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工作学習に関するレディネスについて
著者 奥谷 多作
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 3
ページ 15‑19
発行年 1967‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10105/6117
工作学習に関するレディネスについて
奥 谷 多 作 (技術科教室)
1間 題
児童、生徒の心身の準備がじゅうぶんにできあがった状態を発見して、その状態に最も適した学習指 導をおこなうことは、どの教科の教育においても重要なことである。工作学習を効果的に指導するには、
まず児童、生徒の技術能力や心身の発達の状態を確め、これに応じた指導方法を用意することである。
技術能力や心身の発達が一定の水準に到達する以前には、おそらく、児童、生徒は工作学習には興味を 持たず、その意欲をさえかかさずにはおかないであろう、もし、それにもかかわらず、水準を越えた材 料や工作法、工具によって、工作学習を強制させられるたら、児童、生徒はその学習に嫌悪を感じ、あ るいは劣等感さえもっようになりかねないのである、この反対に、すでに技術能力の発達が一定の水準 に達しているのに、もしその学習を保留させられると、彼等はその学習にフラストレーションを起こし、
効果的に学習しないであろう、したがって、工作学習であるプロジェクトの製作を指導するとき、彼等 の技術能力の身体的、知的、経験的な成熟が、そのプロジェクトの学習を効果的になしうる水準まで準 備ができあがっているかどうかを確める必要がある、この準備ができあがっていれば、彼等はこの学習 に興味をもち、それを自発的に試みようとするであろう、それは効果的な学習活動をなしたことになる、
こうした成熟または、準備の度合をここではレディネスと呼ぶ、しかし、①一定の学習をするのに最も よいレディネスを決定するということは非常に困難である、それは、現実の発達は、個体の先天的た発 達可能性が後天的な環境からの影響を受けての展開であるからであり、いかなる学習を展開するかは、
成熟水準に依存しているが、成熟は、また特殊な訓練に依存しているのである、だから一定の学習の最 適期を発達的に考察し、発見することは、簡単にはできないのである、教科と結びついたレディネスの
研究は、②Morphe七t M.V&WashburnθOの児童に対するread−ing read−iness の研究、⑧Washburne O.を中一し、としたr算数の学年配当ア人委員会」(thθOommittee of Seven on G・rad−e Pla.cement i1ユAri七hmetic)の計算を解するにはどれほどの 知能年令が要求されるかの研究、わが国では、④青木誠四郎の計算と精神年令との関係についての研究、
⑥松原達哉の乗法九九学習のレディネスに関する実験的研究などがあるだけで、その他は、レディネス テストの研究である、過去のレディネスの研究の多くは読書と算数を中心としたものであった。しかし、
技術科教育において、それぞれの工作学習を、それぞれの学年で成功的に導くためには、各プロジェク トに対して総合的な研究が望まれる、こうした分野の開拓に少しでも寄与するところがあればと願い、
この実験を進めた。
皿 目 的
本研究は、上記の意味におけるしノディネスを、技術科教育の中での工作学習である、木材加工学習と
金属加工学習の2領域で研究し、工作学習に関する技術能力と基礎体力、知能検査、適性検査との関係
一15一
で検討し、工作学習に関するレディネヌの要因についての分析的研究に関連ずけようとしたものである。
皿実 験 方 法
本実験の方法は、第一実験を木材加工学習に含まれる基本動本を分析することにし、第二実験では金 属加工学習に含まれている基本動作について測定するものと区別した、実験対象は中学校2年男子を選 び、彼験者総数は各実験ともア0名で、この中実験中の事故、欠席者などは統計処理の際除外して取り 扱った、これらの被験者数は統計的にみて、もちろんじゅうぶんであるといえない、第一実験は奈良女 子大学附属中学校木工室で、昭和39年12月に実施し、第二実験は、奈良教育大学附属中学校工作室 で昭和41年11月に実施した、いずれの中学校も、本実験の申し出に対して援助を惜しまず、積極的 に協力した、なお実験にさきだって、技術能力との関係を検討する必要から、それぞれの知能検査、基 礎体力検査の成績を蒐集した、これらの結果から実験群をつくった。
第一実験では、木材加工学習の基本動作として、手工具によるrのこびき」、 「きりもみ」、「くぎ 打ち」の三種の領域を選定し次の方法で測定した、材料を堅木の樹種とかで板目に仕上げ、140x210
x21伽に切断し、表面にのこびき位置、方向、きりもみ位置、深さ、くぎ打ち位置、深さを指示した 用紙を接着して、作業の便を計った、作業時間は、予備実験の結果、のこびき2分、きりもみ6分、く ぎ打ち6分として、指示事項は、のこびきの場合、横びきを使用し、工作台でも片手ひきて、一方の手 で材料を固定すること、加工量より正確さに留意するようにした、きりもみの場合、板面と穴の中心が 直角になるように指示し、三つ日ぎりのきり先が裏面に貴通する点で、そのきりもみを完了したことに した、くぎ打ちは、N19F鉄丸くぎを用いて、くぎの頭が板面以下に沈むまで打ち込むことにした。
途中で曲がった場合は修正して打たせた、これらの試料の評価は、のこびきの場合、木表側と木裏側の のこびき長さを読み、その直線性も参考資料とした。きりもみの場合、きり穴の数量を読み、その直角 性と位置の正確さを参考資料とした。くぎ打ちの場合は打ち込まれた釘の数を読み、その位置の正確さ を参考資料として採用した。
第二実験では、金属加工学習の基本動作として、手工具による「やすりがけ」「のこびき」の二領域 を選び次のような方法で測定した、軟鋼板を130x210×1.1で用意し、工作台の上に水平に置き、工 作台の端から軟鋼板の角を約20舳っきだしておき、左手で動かぬよう固定す、やすりがけは、半丸や すり中目をもって、軟鋼板と垂直に下向方向にやすりがけをする。この場合軟鋼板の角を辺から45rこ なるよう切削する、削{)取られた部分は二等辺三角形になる、時間は2分間とする、のこびきの場合は、
軟鋼板の一方の端から10伽の位置に辺と平行なけびき線を引き、その上をのこびきするようにした。
工具としては金切鋸の匁の部分を手に持って切断した、のこ匁を前に押すときに切れるように持つのは もちろんである。指示事項としては、やすりがけ、のこびきともに、やすりやのこ匁の運動方向が軟鋼 板の面と直角方向にたるよう留意させた、これらの試料の評価では、削り取られた三角形部分の面積を 言売み、角度の正確さ等を参考資料としたやすりがけと、切断された長さを読むのこびきとに分けた、以 上の実験の後、第二実験を行なった実験群については、入間の動特性に関する比較的簡単な⑥適性検査 であるOyl⊃ernetical Oontro1ユability NO (O.O,NO)検査を施した。
w結果とその考察
第一実験で得られた、木材加工学習の基本動作の評価相互の関係を、PθaS Onの相関係数法で算出
一16一
するとコロa」b■e 1のようになる。サンプル数がN=ア0
Tab■e 1木材刀ロエ基本動作尚の相関係数 N=ア0
と非常に不十分な点を考えても、のこびき能 力とくぎ打ち能力との間にやや 相関があることがわかり、きり
1 2 3
L
一1のこびき能力 0.35 0.46
2きりもみ能力 0.35 一0.11
3くぎ打ち能力 0.46 一0.11
もみ能力とくぎ打ち能力の問に は相関関係がないことを表わし ている。このことから経験的に 工作学習における習熟の難易度
が、<砥歓意りもみ〉く正激〔くぎうち〉<正確たのこびき〉の順に 並ぶことを類推することができる、きりもみは両手でカップルの力をきりに与え、回転させながら垂直 に押し下げようとする力を加え、さらに回転軸を常に垂直に保たたければならないという三種のコント ロールをしながら操作するためであろう。くぎ打ちは、玄能を振り除しながら瞬間の判断でくぎの頭へ 打激を、正確に与えなければならないから相当困難な操作にたることが考えさせられる。のこびきは、
他の動作と比較して一般的な木材加工の技術となっているが、ひき溝が一度できれば力を加える方向さ え正しければ、 容易にひき割れることを表わしているようにも思われる。これらのことから、木 材加工の諸動作問には共通に働く、共通の能力があって、その大いさによって木材加工学習の種々の活 動が決められるのではなく、各動作には別々に能力のレベルがあると考えた方がよいであろう。つまり、
木材加工におけるのこびき、きりもみ、くぎ打ち、板けずり、のみの穴あけ等の動作の問には相関関係 はなく、それぞれ別のもので、それぞれ独立した能力と考えることができる。したがってそこに共通因 子はなくそれぞれ学習されるべきものであり、その意味で、レディネスを考える場合には、各動作相互 に分析されなければならなくなる。さらに、これらの基本動作を行なう人間側の基礎体力との相関関係 を、工able2に見ると、木材加工の基礎能力と基礎体力の間にはほとんど、相関関係がもたれない ことがわかる。
コ=abユθ 2 木材加工基本動作と基礎体力との相関係数 N一ア。
L のこびき能力
身 長体 重胸 回目筋力握 力肺活量
等のように手
のこびき能力 一0.18 −o.14 _o.18 _o.34 _o.28 _o.24 の力に依存す
きりもみ能力 一0,10 0,03 0.16 −0.18 −0.13 −0.08 ることの多い
くぎ打ち能力 一0.05 +0.01 ■0.02 ・0−05 0.口5 0・05 動作等は背筋 力や握力とい
った筋力に関係するものとの相関関係が当然考えられるが、それがないことの原因と考えてみると、こ
こでは一般に常識化している概念としての「器用さ」「巧緻性」という。何らかの動作、活動、技能の
成熟、学習の過程における行動の有効性を規定する諸機能の機能連関に対する総称のようだ、この言葉
を思い出さねばならなくなる。あるいは眼と手の協応度の正確さを問題にしなければならないかも知れ
ないし、木材加工の能力としては腕力の他に。たとえば、のこびきのコツ、くぎ打ちのコツと言ったも
のを想定しなければならないのかも知れない。工alっ■e 3に金属加工における基本動作とO.O.N0
検査による技能点、知能指数、基礎体力との関係をあげているがやはり,それらの間には、ほとんど相
関関係を認められない、体育学の分野では、⑦体力の伸びの相関が種々研究されているが、体力と運動
技能の相関は比較的高いことがわかってきた。工作学習のレディ外スとしての基礎能力の分析は、視点
一1アー
工a1⊃1θ 3金属加工基本動作とO.C.NO Iq 基礎体力との相関係数 N;70
L
O.O.NOによる技能点 基礎体力
1㍗㌻廿■∵1上二片ニニ1
を正確に容動作と動作の交点に当てて、基礎的な動作をこなせうる能力を問題にできる点にまでさかの ぼって実施しなければならないであろう。Ta.ble3によってこの種の能力をぺ一バチストによって 測定することの困難さを見ることができる。これらのことから、工作学習における用具、工具の使用能 力のレディ.ネス等、技術科領域に含まれる学習活動のうち工作学習に関してのレディネスの分析として、
基礎体力や知能段階、適性検査等を想定することは適切でないことが認められる、それには体力等で代 表される身体的発達の要因以外に次の因子について考慮が払われなけれぱならないであろう。第一に精 神的な発達の要因である、工作学習に必要な知能、人問」機械系としての反応特性であり、第二に性格 的要因である、根気の強さ、自主性、情緒の安定性であり、第三に工作活動に対する興味や、工作活動 に含まれる技術内容のなんらかの経験などが重要なものとなり、これらのレディネスの研究をさらに進 めなければならない。
V要 約
○工作学習のレディネスを研究する予備段階として、基礎体力、体位と工作学習に要求される。技術能 力との関係を求めた結果、その問に有意な関係は見られなかった。
○工作活動の諸領域に発揮される技術能力に共通に関与するもので、工作学習が機制されるのでなく、
個々の工作活動の中で細分化された基本動作は、独自に個別の要因によって支配されている。
○工作学習における技術能力についてのレディネスの研究は、個々の基本動作を個別の要により、ぺ一 バーテストによらない検査方法を見つけだすことによって進めなければならない。
○それには、人間工学の分野で用意された、人間の技術能力の動特性を見いだす研究から進めて、児童、
生徒に有効適切な学習を行なわせうるレディネスが求められなければならない。
実験(1965年12月)に当り大正中学校出川秀政教諭、(1966年12月)附属中学教頭小西惣 次教官の御好意に厚く感謝いたします。
M文 献
①中野佐三:レディネス、教育心理学辞典;金子書房昭31,556〜559頁
②Merp1ユe七t,M.V.&Washlourne,O:Wbθnshould−chi■d−renbeginto
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⑨Was]ユburne,O:工hθWarkoftheOomni七七eθofSevenonG・raaeP工一
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