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共生社会における法

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3

特 集 共 生社 会 の法 と政 治〉

共 生 社 会 に お け る法

憲法 にお け る人 間像

塩 津 徹

は じめ に

(一)法 的人間像

(二)普 遍性 と して の人間 の尊厳 (三)方 法 としての個 人主義 (四〉共 同性 の感 覚

(五)可 能性 の留保

は じめ に

共 生社会 の定 義 は様 々 にな され るで あ ろ うが、本 稿 で は異質 性 、 多様 性 を包

I)

容 す る社 会 で あ る と して お く。 た だ 、 この 共 生 社 会 の 定 義 だ けで は現 状 の 認 識 の 問 題 な の か 、 そ れ とも そ うあ るべ き規 範 性 の 問 題 で あ るか は定 か で は な いが 、 一 般 的 に は後 者 の 意 味 で 使 用 され る こ とが 多 く筆 者 もそ れ に な ら う こ とに す る す な わ ち、 共 生 社 会 の 法 とは社 会 の 中 の 異 質 性 、 多 様 性 を肯 定 的 に認 め る法 思 想 、 制 度 の構 築 とい う こ とに な る。

共 生 社 会 の 法 とい っ て も幅 広 い領 域 が あ る。 こ こで は特 に憲 法 の 問 題 に 限 定 して 論 じ よ う とす るの で あ るが 、 個 別 の規 定 の 解 釈 の 問 題 で は な く法 思 想 、 法 哲 学 的 ア プ ロー チ を含 ん だ 幅 広 い考 察 を行 い、 憲 法 に お け る人 間 像 の 問 題 と し て検 討 し よ う と思 う。 した が っ て 、 共 生 社 会 の 異 質 性 、 多 様 性 を受 け入 れ る よ

うな 憲 法 に お け る人 間 像 を さ ぐ るの が本 稿 の 目的 で あ る。

と こ ろで 、 近 代 立 憲 主 義 に関 して は あ る種 の人 間 像 が 想 定 さ れ 、 一 般 的 、 抽

2}

象 的 市 民 で あ っ た こ とは よ く知 られ て い る。 そ れ は封 建 社 会 の 身 分 、 階 層 別 の 、

(2)

あ る意 味 で は 具 体 的 な社 会 関 係 を否 定 して一 般 的 、 抽 象 的 な 自 由、 平 等 な関 係 を表 す もので あ った 。 この よ うな一 般 的、 抽 象 的 市 民 とい う人 間像 を基 盤 に個 々 の規 定 で あ る所 有権 の保 障 、 契 約 の 自 由 な どの経 済 的 自由 、 表 現 の 自 由 、 宗 教 の 自 由 な どの精 神 的 自 由が 確 立 され た 。

しか し、 資 本 主 義 の発 展 の下 、 一 般 的 、 抽 象 的 市 民 とい う人 間像 で は、 か え っ て 資 本 家 と労 働 者 の対 立 、 しか も後 者 の 困 窮 とい う現 実 の 事 態 が覆 い 隠 さ れ て し ま う。 そ こで1919年 の ドイ ツの ワイ マ ー ル 憲 法 で は 自 由権 に加 え て新 た に社 会 権 が 登 場 した の で あ る。 社 会 権 の保 障 の 前 提 に は社 会 的 弱者 、 労 働 者 とい う 具 体 的 人 間 存 在 が あ る。 こ こに お い て 近 代 立 憲 主 義 の 想 定 され て い た.̲̲.般的 、 抽 象 的 な 市 民 とい う人 間 像 は修 正 を 迫 られ た の で あ る。

社 会 権 の 登 場 と と もに憲 法 に お け る人 間 像 は修 正 を迫 られ た が 、 そ の後 も新 た に 子 ど もの 人 権 、 女 性 の 人 権 、 障 害 者 の 人=権、 外 国 人 の人 権 等 が 主 張 され て きた 。 と同 時 に 新 た な 人 権 が 次 々 と登 場 し、 人 権 が ま す ます 細 分 化 され る0方 で 普 遍 性 の 存 在 の問 題 が 浮 上 した の で あ る。 本 稿 は共 生 社 会 に肯 定 的 な立 場 か

ら この よ う な新 た な 人 権 とい う多 様 性 を 包 容 しか っ 普 遍 性 を確 立 し う る憲 法 に お け る人 間 像 を検 討 す る もの で あ る。

(一)法 的 人 間 像

憲 法 に お け る人 間像 とは、 あ りの ま ま の存 在 、 自然 的 存 在 と して の 人 間 で は な く(憲)法 的 人 間 像 で あ る。 した が っ て 、 この場 合 の人 間 像 は あ くまで もあ り うべ き存 在 で あ り、 規 範 的 存 在 で あ る。 この規 範 的 存 在 とは 、 自然 的存 在 を 否定 す る の で は な く、 た だ 法 的 に保 護 す べ き存 在 、価 値 を示 して い るの で あ る。

自然 的 存 在 と して は 自由 に行 為 す る場 合 も法 的 に保 護 さ れ る場 合 も あ れ ぼ 、 そ うで な い場 合 もあ りう る の で あ る。

本 来 、 人権 、権 利 の 言 葉 は英 語 で は(Right)で あ り、 ドイ ッ語 で も(Recht) で あ り、 と も に制 度 と して の 人 権 、 権 利 とい うだ けで な く、 そ こ に 正 しい」

とい う意 味 が含 まれ て い るの で あ る。 この こ とに示 され る よ うに憲 法 に お け る 人 権 、 そ して 、 そ の基 盤 に お か れ る人 間像 は あ りの ま まの 自然 的 存 在 で は な く、

正 しい 」 とい う価 値 判 断 が 含 まれ て お り、 そ の意 味 で は 法 的 な保 護 に値 す る規

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共生 社会 にお け る法

S

範 的 存 在 な の で あ る。

自然 的 存 在 と して は力 が あ る者 もい れ ば 逆 に な い者 もい る。 しか し、 規 範 的 存 在 と して の 憲 法 の人 間 像 か らは そ の よ うな 現 実 の 力 の 強 弱 と関 係 な く理 念 的 に は等 し く参 政 権 を有 し、 同価 値 の一 票 を投 じ る こ とが で き る人 間像 が 想 定 さ れ るの で あ る。 もち ろ ん、 自然 的 存 在 か ら大 き くか け離 れ た規 範 的 存 在 は 法 的 な効 力 は持 ち え な い こ とも事 実 で あ るが 、 規 範 的 存 在 はた とえ 「建 前 」、 フ ィ ク

3)

シ ョ ンで あ って も人 権 保 障 に は 不 可 欠 な の で あ る。

この よ うな 規 範 的 存 在 に 対 して は道 徳 的 で あ る と して 批 判 し、 脱 道 徳 的 人 間

像 、 あ りの ま ま の 人 間像(自 然 的 存 在)を 対 置 す る見 解 が あ る。 しか し、 実 は 脱 道 徳 的 人 間像 を提 示 しな が ら国 家 か らの 自 由 を 強 調 す る こ と自体 も実 は規 範 的 人 間 像 の範 疇 に入 る とい わ ざ るを え な い 。 な ぜ な ら、 そ の よ うな 自 由 が 自然 と して存 在 す る は ず も な く、 そ れ 自体0つ の あ り うべ き存 在 とさ れ て い るか ら で あ る。

規 範 的 存 在 と して の 人 間 像 は近 代 立 憲 主 義 に お い て は一〇般 的 、 抽 象 的 市 民 で あ り、 市 民 相 互 の 自 由 と平 等 の 関 係 が想 定 さ れ て い た こ とは既 に述 べ た 。 そ の 点 に関 して 、 戦 前 の ドイ ツ に お け るカ ー ル ・シ ュ ミ ッ ト とハ ンス ・ケ ル ゼ ン の 民 主 主 義 に お け る人 間 観(ケ ル ゼ ン 自身 は 人 間観 で は な く 「性 格 型 」 の 問 題 と

して い るが)の 相 違 に は興 味 深 い もの が あ る。 た だ し、 これ は ケ ル ゼ ンの 側 か らす る民 主 主 義 に お け る人 間 観 を論 じた もの で あ るが 。

ケ ル ゼ ン は 、 「民 主 主 義 的 独 裁 」 「指 導 者 民 主 主 義 」 を標 榜 す る シ ュ ミ ッ トの 民 主主 義 論 に は 「本 性 の 上 か ら、 父 権 的社 会 」 で あ り、 「対 等 の 、 で は な く、 上

5)

下 の 関 係 」 の人 間 観 が あ る とす る。 しか し、 ケ ル ゼ ン に とっ て は 民 主 主 義 は 本

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父 を欠 く社 会 で あ る」 「そ の原 則 は対 等 」 で あ る とす る。 誰 の 目 に も明 らか の よ う にケ ル ゼ ン が 想 定 す る 自 由 で あ り、 平 等 で あ る人 間 観 こそ近 代 立 憲 主 義

の想 定 す る人 問像 な の で あ る。

そ も そ も 「慈 愛 に満 ち た 父 親 」 が 世 の 中 を 支 配 す る の で あ れ ば、 また 、 人 々 が そ の よ うな 支 配 に甘 ん じて 身 を委 ね るの で あれ ば権 力 の 抑 制 、 コ ン トロ ー ル の 観 念 は必 要 な い こ とに な る。 自 由で 対 等(平 等)な 人 間 関係 で あ り、 な お か つ 各 人 そ れ ぞ れ が 誤 りを犯 しや す く、 権 力 を 乱 用 し う る とい う弱 き人 間 の 存 在 が 前 提 とされ て い るか ら こそ権 力 に対 す る警 戒 心 と権 力 を コ ン トロ ー ル す る憲

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法 の人 権 保 障 が 必 要 とされ るの で あ る。

また 、 憲 法 解 釈 論 と して は包 括 的 な憲 法 に お け る人間 像 の存 在 を否 定 し、個 々 の人 権 規 定 の 解 釈 を導 き出 す 見 解 も あ り う る。 しか し、 そ の よ うな 場 合 で も意 識 で あれ 、 無 意 識 で あ っ て も実 は 一 定 の 人 間 像 を前 提 と して い る こ とが 多 い 。

これ は ドイ ツ公 法 学 に お け る 「前 的 理 解 」(Vorverstandnis)の 問 題 で あ る。

この 前 的 理 解 」 は解 釈 の前 提 に あ る解 釈 者 の価 値 観(人 間 観)を 無 意 識 の ま まで は な く公 の 議 論 の 中 で 妥 当性 を 問 う もの で あ る。

更 に個 々 の 人 権 規 定 を他 の 規 定 との 関 連 性 を 欠 い て 解 釈 す る な ら ぼ、 統0性 を欠 き個 々 に 分 断 され た 技 術 的 な解 釈 に な り、 存 在 す る現 実 に適 合 的 な権 力 行 使 に都 合 の よい 受 動 的 な 道 具 的 な 解 釈 に な っ て し ま う。 む し ろ、 あ りうべ き存 在 と して の 憲 法 にお け る人 間 像 を前 提 とす る こ とに よ っ て 人 権 規 定 相 互 の 関 係 の整 合 性 が 見 い だ さ れ 、 ま た、 個 々 の 人 権 規 定 の解 釈 にお い て も発 展 的 、 創 造 的 解 釈 が 可 能 とな る の で あ る。 で は 、 憲 法 に お け る人 間像 を どの よ う に探 るか で あ る。

と こ ろで 、 日本 国 憲 法 に お け る人 間 像 の根 拠 に つ い て は我 妻 栄 、 宮 沢 俊 義 は じめ これ ま で も多 くの 論 稿 が 出 さ れ て お り、 それ らに 対 す る議 論 も重 ね られ て

g}

お り、 あ え て こ こで 論 ず る まで もな い 。 た だ 、 本 稿 で は そ れ らの歴 史 的 経 過 、 学 問 的 成 果 をふ ま え な が ら憲 法 に お け る人 間像 の根 拠 と して 人 間 の 尊 厳 論 、 人 格 的 自律 論 に肯 定 的 な立 場 か ら共 生 社 会 との 関 係 で そ こ に どの よ うな 留 意 点 が あ る の か を 論 究 す る。

(二)普 遍 性 と して の 人 間 の 尊 厳

① 普 遍 性 と個 別 性

か つ て 「自由 権 か ら社 会 権 へ 」 とい うス ロ ー ガ ン が あ っ た が 、 今 日で は この 言 葉 は あ ま り使 用 され な くな っ た 。 なぜ な ら、 そ こ に は 自 由権 と社 会 権 との 断 絶 性 が 二 つ の 点 で強 調 され す ぎ た か らで あ る。 一 つ に は 自 由権 と社 会 権 の 法 的 性 質 の 相 違 は絶 対 的 で は な く相 対 的 で あ る こ とが 見 失 わ れ が ち で あ り、 二 つ に は この ス ロ ー ガ ンで は 自 由権 の 意 義 が 歴 史 的 に 縮 小 す るか の よ うな 誤 解 が 生 じ が ち で あ るか らだ 。

(5)

共 生社会 におけ る法

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特 に労 働 法 に お い て は この ス ロ ー ガ ン に見 られ る よ うな 位 置 づ け が な され た

9)

が、 そ こに一石 を投 じたのが戒 能通 考教授 で あ り、西 谷敏 教授 で あった。 西 谷 教 授 は社会 権 の一 つで あ る労働 基本 権 の根 底 にあ るの は国家 か らの 自由で あ る こ とを指摘 し、 労働基 本権 は結社 の 自由や表 現 の 自由 と同様 な市 民 的 自由 で あ

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る とした。 この指 摘 は 自由権 と社 会権 の断絶 性 を修 正 し、 自由権 と社 会権 とを 架橋 す る新 た な人 間像 を模 索 す るもので あ る。

西谷 教授 自身 は 「人 間 た る労働 者 も抽象 的人格 た る性格 を喪 失 す る もので は ない し、労働 法 も抽象 的な 自由 ・平 等 とい う原 理 を市 民法 と共 有 す るはず で あ

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る」 と述 べ る。 この よ うに 自由 権 と社 会 権 との 断 絶 性 で は な く、 そ こ に歴 史 貫 通 的 な原 理 、 普 遍 性 が あ る こ とが 今 日で は 一 般 的 な見 方 とな っ て い る 。 そ こで 自 由権 と社 会 権 を根 拠 づ け る歴 史 貫 通 的、 普 遍 的 な原 理 と して人 間 の 尊 厳 がi提 起 され た の で あ る。

そ して 、 人 間 の 尊 厳 を人 格 的 自律 論 と して 構 成 す る議 論 が 示 され た が 、 特 に 佐 藤 幸 治 教 授 の 見 解 が 多 大 な影 響 を与 え て き た 。 た とえ ば、 日本 国憲 法13条 解 釈 に関 して 個 入 の尊 重 』 が 人 格 性 に よ っ て通 底 され た 個 々 の 具 体 的 人 間 の 自律 的 生 を尊 重 しよ う とす る もの だ とすれ ば、 そ れ を 受 け た 『幸 福 追 求 権 』 は 何 よ りも そ う した 自律 的 生 を可 能 な ら しめ るべ く包 括 的 ・一一体 的 に権 利 と して

12)

捉 え た も の とい う こ とに な る」 と して い る。

佐 藤 教 授 の 人 格 的 自律 論 で 重 要 な の は、 す べ て の 人 権 の 根 幹 とな る 「基 幹 的 自律 権 」 の 存 在 が あ り、 この 基 幹 的 自律 権 」 が 個 々 の 具 体 的 な 人 権 を 位 置 づ

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け て い る こ とで あ る。 す な わ ち、 自 由権 、 社 会 権 も人 格 的 自律 に 「基 幹 」 と し て の根 拠 を有 す る こ とに な れ ば、 それ 以 外 の 新 た な 人 権 も同様 で あ る こ とに な

る。 こ こで は 自 由権 と社 会 権 の相 対 的 区別 は あ っ て も、 断 絶 性 は な くな る し、

自 由権 の意 義 が減 少 す るわ けで は な い。

人 格 的 自律 を人 権 の 「基 幹 」、 普 遍 性 とす れ ば 、 個 々 の人 権 は個 別 性 とい う こ とに な る。 一 方 で 社 会 の 中 で様 々 に生起 す る事 象 の 中 で必 要不 可 欠 な対 応 が 個 々 の 人 権 として 提 示 され る時 、 普 遍 性 と して の 入 格 的 自律 論 は そ れ ら に対 して 憲 法 上 の正 当性 の根 拠 を与 え るの で あ る。 他 方 で 個 々 の 人 権 、 個 別 性 は抽 象 的 な 存 在 で あ る普 遍 性 を具 体 化 す る とい う両 者 は相 即 な 関 係 に あ る。

憲 法 に お け る人 間 像 は こ の よ うな 普 遍 性 と個 別 性 を併 せ 持 つ の で あ る。 一 人

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の 人 間 は普 遍 性 と して の 人 格 的 自律 を確 立 す るた め に は現 実 に は そ の 具 体 化 が 必 要 で あ る。 人 格 的 自律 とい う普 遍 性 は、 個 別 ・具 体 的 に は市 民 と して の 表 現 の 自由 、 労 働 者 と して の 労 働 基 本 権 、 女 性 の 人 権 に よ っ て 具 体 化 され る。 これ 以 外 に も個 別 的 問 題 と して 外 国 人 の 人権 、 子 ど もの人 権 、 更 に未 知 の 新 た な 人 権 も あ るか も しれ な い 。

人 間 は 自然 的 存 在 で あ る と同 時 に様 々 な 社 会 的 関 係 の 中 に お か れ て い る。 社 会 的 存 在 と して の 人 間 の本 質 は 現 実 に は 、 カ ー ル ・マ ル ク ス の 言 い 方 を借 りれ

14)

ば社 会 的諸 関 係 の 総 和 で あ る こ とに な る。 しか し、 他 方 で は この よ うな 社 会 的 諸 関 係 は マ ル クス の よ う に資 本 家 と労 働 者 との 関 係 、 い わ ゆ る生 産 関 係 だ け に 還 元 され るの で は な い 。 生 産 関 係 を 超 え て 家 族 、 国籍 、 性 等 、 様 々 な社 会 的 関 係 が あ り う る の で あ る。

法 、 権 利 とは 、 この よ うな人 間 が 取 り結 ぶ 様 々 な社 会 的 関 係 の 一 種 の 表 現 で あ る。 そ して 、 一 人 の 人 間 は人 格 的 自律 性 とい う普 遍 性 を 内 包 して い る と同 時 に現 実 に は 多 様 な社 会 的 関 係 を有 して い る。 そ こか ら 「人 間 が 多様 な社 会 関 係

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に応 じて 、 多 様 な 自 己 イ メ ー ジ を使 い分 け る 自 由 」 が あ る とい え る。 この 多様 な社 会 的 関 係 を受 容 す る よ う な法 、 権 利 、 人 間 像 を構 成 す る こ とが 共 生 社 会 に

とっ て不 可 欠 な の で あ る。

た だ 、 共 生 社 会 に お け る 「多 様 」 な社 会 関 係 の 言 葉 に は 一 様 」 の 反 対 の意 味 が あ る。0様 で は な い が ゆ え に 当 然 、 対 立 や 摩 擦 の 存 在 が 前 提 とされ て い な くて は な らな い 。 た とえ ぼ女 性 の 人 権 の 保 障 は既 存 の 男 性 優 位 の 制 度(例 と し て 差 別 定 年 制 等)に 対 して 摩 擦 が あ っ た こ とは周 知 の こ とで あ る。 した が って 、 多様 な社 会 関係 の もた らす 摩 擦 を普 遍 性 で あ る人格 的 自律 性 を基 盤 と して 調 和 、 解 消 して い くこ とが 求 め られ るの で あ る。

また 、 外 国 人 の 人 権 、 た とえ ば 参 政 権 に 関 して も同 様 な こ とが い え る。 外 国 人 の 参 政 権 は人 権 の 普 遍 性 か らは そ れ を容 認 す る こ とが 主 張 され て い る。 しか し、 外 国 人 の ま まで 参 政 権 を 認 め る こ とは 「異 質 な も の を異 質 な ま ま受 け入 れ

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て 『仲 間 』 と して 認 め る」 こ とに な るの で あ る。 そ こで は個 別 性 と して 異 質 性 が もた らす 摩 擦 を も容 認 、 内 包 しっ っ 普 遍 性 を 志 向 す る寛 容 さ、 開 か れ た 精 神 が 求 め られ て い るの で あ る。

要 す るに 共 生 社 会 にお い て は人 格 的 自律 性 とい う普 遍 性 の具 現 化 を 志 向 しつ

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共 生社会 にお け る法

9

つ 、 そ の 時 、 そ の場 所 、条 件 に応 じた現 実 に生 起 す る個 別s具 体 的 問 題 に対 処 して いか な けれ ぼ な らな い。 そ こで これ らの 問 題 へ の考 え られ うる最 適 な解 答 を見 い だ して い く必 要 が あ る。 こ の よ うに普 遍 性 と個 別 性 は共 に絡 み 合 う よ う に螺 旋 状 に あ り、 しか も、 後 に(五)で も述 べ る よ う に人 権 は 固 定 的 に考 え る の で は な く動 態 的 、 可 変 的 に見 て い くべ き な の で あ る。

② 人 格 的 自律 論 の 限 界 一 ドイ ツ の議 論

人 格 的 自律 論 に は批 判 もあ る こ とは確 か で あ り、 そ の代 表 的例 が 「強 い個 人 」 の 問題 で あ る。 この こ と も多 くの 論 稿 が あ る の で 改 め て 詳 論 す る必 要 は な いが 、 こ こで は我 が 国 の 人 格 的 自律 論 の 一 つ の 根 拠 とさ れ て い る ドイ ツの 人 間 の 尊 厳 に 関 す る議 論 の 例 をペ ー一タ ー ・ヘ ー ベ ル レの 見 解 を軸 に しな が ら この 問 題 の核 心 を要 約 して お きた い。ドイ ツの 人 間 の 尊厳 の 議 論 の 出発 点 はギ ュ ン ター ・デ ュー

リ ッ ヒの 見 解 に あ る。

彼 は、 カ ン トが 合 理 的 に 自 己決 定 し う る能 力 を有 す る人 格 を人 間 の尊 厳 の根

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拠 と した こ とを継 承 して い る。 そ して 、 デ ュ ー リ ッ ヒの 入 格 的 自律 論 は 人 間 の 尊 厳 は生 まれ なが らに して 備 わ っ て い る とい う 「生 来 論 」 で あ る。 そ れ に対 し て ニ ク ラ ス ・ル ー マ ンの 人 格 自律 論 で は人 間 の 尊 厳 は生 来 の もの で は な く、 人

18)

間 的 な行 為 を し う る能 力 が あ る か ど うか の 行 為 能 力 論 」 で あ る。

しか し、 ル ー マ ン の よ うに 「行 為 能 力 論 に立 て ば、 極 論 す れ ば 障 害 者 や 老 人 な ど現 状 で は 自己 決 定 が 十 分 に で きな い 場 合 は人 間 の尊 厳 を有 しな い とい う

こ とに な って し ま う。 ま た、 デ ュー リッ ヒの 「生 来 論 で は確 か に 人 間 の 尊 厳 は生 まれ な が らに備 わ っ て い る と して ル ー マ ン の よ うな 「選 別 効 果 」 は な い。

しか し、 人 間 の 尊 厳 は生 来 な もの で あ るが ゆ え に、 それ は 内在 す る所 与 と して 完 結 され て お り、 そ こに発 展 の 可 能 性 は な い と も い え る。

結 果 的 に は デ ュ ー リ ッ ヒの 「生 来 論 」 で は論 理 的 に人 格 的 自律 の発 展 の 可 能 性 が な い わ け で あ るか ら現 状 で それ を満 た さな い者 は人 間 の 尊 厳 は な い とい う

選 別 効 果 」 を もた ら して い る。 この よ うな 人 格 的 自律 論 に よ る 「選 別 効 果 」 を 回避 す る た め に ク リス チ ャ ン ・グ リム は人 間 の 尊 厳 の根 拠 を人 格 的 自律 で は な

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く、 個 々 人 が 存 在 して い る価 値 そ の もの で あ る と して い るの で あ る。

確 か に グ リム の よ うに存 在 それ 自体 を認 め れ ば 「選 別 効 果 」 は な い か も しれ

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な い が 、 で は 「存 在 」 イ コ ー ル 規 範 とす る こ とが 法 論 理 上 可 能 な の か 疑 問 とさ れ よ う。 そ こで 人 格 的 自律 論 を基 本 的 に 継 承 しな が ら そ の 「選 別 効 果 」 とい う 限 界 を克 服 し ょ う とす るの が ヘ ー ペ ル レ とハ ソ ・ホ フマ ンの説 で あ る。 ヘ ー ベ ル レは 人 格 的 自律 は個 人 の 内 部 で 完 結 す る(生 来)も の で は な く、 社 会 的 関 係

20)

に よ っ て も構 成 され る とす る。

要 す る人 格 的 自律 を生 来 の もの とす る と現 に 自 己決 定 が 不 十 分 な 人 に対 す る 救 済 の 道 は狭 ま っ て し ま う。 そ こで へ 一 ペ ル レの よ うに人 格 的 自律 が社 会 関 係

に よっ て も構 成 され る とす れ ぼ、 社 会 の 何 らか の 救 済 に よ っ て 自 己 決 定 が 可 能 に な りう る とい うので あ る。 この 点 を更 に徹 底 した のが ホ フ マ ンの論 理 で あ る。

ホ フマ ン もへ 一 ベ ル レ と同様 に人 間 の尊 厳 は 生 来 の もの で は な く社 会 的 関 係 に

21)

お いて構 成 され る とい う。

ホ フマ ンは人間 の尊厳 は国家創 設 に際 して各個 人 の固有性 や特 性 を相互 に認

22)

容 す る こ とを約 束 され た(DieversprocheneMenschenwurde)こ とで あ る とす る。 彼 は個 人 の 人 格 的 自律 性 を尊 重 す る と と もに 、 それ が現 に不 可 能 な人 間 に対 して は 約 束 され た 人 間 の尊 厳 と して社 会 的 救 済 を考 慮 して い る。 デ ュ ー リ ッ ヒの見 解 が 自然 権 思 想 に依 拠 す る論 理 で あ っ た の に対 して ホ フマ ン は国 家 創 設(実 際 は憲 法 制 定)時 の 約 束 と して い る点 が 異 な る。

③ 「強 い個 人 」へ の批判 の問題

我 が国 にお け る人格 的 自律 論 へ の批判 も先 の ドイ ツの 「選別効 果 」 と同様 な

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もの で あ り、 それ が 強 い個 人 」 へ の批 判 で あ る。 しか し、 結 論 的 に い え ば 、

強 い個 人 」 へ の批 判 は 「弱 い個 人 」 へ の配 慮 を促 す 点 で は 意 味 あ るか も しれ な いが 、 「強 い個 人 」 を否 定 す る こ とは不 可 能 で あ る。 そ もそ も 「強 い個 人 」 とい うい い 方 に無 理 が あ る し、 誤 解 を生 じか ね な い表 現 で あ る。 なぜ な ら近 代 の人 権 は契 約 の 自 由 を考 えて も本 人 の 意 思 、 人 格 的 自律 が 確 立 され て い る こ とが 前 提 で あ る。

も し、 自律 的 な 意 思 、 行 為 、 人 格 的 自律 性 を 「強 い 個 人 」 と して 否 定 しな い まで も消 極 視 した な ら ば、 本 人 の 意 思 、 人 権 の主 体 性 は 失 わ れ 、 国 家 の 人 権 保 護 義 務 だ け が 強 調 され る こ とに な りか ね な い し、 そ れ は 人権 論 に とっ て 角 を 矯 め て 牛 を殺 す 」 で あ る と もい え よ う。 で あ るな らば 、 人 格 的 自律 論 を土 台 と

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共生社 会 にお け る法

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しな が ら、 そ れ が 有 す る限 界 、 前 述 した 障 害 者 、 老 人 等 の社 会 的 弱者 の 人 格 的 自律 の 展 開 の た め に 配 慮 す る こ とが 必 要 とな るの で あ る。

要 す るに 「強 い個 人 」、 い い か えれ ば人 格 的 自律 性 を否 定 す るの で は な く、 可 能 な 限 り 「弱 い個 人 」 が 「強 い個 人 」 に な る よ うな こ と、 「単 に 弱 者 で は な く、

24)

強 者 に な っ た 弱 者 」 を考 え る こ とが 重 要 な の で あ る。 そ の こ とは人 格 的 自律 論 を基 盤 と しなが ら も社 会 的 関 係 を考 慮 した 先 の ヘ ー ベ ル レ、 ホ フマ ンの 論 理 と つ な が っ て くる。 た だ 、 この 点 に 関 して は更 に 自然 権 思 想 との 関 連 性 に も触 れ

な くて は な らな い。

先 の デ ュー リ ッ ヒの 人 間 の尊 厳 の議 論 に は 「生 来 」 の 完 全 な 人 格 的 自律 が 前 提 とされ て い るが 、 この 「生 来 」 の 言 葉 に は 自然 権 的発 想 が あ る。 す な わ ち、

生 まれ な が らに して」 とい う意 味 で あ るが 、 確 か に身分 差 別 が あ っ た 封 建 社 会 の 社 会 的 桓 楷 か ら解 き放 つ とい う歴 史 的 意 義 を有 して い る。 そ れ は社 会 変 革 の イ デ オ ロ ギ ーで あ るが 、 批 判 的 に い え ば フ ィ ク シ ョンで さ え あ り う る(し ば し

ぼ述 べ る よ う に法 思 想 に お け る フ ィ ク シ ョ ンの 重 要 性 は否 定 しな い が)。

そ れ ゆ え に今 日で は そ の よ うな フ ィ クシ ョ ン と して の 自然 権 思 想 に こ だ わ る

25}

必 要 はな く、 そ の 思 想 的意 義 を摂 取 しつ つ も憲 法 制 度 上 に お い て 飼 い馴 らす 」 こ とが 求 め られ る。 こ こで 飼 い馴 らす」 とは憲 法 にお い て 一 定 の価 値 、 規 範 内 容 を制 度 と して 認 め る こ とで あ る。 人 格 的 自律 を憲 法 に お け る人 間 像 と して 受 け入 れ 、 そ の た め に必 要 な社 会 的 な弱 者 へ の保 護 を倫 理 、 価 値 を 「国 民 の コ

ンセ ンサ ス 」 と して承 認 す る こ とで あ る。

ま た 、 自然 権 思 想 に全 く依 拠 す る こ とに な れ ぼ市 民 革 命 時 の 自 由 国 家 、 国 家 か らの 自 由 を基 軸 に お い た 規 範 内 容 、 人 権 保 障 が 前 提 とな る。 これ を 切 り札 と して の 人 権 」 とす る こ とに な れ ば今 日の 社 会 国 家 の 時 代 に お い て 社 会 権 は い つ まで も 自由権 よ り低 位 にお か れ 正 当 な位 置 を 与 え られ な い 。 しか し、 憲 法 上 の保 障 を基 軸 に お け ば 自 由権 に こだ わ る こ とな く社 会 権 も含 む価 値 内容 が 国 民 の コ ンセ ンサ ス と して 受 け入 れ られ な くて は な らな い。

更 に 自 由 権 中 心 の 理 論 で は人 格 的 自律 論 の 言 葉 に 表 現 され る よ う に 人 格 」 が 重 視 され るが 、 人 格 は そ れ 自体 は実 際 に は社 会 的条 件 、 経 済 的 状 況 に大 き く 作 用 され る。 人 格 的 自律 は 生 存 して い くた め の 経 済 的 、 社 会 的条 件 とい う 「 体 的 身 体 性 」 を不 可 欠 と して い るが これ ま で の人 格 的 自律 論 で は 「具 体 的 身 体

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性 」 が消極視 され て きた とい えな くはな い。 その意味 で人権 論 にお け る二重 の 基 準 につ いて も今 後 は検 討 の余地 が あ る とい え よ う。

要 す るに人権保 障 を 自然権 思想 で は な く憲 法上 の 「約 束 」 とす る こ とに よっ て社会権 の よ うに国家 の作為 義務 を含 む人権 保 障が正 当な地 位 を与 え られ る。

ドイ ツ公法 学 で は基 本権 は個 人 の主観 的権利 と同時 に客観 的法秩 序 を保 障す る もので あ り、 客観 的法秩序 はか つて客観 的価 値秩序 の表 現 で あ る とされ た。人 権 を憲法 の価 値 秩序 とす るこ とは自由権 を含 めて社会 権 の保 障 も価値 表現 、 国

民 の コ ンセ ンサ ス として正 当化 され る こ とにな る。

(三)方 法 と して の 個 人 主 義

① 個 人 の 自律 と 自立

人 間 の尊厳 で あれ、 人格 的 自律 で あ って も個人 の存 在 が基礎 とな るべ きで あ る。 人間 の尊 厳 とい って も個 人 の存在 が な けれ ば漠然 た る抽象 的、集 合 的存在 とな り、個 々人 の存在 の相 違、 多様 性 は消極 視 され て しま う。 た とえぼ、強者 と弱者 の存 在 、一 方 の他方 に対 す る支 配関係 は見 逃 され 、抽象 的 な人間 の尊厳 の名 の下 で権 力 を有 す る者 は権 力的支 配 の現実 を覆 い隠 し、支 配 され る者 も権

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力 的 支 配 関 係 を無 自覚 な ま ま に 甘 受 して し ま うの で あ る。

方 法 と して の 個 人 主 義 を い う場 合 に特 に個 人 主 義 が 欠 落 して い る我 が 国 の精 神 的 風 土 を考 慮 しな くて は な らな い 。 この 点 に つ い て は あ ま りに も数 多 く指 摘 され て きた こ とで あ るが 、 決 して この よ うな精 神 的 風 土 が 根 本 的 に 変 わ っ た わ け で は な い 。 た だ 、 こ こで の 方 法 と して の個 人 主 義 に 関 して は後 で も述 べ る よ う に単 に 国 家 か らの 自 由 だ け で は な く、 国 家 権 力 を統 制 す るた め の 政 治 参 加 、 国家 へ の 自由 が 含 ま れ て い る こ とを 強 調 して お き た い。

この こ とに関 して は近 代 の市 民 社 会 の確 立 と個 人 主 義 、 個 人 の 自律 と国 家 へ の参 加 を 強 く訴 えた 政 治 学 者 の 丸 山 真 男 の 言 葉 を借 りて お く。 彼 は明 治 憲 法 下 の 問題 と して 私 的 領 域 に お け る 自律 一 社 会 的 底 辺 にお け る近 代 的 人 間 関 係

の確 立 」、 「私 的=日 常 的 な 自 由 を権 力 の侵 害 か ら防衛 す るた め に こそ全 権 力体

へ   271

系の正 当性 を判 定す る根拠 を国民が 自 らの手 に確 保 しな けれ ばな らぬ」 とい う 発想 が 欠 けて いた と指摘 す る。

(11)

共生社会 にお け る法

13

そ して 、 当 時 の 社 会 構 造 は、 決 定 ・決 断 の 主 体 の 存 在 が 不 分 明 な ま ま 「無 責 任 」 と 「無 限 責 任 」 が 混 在 して お り、 「人 格 的 主 体 一 自 由 な認 識 主 体 の 意 味 で も、倫 理 的 な 責 任 主 体 の 意 味 で も、 また 秩 序 形 成 の 主 体 の 意 味 で も 一 の 確 立

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に決 定 的 な栓 楷 とな る運 命 をは じめか ら内包 して い た」 とす るが 、今 日で も 日 常生 活 にお け る個 人 の 自律性 とそ こか ら出発 して公 的 な場面 にお け る政 治 的決 定 へ の主体 性 、能 動性 の欠 如 とい う精神構 造 が政 治や社 会 の領 域 で完 全 に克服

され た とは思 えな い。

個 人 の 自律性 に限定 して い えぼ、尊属 殺重 罰規 定 をめ ぐる事件 で最 高裁 の法 廷意 見 は 「尊属 に対す る:7"重報 恩 は、社 会 生活 上 の基 本 的道 義 とい うべ く、 こ

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の よ うな 自然 的情 愛 な い し普 遍 的倫理 の維持 は、刑 法 上の保 護 に値 す る」 と し て重 罰規 定 は違憲 と しつつ も尊属 殺 の規 定 の存在 その もの は否定 しなか っ た。

この法廷 意見 の 中 には個 人 の 自律 性 よ りも尊 属 に対 す る尊重 、敬 意 を法 的 に強 制 す る封建 的価 値 観が 見 られ るので あ る。

かつて我が 国において 「市民社会」 の確立 が議 論 され 、樋 ロ教授 は端 的 に 「

sa)

民革命 が済 んで いな い」 とし、近代 立憲 主義 の価 値 は 「個 人 の 自立 と自己決定

3I}

な の で あ る」 と指 摘 した 。 そ れ を よ り詳 し くい え ぼ 「ひ と りひ と りの 人 間 に は 他 の何 もの に も代 え が た い価 値 が あ る とい う価 値 観 と、 人 間 が 自分 の 事 柄 を決 定 す る こ とに他 の優 れ た 判 断者 に よ る決 定 以 上 の 価 値 を見 い だ す 『自律 』 の 価

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値 観 」 とい う こ とに な る。

個 人 の存 在 を基 礎 とす れ ぼ こそ個 々 人 間 の 相 違 と多 様 性 、 時 に は 異 質 性 も導 き 出 され 、 か っ 容 認 さ れ る。 た だ 、 こ こで 方 法 と して 」 の個 人 主 義 とい っ た が 、 そ れ は 人 間 の存 在 の本 質 が 全 くの個 的 存 在 で あ る とい う こ とで は な い 。 後 で 述 べ る よ うに 人 間 は本 来 的 に社 会 的 存 在 で あ り、 更 に は他 者 との相 互 依 存 関 係 の上 に成 り立 っ て い る。 しか し、集 合 的 存 在 を 強 調 しす ぎ る あ ま り、 個 人 の 意 思 、 存 在 を無 視 す る こ とに な りが ち に な る こ とを忘 れ て は な らな い 。

日本 国 憲 法13条 の個 人 の尊 重 の 規 定 の 意 味 は、 個 人 の 存 在 、 自己決 定 を 消 極 視 して き た 我 が 国 の歴 史 的 背 景 へ の反 省 も あ るが 、 そ れ だ けで な く人 権 そ の も

の が 個 人 の 意 思 、 存 在 が 基 礎 とな らざ るを え な い こ とに あ る。 方 法 と して の 個 人 主 義 とは 人 間 存 在 の 本 質 論 に 立 ち入 る こ とな く、 少 な く と も憲 法 上 の 方 法 と

して は個 人 の 存 在 を前 提 と しな け れ ば な ら な い こ とを い うの で あ る。 この 方 法

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と して の個 人 主 義 は 団 体 、 法 人 の理 解 に も関 わ る。

②法 人 と団体 の問題 性

個 々人 は それ 自体 弱 い存 在 で あ り、 また、社 会生 活 の便宜 上、 団体 、法人 の 存在 は不 可 欠 で あ るが 、 ここで はあ えて その問題 性だ けを指 摘 す る。 法人 につ いて は擬 制説 、 実在説 が あ るが、 方法 としての個人 主 義か らすれ ば擬制 説 に傾 斜せ ざ るを えな い。 この点 に関 して 自然 人 は人格 的 自律 性 か ら人権 が根 拠づ け

られ るの に対 して団体 の人権 は必要 性 に根拠 づ け られ 、 そ の意 味で は法入 の人

33)

権 とい う用 語 法 は不 適 切 で あ り、 「憲 法 上 の権 利 」 に と ど ま る との 指 摘 は妥 当 で あ る。

しか し、 実 際 に は会 社 に も政 治 的 行 為 を す る能 力 を認 め た 最 高 裁 の 八 幡 製

34)

鉄政治 献金 事件 」 判決 の よ うに法人 実在 説 と決 めつ け られ ない とはい え 自然 人 と同様 に法 人 の権 利 を大 幅 に認 めて い る例 が あ る。本 来 は個 人 の権 利保 障の た めに便宜 的 に認 め られ る(少 な くとも定款 に示 され る目的 に限定 され るべ き) 法人 が 巨額 の政 治献 金 に よって事 実 上、個人 の政 治参 加 とい う権 利保 障 を制約 す る こ とにな りかね ない ので あ る。

他 方、 この よ うな法 人、 団体 の外部 的影…響力 の問題 だ けでな く、 内部 的支配

35)

の問 題 も あ る。 この 点 に関 して 最 高 裁 は 「南 九 州 税 理 士 会 事 件 」 で 法 人 内 部 に お い て の政 治 献 金 を め ぐる会 の決 定 は会 の 目 的 か ら は妥 当 で は な い と して 会 を 構 成 す る個 々 の会 員 の 意 思 を尊 重 した 。 八 幡 製 鉄 の よ う な営 利 法 人 と異 な っ て 公 益 法 人 とい う性 格 の 相 違 が あ る にせ よ法 人 内部 の個 人 の 意 思 が 尊 重 され た 点 は評 価 され よ う。

個 人 の 存 在 、 意 思 が 軽 視 され る よ うな法 人 、 団 体 の 内 部 に あ っ て は法 人 を運 営 ・管 理 す る側 が 少 数 の反 対 者 を抑 圧 す る こ とが あ りが ち で あ る。 そ の 場 合 の 理 由 の 多 くが 法 人 と して の 意 思 を確 立 、 実 行 す るた め とい う こ とに な る。 しか し、 そ れ は 法 人 の意 思 決 定 の名 を借 りた一 部 の 人 々 の他 の人 々 に 対 す る支 配 と 抑 圧 に容 易 に な りう る の で あ る。 最 終 的 に法 人 と して の 意 思 決 定 が され な けれ ば な らな い と して も次 の こ とが い え よ う。

法 人 と して の 意 思 決 定 に お い て 方 法 と して の個 人 主 義 が 強 調 され る な ら ば、

決 定 の 手 続 きが 重 視 され るべ きで あ ろ う。 この 場 合 の 手 続 きの 重 視 とは、 一 つ

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共 生社会 にお け る法

IS

に は 内 容 に関 わ り、 法 人 と して の 意 思 決 定 が で き る範 囲 の 問 題 で あ る。 法 人 は 自然 的 存 在 で は な く一 定 の 目的 に よ っ て 存 在 す る人 為 的存 在 、 目的 的 存 在 な の で あ る。 した が っ て 、 法 人 の 存 在 目的 を超 え る よ うな範 囲 に まで 意 思 決 定 を構 成 員 に強 制 出来 な い はず で あ る。 い い か え れ ば、 個 人 が 法 人 と取 り結 ぶ 関 係 は 法 人 の 目的 に見 合 っ た 限定 され た 関 係 で あ る。

と こ ろが 、 この こ とは実 際 に は 法 人 の 運 営 者 に よ って 無 視 され か ね ず 、 法 人 の構 成 員 もひ とた び 団 体 、 法 人 に加 入 す る と無 自覚 に 法 人 の 目的 を超 え て 拘 束 され る こ とを甘 受 し、 結 果 的 に 法 人 の運 営 者 が 無 限 支 配 」 を行 う こ と に な る。

これ を 防止 す るた め に は方 法 と して の個 人 主 義 を 徹 底 す る他 は な い し、 法 制 度 と して の 入 権 論 の 問題 に と ど ま らず 、 制 度 を 支 え る 日常 の 思 想 と して 社 会 に定 着 させ て い くこ とが 必 要 で あ る。

二 つ に は意 思 決 定 の 手 続 き そ の もの で あ る。 法 人 の 意 思 決 定 が 一 部 の 人 々 に よ っ て 恣 意 的 に な され る こ とは な か っ た か 、 正 規 の決 定 手 続 き に よ っ て な され た か の 問 題 で あ る。 ま た 、 そ の 手 続 き も単 な る多 数 決 で は な く、 反 対 者 の 意 思 表 示 が 十 分 尽 くされ た か が 問 わ れ な け れ ぼ な らな い の で あ っ て 、 運 営 者 へ の 単 な る賛 嘆 や ア ク ラマ ツ ィオ ン」(喝 采)に 終 わ って はな らな い の で あ る。 これ ら二 つ の要 素 は方 法 と して の個 人 主 義 が 重 視 され れ ぼ確 か な根 拠 を 持 つ こ とが で き る の で あ る。

法 人 、 団 体 内 部 の個 人 の 人 権 保 障 は最 終 的 に裁 判 的 保 障 の 問 題 とな る。 しか 一し、 裁 判 に お い て は 人 権 の 私 人 間 効 力 論 、 部 分 社 会 論 、 団 体 自治 論 に よ っ て 個 人 の 人 権 保 障 が充 分 に認 め られ な い こ と もあ る。 た とえ ば 、 「三 菱 樹 脂 事 件 」 で 最 高 裁 は 「私 的 支 配 関 係 に お い て は 、個 人 の基 本 的 な 自 由や 平 等 に対 す る具 体 的 な侵 害 また は そ の お それ が あ り、 そ の 態様 、 程 度 が 社 会 的 に許 容 し う る限 度

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を超 え る とき」 に は法 的保 護 の可能性 を示 す。

また、政治活動 を理 由に退学処分 を受 けた学生 の処分 の妥当性 が争われ た 「 和 女子大 事件 」 で最高 裁 は学校 当局 の措置 に対 して 「その 内容 が社 会 的通 念 に

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照 ら して 合 理 的 と認 め られ る範 囲 に お い て是 認 さ れ る」 と して い る。 これ らの 判 決 で い う 「社 会 的 に許 容 し うる 限度 」、 「社 会 的 通 念 」 も、 も し方 法 と して の 個 人 主 義 が 徹 底 され た ら これ らの概 念 規 定 は厳 格 に検 討 され 、 結 論 は個 人 に有 利 な 方 向 に変 わ っ た か も しれ な い 。

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繰 り返 して い え ぼ、 現 実 に は 「集 団 ・団体 が 社 会 的 な権 力 とな っ て 、 個 の 自

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立 と自律 に 日常 的 か っ 深 刻 な 脅 威 とな っ て い る」 現 実 を見 失 っ て は な らな い の で あ る。 それ ゆ え に 団体 、 法 人 と個 人 との 間 の 緊 張 関 係 を見 据 え て い くこ とが 求 め られ る。 た とえ ば、 労 働 組 合 、 農 業 組 合 は本 来 、 社 会 的 弱者 で あ る労働 者 、 農 民 の救 済 の た め に設 立 され た の で あ っ て 、 法 的 保 護 の 下 に置 か れ た こ とは い

うまで も な い 。

しか し、 実 際 には法 人 の運 営者 に よ って構 成 員 の人 権 を制 限 す る こ とが な か っ た わ け で は な い 。 労 働 組 合 員 が 組 合 の 方 針 に反 して選 挙 に立 候補 しよ う と した

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と こ ろ組 合 員 と して の権 利 停 止 処 分 が な さ れ 、 争 わ れ た 三 井 美 唄 労 組 事 件 」 で最 高 裁 は、 経 済 的 弱 者 で あ る労 働 者 の 団 結 権 の 意 義 、 組 合 の 組 合 員 に対 す る 一 定 の統 制 権 を 認 め つ つ も個 人 の 立 候 補 の 自由 まで も妨 害 す る こ とは統 制 権 の 不 当 な拡 張 で あ る と して 組 合 の 主 張 を退 けた の で あ る。

人 権 保 障 に お い て個 人 と国 家 との 関係 は裁 判 的 保 障 の 対 象 とな る こ とが 多 く、

また 、 政 治 的 、 社 会 的 に も公 的 議 論 、 批 判 の姐 上 に あ が る こ と も多 い 。 とこ ろ が 、 法 人 、 団 体 内 部 の 問 題 は裁 判 的 に も争 わ れ る こ とは 多 い とは い え ず 、 裁 判 以 外 の社 会 的 批 判 に も さ らさ れ る こ とは 少 な い 。 日本 社 会 の 団 体 優 先 と個 人軽

=視の傾 向 の 中で 一 部 の 人 々 の恣 意 的 支 配 の構 造 が 国 家 と個 人 の 関 係 よ りも法 人 、 団体 内 部 に残 され て い る こ とが 問 題 な の で あ る。

法 人 や 団体 内 部 で の 恣 意 的 支 配 構 造 、 それ ば か りで な く支 配 され た 人 々 の飼 い馴 ら され た 意 識 を も変 革 す るた め に は 団 体 、 法 人 の存 在 、 目的 そ して 、 法 人 と個 人 との 関 係 性 を 改 め て 見 直 し、 「『一 人 一 人 の個 人 』 よ る 『選 び な お し』 を

許 容 す る意 味 で の 開 か れ た 文 化 」 が確 立 す る こ とが 必 要 な の で あ る。 もち ろ ん 、 この こ とは 人 為 的 団体 、 目的 団 体 と して の 法 人 、 そ れ 以 外 の 法 人 格 を 持 た な い 団 体 につ い て も い え る こ とで あ る。

い い か えれ ぼ 、 団 体 は、 「一 人 一 人 が か け が え の な い 存 在 で あ る、 自由 、 平 等 で 自立 した人 間 が 自由意 思 で取 り結 ぶ こ とが社 会 一 中略 一 それ らの人 間 が 自由 に設 立 し、 解 散 す る こ とが で き、 その運 営 につ い て各 自が 平 等 の立 場 で 参 画 し、

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自 由 に脱 退 す る可 能 性 」 が あ る こ とが 理 想 とされ る。 この こ とは 当 然 に多 様 な 個 々 人 の存 在 、 異 質 性 と個 人 の 能 動 性、 主 体 性 が 前 提 と され て い な くて は な ら な い 。

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共生社 会 にお け る法

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ま た、 人 為 的 団 体 で は な く、 自然 的 集 合 で もあ る民 族 、 人 種 に つ い て も同様 で あ る。 民 族 、 人 種 は 「選 び な お し」 が 困 難 で あ る こ とは い う まで も な い が 、 それ で も無 自覚 で それ に埋 没 す る こ と と個 人 の 意 思 を 明 確 に し 「選 び な お し」

を 自覚 す る こ と とは別 で あ る。 女 性 の 人 権 に 関 して も辻 村 み よ子 教 授 が 指 摘 す る よ う に集 合 的 存 在 と して で は な く 「女 性 とい う属 性 を持 っ 人 間(個 人)の

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利 の 総 称 」 とす る こ とが 妥 当 で あ る とい え よ う。 い ず れ にせ よ、 個 人 の 自律 を 前 提 と しな が ら個 人 と団 体 、 法 人 との 問 で取 り結 ぶ 関 係 をた えず 見 直 して い く 必 要 が あ る。

③ 国 民 主 権 論 と個 人 の 自 己 決 定 権

方 法 と して の 個 人 主 義 は 先 に も述 べ た よ うに 単 に 国 家 か らの 自 由 に と ど ま ら ず 、 国 政 へ の 参 加 、 国 民 主 権 の議 論 に も関 わ る。 国 民 主権 に関 して は 二 つ の 契 機 が あ る と され 、 権 力 性 と正 当性 の 契機 で あ る と され て い るが 、 特 に権 力 性 の 契 機 の 問題 に つ い て 学 説 に お い て は 二 つ の考 え 方 が 拮 抗 して い る。 一 方 で は杉 原 泰 雄 教 授 の よ うな 人 民 主 権 論 が あ り、 国 民 が 国 政 の最 高 の 権 力 と して ふ さ わ

しい 役 割 を担 うべ く徹 底 した権 力 の 民主 化 を追 求 す る もの で あ る。

しか し、 この よ うな考 え 方 に 対 して は、 他 方 、 た とえ ぼ江 橋 崇 教 授 の よ うに 人 民 主 権 の 原 理 を純 化 す る よ りも人 権 概 念 を純 化 す べ き こ とを提 示 す る説 もあ る。 なぜ な ら人 民 主 権 論 は 「多 数 派 に よ る独 裁 な どの危 険 が あ る の で 、 市 民 の

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幸 せ の た め に は国 家 の主 権 に 対 す る人 権 とい う対 抗 関 係 を強 調 す べ き」 で あ っ て 、 主権 概 念 よ りは 人 権 概 念 を磨 き あ げ るべ き で あ る と して い るの で あ る。

そ して 、 佐 藤 幸 治 教 授 も同様 に個 人 の 自 由 、 個 人 の 自 己決 定 を基 礎 と しな が ら政 治 的 決 定 を論 じよ う と して い る。 この こ とは 「国 民 が 『政 治 に お け る 自 ら の 運 命 の 決 定 者 』 で あ る前 に 、 まず何 よ りも 『人 間 個 人 と して 自 らの運 命 の 決

ゆ  

定 者 』で あ る とい うこ とを重視 す べ き もので はな いか 」 に示 され て い る。 この よ うな論 理 を徹底 す るな らぼ これ まで の国民 主権 論 は個 人 の 自己決 定、 個 人 の 人権 の面 か ら見 直 さな けれ ぼな らな いので あ る。

歴 史 的 に は国民主権 は君 主主権 に対抗 す る概 念 で あ り、確 か に明 治憲 法 か ら 日本 国憲 法 へ の変 化 の よ うに主権 の変 更 を説 明す る上 で、 その政 治 的意 義 を確 認 す る上 で意 味 はあった。 しか し、 もはや歴 史 の趨 勢 は国 民主権 の正 当性 を疑

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う こ とは あ りえず 、 また 、 権 力 性 を徹 底 して も少i数者 の権 利 を侵 害 す る こ とも あ りう る。 そ こで松 井 教 授 の よ うに 人権 保 障 を 重 視 す る立 場 か らは 国 民 主 権 よ

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りは民 主 主 義 の 問題 とす べ きで あ る こ とに な る。

要 す る に国 民 を漠 然 た る集 合 的 存 在 と して そ の 権 力 行 使 を徹 底 す る よ りも個 人 の 自立 ・自律 と個 人 の 自己 決 定 を 重 視 す る こ と、 個 人 の 人 権 保 障 を 尊 重 す る こ とが 必 要 で あ る。 個 人 の 思 想 の 自由 、 表 現 の 自由 、 そ して 、 結 社 の 自 由 か ら 拡 げ て い っ て 政 治 参 加 、 国政 の 決 定 とい うプ ロセ ス が 重 要 で は な い か 。 そ れ ゆ え に これ ま で の よ うな 国 民 主 権 論 よ りは個 人 の 人 権 、 自 己決 定 を軸 と した 民 主 主 義 論 と して 議 論 す べ きで あ る。

同様 な 文 脈 で あ るが 、 へ 一 ベ ル レ は国 民 主 権 論 に お い て 国 民 を 抽 象 的 な神 秘 的 な集 合 体 として 捉 え るの で は な く、 人 権 の 担 い 手 で あ る個 々 の 具 体 的 な 人 間

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と して 理 解 す べ きで あ る とい う。 国 民 主 権 論 を い う場 合 に お い て も、 や は り、

個 人 の 自 己決 定 か ら最 終 的 な 国 政 の 決 定 ま で の プ ロセ ス を考 え るべ きで あ る。

そ して 、 そ の た め に は次 項 で 述 べ る よ うに政 治 に積 極 的 に 参加 す る人 間 像 が 想 定 され る の で あ る。

従 来 、 憲 法 学 に お い て は国 民 主 権 の 問題 と人 権 の 問 題 は別 に論 じ られ て き た が 、 そ れ は 憲 法 学 に関 す る講 学 上 の 便 宜 性 か らそ うせ ざ'るを え な か っ た こ とも あ る。 しか し、 今 後 は国 民 主 権 の 「国 民 」 の 内容 を抽 象 的 な集 合 体 で は な く、

多 様 な具 体 的 な 個 人 の 存 在 の集 合 と して 捉 え、 そ こに は利 害 の 対 立 も前 提 とさ れ な くて は な らな い 。 した が っ て 、 憲 法 学 に お い て は個 人 の 自律 性 、 自己 決 定

を軸 に お い て 政 党 、選 挙 制 度 、 統 治 機 構論 を検 討 し、 法 的構 成 を考 えて い くこ とが 求 め られ る。 も ち ろ ん、 個 人 の 自己 決 定 か ら国 政 の 決 定 まで 単 線 で は あ り え な い 。

個 人 の 自 己 決 定 が 単 な る 自 己利 益 の主 張 に と ど ま らな いた め に も政 党 、 選 挙 制 度 、 議 会 制 とい うプ ロセ ス を経 る場 合 に は公 的 な場 に お け る相 互 批 判 、 あ る

い は公 共 性 を め ぐ る問 題 か ら改 め て議 論 され る必 要 性 が あ る。 しか し、 そ の こ とは承 知 の 上 で も な お か つ これ まで の 国 民 主 権 論 が 人 権 の 問 題 と別 に論 じ られ た こ との 方 が 問 題 で あ る。 そ して 、 そ の こ とに よ っ て 国 民 が 抽 象 的 、 集 合 的 存 在 とな っ て 現 実 に は個 々 の 国 民 の 主 権 性 」 が 弱 ま っ た と も い え よ う。

次 の 入 権 論 の再 構 成 で も述 べ る よ うに 国 家 か らの 自 由 だ け で は な く、 個 人 の

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共生社 会 にお け る法

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自己 決 定 を基 盤 と して の 国 家 へ の参 加 に も焦 点 が あ て られ な け れ ば な らな い 。 た とえ ぼ、 政 党 に 関 して も政 党 間 の 公 平 な競 争 だ けで な く、 党 員 の 自 己 決 定 を 軸 と した 党 内 民 主 主 義 の 問 題 が 一 層 、検 討 され る必 要 が あ る。 ま た 、 政 治 参 加 を政 党 、 選 挙 、 議 会 とい う形 で 国 政 の プ 「ロセ ス を議 会 制 民 主 主 義 に 一 元 化 す る の で は な く、 その よ うな 回 路 と同時 に国 民 が 直 接 、 行 政 を コ ン トロ ー ル す る こ

と も重 要 で あ る。

これ まで行 政 に 対 す る コ ン トロ ー ル の 多 くは議 会 に委 ね られ て い た とい え よ う。 民 主 主 義 の観 点 か らは そ れ は今 後 と も当然 の こ と と して 、 加 え て 情 報 公 開 法 、 行 政 手 続 法 、 行 政 事 件 訴 訟 法 、 国 家 賠 償 法 あ る い は 地 方 自治 法 等 の 行 政 に 関 す る諸 法 を個 人 の権 利 の 保 障 とい うだ けで は な く国 民 の行 政 に対 す る民 主 的 コ ン トロ ー ル の視 点 か ら改 め て 見 直 し、 活 用 して い くべ きで あ る。 この 点 につ い て は今 後 、 改 め て 民 主 主 義 プ ロセ ス 論 」 と して 問 題 を提 起 して い き た い 。

(四)共 同 性 の 感 覚

① 共 同性 の 感 覚 と は

これ ま で 方 法 と して の 個 人 主 義 を 強 調 して きた が 、 そ の こ とは 人 間 存 在 の 本 質 と して の 対 他 関 係 性 、 共 同性 を無 視 す る こ とで は な い 。 人 間 は様 々 な 社 会 的 関 係 を取 り結 ん で い るが 、 この よ う な社 会 的 関係 以 上 に よ り本 源 的 に 人 間 存 在 と して の 相 互 依 存 関 係 が あ る。 個 人 の 自己 決 定 、 自律 を よ り意 味 あ る も の とす るな らぼ 伝 統 ・歴 史 を 異 に す る文 化 ・集 団 ・個 人 が そ れ ぞ れ の 自 己 解 釈 をふ ま えつ つ も、 相 互 の対 話 に よ っ て 、 よ り普 遍 的 な共 有 観 念 を動 態 的 に形 成 し よ

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う とす る実 践 を 重視 す べ きで あ る」 とい う こ とに な る。

共 同性 の 感 覚 とは、 人 間 の 本 質 的 な 自 己 と他 者 との相 互 依 存 関 係 を 重 視 す る もの で あ り、 「自然 の め ぐ りあ わせ 一 中略.̲̲̲に恵 まれ 、 か つ 自分 た ち が 恵 まれ て きて い る こ とを知 っ て い る人 び とは 、 才 能 や 能 力 に 恵 まれ な い 状 態 に あ る人 び との 生 活 状 態 を 改 善 す る とい う条 件 を満 た す か ぎ りで の み 、 自分 た ち の 幸 運 か

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ら利 益 を得 よ う とす る こ とが で き る」 とい う視 点 で あ り、 特 に弱 者 に 対 す る配 慮 の ま な ざ しが 含 ま れ て い る。

た だ 、 共 同 性 を 国 家 、 民 族 に置 き換 え る傾 向 が あ る こ とに は 注 意 が 必 要 で あ

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る。 端 的 に い え ば 共 同性 は個 別 の 国 家 、 民 族 に還 元 され な い人 と人 とのつ なが りで あ っ て 人 間 存 在 と して 本 来 有 す る もの な の で あ る。 この こ とは 国 家 と民 族 性 が 一 体 化 した ナ シ ョナ リズ ム を人 間 の 共 同性 と直 接 、 結 び つ け る議 論 に対 し て 明確 に して お きた い 。 国 家 、 民 族 とい う抽 象 的 、 集 合 的 存 在 に お い て は時 に は集 合 と して の 同 質 性 の 強 調 され 、 個 々 の 存 在 性 、 異 質 性 が 排 除 され る こ とが 多 々 あ る こ とが 危 険 で あ るか らで あ る。

人 と人 との つ なが りは現 状 は とも あれ 、 本 質 的 に は 国 家 や 民 族 に限 定 さ れ る もの で は な く人 権 も本 来 は国 家 を超 え る普 遍 性 を 有 す る もの で あ る。 実 際 に も ヨー ロ ッパ 連 合 にお け る人 権 保 障 、 国連 の 国 際 人 権 規 約 等 に見 られ る、 「人 権 保 障 の 国 際 的 実 施 措 置 」、 「人権 の 国 際化 」 は 国家 を超 え る人 権 保 障 の 形 態 を見 せ つ つ あ る の で あ る。 また 、 日本 国 憲 法 に お い て も国籍 離 脱 の 自由 が あ る こ とも この 点 か ら看 過 で き な い。

話 を元 に戻 せ ば、 人 の存 在 は本 質 的 に他 人 との 関 係 、 相 互 依 存 関 係 の 上 に成 立 して い る とい う視 点 が 憲 法 にお け る人 間 像 と して 重 要 で あ る。 人 は 対 他 関 係 に お い て 他 人 を道 具 とす る こ とに 心 か ら快 感 を抱 くもの で は な い し、 この 感 情 は決 して 道 徳 的 な も の だ けで は な く、 自然 的 な もの で もあ る。 この よ うな 人 間 の感 性 は これ ま で あ ま り重 視 され て こな か った が 、 理 性 で はか れ る人 間 存 在 は 限 界 が あ る とい わ ざ るを え な い し、 感 性 で の 共 同 性 の 感 覚 は重 要 で あ る。

また 、 共 同性 の感 覚 か らは 人 間 は 自己 の能 力 、 可 能 性 は他 人 に接 す る こ とに よ って 限 界 を見 い 出 しう る こ と もあ り、 そ して 、 その 限 界 を克 服 す る こ とに よ っ て 更 に 自己 の能 力 を発 展 し う る とい う視 点 も導 か れ る。 その 意 味 で も人 間 の存 在 は 対 他 関 係 、 相 互 依 存 関 係 に よ っ て規 定 され て い る とい っ て も よい 。 そ の こ

とは決 して 個 人 の存 在 を埋 没 させ る こ とで は な く、 自 己 と他 者 の 存 在 の 相 違 を 意 識 しつ つ も そ の よ り良 き関 係 性 を構 築 して い くこ とで あ る。

この こ とを哲 学 的 に表 現 す る な らば 「『あ るが ま ま に他 者 を受 け 入 れ る』 あ る い は 『苦 難 の な か の 弱 者 に無 関 心 で い られ な い 』 とい う命 題 は、 自 己 の 徳 目 を 実 現 す る た め の 命 題 で は な く、 自 己 の 浄 化 は 異 邦 の他 者 との 『正 しい 関 係 』 を

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結 ぶ こ とで は じめ て 可 能 で あ る」 とい う こ とに な る。 こ の よ うに表 現 され た 対 他 関 係 の 重 要 性 、 共 同性 の感 覚 は また 人 間 の立 場 の互 換 性 の観 念 に も関 わ って

くる。

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