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教育用「心理尺度データベース」の改訂(2011年版)

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(1)

Ⅰ.はじめに

筆者たちは,2001年に次のような目的で,「心 理尺度データベース」を作成した。それは,本学 で開講されている,心理学関連の授業科目のうち,

おもに調査法を学んだり,それを用いて研究論文 やレポートを作成したりする授業科目を受講して いる学生に対し,学生個々人の能力に応じて学べ,

学生の学習意欲を動機づけることができ,限られ た授業時間の中で課題をこなし,しかも学問的な 成果が生み出せるような教育媒体となる「心理尺 度データベース」を作成することであった。

そして,作成した「心理尺度データベース」を 本学の学内LAN上で公開した。その後,当初の 目的がより達成されるように,学生への教育実践

を検討しつつ,今回を含め2回の改訂を試みてき た。本論文では,その経過を報告する。

なお,筆者の一人は心理系の,他の一人は福祉 系の学部に属しており,教育実践の対象者は必ず しも心理学専攻の学生ばかりではない。以下の教 育実践の記述も両者を含んだものになっているこ とを,あらかじめ承知されたい。

Ⅱ.2001年版について

1.2001年版の作成

基本となった2001年作成の「心理尺度データベー ス」には,データベースの資料として,心理学研 究・教育心理学研究・社会心理学研究などの学術 雑誌および大学紀要等に掲載された論文のうち,

心理尺度を用いた論文(502論文)を収集し,645 の心理尺度を抽出し,収録した。

目的達成のために次のような工夫がなされた。

― 57―

要旨

学生個々人の能力に応じて学べ,学生の学習意欲を動機づけることができ,限られた授業時間の中で課題をこな し,しかも学問的な成果が生み出せるような教育媒体となる「心理尺度データベース」を2001年に作成し,本学の 学内LAN上で公開した。その後,当初の目的がより達成されるように,学生への教育実践を検討しつつ,今回を 含め2回の改訂を試みてきた。特に,「心理尺度データベース」をさまざまな授業の中で活用し,単に,心理尺度 の検索ツールとしてのみならず,心理学の学習用教材として,あるいは学生に大学での学び方を身に着けさせるこ とができるような教育用ツールとして利用範囲を拡大していくことを試みた経過を報告する。

キー・ワード:心理尺度,データベース,教育,教材

教育用「心理尺度データベース」の改訂(2011年版)

※1

―教材としての利用範囲拡大を目指して―

新 美 明 夫 ・ 永 田 忠 夫

ConstructionofPsycho-scaleDatabaseforStudents(2011Edition)

-Expandingthescopeofuseasateachingmaterial-

AkioNiimiandTadaoNagata

※1 本研究は、平成22年度・23年度愛知淑徳大学研 究助成(共同研究)を受けた

(2)

第一に,学生が自分の能力に応じて学習できる ようにするため,データベースを構成する項目に

「尺度の領域」をもうけ,「尺度名」のみならず尺 度を構成する「尺度構成内容(下位尺度名)」を 入力して,よりきめ細やかに検索できるようにし た。「尺度の領域」は,論文に掲載された心理尺 度内容に合わせ,広義の領域を表す心理学用語か ら狭義の心理学用語までを大分類・中分類・小分 類で分類し,それぞれキーワード的な表記として 掲載した。

これは,従来のデータベースでの文献検索では,

学生の興味・関心となる検索ワードを入力するよ うに促しても,なかなか検索するキーワードを想 起することができなかたり,あまりにも日常用語 であったりして検索された文献が多すぎ,つぎの 段階であるレポート作成のテーマに展開しうる文 献検索ができず,データベースの検索を何回か試 行後,該当する文献が見つけられないとあきらめ てしまう学生も多いということを体験したからで ある。学生の研究対象(研究テーマ)が漠然とし ていたり,あいまいであったりして学生が頭に描 く具体的行動レベルと心理的概念との関係が十分 把握できていない学生に対しても,学生が思いつ きやすい用語でも検索できるようにした。検索が できる経験が増えることは,結果的に学習意欲を 高めることになると考えたからである。

なお,「尺度の領域」の検索ワードは,学生が 思いつく言葉・用語を考慮しつつも,心理学用語・

概念を用いたワードで分類することによって,心 理学研究領域で使用されている心理尺度の概観を 学べるようにした。大分類と中分類は,個人(自 己,発達,性格・能力,認知判断傾向,欲求・動 機,感情・気分)・対人関係(他者認知・好意,

対人態度,対人行動,コミュニケーション,家族,

学校,職場,友人関係)・社会生活(価値観,態 度,ライフスタイル,集団,家庭,職業,教育,

地域,社会的活動,マスメディア)・精神的健康

(適応,ストレス,不安・恐怖,問題行動)とし,

それぞれをさらに小分類した。

第二に,学生の能力に応じた文献検索や授業効 率を良くするため,心理尺度の「質問項目」や

「質問項目への回答形式」の部分を元文献からス

クラップし,画像データとして表示することとし た。

従来の心理尺度のWEB検索データベースは,

多くは尺度名と掲載文献情報のみの検索結果であ り,たとえ学生が心理尺度を検索できたとしても,

学生が調べたいと思っている内容と一致した質問 項目群で構成されているのかを確かめるには,い ちいち検索した文献を手に入れて確かめる必要が ある。この画像情報は,時間の制約がある演習時 間内で,学生がすばやく「自分の調べたい心理尺 度情報」と「検索した心理尺度が測定しようとし ている心理学的意味内容」と合致しているかを確 かめたり,学生が頭で描く用語が心理学ではどの ような用い方をされているかを理解したりできる という利点がある。また,学生が調査票を作成す る際に質問項目のワーディングの参考資料として 即座に利用することができることを意図したもの である。

第三に,学生が,自ら検索したこの心理尺度デー タベースの情報から心理尺度の作成過程を理解し たり,心理尺度が備えるべき基本的条件を学習し たりできるようにした。

そのために,「尺度の出典情報」「調査対象者の 発達段階」「対象者の属性,人数」は検索可能な テキスト情報として表示し,「尺度を構成するた めの検討データ(因子分析等)」「標準化あるいは 尺度得点結果(平均値・標準偏差等)」「尺度の信 頼性検討データ(α係数等)」「妥当性の検討デー タ(他の尺度との相関関係等)」の情報はこれも 元文献からスクラップし,画像データとして表示 することとした。

学生が効率よく学習できるようにするために,

検索した文献の「文献所在情報」も掲載した。こ れは本学の2つのキャンパスにあるそれぞれの図 書館での所蔵情報を示したものである。

第四に,このデータベースを気軽に利用できる ように,また学生がこれを十分活用できるように,

マニュアル「心理尺度データベースの利用方法」

を掲載した。このマニュアルには,1)WWWブ ラウザの設定,2)サーバーへのアクセス方法,

3)データベースの検索方法,4)データベース で提供されるデータの解説,5)検索可能な用語

(3)

一覧表である「心理尺度の領域分類」を掲載した。

なお,データベースサーバーは,長久手キャン パスの新美研究室に設置した。

2.2001年版「心理尺度データベース」の利用 基礎教育段階での実践

1年生の段階(基礎ゼミなど)では,大学での 学び方を指導するとともに,レポートの書き方を 指導する。その一環として,日常的な興味関心や 経験を通して,あるいは授業や自己学習を通して 各自がもった疑問や課題を深めたり解決したりす るために,図書館利用の仕方を体験させる。その 際,個人的テーマを単に自己充足的な解決を求め たり,自己満足のためのテーマではなく,公共性 のある,一般に論じる価値のあるテーマにするこ とを教えるのであるが,この段階では,学生は何 が研究テーマになりうるかさえ明確でない。

そのために,自分の興味・関心のあることにつ いて過去にどんな研究がなされてきたかを,なる べく学術的な論文や論説が掲載されているような 文献を利用して調べるように指導をしている。

文献収集の方法として,図書館の「蔵書検索;

OPAC」「基礎資料リスト;パスファインダー」

「データベース;WEB資料」や図書館内回覧な どを学ぶ。しかし,学生の興味・関心となる検索 キーワードを入力するように促しても,なかなか 検索するキーワードを思いつくことができなかっ たり,検索しても文献が見つけられなかったり,

あまりにも検索された文献が多すぎたりして,次 の段階である自らのレポート作成のテーマに結び つく文献を検索できないことが多い。その結果,

検索を何回か試行後,文献検索の段階で挫折感を もち基礎教育の学習意欲が低下してしまう学生が いる。

入学後間もない学生の興味・関心は,多様であ り,しかもある程度価値のあるテーマとして指導 していくことは難しい。筆者たちが所属する学部 学生の人間に対する興味・関心も,生理学の対象 となるもの,心理学の対象であるもの,社会学の 対象となるものと多様である。その中で,心理学 の対象である個々人の意識経験をキーワードやテー マに取り上げる学生の指導のために,「心理尺度

データベース」を利用させてみた。

まず,学生が思いついた言葉・用語を検索フィー ルドの「尺度の領域」,「尺度名」,「尺度構成内容」

を使ってとにかく試行錯誤的に入力して検索する ようにすすめた。その結果,ある程度の学生は,

特に「尺度の領域」のワード検索利用によって尺 度を用いた研究の文献情報(著者・発行年・論文 題目・掲載雑誌名・巻・号・頁など)を見つけ出 すことができた。そうした学生には,検索した尺 度の「尺度構成内容(下位尺度名)」や「質問項 目」を見せることによって心理学的概念として用 いられる用語の意味内容(定義)を理解させるこ とや学生が思っていた検索の言葉と心理学で用い られている用語に差異があるかを検討させて学術 用語の意味を理解させるようにした。

検索ワードが選択できない学生に対しては検索 ワード一覧表である「領域分類」の表を見せ,自 分のイメージする言葉とマッチングさせるという 再認法でキーワードを見つけ出すことを試みた。

この方法は,ある程度有効であった。

また,演習形式の授業で,個々人の検索結果を 発表させ,「領域分類」全体を解説することによっ て,この時期にまだ心理学の授業を受けていない 学生に対して心理学への興味・関心もたせ,心理 学の導入教育ができた。

しかし,この分類の仕方は,心理学,特に社会 心理学を学んだあとの学生たちにとっては,理解 しやすいようであったが,その経験のない学生に とって,単なるキーワードの選択には役立つので あるが,心理尺度を用いた研究の全体像を理解す ることは難しいことが分かった。

心理学を学び始めた学生への導入として学生の 興味・関心のあるテーマが心理学研究全体の中で どのような位置づけをしているかを明確にするた めには,チャート式に心理学が扱う領域の大分類 からそれぞれの領域で用いられている中分類,さ らには細分類・詳細分類へ絞っていけるとか,逆 に詳細分類からさかのぼって,全体の研究領域の どの部分にあたるかを知ることができるような

「領域分類」表を作成する必要性を感じた。

調査法・尺度構成法などの教育段階での実践 心理学の方法論としての調査法を学習させる段

― 59―

(4)

階では,目的の検証をするために用いられる心理 学的概念についての尺度を構成する質問項目の収 集・整理・作成が必要である。その際,これまで の研究で用いられた尺度の質問項目や下位尺度の 質問項目構成,質問項目のワーディングおよび回 答方法は,重要な参考資料となる。そこでこの

「心理尺度データベース」の活用の教育をおこなっ た。この教育方法は,学生が必要と考える参考資 料の収集に試行錯誤的方法で自主的かつ積極的に これを利用するようになり,学習意欲を高めるの に役立った。しかも,授業の効率化に役立った。

さらに,質問紙調査法によく用いられる評定尺 度法やSD法についての学習場面では,質問項目 の作成に利用するほか,収録された回答法から測 定値の水準と統計処理法の関係の解説,尺度構成 における因子分析結果の表や信頼性係数の読み取 り方,その尺度を利用した平均値の差の検定結果 などの解説などを通して,統計的処理方法の教育 に役立てることができた。また,報告書の結果の 書き方(表の書き方など)の教育にも利用し,効 果があった。

卒業研究(卒業論文)作成における利用 心理学の領域でのテーマで卒業研究を望む学生 の指導にあたり, 目的 (文献研究など), 方法

(調査票の作成など),結果(統計処理及びその結 果の表記など)それぞれの部分で必要に応じて

「心理尺度データベース」を利用した。

心理学が専攻でない学生や心理学が専攻でも卒 業研究のテーマが明確でない学生にその手掛かり となる教材を示すことが必要であることが多い。

そこで,テーマを絞るために「心理尺度データベー ス」を利用した。まず,「領域分類」を見せ,関 心が持てそうな用語を選択させることから始め,

検索結果の「質問項目」などから尺度内容を確認 させたり,「雑誌名」などから得られた文献購読 をしてみたりといった試行錯誤的な学習を試み,

とにかくテーマを作り出す指導をしてみた。調査 法を用いた卒業研究に枠をはめてしまうことにな るが,なかなか卒業研究テーマの絞り込みが進ま ない学生の指導に役立った。

Ⅲ.2006年版について

1.2006年版の作成

2006年に2001年版の「心理尺度データベース」

の改訂(2006年版)を行った(永田・新美,2007)。

改訂の目的は,その後に収集した心理尺度データ を追加登録し量的に充実するとともに,2001年に 作成した「心理尺度データベース」をさまざまな 授業に利用してきた結果を踏まえ,より教育的効 果をあげることや授業の効率化ができるように改 善をすることであった。「心理尺度データベース」

が自主性・主体性をもって積極的に研究課題にチャ レンジする学生に役立つことはもとより,心理学 の導入段階にある学生,特に心理学を主専攻とし ない学生に対して,あるいは,専攻しているが自 由課題のレポートや卒業研究が進展していかない 学生の指導にも教材として以前にもまして役立つ ことを目指した。

収録するデータの量的充実

2006年版には,発達心理学研究(1990~2005),

家族心理学研究(1987~2004)の2学術雑誌論文 を収集論文に加えた。2001年版に収録した論文数 502,尺度数645が,2006年度版では,論文数968, 尺度数1,413となった。

領域分類の再編

この「心理尺度データベース」が単なる尺度の 検索のみの利用に終わるものではなく,研究テー マを絞り込めない学生がこれを利用することによっ て,心理尺度を扱う心理学の研究対象の概観を見 ることができ,それから自らの研究テーマを絞り 込んだり,ある程度自分のテーマが決まり検討要 因が明確になっている学生が,検索して見つけ出 された尺度や文献が研究対象全体のどの部分にあ たる領域のものかを明確にすることができるよう な教育・指導ツールとするために「尺度の領域」

の領域分類(検索ワード)を再編した。それはチャー ト式にして,心理学が扱う領域の大分類から詳細 分類へ絞っていけるとか,逆に詳細分類からさか のぼって,全体の研究領域のどの部分にあたるか を知ることができるような「領域分類」にするこ とであった。

そのために,まず,学生の興味関心の対象や研

(5)

究テーマが,自分の生活領域のどの領域の問題か を明確にさせる大分類を設定した。学生がわかり やすい生活領域の区分としてシステム論やコミュ ニケーション論の中で取り上げられるシステムレ ベルに基づいた社会階層の考えを取り入れること にした。さらに,大分類ごとに,中分類,小分類,

詳細分類の4段階の分類をした。

以下,「 」内は大分類名を,{ }内は中分類名 を,〈 〉内は小分類名を示す。

大分類は,個人システムにあたる「個人」,二 者システムにあたる「対人関係」,集団システム にあたる集団生活の「家族」,「学校」,「職場」,

「小集団」,そして地域システムさらには国家・文 化システムにあたる「社会生活」の4階層7領域 に大分類した。(なお,図1~3は,学生指導に 用いた図表である)

中分類は,それぞれの大分類の下位に,それぞ れの領域がもつ特徴的な対象領域を数個のカテゴ リーに分け,その内容別分類を中分類名とした。

すなわち,中分類名を総称するカテゴリーを中分 類の前に掲げ,検索ワードとはしなかったが,説 明的名称として分類表には載せた。以下,そのカ テゴリー名称は,《 》内で示す。

小分類は,中分類を検索しやすいワードにする よう考慮しながらさらに細かく分類した。

詳細分類は,尺度名や下位尺度名に近い検索ワー ドを用いて分類した。

「個人」の中分類は,個人をとらえるにも《内 的過程》と《発達過程》および《適応過程》の3 側面からとらえられることができることを示しな がら分類した。《内的過程》は,{自己},{性格・

能力},{感情・気分},{欲求・動機}に,《発達 過程》は,乳幼児から老年期に至る{発達段階}

に,《適応過程》は,{状態},{対処能力・特性},

{対処法・方略}に中分類にした。《適応過程》の 中分類である{適応}は,適応状態を調べる流れ を考えられるように小分類した。学生に対して,

「その流れは,人にストレス状態を引き起こさせ る外部要因である〈ストレッサー〉が何かを明ら かにし,そのストレッサーに対抗する内的要因と して,そのひとはどのようなストレッサーをどう

〈認知的評価〉するのか,〈ストレス対処能力・

特性〉や〈ストレス対処法・方略〉を持ち備えて いるのか,その結果どのようなストレス〈状態〉

が生じているのかを査定し,そのストレス状態の 表出としてどんな〈対処行動〉や〈ストレス反応

〉が生じているかを調べることである」ことを説 明できるような分類にした。

「対人関係」は,《対人態度》と《相互過程》と

《対人適応》の3側面からとらえられることを示 しながら分類した。《対人態度》は,{他者への関 心},{対人認知},{対人感情},{対人行動}に分 類した。対人態度については,{他者への関心}

― 61―

図1 システムレベルと「尺度の領域」の分類

図2 適応過程の流れ

(6)

を除き,態度の3成分といわれる認知・感情・行 動に分類し,態度についての解説もできるように した。また,小分類では,{対人行動}の分類を,

〈対友人〉,〈対異性〉といった対象者別(相手)

にし,2者関係を明確にすることによって,学生 が検索しやすくなるようにした。

《相互過程》は,{関係のもち方},{コミュニケー ション},{関係の認知}に分類した。{関係のも ち方}や{関係の認知}の小分類では,〈友人関 係〉,〈異性関係〉など2者の関係によって表示し,

2者の関係性を明確にした分類とした。

《対人適応》は,「個人」の適応の分類に準じ,

{状態},{ストレッサー},{認知的評価},{対処 能力・特性},{対処法・方略}に分類した。

「集団生活」は,先にも述べたように大分類と して「集団生活(小集団)」「集団生活(家族)」

「集団生活(学校)」「集団生活(職場)」,を独立 させ,学生が自分の興味・関心領域を大枠で選択 できるようにした。中分類は,まず,集団生活の 場ごとに《集団生活としての小集団》,《集団とし ての家族》,《集団としての学校》,《集団としての 職場》に分け,集団は,それぞれ集団特有の{機 能}や{構造}をもって営まれており,それぞれ の{集団への評価}の仕方をもっていることを理 解させながら検索できるように配慮した。したがっ て,それぞれの集団のとらえ方を{構造}と{機 能}および{集団への評価}の側面から3分類し た。さらに,中分類には,その集団生活内での

{対人関係}と集団生活における{適応}の2分 類を加えた。{対人関係}に関しては,「対人関係」

の,{適応}に関しては,「個人」の中分類を適用

し小分類とした。

「社会生活」を大きく《メディア》《社会生活へ の態度》《個人生活への態度》および《適応》に カテゴライズし,《メディア》を{メディア接触}

に,《社会生活への態度》を{地域への意識・態 度},{社会への意識・態度},{社会的行動,社会 的自己意識}に,《個人生活への態度》を{生活 意識・態度},{ライフスタイル},{宗教}に中分 類した。《適応》は {社会適応} とし, これも

「個人」の中分類を適用し小分類とした。

WEB利用の利便化

データベースソフトとして利用しているファイ ルメーカーのバージョンアップに伴い,WEB画 面を改定し,「心理尺度データベース」を学生が より利用しやすくした。

学生が領域分類をいつでも参照できるようにす るため,トップページに,「領域分類一覧表」を 別ウインドウに表示するリンクを設置した。それ によって,検索の際に検索ウインドウを切り替え ることによって領域分類を参照しながら「心理尺 度データベース」を利用できるようになった。

また,多数の学生が同時にアクセスして利用で きるようにサーバーを3台に増設した。そのうち 一台をトップページ表示用に,2台をデータベー スサーバーとした。

2.2006年版を利用しての授業実践 基礎教育段階での実践

「領域分類一覧表」が別ウインドウに表示でき るようになり,キーワード検索が思うようにいか ない学生に対しての指導・教育がやりやすくなっ た。実際には,そうした学生には,まず,前述の 図1の解説をした後,「領域分類一覧表」のウイ ンドウを開かせ,『調べたいと思っていることが,

人が自分自身のことをどう感じているか,どうと らえているだろうかについてなら「個人」の表を,

2人の関係がどうなっているだろうかについてな ら「対人関係」の表を,小集団,家族,学校,職 場の生活すなわち集団生活上の課題なら「小集団」

「家族」「学校」「職場」の表を,社会生活をする 上での問題なら「社会生活」の表を選んでみてく ださい』と教示する。そして,選ばれた大分類か 図3態度の3成分

(7)

ら詳細分類までの一覧表に自分の調べたいと思う ことと一致するとか,関係がありそうなキーワー ドがあるかを探させた。選んだ大分類表に無い場 合は,次の大分類表を調べさせた。その後に,中 分類あるいは小分類レベルのキーワードで「心理 尺度データベース」の検索を実施させ文献を探さ せた。また,この「領域分類一覧表」を図4~図 7のように,さらに視覚的なチャート方式で理解 できるような教材も作成して利用した(ただし,

図4~図7は,2011年版のものである)。

少し解説に時間をかけることになったが,心理 学の研究対象の領域全体(尺度を用いた研究に限 定されるが,)を把握させ,自分の関心が心理学 研究のどの分野かを理解させ,実際にどのような 研究がなされているかを学ぶ導入学習としては効 果がみられた。最近の学生は,いきなり論理的学 習をするより試行錯誤的な学習から入ったり,チャー ト式に課題を見つけるような方法が学習意欲を高 めるので,「心理尺度データベース」を利用した 教育・学習教材としてとして2006年版の改訂は有 効であったと考える。

調査法・尺度構成法などの教育段階での実践 質問紙調査法や尺度構成法などの授業では,

2001年版と同様に質問項目の収集・整理・作成や 統計的処理法・統計結果の書き方などが指導でき た。

2006年版の改訂では,態度の3成分を教えるこ とができるようになった。それを利用して,態度 を測定するような質問項目を作成するような段階 にある学生に対しては,項目の選択に3つの成分 を考慮して組み立てられているのか,「心理尺度 データベース」を利用して心理尺度が選択できた 学生には,その尺度構成項目である質問項目が態 度のどの成分を用いて作成されているかを明確に させるような授業を行った。学生が作成しようと している,あるいは参考にしようとしている質問 項目がどんな構成で成り立っているかを考える教 材としても役立った。

卒業研究(卒業論文)作成における利用 2006年版の改定にともなうWEB利用の利便化 や領域分類の改善は,学生の卒業研究のテーマ選 択,研究目的の絞り込み,統計処理,報告書の作

成に大いに役立ち,論文作成の効率化や自発的で 積極的な学習に結びついたと評価できる。

たとえば,学生たちは適応や対人関係の問題を よく取り上げる。しかし,臨床心理学領域や社会 心理学領域を専門的に学習していない学生を対象 としている教育指導の場合,明らかにしたいこと,

明らかにするために押さえておかねばならない要 因を絞ったり明確にしたりさせなくてはならない 場合が多い。「心理尺度データベース」の領域フィー ルドに検索ワードとして[適応]や[対人関係]

を入力すると,ほとんどの大分類の適応が検索さ れる。そうした学生には,絞り込み検索や領域分 類一覧表の利用や図1から図7の利用は,研究テー マ絞り込みや入手すべき資料・データ収集の効率 的指導の良い教材となった。

ただし,特に卒業研究指導の場合,限られた時 間内で指導するには制約が多いとはいえ,「心理 尺度データベース」を利用する場合,質問項目や 尺度(下位尺度を含む)など収録された情報をそ のまま使用することには注意するよう指導する必 要がある。たとえ検索できた心理尺度があっても,

そのつどその心理尺度の掲載された元文献を実際 に手に入れ,その尺度が作成された理論的背景,

その尺度が取り上げている心理学的概念やその概 念と尺度を構成している質問項目との関係,ある いは,その尺度と作成された自分の研究対象や変 数としたい内容との関係を明確に理解させること が重要である。

Ⅳ.2011年版について

1.2011年版の作成

2006年以降に収集した心理尺度データを追加登 録し量的に充実するとともに,2006年に作成した

「心理尺度データベース」をさまざまな授業に利 用してきた結果をふまえ,より教育的効果をあげ ることや授業の効率化ができるようにするため,

WEB画面を学生がより利用しやすく改善し,尺 度領域一覧表をさらなる整理により統一性や利便 性を向上させるように改善することを試みた。

収録するデータの量的充実

2011年版に収録した論文数は,1,287論文,尺

―63―

(8)

度数は,2020尺度となった。掲載誌別の収録論文 および尺度数の詳細を表1に示した。

「尺度領域」の再編

2006年版を改定した。2006年版以降の心理尺度 データの収録と教育実践の中での反省から「心理 尺度データベース」を学生が有効に利用でき,教 育的効果がより増すように「領域分類一覧表」を 改善した(図4から図7は,「領域一覧表」を視 覚化したものである)。

「個人」の分類は,そのままであるが,「対人関 係」の中分類では,態度の3成分を明確に説明す るために《対人態度》から{他者への関心}を除 き独立させ,《他者への関心》とし,{他者意識}

という名の中分類にした。

また,《対人態度》の小分類では,{他者への関 心},{対人態度}の小分類において,対象者(相 手)を基準に分類したり,「集団生活」における

{対人関係}の下位分類を「対人関係」の分類に 合わせて表示したり,「社会生活」の中分類であっ た{宗教}を生活意識・生活態度の小分類に移行 したりするなどの改善を図った。

表1 2011年版収録論文・尺度数

図4 「個人」の領域分類(詳細分類は省略)

図5 「対人関係」の領域分類(詳細分類は省略)

(9)

WEB利用の利便化

「尺度の領域」を学生たちにわかりやすく「キー ワード」というフィールド名に変更した。また,

学生がレポートや論文を作成する際に,単に必要 な尺度を検索して利用するのみでなく,オリジナ ル文献を手に入れて研究論文を読むことを習慣づ けさせるために,学術論文をWEB上で公開して いるサイトのリンク集を掲載した。「心理尺度デー タベース」の検索によって得た書誌情報を使えば,

このリンク集を利用して学生たちがオリジナル文 献にたどり着けるようにしたものである。近年,

心理学関連の学会誌は続々と電子化されており,

図書館に行かなくてもオリジナルの文献が手に入 れられるようになっている。

また,これまで一般的な個人用パソコンをサー バーとして利用してきたが,安価ながらもサーバー 専用機にリプレースし,よりいっそう安定したデー タベースの運用ができるようにハード面の充実も おこなった。

2.収録されたデータの特徴

2001年版の作成時に基本資料としたのが,愛知 淑徳短期大学時代に卒業研究指導用に収集した

「心理尺度目録」の心理尺度と,主に1998年度ま

― 65―

図6 「集団生活」の領域分類(詳細分類は省略)

(10)

でに学術雑誌上に掲載された心理尺度であった。

それ以降は,心理学研究,教育心理学研究,社会 心理学研究,名古屋大学教育学部紀要(1999年ま で),名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要

(2000年から),愛知淑徳大学紀要を継続して収集 し,その後に発刊された家族心理学研究(1987年 から),発達心理学研究(1990年から),東海心理 学研究(2005年から)を新たに収集学術雑誌に加 えた。

収録された尺度の領域別経年変化を示したのが 表2である。

まず,全尺度に対する領域別の尺度数を比較す ると,集団生活の「学校」が465尺度(23.0%)

と最も多く,次いで「個人」423尺度(20.9%),

「社会生活」410尺度(20.3%),「対人関係」369

尺度(18.3%),「家族」257尺度(12.7%)と続 く。ただし,対人関係は,「対人関係」に集団生 活の中分類である{対人関係}を含めると,533 尺度(全体の26.4%)となる。中分類ではあるが,

すべての{適応}を合計すると,405尺度(全体 の20.0%)である。

また,経年的に見ていくと,収集した学術雑誌 が増えたこともあって,1990年以降の収録数が多 くなっている。1990年~1999年は584尺度,2000 年~2009年は965尺度,2010年~は118尺度であり,

合計1667尺度で全体の82.5%を占めている。大分 類レベルでそれぞれの経年収集尺度数をみると,

「職場」 を除き, いずれの大分類でも2000年~

2009年の間が最も多く,特に「対人関係」「家族」

「学校」「小集団」では50%を超え,高い割合を示 している。「職場」は,唯一,わずかながら1990

~1999年が最も多い。中分類レベルでは,1990年

~1999年と2000年~2009年を比較して,前者が多 いのは,「個人」の{内的過程},「職場」の{集 団としての職場}と{対人関係},「社会生活」の

{メディア}と{個人生活への態度}である。こ れらは,10年間単位で見た研究テーマの傾向を示 しているともいえる。

Ⅴ.おわりに

本学学生のレポート・論文作成に生かせる教材 となるように「心理尺度データベース」を改善し てきた。学生の学習環境として,心理尺度に関す る出版物やインターネット資料が増加してきたし,

高度の統計処理が簡単に利用できる環境のもとで 多量で多様な心理尺度が学術雑誌上で発表され,

それを利用できるようになってきた。そうした環 境下で,あえてこの「心理尺度データベース」を 作成し続ける意味は,教育の利便性や効率を求め る一方で,学生に大学での学び方を身に着けさせ ることができる教育教材となるように心掛けてい ることである。

図7 「社会生活」の領域分類(詳細分類は省略)

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文 献

永田忠夫・新美明夫(2002).心理尺度データベー スの作成-学内LAN上での教育利用のため に- 愛知淑徳大学論集-文化創造学部篇-

第2号 59-80.

永田忠夫・新美明夫(2007).教育用「心理尺度 データベース」の改訂(2006年版) 愛知淑 徳大学論集-文化創造学部篇- 第7号 95-110.

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表2 収録した心理尺度の領域別経年変化

参照

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– 学生と社会人との間に大きな隔たりがある

13 JDreamII検索のアドバイス 「キーワード検索」と 「シソーラス用語検索」 の

・泣きの理由は「眠い」 「空腹」 「排泄」 「暑い」

これ では こまるわけであるか ら、 ≠ 資質論O は、で きるな ら用語 を変えて しか るべ きとい うこ とに な る。 ど う変 えた ら妥 当 かは不 確か

   ︵注2︶

は編集ができないようにした。準備段階での実践ではデータ検