバ シー権立法承認論の六つである。これ らの主張 は,時期的に重 な り合 っ ていることもあ り, ここでは必 らず Lも各主張の歴史的展開という叙述形式 を
とらないで,それぞれの主張 を検討 してい くことに したい。
1 判例上のプライバ シー権承認論
法創造機能 を立法府 の任務 と考 える現代 イギ リスの裁判所 は,一般的 プライ バ シ‑権 を宣言 をすることを しぶっている. しか しなが らプライバ シー権論の 諸相 を明 らかに しようとする本稿 において,判例上 プライバ シー権 を承認すべ きであるとする主張の検討 を欠落 させることは片手落 ちの誇 りをまぬがれない であろう。 この主張 はプライバ シー権論の最 も早 い時期 の主張 であ り,今 日も この立場 に立つ論者 は存在す る。
(1)ウインフィール ドの主張 不法行為法学の権威者 ウインフィール ドが こ の説の主唱者 である。彼 は当時,貴族院 に係属 していた‑事件 のために論陣 を 張 り, ロー ・ク ゥオータリ ・レヴュー誌 に 「プライバ シー」 と題する論文 を寄 稿 した。その事件 は,チ ョコ レー ト・メーカーの宣伝 笹自分の肖像漫画 を無断 で使 われたア寺チュア ・ゴルファーが名誉穀損訴訟 を提起 した事件 であ り,控 訴院 は被告の責任 を否定 していた (Tolley事件 )0(25)ゥィンフ ィール ドは, こ の事件 は名誉穀損の不法行為が問題 となるのではな く, まさにプライバ シーの 権利 の侵害が問題 となる事件 であると主張 し, 自身のプライバ シー権論 を展開 した。彼 によれば,「プライバ シーの侵害 とは社会か らのある者 自身 またはそ の者の財産の隔離 に対 する無権限の妨害である。」(26)とされ, プライバ シーは, 財産 の プライバ シー (privacyofproperty)と人格 プ ライバ シー (personal privacy)に分 けられ る。そ して,前者 は契約,ニューサ ンス, トレスパ ス, 著作権 などの伝統的手段 により保養 されているが,後者の人格 プライバ シーは e5) Tolleyv.J.S.Fry@ Sons,Ltd.[1930]KIBl467‑
626) Winfield,Privacy,47L.Q.REV.23,24(1931)・
イギ リスにおけるプライバ シー保護法論 385
保護 されていない,とし,Tolley事件 では貴族院 は名誉穀損 を認定する方法 もあるが ,もう一つの好 ま しい方法 と しては 「人格 プライバ シーの不法な侵害」
という不法行為 とすべきである,と主張 した。(27)ゥィンフィール ドの主張 にも かかわ らず,貴族院は名誉穀損 により問題の解決 をはかった。(28)
(2) デニングの主張 ウインフィール ドの挫折以後,学者の主張 は議会のイ ニ シアティブを期待する方向に傾 くが,今 日でも裁判所の役割 を強調する論者 は存在す る。「改革す る裁判官」として有名 なデニ ング卿 (LordDenning) がその人である。デニ ングは,その著書のなかで,先 きのTolley事件 に触れ,
「もし被告が原告 を公衆か らみて誤 った印象 を与えるような形で公表するな ら ば,それは原告の プライバ シー権の侵害である
。
」(29)と明言 し,自分 ならばそ の ような権利の存在 を承認する, と した。そ して,「裁判官達の前 にいかなる 障害 も存在 しない。アメ リカ合衆国の裁判所 が発見 したように,新 しい不法行 為 を発見することが裁判官達の前 に開かれている。 イギ リス法 はプライバ シー 権 を承認すべきである。その侵害 には損害賠償 または事態が要求する場合 には 差止命令 の訴訟原因を与 えるべ きである。」(30)と述べている。デニ ングの主張は, イギ リスの裁判官のなかでは少数意見であり,大部分の裁判官 は,新 しい 法の発見 ・創造 は自分達の任務 ではな く議会 のそれである (Itisnoforus.It isforParliament)と考 えているために,第‑の主張 は今 日までのところイギ
リスの裁判所の受 け入れるところとはなっていない。(31)
e7)Id.,at39.
¢8)Tolleyv.Fry@ Sons,[1931]AER Rep131l
e9) LoRD DENNING,W HAT NEXTINTHE LAW 225(1982)・ (30)Ld.,at267.
(31)最近の イギ リスの裁判例のなかにプライバ シー権承認の動 きを読みとることができ る とす る Seipp,EnglishJudicialRecognitionofaRighttoPrivacy3OXFORD J・
LEGAL STUD.325(1983)の主張 は注 目に値するが,Seippの挙 げる個 々の判例 は, プライバ シー問題 を正面か ら扱 ったものではなく,プライバ シー権 を承認すべ きで ある,とする主張 としては是認 できるが,プライバ シー権が承認 されている・ とす る主張 であるな らば,著者の見解 を是認することはできないo個々の判例の検討 は 残 された課題 としてお く。
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2 一般的プライバ シー権立法承認論
この主張 は,判例 を通 しての プ ライバ シ‑権 の承認 に望 み を失 った人 々 に よって繰 り返 し述べ られてきた。
(1)プライバ シー権法案の提 出 1961年 のマ ンクロフ ト卿 (LordMancroft )の 「プライバ シー権 法案」 (RightofPrivacyBil11961) をもってその嘱 矢 とす るが,(32)さ らに1967年 の ライオ ン議員 (Mr.AlexanderLyon)の法案 (Righ tofPrivacyBill1967),1969年 の ウォー ル デ ン議 員 (Mr.Brian Walden)の法 案 (RightofPrivacyBill1969)をあ げる ことがで きる。 し か し, いずれ も成立 していない。三 つの法案 のなかではもっとも詳細 なウォー ルデ ン法案 の内容 を紹介 してお こう。
この法案 は 「プライバ シー権 を創設 し,その結果生 ず る証拠 法 に対 する修正 を行 な うため,お よびその他 の関連 する目的のための法案」 である。第 1条 で
「プ ライバ シーの侵害 を理 由 とす る訴権」 を認 め る。す なわち, 「本法施行以 後 に生 じた, いかなる実質的かつ不合理 な プライバ シー権 の侵害 もその プライ バ シー権 を侵 害 され た者 の提起 す る訴訟 において訴 え られ うるもの とす る。」
との規定 を置 いたのである。第 9条 の定義規定 で 「プライバ シー権」 を次の如 く定義 す るo 「プライバ シー権 とは, ある者 自身, その住居, その家族 その者 の第三者 との結 びつ きおよび通信, その財産 な らびにその事業 にたいす る侵害 か ら保護 され るべ き人 の権利 であ り,その侵入 には次の方法 によるものが含 ま れ る。(a)秘密調査,のぞき,監視 またはつ きまとい,(b)語 られた言葉 を権限 な しに立 聞 き しまたは記録 す ること,(C)視覚心像 を権限な しに作 ること,(d)文書 を権 限 な しに読 みまたはコピーする こと,(e)ある者 を悩 ませ,困 らせ も しくは 困惑 させ ること, またはその者 を誤認 させ ることを意図 して,信頼関係 に基づ いて託 された秘密情報 もしくは事実 (その者の氏名,身元 その他 を含 む)の権 限な しの利用 も しくは開示,(f)他人 の利得 のために, ある者の氏名,身元 その 他 を権 限 な しに盗用 す ること。」被告 に認 め られ る抗弁 は,(i)あ らゆる合理的 (32) 戒能通孝 「プライヴァシーとその範囲」法律時報33巻5号10頁 (1961年 )(戒能‑
伊藤編 『プライヴァシ‑研究』101頁以下所収)に法案審議の経過が紹介されている。